歌集 六

炎天下四十日振り落ちるごと
         雨降り続く夕食時に
四十日振りの命の雨に夏野菜
         天を仰ぎて実花を震わす
もう来るかもう直ぐ降るかと遠雷の
         音を聞きつつ夕立を待つ
蝿一匹死んだ振りした暑き夜
         人の隙見て飛び立ち去りぬ
ほおずきの中味を除いて鳴らす子は
         仏を送りしその日の夜に
渇水に給水制限受く人に
         湧き出る水を与えたく思ふ
敬老会手伝う吾も演芸の
         楽しき時間与えられたり
如何ですかと頬に手を触れ訪ひ行けば
         言葉無き患者も泣きて答えん
早植えの実りし田圃に群がる雀
         我が物顔に稲穂を喰ばむ
そこかしこ木犀香る村中を
         通り抜ければ施設見えくる
曼珠沙華芒に秋桜咲く道を
         自転車こぐ子に纏わる蜻虻
清々しき朝の冷気に包まれて
         挨拶交わし農道を歩む
優勝戦息を飲みつつ見守る夫
         巨人勝利に酒を振るまい
白鷺の二つの群れが飛び交いし
         川面を渡る風は爽やけき
部活の練習終えて缶ジュース
         回し飲みする子等自販機の前で