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過去の記録・Boys 9 Active Fellow 初めて独り暮らしを始めたころのこと。最初のアパート風マンション(不動産屋には、マンションとあったけど。『鉄筋のアパート』程度の、しょぼいとこ)、はヨコハマでした。 彼のことは。ゲジゲジ眉毛にした川野太郎みたいなやつだったので、ここでは太郎、と呼ぶ。 同じ事業部の2年後輩の同期だった。所属は違う事業部。2年後輩だけど、ふたりともワケあり院卒だったんで、ワタシより年上。 太郎との最初の出会いは。えっと・・・。確か。全事業部の集まる催し(若いもんしか集まらんような。テニス大会、とか、そういうやつ)だったと思う。ウチの事業部の連中と輪になってお弁当食べてたとき。太郎は、同期の友人のところにやって来た。たぶん、最初から意図あって。(ふわぁ〜、ワタシって自惚れ強い!) だってね。ざぁ〜とらしく、タバコをくわえてから、『あ、ライターがないや。』って聞こえるように言ったんだもん。ワタシはタバコを吸ってましたから。そんとき、既に。ちょっと離れていたので、ワタシは、ライターを後輩の方に投げてやりました。『あい、どうぞっ!』ってね。乱暴ですねぇ。 とにかく。太郎は、『あ〜、すいませぇ〜ん。』と、ワタシの顔を見て言ったので。そん時が初対面。 以来、社内で太郎とすれ違うときなどは、一応、顔見知りとなったので、挨拶はするようになった。 太郎は、スラッと背が高く、どっちかっていうと痩せ型で、ものすごいお金持ちのお坊ちゃん。着る物がいいからか、お育ちがいいからか、顔は別にハンサムでもないけど、気障でさえなければ、かなりの好青年。 以来、会社の宴会とか、なんだとかで、ちょこちょこ会うことになり、お友達になった。 六本木に繰り出したとき。あっちからすると、ちょっとした進展があった、っていうか。実は、ワタシ。住まいがヨコハマだから。六本木に出る、っていうときは。帰りはタクシー覚悟で、ちゃんとお財布の中味は万全にしてあるのね。なのに、太郎は、一緒にタクシーに乗り、勝手に彼の実家にワタシを連れて行った。何をするのか、って思ったら。そこに自分の車があるから、って。そっからワタシのうちまで、ヤツの運転で帰った。酒気帯びで。 とろいワタシは気付いてない。ヤツがワタシの住まいを確認するために、わざわざそ〜ゆ〜ことをしたって。 翌週の土曜日。アレは夏。クソ暑い日でね。友人が遊びに来ることになっていたので。ワタシは、Tシャツとパンツ一丁で、部屋のそうじを汗だくでしておった。すると、ピンポ〜ン・・・・。 インターフォンなんてない、マンション風アパートだから。仕方なく、ドア越しに『どちらさま?』って聞くと。 『俺・・・。 太郎。』 ど、ど、どっ、どぉ〜しよう・・・。シャワー浴びる前で、アタマぼさぼさ。着てるもんは、Tシャツとパンツだけ。仕方なく。ドア越しのまま。 『ど〜したの?』 『あ、うん・・。部長のうちに呼ばれて行ってたんだけど。わりと近所だったんで。 『ご、ごめん。今日、トモダチが来るんで。今、掃除してるとこ。とてもじゃないけど、 『・・・じゃ、いいや。』 『電話してくれればよかったのに。』 『だって。電話番号、知らないもん。』 ・・・そっか・・・。教えてないよ、コイツには。悩んだすえ。また、突然来られては困るので。月曜日に、自宅の番号を書いた名刺を彼に渡した。 翌週。太郎と出かけることになってしまった。いわゆる、デート。私の家まで車で迎えに来てくれたはいいけど。普通、『どこ行こうか。』とか。こっちの希望も聞いてくれないか? ヤツは、黙々と車を運転する。 『ねえ・・・。どこ行くのかしら?』 『六本木』 へ・・・。昼間っから? ま、いっか。・・・けど、『彼の』六本木での用事は・・・。 WAVE でCD買いたかったんだってよ!! 1時間くらい、WAVE にいたかなぁ。それから、また、彼は車に乗る。『昼メシ、食いに行こう。』 彼の頭の中には、もう、今日一日の計画があるみたいで。私には何も聞いてくれなかった。連れて行かれたのは、青山にある、某高級イタリアン。私、Gパンだったのにさぁ・・・。臨機応変に計画変更、できんのかい、こいつ。でも。さすが、お金持ちのお坊ちゃま。その店では『顔』らしく。わたくし、問題なく、入店できました。 ランチ自体が、遅めだったと記憶している。なので、お店を出たのは、3時か4時くらいだったと思う。そっから夜まで、何をしていたのかが、思い出せないんだよねぇ・・・。え? ラブホなんて、行ってないよ。たぶん、ドライブして、記憶に残らないようなところ、あっちゃこっちゃ走り続けたんだったと思う。 夜、暗くなってから。また、彼は黙々と車を運転する。 『どこ行くの?』 『晩飯。』 『どこで?』 『内緒。』 なんだ、それ。けど、車はガンガン南下しておる。渋谷も通過。いったいどこへ行く気やら。 到着したのは、横浜中華街でした。すごい計画。六本木→青山→いきなり中華街。 お気に入りの店があるらしく(当然だよなぁ)、さっさと店に連れて行かれる。あんまりお腹すいてなかったので、ラーメンでいいや、って思っていたのだが。太郎は、一品ものをガンガン注文してるのよ。私の好みも尋ねずに。『この店、すっげぇ、うまいんだ。』って自慢げに。 お会計は、2万円ちょっと、でした。お昼はゴチになってたので。約半分の1万円を彼に差し出しました。 一応ね。 気持ちの中では・・・。 (あんたが勝手に連れてきた、あんたの趣味の店だしさ。あんたが勝手に色々頼んじゃったんだしさ。私、殆ど食べてないし。不公平だわよ。しかも。1万円も出すなら、ワタシ、フレンチの方がよかったわっ!当然、『あ、いいよ。おごり』って言うんでしょうね!) ・・・って思いながら。 ヤツは、『あ、どうも。』って受け取った。 ま、いいっか。夕飯も食べたし。さっさとオウチに帰らせてもらおうか。 ・・・しかし。彼は、今度は、自分のアパートに向う。そして、なんだか知らんが、『チェスボード』をひっつかんで、車にもどり、そのまま、ワタシの住まいに向って走り出した。 『チェス、って・・・。できる?』 『あん? 結構、強いよ。イギリスのホームステイ先で、イギリス人とやって勝っちゃったし。』 『おぉ・・・。そりゃ、いいや。』 ワタシは、てっきり。ちゃっかり。彼が自宅から持ち出したチェスボードは、ワタシにくれるもんだと思ったっち。 Nahhhhhh. ヤツは。ワタシんちで、ゲームしよう、と言うんだわ。もうすぐ真夜中、って時刻に。 ヒトのいい私でも。さすがに、気付きましたよ。へっ・・・、こいつ、ウチに泊っていく気かい?って・・・。 今日は、さんざん、太郎の好きにさせてやったんだから。ここで一発、ワタシの主張もさせてもらおう。 『だめ。悪いけど。帰って。こんな時間にあなたをウチに上げるわけにはいきません。』 いや、太郎がね。ワタシも、これから末永くお付き合いしてほしいな、ってヒトだったらね。たぶん、陥落したと思うのよ。もう、好きにしてちょうだい、ワタシを奪ってちょうだい、ってね。 けどねぇ・・・。なんか。ピンと来ないのよ。このヒトとは。っていうより。 なんで、太郎がワタシに興味持ったんだか、そこんとこがよく、わかんない。こういう、自分でレールを引いて相手を乗せちゃうひと、ってさ。たぶん。親密になってから。気に入らないところ、とか修正しようとするのよね、きっと。だって、おかしいもん。彼みたいに育ちのいいヒトが、女性の喫煙許す、ってのはさ。絶対、太郎は、ワタシの外見だけを認めていて、それ以外の、気に入らないところ、とかは。徐々に『やめろ』とか、『こうしろ』とか言って、相手が窮屈に思うことにはお構いなく、自分好みに仕上げていく、っていうか・・・。そんなつもりでいたとしか思えないのよ。 ・・・で、その日、太郎は引き下がった。その後も、アメリカから知人が来たとか、そういう時には、かりだされたりした。それが口実、っていうか。ワタシも、第三者の参加する集まりには、ご一緒させていただきましたが。サシで会うのは、のらり、くらり、と断り続け。 ある日、また、『う〜ん・・・。ちょっと用事があるんだよねぇ・・。』って言ったとき。 『あっそ。じゃ、いいや。』という電話を最後に。・・・終わった。 (ワタシって・・・。やっぱ、ズルイかな。さっさと自分でケリつけなかった、ってのはさ・・・。) |