恐怖な男の嵐

GIFT 01

 大型台風の接近により、本日学校は休みになった。
 ラッキー、と大伊田大介(17)は朝から上機嫌である。
 そんな時、ノックもなしに大介の部屋の扉が開いた。
「開けてもいいか?」
 そう言って入って来たのは大介の叔父、金川健(27)である。
 大介は横目で健を見た。
 もうすでに開けているじゃねーかよ…
 しかも開けると同時に入って来てるし…
 大介は呆れた。
「…開けてから言うセリフじゃないよな…」
「入ってもいいか?」
 健が即座に言った。
「……」
 なんだよ、こいつ…
 大介は頭が痛くなってきた。
「…もう入ってるじゃん」
 呆れる大介を再び無視し、健は大介の机に置いてあった麦茶を一気に飲み干した。
「マズイな。飲んでもいいか?」
 さらりと健が言う。
 大介はたまらず机を叩き、健を睨んだ。
「ことを起こしてから尋ねるんじゃねーよっ!」
「ん?君が先に言わないからだろう?」
「あのなぁ!」
「まったく。君は礼儀というものを知らないのか?客が来たら、例えマズイお茶でも出すのが普通だろう。まぁ、私は君の家のマズイお茶などは飲みたくはないがな。だがな、それでも形は大事なんだ。マズくてもマズイなりに誠意を見せろと私は言っている。分かるか?理解できているか?マズイんだぞ?君のところのお茶は限りなくマズイいんだぞ?」
「うるさい!しかも勝手に飲んでおいて、マズイマズイってなんなんだよ!」
「@味が悪い Aへただ B具合が悪い C美しくない、だ。ちなみに反対語はうまい、だぞ?」
「誰が国語辞典の意味を言えって言った!」
 大介はワナワナと震えた。一方、健は型をすくめる。
「人にものを聞いておいてなんだ」
「まともな受け答えをしろ!」
「君こそまともな思考回路を持て」
「あのなぁ!!」
「マズイ麦茶ぐらいで何を叫んでいるんだ。マズイものを飲まされた私の方が怒鳴りたいくらいだぞ?」
「〜〜〜!!」
 大介はあまりのことに声が出なかった。
 誰が…
 誰がなんだって?!
 誰も飲めなんて言ってないだろう!
 あんたが勝手に部屋の扉を開けて、勝手に入ってきて、勝手に麦茶を飲んで勝手にマズイと言って、勝手にそれを俺に責任転嫁しているんじゃないか!!
 そう、すべてはこの男の勝手な行動が原因だ。それを「私の方が怒鳴りたいくらいだぞ?」とはなにごとだ。
 大介はかなり頭に来ていた。
「ざけんな!何もかもあんたが勝手にやったことだろうが!」
「マズイと知っていたら飲まなかったぞ」
 健は胸をそらせた。なぜ偉そうに言うのかが大介には分からない。
「マズイマズイってうるさいんだよ!」
「安くてなおかつマズイ自家製麦茶くらいで騒ぐな」
「あんた一言余計だぞっ!」
「マズイ麦茶」
「それがいらないんだ!ただ一言、自家製麦茶って言えばいいんだよ!」
「ほぅ。必要なのは家か?よかったな、家があって」
「なんでそうなる!『自と製』はどこにいった!」
「漢字字典にでも載っているだろう」
 当然だとばかりに健が言う。
「……」
 大介は限界だった。この男と一秒たりとも一緒にいたくない。
 や、殺ってしまいたい…
 いっそこの部屋から突き落としてやろうか…
 大介は半分以上本気でそう考えた。すると願いが通じたのか、健が窓際に立った。がもちろん、突き落とすことなどできるわけがない。
 この世に警察と法律がなけば…
 大介はいつものことながらストレスがたまり、眉間にしわが寄る。
 そんな大介とは180度違い、健は実に晴れやかな笑みを浮かべた。
「空が綺麗だな」
 健は窓から空を見上げた。
 大介は目を細めた。
 今日は近年まれにみないほどの、大型台風が近寄っているのだ。もちろんその影響で、外は酷い風と雨である。
 それを空が綺麗とは――
 この男は頭がやられているに違いないと大介は確信した。
「…あんた馬鹿だろう?今日は台風だぞ?」
 大介がそう言うと、健は不思議そうな顔をした。
「どこの世界に台風の空をみて綺麗という奴がいるんだ?それは一種のマニアだぞ?。そうか、君はマニアだったのか」
「……」
 おい…
 なんでそうなる…
 大介はわけがわからなかった。
「あんたが言ったんだろう!」
 どうしてこうも会話が成り立たないのだろう。
 何かの呪いだろうか?
 俺が何かしたか?
 今までの17年間、俺は少なくとも親不孝はしなかったぞ?
 それとも…
 罰が当たるような悪行を働いたのか、俺…?
 大介はつい己の過去を見つめなおしてしまった。
 そんな大介を当然ながら無視し、健が言う。
「ん?私ははるか空の上、宇宙で無数に広がる星が綺麗だと言ったのだ。そんなことも分からないのか?一を聞いて十を知れとは言わないが、二ぐらいは知れ。まったく。君との会話はイチイチ解説を付けないとならないから疲れる」
「……」
 誰かこの男をイカれた矯正してくれ。
 大介は切に願った。
 だがそんなことができる奴はこの世にいないだろうと同時に思う。
 大介は健との会話に終止符を打つため、結論に入った。
「…ああそうかよ。で、結局あんた何しに来たんだよ…」
「ん?今日はこの家に大介くん一人だろう?だから面倒を見に来てやったわけだ。何といっても私は優しいからな」
「…は?」
 大介が開いた口がふさがらなかった。
 確かに今日は母さんがいないけど…
 だからなんなんだ?
 台風で危ないから来たとでも言いたいのか?
 俺は…
 俺はもう17だぞ?!
 しかも「面倒を見に来てやった」って…
 あんたが俺に面倒ばかりかけたんだろう!
 まったく逆じゃないか!
 大介はこの上なく嫌な顔をした。しかしこの分裂気味の男には通じない。
「ん?そうか、そんなに嬉しいか」
 健が極上の笑みを浮かべる。
 どうしてこの顔を見て、嬉しがっていると思えるのだろうか。プラス思考もここまでくれば国宝級――いや、世界遺産ものだろう。だが実際は誰がこの男を宝などにするものか。大介なら間違いなく生ゴミで処理している。
 そう言ってやろうかと思ったが、残りわずかな大介の自制心がそれを拒んだ。口は災いの元と言うではないか。この言葉はこのためにあるのだろうと大介は思う。
 しかし――
 なにも言わずとも災いは突然やってくる。それが人生である。
「といういうわけで、私は今日一日この家に泊まる。ありがたく思え」
 健がニヤリと笑う。
「……」
 大介は呆然とした。
 その間に、健は廊下に置いていたのであろうカバンを持って来た。本当に一泊する気である。
「……」
 この家まで嵐になる…
 ずばり言葉の嵐である。
 大介は生まれて初めて嵐が怖いと思った。
END

―赤いりんご++コメント―
 HP開設記念(かなり遅いが…)を贈らせてもらいました。
 結局オリジナルのネタが浮かばず(まぁこれもオリジナルだが…)、我がサイトのお話に…すみません(汗)←しかも宣伝じゃん、これ…
 しかもファンサイトなのにね(苦笑)。あっ、でも『嵐』ってところでつながりが…(無理やり)
 駄文ですみません(涙)
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