Taste of India

第14話 エッグタリアン、そしてベジタリアンにとっての乳製品とは



エッグタリアン?

 ケーキの卵を食べるベジタリアンもいるが、もう一歩進んで「卵のカレーやオムレツ、ゆで卵は食べるが、肉や魚のカレーは食べない」という、よりノンベジ的な自称ベジタリアンもいる。エッグタリアンとも呼ばれそうな人々だ。雑多で旺盛な食欲をもちながら、それでもベジタリアンという名にはしがみつきたいという感じで、どうもめめしくウソくさい感じがする。ベジタリアンというのは、それほどまで尊重されるべき存在であるということか。

 料理を出す側からすればエッグタリアンという範疇は存在しない。私自身もそうするが、パーティなどでインド料理を供する際、ゲストがベジかノンベジかという事柄はまず最初に把握しておくべき最重要事項でもある。ここでエッグタリアンに合わせて卵入りのベジタリアン料理をつくったら、ほかの本来的な正統ベジタリアンの人たちは絶対に食べない。だからベジタリアン・メニューでは肉、魚、卵をワンセットですべて除外するやり方をとるのがふつう。エッグ・カレーやオムレツはあくまでノンベジのメニューなのだ。

「私はいっさい肉を食べません」といいつつ、飲み屋に行くと、鶏肉といっしょに煮込んで鶏のだしがたっぷりしみこんだ大根をうまそうに食べるような日本人を知っているが、エッグタリアンもおなじ感覚という気がする。


乳製品はオーケー

 これも日本からの旅人からすれば、おかしな感じのする事柄かもしれない。
 インドのベジタリアンは牛肉を絶対に食べないのに、元来絶対的な動物性食品であるはずの牛乳と乳製品は大の好物。むしろ乳製品はインド菜食にとって不可欠な、食習慣上ひとつの大きな柱になっているのだから。

 解説的にはこうなる。ヒンドゥ教徒にとって、牛は聖なる動物なのだ。ナンディという名の神様となって崇拝の対象にもなるくらい。その聖なる牛からいただける崇高なる贈り物として、牛乳と乳製品はじつにありがたい食品なのである。

 実際インドでは、牛乳と牛乳を加工した乳製品の活用範囲がとてつもなく広く、深い。
 もちろんカレーにも水やお湯の代わりに牛乳で材料を煮込んだものや、たっぷりのヨーグルトを使うものがある。温めた牛乳にライムやレモンを加えて凝固させれば、パニールという名のカッテージ・チーズになる。パニールはそのまま、またはカラリと揚げてカレーの具にしたり、砂糖を加えてお菓子にする。さらには牛乳自体をひたすら長時間煮詰めて半固形にして、そこに砂糖を加えてお菓子をつくるという手間ひまのかかる手法もある。日本でもおなじみのチャイやラッシーだって、牛乳やヨーグルトの滋味を生かした飲み物だ。すべてベジタリアンはもちろんノンベジの人々にとっても大好物である。牛乳と乳製品はインド人の食生活の根幹を力強く支えているのだ。

 インドではヤギの乳を大いに利用すると書かれた本もあるが、においが強いのでインド人も敬遠しがち。実際はあまり使わない。むしろ、いわゆる水牛の乳を牛乳とともにかなり広範囲に使っている(水牛の乳にも独特の風味はある)。

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