試練はこれから



世界屈指の大魔術師クロウ・リード
彼が持てる力と心を全て注いで創り出したクロウカード

このクロウカードを新たな主であるさくらの星の力で作ったさくらカードに全て変え終えると、役目が終ったと言う様に、クロウカードの関係者が次々と友枝町からいなくなっていった。
エリオル達はイギリスに、そして小狼は香港に帰って行った。


全てのことが終ってから、数日経ったある日。

あの怒涛の日々が嘘のように一応は平和な生活を送っている。
エリオル達と、特に小狼が遠くへ行ってしまったことで寂しそうにしていたさくらだが、持ち前の明るさと前向きな心で今は元気にやっている。


「なぁ〜さくら〜この新作買って〜な〜!!!」
「今お小遣いピンチだがら無理だよ」
「そんなこと言わんで買ってくれ〜!!当番一緒に手伝おてやるさかい!!」

ぬいぐるみケロちゃんが愛読のゲーム雑誌に載っている『ANGELIC LAYER』シリーズの最新作をさくらにねだってた。

「ケロちゃんゲームソフトってすっごく高いんだよ。すぐには無理だよ」
「そんな殺生なー!!!!」

いつものように漫才が繰り広げられている時コンコンとドアを叩く音がした。
ギクッとして急に固まるケロちゃんを他所にさくらがドアへ向かって返事をすると、雪兎が顔を出した。

「さくらちゃん。今いいかな?」
「はい!・・・あれ?あの・・・お兄ちゃんは?」

確か今日、雪兎は桃矢と一緒に勉強する為に我が家に来たはずだ。(夕飯含む)

「とーやならさっき急にバイト入っちゃって出掛けたよ。すぐ終るって言ってたけど」

だから僕はお留守番なんだと言いにっこりと笑う。
その時、固まっているケロちゃんと雪兎の目が合った。

「こんにちは」
「こ、こにゃにゃちわ・・・」

笑顔でぬいぐるみに挨拶する雪兎。
一方、『今更』と言われ様が妙に固まってしまうぬいぐるみケロベロス。

ケロちゃんにだってわかってる。
彼の正体は『月』で、もう全てを知っていることも。
だが今までのぬいぐるみのフリをしてきたケロちゃん。すぐに『雪兎』の前で普通に振舞うことは難しい。

雪兎はそんなケロちゃんの態度を気にすることなくにこやかにしている。
・・・・・・天然故に気付かないだけかもしれないが・・・。
ふと視線をケロちゃんの足元(笑)のゲーム雑誌に向ける雪兎。

「あ、このゲームなら僕持ってるよ」

先程ドアの前で少し会話が聞こえたのであろう雪兎の発言に、今まで借りた猫状態であったケロちゃんの態度が一変した。
口元を緩め、目がキラキラと昔の少女マンガ並に輝き出し、全身で喜びを訴えていた。

「 ほ ん ま か ー !!!!!!!!!!! 」
「うん。このシーズ面白いよね。僕下手だから中々進めないけど」

今度持って来るねという雪兎の言葉にケロちゃんは大喜びで飛び回った。

「いやぁ〜ゆきうさぎはえぇ〜奴やなぁ〜。どっかの性格悪〜無口でつまらん融通利かん寝起き最悪な頑固者とは大違いや!」

誰のことを指しているかわかったさくらは「ケロちゃん!」と怒り、雪兎はクスッと少し吹き出した。


「あ、そうだ・・・はい。コレ。さくらちゃんに」

本来の目的を思い出した雪兎が手に持っていたモノをさくらに渡す。
受け取ったさくらは事情がわからず最初きょとんとしていた。
だが、それがエアメールだと気付き、裏返し宛名を確認すると、その顔を紅色に染めてとても幸せそうに微笑んだ。

「小狼君からだ〜!!」

喜んでいるさくらの様子に雪兎とケロちゃんが顔をほころばせる。

「何や、小僧からか〜。わいに見せて〜な」
「だ、だめ!」
「え〜やないか〜」
「だめだってば!あ、後で一人で見たいの!」

顔を真っ赤にしながらケロちゃんと言い合ってるさくらは、ふと思った。

「あれ?でも何で雪兎さんがこれ持ってるんですか?」

その問に茶目っ気たっぷりな顔で雪兎が答える。

「さっきとーやがこれポストに入ってるの気付いて、でもとーや意地悪してすぐ渡さなかったんだよ。で、自分で渡すの嫌だから僕に渡すようにって」

雪兎はその時の桃矢のすご〜く嫌そうでものすご〜く不機嫌そうな顔を思い出して笑いが零れていた。

「もぉー!お兄ちゃんったら!すぐに渡してくれればいいのに!!」

複雑な兄の心など理解していない妹は頬を膨らませて兄を罵倒する。
その様子を見て更に桃矢に同情しながら笑う雪兎。


再び手紙に視線を移し、本当に嬉しそうにしているさくらを見て雪兎が優しそうに微笑む。

「よかった」
「え?」
「さくらちゃんが元気になって」

にっこりと笑う雪兎にさくらも雪兎が何を言いたいのかわかり、笑顔で返すことが出来た。

「『もう一人の僕』もね。すっごく心配してたんだよ。だからさくらちゃんが元気になって安心しててるよ」
「え!?」
「あ、ちょっと変わるね」
「えぇ!?」

さくらの驚きを他所に、そう言うなり雪兎の足元に魔方陣が現れ、背中に翼が生えた。
雪兎がその翼に包まれ、次に翼が開いた時には雪兎の本来の姿である『月』が姿を現していた。

「・・・凄くとは・・・言ってない」
「え?」

最初に月が呟いた言葉は、聞こえるか聞こえないかギリギリで、少し気恥ずかしさを含んだようなな声だった。
さくらは何を言われたか聞き取れなかったが、それより雪兎が言っていたことを思い出す。

「あ、あの・・・月さんも心配してくれたんですね。ありがとうございます」

純粋にお礼を言ってくる無邪気な主に月は毒気を抜かれた。
さくらの傍まで行き、膝を曲げて視線の高さを合わせる。
月はそのままさくらの瞳を覗き込んだ。その瞳の中に数日前まであった少し無理しているような色が無くなっているのを認めると、月はそっとさくらの頭に手を乗せ軽く触れた。
そして月にしては珍しい、とても優しそうな表情でさくらに微笑んだ。
月の珍しい様子にさくらはびっくりしたが、本来とても優しい人だというとこはわかっているので嬉しそうに笑顔で答えた。
ケロベロスも長年の付き合いである相棒と新たな主の和やかな様子を幸せそうに見守っていた。



その時、突然部屋のドアをノックする音がした。
全員がそちらに目を向けた瞬間、さくらが返事ををする前にドアが開いた。

「おい、こっちに雪いるか〜?飯作るから雪も手伝・・・」

そう言いながら部屋へ入って来た桃矢は一瞬固まった。
それもそうだろう。妹の部屋へ入ってみれば、そこには妹のほかに、宙に浮いたぬいぐるみ(笑)、そしてそこに居ると思っていた人物は本来の姿である翼の生えた人物に変わっていたのだから。(ちなみに・・・宙に浮いてるにぃぐるみも固まった)
が、すぐに状況を把握すると普段と何一つ変わらない様子で話を続けた。

「って何だ?話中か?」
「お兄ちゃん・・・あ、おかえりなさい」
「ただいま。で、何で月が?また何かあったのか?」

眉を寄せて言った最後のセリフは月に対して向けたものだ。

「いや、話は終った。『雪兎』に戻る」

月は目を閉じる。すると月の背中の翼が大きく広がった。
が、一瞬何か思い出したように目を開け、ケロベロスを鋭い視線で睨む。

「誰が『性格の悪い、無口でつまらなくて融通の利かない寝起き最悪の頑固者』だ」

言い終わると月の姿は光と共に『雪兎』に変わっていた。

――気にしとったんかい!!

と本来ならば月に裏拳を入れるケロちゃんであったが、はっきり言って今はそれどころではない。
彼は桃矢がこの部屋に入って来た瞬間から冷や汗をだくだく流しながら凍り付いていた。

「あれ?とーや。お帰り。バイト終ったの?」
「ああ。飯作るからおまえも手伝え」
「うん。わかった」

元に戻った(?)雪兎が桃矢とにこやかに会話をしている。
が、桃矢の視線は宙を浮いているぬいぐるみを鋭く注がれている。

「とーや。晩御飯は何作るの?」
「オムライス」
「あ、とーやの得意料理だね」

2人はそんな会話をしながら部屋から出て行く。

「じゃあ、さくらちゃん。ご飯出来たら呼ぶね」

パタンと音を立ててドアが閉まる。
ちなみに桃矢は最後まで宙に浮かんで汗をだらだら流してるぬいぐるみを(×)睨んで(×)見ていた。


ケロちゃんはドアが閉まると同時に脱力してベットの上に倒れ込む。
そして「はぁーっ」と大きなため息を吐いた。

「ケロちゃん。いつまでお兄ちゃんの前でぬいぐるみのフリしてるの?」
「何や兄ちゃんの前やと、もう条件反射に固まってしまうんや〜」
「全部知ってるのに?」
「兄ちゃんのあの顔見てないんか!?絶対怒っとる!わいに絶対怒っとる!!」

月には力やっとる位優しぃ〜しとるのに何でわいにだけ!!と泣き叫ぶケロベロスであった。


守護者とその主人である者の兄との関係修復はいつになることやら・・・・。
・・・・・っというかそんな日は本当に来るのだろうか?(笑)


つづく?



初CCさくら(笑)
この私がCCさくらを書く日が来るとは・・・。それ以前に突発的なものなんで文章が・・・(汗)
しかもまだ続く(笑)次回で終わり(たぶん)っていうか次回が本命です。でもこれだけ読みきりになれる(笑)
読めばおわかりだと思いますが私はCCさくらでは月が好きですvあと桃矢vv(シスコン万歳/爆)
書いといて何だが雪兎ってゲーム持ってるかぁ〜?(笑)
それから雪兎は月の時はやっぱり覚えてないと思ってたり。月は雪兎の時も覚えてるけど(笑)
「・・・凄くとは・・・言ってない」ってセリフはご存知『封印されたカード』よりvもう月可愛い〜vv大好き〜vv


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