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過去の記録・Boys 6 ヤツは、日系アメリカ人だった。友人に言わせると、『はぁ?』『どこがぁ?』程度のヤツだったが。男を見る目のないワタシは、胸がドキドキしちゃうほど、カッコイイと思った。初めて会ったとき。(ハーフのヤツ、ってさぁ・・・。なんか、カッコよく見えちゃうのよねぇ・・・・。) 今思えば、こっちの思慕を読み取っただけ、と思われる彼と付き合うことになり。そして、今思えば。ワタシは最初っから、日本語わからないアイツの便利な通訳だっただけなのだろう。 出会いはともかく(ナンパ、とか、呑みやでひっかけられた、とかではない)。ヤツはアメリカから出向で来ていた。住まいは代官山のマンションで、家賃は会社持ち。遊びに出かけるには便利なところだ。そんなわけで、ワタシの方は、通い同棲みたいな生活を始めることになる。アメリカでは、ボーイフレンド程度でも親にカンタンに紹介しちゃうのが普通らしく、何度もワタシの親に会いたい、とかぬかしおったが。ウチの親は古い人間なんでね。実家にわざわざ連れて行ってそんなことしたら、婚約したか、って思われちゃうからダメ、と断り続けた。 1年ほどたったころ。『キミは本当にいいヒトだ。今すぐにでも結婚したい。』と言い出した。 やった!ついにワタシにも華燭の典。ワタシの習性として。自分より彼が大事、って尽くしちゃってたし。自立したアメリカ人女性とは大分違っていたのだろうね。いや、本当は。ヤツ本人がかなり自己中なんで、ワタシみたいな人間が信じられない女神に見えたのだろう。・・・、絶句(自分に)。 しかし。一向に進むことのない結婚話。あれは空耳だったのか。心配になってきた。こっちはその気だったし。 んで、いつ頃実現するのだろうか、なんて質問をちらっ、ちらっ、としだすと。 タイヘンなことが判った。ヤツにはれっきとした『妻』が本国にいたのだ。騙された。怒り爆発。ワタシ、腹たって当然でしょう? 死ぬほど不倫がイヤなのだ。知らないうちにとんでもないことに巻き込まれてしまったようだ。 しかし、彼は、『どうしてボクが1年以上も日本にいると思ってる? こっちに来る前から、別居状態だったのだから。そうでなけりゃ、普通、連れて来るでしょう? 大事なのはキミ。保険のモンダイとかあるから。ずっと別居のままでいようと思ったけど。キミとはちゃんと結婚したいから、離婚する。もうちょっと待ってて。』 ヒトのよい(友人からすれば、良すぎる。バカ。阿呆。の)ワタシは。彼を信じた。つまり、騙された。 でもねぇ。ちっとも離婚しないのよ。第三者の友人たちからすれば、『よくある話よねぇ〜。あのヒト、離婚なんてしないよ、きっと。』 ・・・だもんで、また彼をつっつく。 『・・・。弁護士に相談したら。ボクがキミと結婚するつもりでいることがあっちにバレると。こっちの事情で離婚することにされちゃうから。そうすると、ボクは全財産持ってかれてしまう。あと1年こっちにいて、都合2年以上妻と会わないことになれば。法的な離婚が成立するから。もうちょっと待ってて。』・・・なんか、聞いたことあるよ。2年っていうの。 ヒトのよい(良すぎる、バカ、阿呆の)ワタシは。彼を信じた。つまり、騙された。(後、友人が言ったことには。『えぇ〜? だって、こっちに来る前から別居してた、って言ったんでしょう? ・・・で、なんであともう1年なのよ。クサイね、その話。』) この頃から、ヤツとの間がギクシャクしだした。電話しても一晩中出ないこともあった。まぁ。代官山。六本木。出かけて飲み明かせる店はゴマンとあるわけで。おヒトヨシのワタシは呑みに行ってたのだろう、と解釈した。でも。週末なんて、いつも一緒だったのに。呑みに行くのなら、なんでワタシも誘ってくれなかったんだろう、なんてことから。ようやくワタシもヤツを疑うようになった。こっちがこういう態度だから。あっちも当然、ウザったくなっていたのだろうと思う。 そんなある日。ヤツのマンションのキッチンで、ワタシの知らないキッチンツールを数点発見。ワタシの揃えた器具ではない。なんだ、コレ? ヤツに尋ねると、『自分で買った。』 ・・・あ、そう。まぁ、そういうこともあるか。けど、コイツ、料理人は女、みたいなヤツで、一度もキッチンに立ったこと、なかったのになぁ・・・。 それから。ヤツの部屋のTVの上に不可解なレシートが。六本木のホテルのレシート。 駐車場のものだったが。赤丸して、『泊』とある。日付は。電話してもヤツが出なかった日。 『これ・・・。なに?』 『? あ、アメリカから友人が来ていた。食事に誘われたので、車で行って、駐車場に停めた。』 『でも・・・。泊、ってついてるけど・・・。』 『?』 (ヤツは漢字が読めない。) 『なんでだろう・・・。』 なんでだろう、じゃねぇ〜だろぉ!! 泊まったんだろぉ? そのホテルに!! じゃ、お友達、ってのは女かい? 誰? そんなこんなで、益々険悪なムードになっていく。どうもヤツが信じられなくなったワタシは、ある日。ど〜しても気になって。ヤツの財布の中を見てしまった。 すると。どうやら、日本の会社に勤める白人女性らしい人の名刺、写真入り、が入っていた。丸っこい顔で。たぶん、どう見てもヤツの好みではなさそうなので、飲み屋で会ったひと、程度だろう。しかし、その名刺に、日本人の女の子の名前と、住所と電話番号が書いてあった(メモ用紙かよ!)。ヒロコ。 追求はできない。財布見たことバレちゃうから。コスイとは思ったけど、その時は、とりあえず、それらを書き取っておいて、知らんぷりした。でも、ワタシの頭の中の点と線。見覚えのない調理器具とヒロコ。つながった。 会うとケンカで終わる日々が続き。女なしでは生きられないようなアイツが、週末も『用事がある。』っていうのは。いよいよ、ワタシは、お払い箱なのだ、と悟った。 そして、あの金曜日。案の定、ヤツは電話に出ない。もうたくさん。やめにしよう、こんな付き合いは。とにかく。ワタシの私物は取り返さねば、と思い、翌土曜日の早朝、ヤツのマンションを襲撃した。 合鍵で入ろうとすると、チェーンがかかっている。やっぱりね。いるんだ。女が。中に。 呼び鈴を執拗に鳴らしてやった。仕方なく、って顔でヤツが出てきた。『今、入れるわけにはいかない。』と。 『今更なに? 知ってるわよ。誰かいるんでしょう? ワタシ、もう、どうでもいいの。とにかく、ワタシの荷物だけ、返してちょうだい。』と言うと、不承不承、チェーンを外した。 黙々と荷物をバッグに詰め込む。しかし。やっぱ、興味あるでしょう。半開きになっていた寝室のドアの中を覗いてやった。顔は見えなかったけど、やっぱり女が寝ていた。ぶち切れ。 ワタシが怒って当然だと思うのだけど。ヤツは逆切れして、ワタシのシャツの胸ぐら掴んで、ホンと、漫画みたいなんだけど、つるし上げたのよね。2度とこういうマネはするなっ! とか(笑っちゃうんだけど。よく、アメリカ映画で見かける、凄みを見せるときのセリフ。口は『ウぅ〜』って一文字で、アゴを殆ど動かさない、唸るような脅し方!)。ヤクザかい、あんた。しかし、この期に及んで、男って、まだ、言い訳する。『彼女とは昨日、一緒に呑んだ。それは認める。けど、突然具合が悪くなって、泊めることにしただけだっ!』 ・・・・、笑うっきゃないっ!! よく聞くけど。現場を抑えられても『ばっくれる』って。ふ〜ん。こういうこと。だってねぇ。本当に関係なくて、しかも、彼女の具合が悪かったのなら、あんたはソファで寝ればいいでしょう。なんで、同じベッドで、しかも、彼女は裸なの? (いや、後日、よっく考えたら、彼女は、たぶん、下着はつけていた。スリップっていうか。) アパートに帰ってから。ばかやろぉ〜っ、くそったれぇ〜っ! 死んじまぇ〜っ! とさんざん泣いて、涙が枯れたころ。ふと。お人よしで、バカで阿呆のワタシは、『あの女性(ヒト)、ホントに病気だったのかしら・・・。』と心配になってきた。それから。彼女は悪くない。もし、彼女がワタシの親友で、ワタシのカレと知っていながら寝取った、となれば、許せない、って気にもなるが。でも、二股だか、三股だかかけてたのはヤツであって、悪いのはヤツ。彼女ではない。彼女もびっくりしただろうなぁ、とか。迷惑かけちゃったのかなぁ、とか。心配になってきちゃったのよ。 ・・・で、メモしてあった電話番号に電話してみた。そのときは、その『ヒロコ』が、彼女かどうだか、定かではなかったのだが。 しかし。電話に出た彼女、ヒロコは、朝、ヤツのベッドにいたヒトだった。 とりあえず。ワタシは謝った。彼女が本当に具合が悪かったのかどうか、には関係なく。突然、罵声を上げるケンカを展開してしまってすみません、と。 ★★★ ・・・・。ヒロコは、すっげぇ〜、いいヒトだった。ふつう、他のオンナなんかとは、話したくないでしょう? こっちの素性がわかった時点で、ガチャンと電話切られて当然なのだ。けれど、今でも忘れない。初めて電話した、見ず知らず(?ちょっとは見かけたけど)のこのヒトと。夜、11時ごろ電話して、翌朝7時過ぎまで、ブッ通〜しで話をしてしまった。 しかし、彼女は、本当に具合が悪かったらしく。あの前日、ヤツのうちで倒れて、病院に担ぎ込まれたらしい。点滴を受けてから、ヤツのウチに連れ戻され、眠っていたところだったと。だから、諍い(いさかい)の内容は殆ど聞いてないって。でも、なんか、居心地よくない(他の女が怒鳴りこんできたワケだし)ので、あれからさっさと自宅に帰ったと。 それから、学生時代、バスケット部にいた、とか、A型、とか、って共通点、とか。なんだか知らないが、途中、トイレに行きたくなったりはしてるんだけど。お互い、相手を待たせてトイレから戻って、またお話し。朝7時まで。 でも、ヤツとは、この1ヶ月ほど、付き合っている、という事実も聞いた。『結婚したいと言われた。』とも。は〜ん。ここで一発。あなたの知らない事実を教えてあげましょう。 『ヤツ、アメリカに奥さんいるのよ。知ってた?結婚なんてできるわけない。』 『えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ????? ・・・・(絶句)』 ★★★ ヤツは、この後、『彼女とは、ホント、なんでもないから。』とワタシに泣きつく(フリ)までしておったが。ふん。ヒロコから話は全部聞いておる。却下! (ワタシはもう、お人よしで、バカで、阿呆の女ではありませんっ! もう、騙されることもありませんっ!) しかも、その後、ヤツはマンション引き払って、彼女のアパートに移り住んだ。どこまでもケチなやつで。会社から出てた家賃を全部小遣いにするために。ヒロコは。最初の頃のワタシと同じで、たぶん、彼が離婚してくれるもの、と思ったらしいのだけど。(女ってねぇ。なんか意味もなく、『ワタシは別!』って思いたくなっちゃうのよねぇ・・・。) 笑っちゃったのは。彼女のところに転がり込んで、1ヶ月くらいしてから。ヤツから電話がかかってきたのだ。 『・・・・。まだ、怒ってる?』 『とぉ〜ぜんだろぉ〜が、このボケッ!!(英語では、かなり汚い言葉を使いました。)』 『あ、そう・・・。』と言って電話を切った。なんだろ。ヒロコとケンカでもしたかな。 数分後。また、電話が鳴った。出ると、今度はヒロコだった。どうも、公衆電話らしい。 ヒロコ 『もしもしィ〜!!』 ワタシ 『・・・、ケンカでもした?』 ヒロコ 『へっ・・・? 何でわかったの?』 ワタシ 『たった今、ヤツ、電話してきたよ。ワタシがまだ、怒ってるかどうか聞かれた。』 ヒロコ 『あったまきたぁ〜。なによ、それ。で、なんて返事したの?』 ワタシ 『怒ってるに決まってるじゃん。ウチきたらブッ殺してやる。』 ヒロコ 『怒ってない、って言ったら。そっちに行く気だったのかな。ったく。許せない。 ★★★ ヤツはその後、帰国。アメリカでは、詐欺まがいのていたらく(結婚詐欺、ってやつ)までして、複数の女たぶらかしてた、なんて情報が入ってきた時期もありますが。(いや。ヤツって、女の敵ではありますが。はっきり言って、女の趣味はすごくイイです。ヒロコ以外の被害者のとひとり。ものすごくステキな女性で、ヒロコと、ほどではないですが、今もトモダチってヒトがいます。)今ごろどこにいるのか知りませんし、知りたくもありません。まだ、離婚してない、とは聞いてますが。 ・・・が、このヒロコとは、今でも『素』で付き合える、い〜友達です。彼女はその後、勤め先を突然やめ、渡米。留学先でアメリカ人の男性に見初められ、結婚して、昨年、男の赤ちゃんを産みました。 |