PARENTHOOD (邦題: バックマン家の人々)

 ©1989 Universal City Studios, Inc. and Imagine Films Entertainment, Inc.

Director: Ron Howard
Cast: Steve Martin, Tom Hulce, Rick Moranis, Martha Plimpton, Dianne Wiest, Keanu Reeves, Joaquin Phoenix., Mary Steenburgen..


お勧めの映画は? って聞かれて、必ず答えに混じるのが、この映画だ。コメディは、コレくらいスピードがあって、テンポの良い映画でないと。ハリウッド映画に毒されてしまったワタシです。

余計なディテイルが描かれていない、っていうのが、もう、痛快です。監督さんによっては、1から10まで、モレなく細かい描写、流れを盛り込みたがるみたいだけど。そういう映画は、まぁ、芸術作品であり、監督さんのエゴであるわけです。ことの成り行きは、誰が見ても同じになってしまう。ハリウッド映画は、細部を省くことがしばしばあり(通常、結論=オチをドン、と持ってくるところに意味があり、まぁ、細部はオーディエンスのご想像にお任せします、で充分の場面です)、この手法は、オーディエンスに気持ちよい。芸術作品に分類される映画は、なんか、監督の好みを植え付けられる感じ。細部を省いた映画は、オーディエンスが少し、頭を使うことができる。エンタテイメントとしては、こっちの方がスキです。

この映画は、バックマン一族のドタバタコメディーです。バックマン夫妻(おじいちゃん、おばあちゃん)には、息子ふたり、娘ふたりがいます。長男と次女は結婚して子供がいる。長女は子持ちで離婚暦あり。末の息子は風来坊で、博打好き。

長男(Steve Martin)は、とても良い妻、子供に恵まれていますが、職場でトラブルがあり、モンダイを抱えている。次女の夫 (Rick Moranis) は英才教育にのめり込み、2歳の娘にまぁ、ありとあらゆる学習をさせ、娘が混乱。離婚したシングルマザーの長女 (Dianne Wiest, 大好きな女優さんです。この映画での彼女も、もう、さすがっ!いい味出してます) は、思春期を迎えた娘(Martha Plimpton; 彼氏を内緒で自室に引きずり混んで、アツアツ。彼氏役は Keanu Reeves) と、両親の離婚が原因で暗い、何考えているんだかわかんなくなっちゃった、たぶん、10代前半くらいの息子(Joaquin Phoenix) を抱えている。そして、自由気ままに放浪していたバックマンの末息子(Tom Hulce) が、ある日実家に戻って来る。バックマン夫妻としては、不出来の、でも可愛い末っ子ですから、まぁ、大喜び。しかし。彼には、放浪先で黒人女性との間に子供が出来て、未婚のままその子供を連れて帰宅。それだけでなく、ギャンブルの果て、マフィアまがいの連中から、大金を借金しており、命が危ない状態。この、末っ子と父親とのやりとりは、前編に渡って、コメディでありながら、ドラマしてます。

この映画での、コメディとしての絶妙のスピード、タイミング、は、たとえば、長女の娘が、アツアツの彼氏と自室で、スッポンポンで記念写真をバシャバシャとり、ある日ふたりで、写真屋に出来上がった写真を楽しみに受け取りにいったシーン。『バックマンです』といって受け取った封筒に入っていた写真は、母親の勤める銀行のパーティー写真だった。彼氏とふたりで、慌てて写真屋に戻り、『もうひとつ、バックマンがあるハズなんですけど・・・。』って尋ねると、写真屋は、『・・・、いや、他にはもう、ないね』って答えたあと。彼女と彼は『ど〜ゆ〜こと?』って感じで顔を見合わせ(ここで、ヨーロッパ映画なら、慌てふためいたカップルが、自宅にたどり着くまでのあたふたぶりを、たっぷり画面に出していたでしょうが)、次のシーンは、バ〜ンと、自宅にいる母親が『あらまぁ・・・・。まぁ、なんてこと・・・。』と嘆きながら、明らかに娘たちの撮影した写真を見て嘆いているところ。

それから、バックマンの次女が、夫のストレスには、ブロージョブ(卑猥な話で恐縮ですが、日本では、フェラチオ、と言われている、アレです)が効くのよ〜、って話をマに受けた、長男の嫁(Mary Steenburgen) のある日の行動。自動車の中で。子供は乗っていなかったんですが。夫が会社でのイザコザにヘキエキとし、ストレス溜まってタイヘンだ〜、って運転しながら言ったとき。妻は、『わたし、特効薬を知ってるの。試して欲しい??』『頼むよ』と言った、そのすぐ後のシーン。パトカーと警察官が・・・。『いったい、ど〜してこういう事故が起こったのですか?』『・・・・。妻に聞いてくれ』

どういう事故がここで起こったのかは、このハリウッド映画では、モンダイではない。事故にいたる過程、しかも、それは場合によっては、かなりいやらしい、下品な場面になりうるところ、オーディエンスのご想像にお任せ(誰もが、あ〜、やっちゃったんだぁ〜と思える)って成り行きです。

とにかく、この映画は、ワタシの中では、かなり、完成度の高い映画でございます。