とっても寒くて、とっても冷たくて、震えている僕を あったかく包んでくれたのは

とっても綺麗で、とっても寂しそうな目をした人だった。




 寂寥とした雨景色




この人の腕の中はとってもあったかかった。

僕のせいでこの人の服が汚れちゃったけど、この人はずっと僕を包んでくれた。




この人が連れてってくれた場所はとっても寂しいところだった。

寒い風も、冷たい雨も、泥が混じってる水溜りも、ここには無いけど、なんだかとっても寂しいところだった。



前に僕がいたところはもっと明るかったんだけどな。

でも僕ここ嫌いじゃないよ?

だってここは寂しいとこでも、この人の腕の中はとってもあったかいもん。



最初に僕はあったかい雨が出るとこに降ろされた。

初めはびっくりしたけど体中を撫でてくれるこの人が手がすっごく優しかったから平気だったよ。



その後この人があったかいミルクを出してくれた。

すっごく、すっごくあったかかった。


















今日初めてお散歩に行った。

あの時は雨が振ってたからあんまり周りが見えなかったけど、今日はいっぱい見たよ。

公園に着いた時にこの人が「あんまり散歩に連れていけなくてごめんね」って言ってた。

よくわからないけどこの人はとっても忙しいみたいだ。

帰ってくるのはいっつも遅いし。帰って来ない日もあった。

でも帰って来たら頭撫でてくれるし。だっこもしてくれる。

お散歩はあんまり行けないけど、僕はこの人が傍にいてくれるだけで嬉しいから気にしないよ!



・・・・・・でもね・・・やっぱりたまにはお散歩行きたいな。この人と一緒に。

















今日はこの人の名前がわかった。

この人にカムイって呼ばれた人が、この人を『スバル』って呼んでた。

いつもトゥルルルル言った後ピーって言うのから聞こえるのと同じだった。

スバルはカムイに呼ばれて返事をしてた。

トルルルルはいつも『スバルサン』って言ってるけどそれには返事しないからきっと『スバル』が当ってるんだ。




カムイが僕を見てすっごく驚いてたよ。

「・・・・・昴流・・・犬飼ってたのか?」

「この間、雨の中にいてね。今飼い主探してるところなんだ」

「・・・昴流が飼うんじゃないのか?」

「昔は飼ってたけどね。今は忙しくて散歩どころか帰って来れない日だってあるし・・・それに・・・」



それに・・・



――いつまで一緒にいられるかわかんないし。



2人が何の話をしてるのか僕にはわからかったけど・・・。

そう言ったスバルが・・・初めて会った時みたいに、とっても寂しそうな目をしてた。

















今日はいい子にお留守番だ。

スバルは僕のご飯いっぱい置いて出ていっちゃったから今日は帰ってこないのかな。

べ、別に寂しくなんかないよ!! しっかりお留守番してるよ!

もし泥棒なんか来たら僕がしっかり追い返してやるんだ!!




・・・・・・でも・・・スバル早く帰ってこないかなぁ。

















今日は可愛い女の子が来た。

一緒に大きい犬も来た。

こ、恐くなんかないもん!僕だってもっと大きくなって、あの大きい犬よりもっと大きくなるんだから!



でもこの犬おかしいなぁ? 何の匂いもしないぞ? 何でだろう?



可愛い女の子は僕を抱っこしてくれた。

「わぁ〜v可愛い!!この子が神威さんの言ってた子犬ですよね!」

可愛い女の子は頬をすりすりしてくれた。

「私は護刃っていうの。こっちは犬鬼って言うんだ」

この可愛い女の子は『ユズリハ』って名前で、こっちの大きいのは『イヌキ』って名前みたいだ。

うん。覚えたよ。

その後「君は?」って聞かれた。



あれ?そういえば僕『名前』なんていうのかな?

お母さんは前住んでた所の人が付けてくれたって言ってたけど・・・。

スバルが僕にも『名前』付けてくれるかな。

付けて欲しいな。スバルに僕の『名前』。

すっごくカッコよくて、すっごく強そうな名前がいいな。




















スバルが何かの紙を見ながら白い棒を咥えて、煙を出してた。

凄い!スバルは口から煙を出せるんだ!!!

きっとスバルは魔法使いなんだ!!

僕も魔法を使ってみたくて近くに行ったら何だか気持ち悪くなった。

ゲホゲホやってたらスバルが「ごめん煙かったね」って言って僕の頭撫でてた。

その後白い棒を丸くて変な形のお皿に置いて、そのお皿ごとどっかに行っちゃった。

すぐに戻ってきて頭撫でてくれたけどね。



それからスバルが口から煙を出すの見なくなっちゃった。

魔法使えなくなっちゃったのかな?




















『兎』って動物知ってる?

あ、僕は兎じゃなくて『犬』っていうんだって。

兎って僕は見たことないけど、すっごく耳が長いんだって。

どれくらい長いのかな?スバルの腕の長さ位かな?それとも足の長さ位かな?

今度見てみたいな〜。



でね、その兎って『寂しいと死んじゃう』んだって!

・・・・ちょっとスバルに似てるね。

だってスバルはいっつも寂しそうな目してるんだよ。



でももう大丈夫!!僕が傍にいるから寂しくないよ!!

だからスバルは兎みたいに死んだりしないよ。




















今日は珍しくスバルが早く帰ってきた。

スバルは僕を連れてお散歩に行こうとしたんだけど・・・・

スバルね。とっても疲れてるような顔してたんだ。

・・・・本当はお散歩行きたかったんだけどね。

僕我慢したんだよ?偉いでしょ?えっへん!!



それにスバルをベットまで運んであげたよ。

それで一緒に眠ったんだよ!

スバルの腕の中はやっぱり暖かくってとっても気持いいな。



お散歩は出来なかったけど僕全然平気だよ。




















今日もスバルはお出掛けしちゃった。

僕は良い子にお家でお留守番をしたよ。

でもね。スバルのお家はとっても寂しい感じがするの。

だからね。僕が一人でお留守番してるととっても恐い時があるんだ。



このまま・・・スバルはもうここには帰って来ないんじゃないかなぁ・・・って思う時があるの。



何でそんなこと思っちゃうのかなぁ?

スバルはいつもちゃんと帰ってきてるのに。



スバルのお家はスバルの悲しい気持ちをいっぱい感じる。

だから僕もこんなに寂しい気持ちになっちゃうのかな?



そうだ!スバルが帰って来たら今日はいっぱい遊んでもらおうっと!

・・・そしたらきっとこんな気持ちになんてならないよね?




















今日はスバルのお家の探検をしたよ。

そしたらスバルの大きいベットの下に何か四角い紙が落ちてたの。

一生懸命取ろうとしたんだけど、遠くに落ちてて中々取れない。

頑張ってやっと取れたその紙には男の人と同じ顔をした人が2人の人がいたんだ。

これ僕知ってるよ!『シャシン』って言うんでしょ?

僕『モノシリ』でしょ!?えっへん!!



でもこの人達誰かな?僕見たこと無いよ。

あ、でも。

同じ顔した2人は少しスバルに似てるかも。

でもこれスバルじゃないよ。似てるけど違うよきっと。



だってスバルはこんな風に笑わないもん。

こんな風に・・・すっごく楽しそうに、すっごく幸せそうに笑ったりしないもん。



スバルの笑った顔はすっごくキレイだけど、すっごく優しそうだけど・・・。

・・・すごく寂しくなっちゃうもん。



スバルもいつか。

この『シャシン』の人達みたいに笑ってくれるといいな。




















今日、朝起きるとスバルがとっても寂しそうな顔をしてた。

スバルはいつもそんな顔をしてるけど・・・今日は少し違う気がしたんだ。

スバルが僕をだっこして、外に連れてってくれた。

お散歩かな?って思ったけど、何となく違う気がしたんだ。



外にはおっきい男の人と、綺麗な女の人と、かわいい女の子がいた。



かわいい女の子が、スバルと僕を見た途端走ってこっちに来た。

おっきい男の人と綺麗な女の人も女の子の後ろから来た。



スバルは走ってきた女の子に僕をゆっくりと渡した。

僕に触れてるのが、スバルの綺麗な手から女の子の小さな手に変わった。



スバルが僕の頭を撫でて「元気でね」って言った。



その時のスバルは――


すっごく綺麗で

すっごく優しそうで

いつもり少し寂しい目をしていた。











新しいお家は、とってもあったかくて、とっても明るいところだった。

おっきい男の人も、綺麗な女の人も、とっても優しい人だった。

かわいい女の子もいっつも一緒に遊んでくれた。

幸せがいっぱいいっぱいいっぱいあるお家だった。




でもね。雨の日はいっつもあの寂しい部屋を思い出すんだ。



あの悲しみがいっぱいいっぱいつまってる部屋にいる

優しくて、あったかくて、寂しそうな目をしたあの人のことを―――。




また・・・いつか・・・会えるよね?



だよね?スバル?






END




何がかわいいってこの写真のワンコが1番かわえぇ〜vvvv(マテ)

昴流が拾った犬視点。文章のやり方を気にせず書けるので楽でした(笑)
どうでもいいけど、『イヌキ』ってカタカナで書くと『タヌキ』に見える(爆)
一応言っておきますが『それにスバルをベットまで運んであげたよ。』の部分・・・実際は昴流のズボンの端を銜えて引っ張っただけですから(笑)
自分で書いててアレだけどこんな犬欲しい(笑)


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