「生きている間に、できるだけ、集めたい、知りたい、深めたい」 
アートフォトと現代美術の二つの分野で活躍中の
松原正武氏からコラムを頂きました。

「下郷羊雄氏と自然へのオマージュ」

以前から、『超現実主義写真集 メセム属』というメセンをモチーフにした写真集があることを知っていて、ずっと興味を持っていました。
いろいろな図書館で調べたのですが、この写真集はどこにも置いてませんでした。
図書館で閲覧する事は不可能だと判断したので、Webシャボテン誌でコピーを入手しました。

『超現実主義写真集 メセム属が刊行されたのは昭和15年(1940年)3月です。

1930年〜40年は、志の高い芸術家や写真家が、当時、まだ高価なカメラという道具を使って活発に新しい表現を模索していました。
時代背景としては、1939年 - 第二次世界大戦開始、1941年 - 真珠湾攻撃、日本は戦争のど真ん中で、きな臭い空気が充満していた年代です。

そのような時に、『超現実主義写真集 メセム属』という、風変わりな写真集が刊行されています。

現在でも写真集を刊行するというのは、本当にたいへんな事です。
戦時中に写真集を刊行するというのは、下郷羊雄氏と有志達は本当に苦労したと思います。

下郷羊雄氏は、シュールレアリスムの旗手として、メセンの造形に注目したのですが、私は、芸術的な観点からではなく植物としての面白さに惹かれました。
下郷羊雄氏は、『超現実主義写真集 メセム属』の例言の中でメセンの事を「幻怪な植物」と表現しておられました。

1940年は、今から70年前です。
70年後の私もメセンを見て、その幻怪な魅力に引き込まれました。
下郷羊雄氏と私は、別の観点からですが、70年の時を超えて同じ事を感じました。
そして、メセンの幻怪で可愛らしい魅力を写真でどう表現するか、考え、実行しました。

芸術家や写真家は、主に「オリジナル」を求めると思います。
作家独自のオリジナルの表現、オリジナルの技術などです。

芸術の歴史、写真の歴史を知れば知るほど、過去にすでにその表現を試した人、その技術を開発した人がいたりします。
カメラという機械を使って、何かを表現する以上、技術的な限界も出てきます。

独りよがりなオリジナル(独創)を求めるよりも、何かに対してオマージュ(敬意)を捧げるのが好きです。

私のメセン写真は、下郷羊雄氏へオマージュであり、この不思議で魅力的な植物を生み出した自然へのオマージュです。

超現実主義写真集 メセム属詳細


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今年の展示会の予定は下記になります。
ギャラリー開 GALLERY KAI
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松原 正武展  MATSUBARA Masatake −虚実−   
2010.11.20-12.3
      平面(写真ベースのミクストメディア)
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