花篭(ハナカゴ)
Aztekium ritteri
 本種の写真を初めて見たのは昭和10年(1935)。何と変ったサボテンだろうと思った。花篭という園芸名がつけられたのもその頃。金持ちの旦那は買えたかも知れないが、一般に売品はなかった。あっても子供の手が届くはずもなかった。欲しい、欲しいと思い続けて何とか現物を手にしたのは15年も経ってからである。

 ご覧の通りの体形。径4〜5cmで古くなると仔をつける。つや消しの淡緑色。肉質は固く、根張りは少く生育はおそい。微弱な刺はあるが木質で脱落しやすい。花は薄いピンク、花径10〜15mm. 春夏咲き。
 原産地はメキシコ・ヌエボレオン州。発表は1928年。水流で削れてほぼ垂直に切り立った断崖面に埋め込まれたようにへばりついている、という。共生植物はヒバやコケの類い。流れのあとは車で近づけるそうで、崖を見上げて手の届く所は殆ど乱獲されてしまっているとのこと。石灰質の壁面の崩落で死滅するものも多いと思われる。
 変りもの故にほかのサボテンのどのグループにも入れられず、発見以来つい近年まで1属1種であった。属名のアステキゥムは花篭がアステカ文明の工芸品に似ている所からつけられたとか。