Taste of India



第5話 インドカレーのつけあわせ


 カレーのつけあわせというと、日本人なら福神漬けやらっきょうの名前がすぐに思い浮かぶ。
 それではインドでカレーを食べるとき、これらに相当するものがあるのだろうか?

 実際のところ、インド亜大陸の津々浦々でさまざまなものが、カレーと主食というメインの献立に付属した「箸休め」の形で口にされている。
 それらを集約すると、どうやら「ピックル」と「ヨーグルト」のふたつに行き着くような気がする。
 ちなみに、どちらも日本からインドに向かうエア・インディアなどの機内食に常時登場するので、旅慣れた方にはおなじみだろう。

 インドのピックルというのは、西洋の「ピクルス」のような野菜の酢漬けではない。
 青唐辛子やライム、トマト、しょうが、未熟の青マンゴーなど、風味豊かなさまざまな素材を植物油(マスタードオイルやゴマ油を使う。インドのゴマ油からは、中国や韓国料理でおなじみのあの香りはしない。焙煎しない生ゴマを圧搾してつくるからだ)、赤唐辛子やマスタード・シードなどのスパイス類、さらには酸味づけや防腐作用のあるタマリンドなどをミックスしたベースに漬け込んだものである。
 かつてはほぼすべてが自家製で、各家庭がその味を競っていたのが、今では瓶詰めの既製品が幅を利かせるようになっているのは、日本の漬物と同じ状況か。

 そのまま口にするとかなりホットで塩気も強く感じられるが、インド的な食生活に舌が慣れてくると、強烈な辛さとともに独特の爽快さが意識されるようになり、何とも心地よい。
 現地の人々はホットなピックルを、カレーとライス、カレーとチャパティなど食べる合間のちょっとした口直しにつまんだり、ごはんやパン自体につけながら味わう。

 ヨーグルトはつけあわせというよりカレー定食の中の一品、いわばおかずの一種という感じもする。それくらいインド人の食卓に欠かせない。
 ピックルと同じく食事中、メインの合間の口直し的に食べる人もいれば、ほかのおかずをあらかた食べ終わってから、やおらズズズズとヨーグルトだけすすり込む人もいる。

 インド亜大陸全体に、ごはんにヨーグルトをかけて食事の締めくくりにする人がいる(逆に、そうすることを嫌がる現地人もいるのがおもしろい)。さらにはヨーグルトに加え、前述のスパイシーなピックルもいっしょにごはんにのせ、全体をよく混ぜて口に運ぶと、じつにおいしい。とくに南インドでは、ほとんどすべての人がこうして食べている。
 私は、とくにピックルの食べ方としてはこれが最高だと考えているし、インド人の賛同も多い。インド製のピックルを食べる機会があるときは、ぜひ試していただきたいものだ。

 インドカレーのつけあわせにはほかにもいろいろあるが、いかにもインドらしい究極のひとつを挙げるとすれば、生の激辛青唐辛子がおもしろいだろう。
 こいつをボリボリかじりながら、うまそうにカレーをたいらげるインド人を現地でよく見かける。日本人にはまねのできない過激なつけあわせだ。

 ちょっとめずらしいゴーヤーのピックル。南インドで有名なPRIYAといブランドの製品。
                
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