歌集 二

大根飯五臓六腑に染み渡る
         年追う程に昔を偲ぶ
参観日振り返る吾子に手を上げて
         サイン送ればハニカミ笑う
ただいまーの声を聞きつつ物陰に
         おどけ隠れて肩笑わせ待つ
スーパーで我が故郷の言葉聞き
         見知らぬ老女に握手求めおり
偽物の乳房の下に汗かきて
         風吹かぬ日はなお暑さ増す
たちまちに前窓濡らす夕立に
         日差し受ければ夏虹となる
転生の母かも知れぬ朝蜘蛛を
         懐に入れて温め歩む
砂浜や潮風肌に心地好く
         夕日静かに海に落ち行く
電車内唇寄せ合う若き男女
         映画の如き吾は見ており
夜更ければ橋立て駅も静なり
         暗き海面船の灯浮かぶ
癌と言う言葉無造作に飛び交ひし
         傷持つ吾を知る由もなく
話しつつ自転車で来し少年等
         自販機のうどん食みて過ぎ行く
業界も金に絡まる政界も
         醜きニュースで日々通り行く
学校の中庭ほどの距離に居て
         遅刻するなと吾子を急がせし
皇太子妃内定の吉報駆け巡り
         暗き世政に湧き立つ列島