Taste of India

特別企画 2003年12月〜2004年1月 こんなもの食べましたinマドラス

part0  12月27日 シンガポール〜マドラスの機内食は当然のようにイケたのだ



 たまには食にまつわる旅行記でも書いてみようか。それも思い切りディープかつおいしいやつ。

 というわけで、2003〜4年の年末年始、南インドでナンバーワンの大都市マドラスに滞在したときの食日記のはじまり、はじまり。

 今回は、家人のステイするタミル人古典舞踊家師匠宅に私もおじゃましての食事がメイン。つまりは、本場のタミル家庭料理世界の一端を、みなさんもごいっしょにかいま見られるという、何ともお得な企画である。どうぞ存分にお楽しみいただきたい。

 で、本来は当然ながら、滞在初日の朝食から順にご紹介するのが筋だが、ディープな企画だからそうはいかない。
 グルメ旅行者の忘れてはいけない旅の楽しみ、機内食についてひとこと述べねば、気がすまないのだ。



 上の写真は、12月27日、シンガポール航空のシンガポールからマドラスにむかうフライトで私のオーダーした機内食。インド料理のノンベジ仕様である。
 まず左上。ゆでたチャナ豆をオニオンやトマト、青唐辛子のみじん切りなどと和え、レモンや塩で味つけした「スンダル」と呼ばれる南インド料理。こいつをレタスの上にあしらっている。こんなのを前菜風に出されると、それだけで「さすがSQ」と、思わず拍手を送ってしまう。
 その右のホイルに半分隠れているのはフルーツ。パイナップルなどのトロピカルで新鮮な果物をカットしている。
 で、ホイルの中は温かいプーリ(全粒粉の薄焼き揚げパン)が2枚。そして左下に半分見える白いのはパパド(豆でつくる揚げせんべい)である。反対側の右下グリーンのカップは北インド風のミント・チャトニ。その横の赤いのは「ドサカイ」と呼ばれる南インドのマンゴーでつくる辛いチャトニだ。ふたつもチャトニがついていること自体インド濃度満点でスゴイが、とくにマンゴー・チャトニをプーリにつけると、気分は早くも南インドに。また、左のひな菊印はプレーンヨーグルトだが、これとマンゴー・チャトニをごはんにぶっかけて混ぜながら食べるのもおいしい。実際、このときも私はそうしたし、隣のインド人おやじもおなじことをしていた。
 プーリの下にあって見えないのが、デザート。サフランのきいたコンデンスミルクに食パンを浸し、ピスタチオやアーモンドをあしらっている。北インド起源で「シャヒ・トゥクラ」という揚げた食パンのミルクシロップ漬けがあるが、その変形バージョンともいえる。
 そしてメイン。右の赤いのは「タンドゥーリ・チキン」とメニューカードにあったが、実際は骨なしなので「チキン・ティッカ」が正解である(タンドゥーリ・チキンは骨付き丸ごとのチキンをタンドゥール焼きしたもの。骨なしはチキン・ティッカである)。タンドゥール焼き独特の風味たっぷりで、マサラの具合も良好。ごていねいに香菜もたっぷりまぶしてある。こいつに先ほどのミント・チャトニをチョイとつけ、タイガービール(右奥に缶が見える)と流し込むと最高だ。
 一方、左の料理はジャガイモ、カリフラワー、インゲンの香味炒め。ショウガの千切りがのっており、クミンのきいた北インド風の味つけ。野菜がやわらかすぎないのがいいし、当然のように、日本で食べる野菜カレーより全体の風味も良好。
 で、真ん中はバスマティ・ライスによるビリヤニ風ライス。香りがメチャクチャよく、チキンと野菜の料理両方によくあうのがミソ。バスマティは日本で高いゾ。
 総評としては、北インド料理主体に南インドの要素をドッキングしたもので、ハッキリいって日本のインド料理店よりぜんぜんウマい。



 比較のために、10日前の12月17日、バンコクからデリーにむかうエア・インディアの機内食も紹介しよう。これもノンベジのインド料理仕様である。
 SQのスンダルにあたる前菜代わりが、ここでは単なる野菜サラダ。それもバサバサとしたがさつなやつ。プーリやパパド、チャトニはなく、丸パンやバター、チーズが。デザートはぜんぜん甘くないライス・キール(要するにミルク煮のこと)風のもの。フルーツもなし。
 メインは、右がジャガイモとインゲンの香味炒め。なぜかSQと似たメニューだが、こっちは材料とスパイスをケチった感じ。考えようによっては「田舎風」な一品とも評されるが。
 左はコリアンダーやミントでグリーンを強調したマサラのマトン煮込み。これはイケた。
 で、真ん中はバスマティでない長粒種のスティーム・ライス。SQのようにナッツをあしらったりせず、サフランやターメリックの色もつけていない。
 全体として別にわるい代物ではないが、あんまり感動もない。そんな機内食だった。

 まあ、写真を見比べるだけでも、どっちがより豪華でよりおいしかったか、みなさんもかんたんに察しがつくだろう。
 とにかく行きのフライトで機内食がいいと、それからの旅も思わず盛り上がるというもの。そのその点、SQならば概ね太鼓判を押せるし、酒やドリンクも充実している(私は飲まなかったが、成田発シンガポール行きにはクルー手づくりの「シンガポール・スリング」もある)。
 
 食後、満腹の私は現地で遭遇するインドの美味の数々を想像し、ウキウキしながらマドラスへの到着を心待ちにするのであった。
                                              つづく

 次回いよいよマドラス到着。翌日の朝食から美味に唸るハメに。 乞うご期待!

                

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