ムイリア・ホルテンセ (宝輝玉)Muiria hortenseae 
 この愛らしい植物は南アフリカ、小カロー地方の原産で1種のみが確認されています。明緑色で白い微毛に蔽われた植物体は柔らかで、通常、鶉の卵くらいの大きさの球体が数頭群生可能と言われています。

 夏季は旧体が乾燥した茶色の体皮を被り休眠します。休眠明けの脱皮直前に、旧皮(体皮)と新球の間から先端に向って白色、杯型の清楚な花を開きます。

 休眠期の植物体を良く見るとゴマ粒程度の水泡が確認出来、これは球体(植物体)を乾燥から保護していると推測されます。
 生態的にも非常に興味深く、又、栽培は困難と言われている植物の一つです。
 ホルテンセの開花(橋口コレクションより)
 約半世紀近く前にシャボテン社に輸入された当時は、開花確認に狂喜したとか、塩分を含んでいる為、家畜にあらされる事もあると言う伝説の植物であり現在でも入手が難しいようです。 
 今回の'教室'には、日本でのホルテンセの栽培名人と言われるお二人に情報を頂き、栽培の参考になる資料・写真各種を掲載しました。
秋田における宝輝玉の栽培        秋田県 橋本幹郎 氏
写真はいずれも実生からの栽培品

植替え
 ホルテンセの植替えは9月〜11月に行い、春にはした事はありません。小苗は1〜2年に一回、大株は植物の様子を見ながら、3年に一回くらいの間隔で植え替えています。
 休眠明けはコノフィツムと同じ時期ですので、潅水は9月中頃から始めます。水の与え方は乾いたら充分に与え、10月までに2〜3回潅水すると休眠前のサイズ戻ります。秋田では11月〜3月中頃までは、天候が悪く殆ど成長は望めませんので潅水はごく控え目にします。暖かくなる4月頃から再び潅水を始め、一般の多肉よりやや辛めの感じで5月いっぱい続けます。(月に3〜4回程度)

 7月の初め頃に開花しますので、その頃までに旧皮が半乾きし、薄皮になるように、6月に入ってからは潅水を減らし、7月以降は完全に断水します。それでもコノフィツムの様に茎が枯れる事はありませんが、球体は2/3〜1/2程に縮みます。
培養土の配合
 培養土は、赤玉と鹿沼土の微細(1〜3ミリ)を等量、山城愛仙園の'ペレット'、パーミキュライト(大粒)各10%、卵の殻少々で、この用土はコノフィツム、デンティランタスと同じ物を使用しています。

塩の問題
 実生苗で試してみたのですが、海水(塩分約3%)の30倍(約0.1%)に薄めたものが一番生育がよく、10倍(約0.3%)だと、やや小さく育ち、7倍では小さく生育不良ぎみになりましたので30倍希釈を与えています。(註 日本海に近い立地条件から、海水を汲み上げて使用されると伺いました。)

 

ホルテンセ大群生株
 1993年に購入、以後10年の栽培で25頭に分頭。これだけの大株は今までに公開された事は無く、海外からも掲載を強く要望されご協力頂いたものです。極東の国、日本の栽培力が高く評価されるものと確信しています。
 
ホルテンセの斑入り            秋田県 竹村一志 氏
 このホルテンセは1999年10月に自家採取の種子で実生した物の内の一頭です。発芽は25頭程度確認していましたが、多忙の為、植替えが出来ずにいた間に根ジラミがついたものもあり、半数くらいになってしまいました。
 そこで、慌てて植替えをした所、初めて、斑を発見しました。まだ小さく、球体は2.3×1.5cm程度ですが、分頭して2頭株に成長しました。写真で見るように一頭のみが鮮やかな縞斑です。 
 メセン類ではこれほど鮮やかな斑は珍しく、ましてホルテンセに出現したのは驚き以外にありません。世界的珍品である事に間違いなく、この写真を見る事が出来た方は幸運だと思います。是非、大株に成長させて、又、写真を頂きたいものです。

趣味の会のご案内
 今回、ホルテンセの情報を頂いた、橋本氏、竹村氏も会員として参加している趣味の会が岩手県盛岡市にあり、東北を中心に各地からお仲間が集まって研究会、植物頒布の例会を開催しています。
 写真は2002年11月24日の忘年会の様子と、その時出展された植物の写真です。木目細かい活動の女性会員も多く、例会は暖かい雰囲気の中にも活発に意見交換がなされ、植物通しての仲間の輪が広がっています。次回は2月16日(第3日曜日)に新年会及び品評会が開催されます。

 参加ご希望の方は赤石支部長(019-623-8850)まで、お気楽にお電話下さい。

多肉各種(赤石幸三氏)

斑入りランポー玉(工藤勝義氏)

忘年会風景

エケベリア・カンテ(工藤春雄氏)