帝冠錦のキメラ
台湾仙人掌・多肉植物協会前理事長・沈宋輝さんから頂いた写真のキメラについて」
(台湾の陳世仁さんが作り出した帝冠斑のキメラに関しての私見を掲載しました。)
 横浜市
 平尾 博

キメラ1 キメラ2 キメラ3

 キメラとは遺伝子系の異なる2つ以上の細胞や組織からつくられている生物体の事で、突然変異のほか接木或いは胚移植により発生します。『Chimera』はギリシャ神話の怪物が語源となっており、植物では普通、接木による雑種と言っています。
 サボテンのキメラが記事になったのは“シャボテン”
2519回が最初ではないかと思います。
 その要約は「花盛丸台木に緋牡丹を接木、その稜から出た仔が
2頭に分頭したがその分れ目に花盛丸の皮が張っていた。次にその皮から仔吹きをはじめて2頭になりその1頭に黄斑が入った。元親は黄大文字に接木し直したので下から黄大文字・緋牡丹・花盛丸の3階建になった。」と言うものです。
 兄平尾秀一の作品から、短毛丸に黒牡丹を接木したが活着せず穂は消滅、やがてその接木面から仔吹きし、それが短毛丸と黒牡丹の中間形態だった。別の例では接木した天王丸から出た仔の片面が天王丸、反対側は台木に近い姿になった…などがあります。
 接木を大量にする業者の中にはキメラが生ずる例があった事が報告されています。先の平尾秀一の作品の如く、接木面における穂の消減(普通は接木の失敗として扱われる)後に接ぎ台の切り口から仔が出て、キメラ状になる事が多いようです。台木+緋牡丹+台木の仔から斑が出た上記の例の如く、そういう事もあり得るという事が台湾作品の帝冠斑入りでも証明されるではないかと興味深く考えました。

注・キメラの定義は日本語大辞典(講談社)によります。