球型メセン四季の管理
                   奈良県  岡本治男 氏
1.秋の移植
 ほとんどの球型メセンは我が国では暑い夏に休眠し、涼しい季節に生長します。鉢植植物の場合、鉢土の物理的(根づまり等による通気性、保水性等) 化学的(肥料、酸性度等)条件の悪化のため、適宣 新しい場養土に移植えるのが常識ですが、メセン類は小型の植物ですから、必ずしも毎年植え替える必要はありません。でも2年に一度位の割で移植するのが望ましいと思います。
 植え替えは秋の生育期に先立って行うのがよいでしょう。古土を落とし、細根は指先で取り除きそのまま 、新しい土に挿し込みます。株立苗で老化し、何年たっても頭数がふえないものは、形も乱れてきますので、適当にカットして新生をはかるのもこの季節がよいでしょう。リトープスの場合、根部がコルク化して堅くなっていることがあります。これは丈夫な剪定バサミで適当にカットし、さらにカッターなどで切り口をなめらかになる様切りなおします。この場合古い茎の部分はなるべく残らない様切り捨てるほうが新根発生のためよいのですが、誤って葉だけにしてしまいますと枯れてしまいますので、呉々も切り過ぎない様注意して下さい。尚カット苗の切り口が十分乾くまで4〜5日おいてから植え付けます。またリトープスやコノフィーツムは旧葉が薄い皮になって残っておりますからこれを取り除きます。これを‘ 皮むき’と呼んでいます。尚分球や皮むきは8月の中頃、少し早い目にしておくと、秋 移植が楽になります。またコノフィーツムのペルシダム系、エクティープム系等は皮に包まれて夏越しをし、秋になって新葉が生長してくると自然にとれますので、あまり早く皮むきをするのは全くありません。

Gibbaeum dispar(無比玉・コノフィツム協会提供)

2.秋の管理
 前述しました様に、メセム類は秋の冷気と共に休眠より目覚めますが、その時期は品種により少し差があります。例外としてリトープスの曲玉、荒玉 は6月から盛夏にかけて生長、開花しますので、夏でも涼しい所に置き20%位の遮光下で潅水します。
 またコノフィーツムのペルシダム系も早起きで 夏比較的涼しい当地では8月中旬に花を上げて来ますので、この頃より水をやり始めます。多くのメセンは高冷地では8月下旬より、温暖地では9月上旬より潅水を始めます。植え替えしない鉢は遮光下に置いたままたっぷり給水して下さい。一週間もすれば体色に艶が出てふくらんで来ます。遮光膜は遮光率70%位の盛夏用と20%の初秋、春用、と2種類用意し、9月上旬は20%2枚、下旬は20%1枚と、季節に応じて使い分けるとよいでしょう。10月上旬から2月末までは遮光しません。株分けした苗は潅水を少な目にして発根を待ちます。生育を始めた苗は本格的な潅水を始めます。原産地におけるメセンの生育期はほんの2〜3ヶ月といわれています。短い降雨期に急激に生長し、乾燥期に入る前、旧葉の栄養分を取り入れて新葉が徐々に生育する仕組になっていると考えられます。我が国においては、9〜11月が主生育期でこの時期に十分発育をはからねばなりません。そのため潅水はこの季節に最も多くします。気温の高い9〜10月は栽培環境にもよりますが鉢土の乾きが早いので週2〜3回の潅水が目安になります。この季節にほとんどのメセンが急激に生長開花しますので最も美しい時期であり、栽培家にとって一番楽しい季節です。リトープスの花は、かすかな香りを持っており、少しまとめて作っておりますと、晴天の午後、温室の中は芳香に満ちます。
 10月に入れば遮光膜はすべて取り除き、通風をはかり 苗を作る様にします。
 11月も中旬になると朝夕の気温も下がり、目立った生長はしなくなりますが、植物体内では新球が形成され、少しづつ大きくなって行きます。でもこの時の栄養分は前述しました様に旧葉から補われていますので、潅水も控え目にすべきで、週一回位が目安となります。

3.冬の管理
 12、1、2.の3ヶ月間はほとんど目立った生育を示しませんから、潅水も更に減らします。寒さも加わって来ますので、少量栽培の時は小型のフレームに入れるか、室内に取り入れる様にします。小型のフレームの場合、日中密閉して日焼けを起こすことがよくありますから、晴天の日は必ず隙間をあけて、通風する様にして下さい。また暖地での屋外栽培の場合、防寒対策としては水を与えないことです。水を切っておけば−3℃位までは寒さで枯れることはありません。室内やフレームで作る時の潅水の目安も10日に一度ぐらいで十分でしょう。

赤石メセン実生各種
4.春の管理
 植物を作っておりますと季節の移り変わりがよく分かります。3月に入るとリトープスの新葉が急激にふくらみ、いわゆる脱皮をはじめます。気温も高くなり鉢土の乾きが早くなりますので潅水量を増します。でもこの時期に水をやり過ぎると二重脱皮という異常生長をすることがありますので、秋の生長期に比べて少なくする必要があります、週2回位が潅水の目安でしょうか。また日照も強くなりますので、フレームやハウス栽培では20%位の遮光が必要です。またこの季節によく日焼を起こしますので、フレーム栽培の時は日中の通風を忘れないで下さい。

5.夏の管理
 休眠する、ほとんど多年生植物は、生長、休眠というサイクルを持っています。低温期に休眠するもの、高温期に休眠するもの、等色々あるでしょうが、多肉植物の多くは高温期に休眠します。これは原産地の気候が高温期が乾季になるためと思います。
多くのメセンは中春になれば休眠に入ります。
 コノヒーツムの多くは旧葉が薄い皮になって新葉を包む様にして休眠します。モニラリアの1年苗やディプロソマは葉をすっかり落とし、球根の様になって砂の中にもぐり込んで夏越しをし、水を与えても全く受け付けません。でも秋冷と共に自然と芽を出してくるから不思議です。
 休眠は本能です。乾燥期休眠をしているものに水を与えることは自然の摂理に反し、有害無益と私は考えております。私は4月下旬になると実生2年以上の苗は温室から出し、通風しのよい戸外の栽培棚に移し、雨除けにはビニールの波板、遮光は70%の黒寒冷沙を使っております。8月下旬の移植期まで一滴の水もやりません。多少のしわのでる物もありますが、米粒程度のリトープスでも無事夏越しをします。

名人のメセン寄せ植え(故渡辺昇氏栽培)