AS GOOD AS IT GETS (邦題: 恋愛小説家)

 ©1997 Gracie Films, TriStar Pictures (distributed by Columbia TriStar, SONY Pictures Entertainment)

Director: James L. Brooks
Cast: Jack Nicholson, Helen Hunt, Greg Kinnear, Cuba Gooding Jr., Shirley Knight, ...


いったいぜんたい、なんでこの映画の邦題を『恋愛小説家』なんかにしてくれちゃったのだろうか。たしかに、主人公、Jack Nicholson は恋愛小説家だ。けど、映画のポイントと違うだろぉ・・・。ど〜して日本の邦題は、こうも出鱈目してくれるんだろうか。まぁ、『愛』『恋』などの文字が混じると、配給会社が儲かる、ってハナシは聞いてるけど。作者の趣旨を変える権利はないだろぉ!! 

が、しかし、この映画は面白い。気付くのが遅すぎる、と先輩方に言われそうだが、ひょっとして、Jack Nicholson の映画は、ハズレがないかも・・・。

ストーリーは、まともな恋愛経験もない(本人はあったつもりかも)のに、恋愛小説家のメルヴィン (Jack Nicholson)、病的に神経質(潔癖症)で、他人を信用できない、自己中で冷酷、という彼が、登場人物たちとの関わり(関わりたくなかったのに)から、だんだん、他人を思いやる気持ちに目覚め、人間らしい、『いいひと』になっていく、というもの。

どれくらい病的で、神経質で、自己中か、というと、

キャロルは、決して彼のことを好きではない(嫌い)ですが、客として平等に扱っています。しかし、メルヴィンは、勘違いも入っているのか、そんなキャロルが大好きで、彼女が休みの日には、その店に行かない。

また、この映画で、メルヴィンのアパート(日本でいう、マンションですが)の隣人の存在も面白い。彼は、ホモの画家サイモン。潔癖症のメルヴィンには、同じ人間と思えない人種である。サイモンが可愛がっている愛玩犬も気に入らない(ホント、殺しはしないけど、この犬に対してかなり、ヒドイ意地悪を、いきなり、冒頭でします)。

けれど、最初は、ある事情から、無理やりサイモンの犬を預からされたことに始まり、大嫌いだったサイモンをいたわるようになり。シングルマザーのキャロルの力になってやろうとしたり。特にキャロルは、いつも歯に衣着せぬ率直さで、彼の悪いところ、ガンガン指摘していきます。キャロルに気に入られたい彼は、指摘され、教えられ、だんだん、いろんなことに目覚めていきます。

笑っちゃったのは。預かったサイモンの犬を散歩に連れていくと。なんと、この犬、石畳の境目を避けて(踏まないように)歩くのです。自分と同じ趣味(?)を持つこの犬に益々、メルヴィンの心は傾いていきます。なんて犬だ・・・。

こんな粗筋では、全く興味がもてないでしょうが、ものすごく、面白かったです。Jack Nicholson の演技、なんでしょうか・・・。渋いんだか、しょぼいんだか・・・。

As good as it gets, という表現、カンタンに言うと『最高』のような意味ですが、"it gets" が、ミソで、ただの best ではない。これ以上望むな、というような意味あいからくる『最高』で、このコトバは、映画の中でメルヴィンが通っているセラピストのオフィスへ、彼が予約のない日にパニックになり、どうしても先生とお話したくて駆け込んだのに、ほかに患者が沢山いるから、ダメ、って断られたどき。待合室にいた、沢山のヒトたち(彼らのせいで診察してもらえなかったので)に向かって、腹立ち紛れに言った言葉です。『あんたら、大金払って、通っているんだろうが。まんま、変わんないかもしれないかも、って考えたことあっか("what if this is as good as it gets!")?』みたいに使われてました(もしかしたら、料金分しか治療してくれないぞ、っていう意味か)。メルヴィンのキャラクタを考えた場合、この映画のタイトルの As Good As It Gets は、たぶん、自分次第で世の中ばら色、的なニュアンスだと思われます。恋愛小説家であることとは関係ない。だから『恋愛小説家』なんてタイトルにしちゃうのは・・・。やっぱ、原作者に対する冒涜です・・・。