皇昴流三十路記念小説。



都内新宿のとある高級マンションの一室。

普段は全く生活感が感じられないこの家のリビングには色とりどりの様々なディスプレイが施されていた。
テーブルの上には先ほどから数々の料理が運ばれ、きれいに並べられていく。
昴流はそれを呆然と見ていた。

夕方頃家に神威が尋ねに来たのでドアを開けるとそこには神威は勿論、天の龍学生メンバー全員が料理等を持って待っていた。
「「「お誕生日おめでとうございます!!」」」
その言葉と同時に護刃が持っていたクラッカーを鳴らす。
驚いてる昴流を横目に全員昴流の家に上がり込みリビングを飾り立てキッチンで作ってきた料理を暖めだしたのである。

全ての料理を並べ終わると全員が席に着く。
この時本日の主役である昴流の頭上には先ほど空汰と護刃が半ば無理やり被せたパーティー用の帽子が輝いていた。
「ほな。改めて」
「「「昴流(さん)お誕生日おめでとう(ございます)!!!」」」
「…どうもありがとうごございます」
いきなりで驚いたが、自分の為にわざわざ料理を用意してくれた皆へ昴流はお礼を言う。
と、ここまでは普通だ。仲間の誕生日に皆が祝ってくれるというなんとも微笑ましい(?)光景である。
――が。
急に空汰が立ち上がりどこから取り出したのかマイクを片手にしゃべる。
『昴流さん三十路記念と銘打ちよって!!……今回は特別ゲストやぁぁぁぁぁぁぁ!!』
同じくどこに隠し持っていたのかマイクを握り締めて立ち上がった護刃が続ける。
『天国からの特別ゲスト!!昴流さんのお姉さん!皇北都さんです!!』
「昴流――――――♪」
「――!?」
そう叫びながら何時の間に現れたのか、昴流の姉 北都が可愛い弟に抱きつく。
あまりのことに驚愕している昴流を無視しさらに司会(いつの間に司会になったんだ?)の空汰が更に続ける。
『もう1人は地獄からの特別ゲストや!暗殺集団桜塚護♪』
「僕は死んだので引退したんですけどね〜」
「――!?」
そう言いながら北都ちゃん同様何処からか現れた星史郎が呑気な発言をしながら昴流に近づく。
「いやぁ〜とうとう昴流君も30代になってしまわれたんですねぇ〜」
「大丈夫よ昴流!男は30が1番モテるんだから!!」
「そういう昴流さんのお姉さんも30なんやないんですか」
「ふ、甘いわよ!私は永遠に10代の美しいままなのよ!」
「僕が北都ちゃんを殺しましたからね〜。10代の時に♪」
「星史郎さん。…それ笑えませんから」
今まで急に懐かしい姿が現れて途方にくれていた昴流だが、少し正気を取り戻して星史郎に突っ込む。そして
「っというか何で2人がいるんですか!?」
と今更な質問をする。
「まぁまぁ〜昴流さん。そんなん細かい事気にせんと、折角の三十路記念なんやし楽しみましょう!」
細かくないです!と言う昴流を無視して話は進む。
っていうか三十路記念ってどうよ?
「昴流君は三十路になってしまっても可愛さは変わりませんねぇ♪」
「昴流はいくつになっても可愛いのよvv何てったって私の弟なんだから♪」
「っと言うより昴流さん三十路に見えないですね」
さっきから『三十路』を連呼するメンバーだが、昴流だから気にしないものの普通の人だったら少しは凹んでいるだろう…。
ってかファンが凹む(笑)

そんな昴流達を遠巻きに眺めていた神威が呟く。
「今更だけどやっぱりあの桜塚護、地獄行ったんだな」
「あの方が天国に行くようならそれこそこの世の全ての方が天国へ行かれると思いますよ」
これまた神威同様皆を遠巻きに見ていた嵐が答える。
勿論2人共遠巻きに見てるだけで昴流を助ける素振りは無い。

今日の主役を無視して盛り上がる面々。
その時、例によって例の如く空汰が立ち上がった。
「今夜は飲むでぇ!!!」
そう言ってこれまた何処にあったのか酒ビンやらビールやらチュウハイが姿を表す。
「…そんなもの何時の間に用意したんですか」
最早何を言っても仕方無いと解っていても突っ込まずにいられない昴流。
「お、これはなかなかいいお酒じゃないですか♪」
「高野山からちょーっとパクらせてもろたわ♪」
悪戯が成功した子供のように笑いながら空汰が言う。
「でも私達未成年ですよ」
「大丈夫やて!昴流さんが三十路ならわてらも自動的に最低でも+(プラス)5年やさかい♪」
ほれ!みんな大人や♪っとビール缶を開ける空汰。
「5年だと護刃はギリギリ未成年だと思うが」
呑気な関西人に口を出す神威。
暫しの沈黙が続いたが、
空汰はそんな神威と今話題に上がった護刃を捕まえて2人のコップにガバガバとビールを注いでいく。
「今時の10代は飲めんとやってけへんで!」
と、これまた無理やりな理由をつける。
そして、そんな空汰を呆れ顔で見ている嵐にもビールを注ぐ。

「ナイスな考えよ!流石関西魂!!」
そんな彼らを見ながら既にテンションが高くなってる(いつものことだが)北都が叫ぶ。
勿論彼女の手にもアルコールが入ったコップがあることは言うまでも無い。
「北都ちゃん。さきほどご自分で永遠に10代だって言ってませんでした?」
永遠に未成年な北都にさらりと星史郎が突っ込むがそれで彼女が止まるわけが無い。

昴流はその光景を見て溜め息をつくしかなかった。


―――――――――3時間後。


「あれぇ?もうお酒ないのぉ?」
いまだにアルコールを飲みつづけている姉。

「お酒もお料理も美味しかったですねぇ〜♪」
いつもの笑顔を振り撒く星史郎。

酔いつぶれて爆睡している天の龍学生メンバー一同。

そして、茫然と立ち竦む本日の主役皇昴流。
ちなみに彼はあまりアルコールを飲んでいなかったので正常だ。
正確に言えば酔ったら何されるかわからないので飲まなかったのだが。特に姉に。


「………………………」
今、昴流の瞳に映る我が家のリビングは普段生活感の全く無い状態とは程遠い姿となっていた。
飾り付けてあったディスプレイは酔った皆が騒いで無残な形状になっており
床にはクラッカーの残骸や食べ物のカス。一緒に持ってきたスナックの食べ残し、さらには空き缶や酒ビンが所狭しとそこら中に散らばっていた。

こんなことになるのではと密かに予期していたが、全くもって予想通りになってしまった。
昴流は人知れず吐息を漏らした。

そんな時。
「ではそろそろ時間なので僕らは帰らせて頂きますね」
「昴流〜♪元気でねぇ〜♪」
「え!? ちょっ…ちょっと待ってください!!」
何処に帰るのかとか、本当に地獄と天国から来たのか、また会えるのかなど聞きたいことは沢山あるが
今昴流の瞳には『こんな状態で僕独りを残して帰るんですか』と少し非難めいた色をしていた。
しかし、北都と星史郎はそんなことは気にも止めず元気良く
「「じゃあねぇ〜♪」」と声を揃えて言い放ち、ドアノブに手をかけて出ていく。
昴流はいつも見る夢と同じように手を伸ばすが無常にもバタンとドアが目の前で閉まる。
ドアが閉まる瞬間。星史郎が「片付け頑張ってくださいね」と言っていたような気がする…。

しばらく立ち竦んでいた昴流だが少ししてから散らかっている部屋を見回した。
そして額に手を当ててそのまま天を仰いだ。

「……これって夢オチとかじゃないですよね?」
違います。

昴流は本日何度目かになる溜め息をついた後、とりあえずキッチンにあるであろうゴミ袋(半透明)を取り行った。

彼の三十路記念日は普段はあまりしない年末にやるような掃除をしている最中に過ぎていった。


昴流君(&北都ちゃん)。ハッピーバースデイ!!


  END



遅くなってすいませんでした!!(汗)
ってなわけで昴流君三十路小説です!何故昴流だけ三十路と言っているかと言うと、話の中でも言ってますが個人的に私は死んだら永遠に死んだ時の年齢って感じがしているからです。
まぁ〜北都ちゃんなら三十路でも「女は30からよ!」って言いそうですが(爆)
で、昴流君が主役のはずなのに、この人が1番薄幸ですね(爆)あはははは(笑←おい)
やっぱり昴流は苦労人ですね(をい)
どうでもいいけど昴流って普段掃除しなさそう…。やっぱハウスクリーニング?(笑)

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