歌集 四

雪が降り静まり返る長き夜
        写経の筆を運ぶ音優し
素晴らしき人との出会いを大切に
        思ひで過ぎし三十年の歩み
そおどすかおいでやすかと京言葉
        優しさ響く病室にて過ごす
凍てもよし吹雪も又よし冬景色
        生活離れて眺む限りは
吾が体型そのままベッドに納まりし
        名残り残しつ退院の朝
風に揺れ雪に打たれて山茶花の
        花散り落ちぬ菩提寺の庭
岸壁を小鳥の如く滑り来る
        スノーボートの若き男女等
この春も公共料金値上がりて
        快晴なれど家計は寒し
髪染めてボンタン履いてる
        愚れた子も襟足刈り上げ卒業の朝
しなやかに飛沫を上げて泳ぎおる
        水泳選手の輝く手足
ワッ綺麗線香花火の行列だ
        対向車線より連なる光は
快晴と桜日和に恵まれて
        末の息子の入学の朝
さくら雲ブルトーザーの音遠くより
        朝のしじまに鳴り響くなり
連山の一山だけがこぶし咲き
        離るる程に残雪の如く
春の湖に集いて浮かぶウィンドサーファー
        羽根を休めし蝶の如くに