■■■ 麗仁絵のお店・web小説 忘れ去れた星 ■■■ 麗仁絵の冒険記録のひとつ。 麗仁絵の使うオリジナル魔法の秘密がここに。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 【登場人物紹介】 ・麗仁絵…本名:虹夢 麗仁絵(にじゆめ レイニエ)、16歳。 異世界「ソーサリアン」では冒険者であり英雄。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 「……まったく、キリがないったらありゃしないわね、一人だとマジで辛いわ。  こんな時、みんなが居てくれたら良かったんだけどねぇ。  あっちはあっちで手が離せないから仕方ないけど。  元の世界に帰る方法のひとつがこの洞窟に眠っているんだし、やられてたまるか!」 剣を構えたまま、息を荒げながら麗仁絵が呟く。 ここは異世界「ソーサリアン」の神々達が住む庭園の地下5qの洞窟。 辺境の遺跡で見つけた古代文字で書かれた石版を元にここへやって来たのだ。 「ドッペルゲンガーやらドラゴンとか上級位のモンスターばっかじゃない!  ここはキングドランゴンの住処じゃないってーの。  って、うわっ、また新手のモンスター!?」 麗仁絵がうんざりした顔をする。 「こうなったら最強魔法使って強行突破した方が早いかな。」 ここぞとばかりに覚えたての魔法を唱える。 「それじゃあ、いっくわよ〜! NOILA-TEM!!!」 ソーサリアン最強の魔法がモンスター達に襲い掛かる! 「ギャーッ!!」 「グォアーッ!!」 モンスター達が断末魔を叫びながら次々と倒れていった。 「よっしゃ、やりぃ!」 チャリン。 「ん、これは……指輪だけど価値はあまりなさそうね。  まあ一応拾っておきましょうか。」 ・・・・・・・・・・ モンスターを全滅させてから洞窟の中を進むこと更に1時間後、明るい場所に出た。 そして目の前には神殿のような建物がある。 「どうやら目的地に着いたようね。」 腕組みをしながら暫くその風景を眺め、一息ついて神殿の扉に向かって歩き出す。 神殿の扉を開け、真っ直ぐに続く少々薄暗い通路を突き進む。 「モンスターとかの気配は無いようね。  ここまで来てまた戦闘になったら困るんだけど。  それにしても静かねぇ。 ま、地下の神殿だし当たり前か。」 そんな事を言いながら進んでいると大きな扉の部屋に辿り着いた。 「いよいよね。ここにあたしが求めているものがあるはず。」 ちょっと緊張しながら扉を押し開ける。 扉を開け、中に入ると奥の玉座に座っている者がいた。 そこへ向かって麗仁絵が近づいていき、その者の前で立ち止まる。 するとその者が口を開いた。 「ほぅ、このような場所に来る者は久しぶり、いや、百数十年ぶりか。」 麗仁絵が話しかける。 「あたなが八つ目の星を司る神、冥王神のローエル様ですね?」 ローエルが答える。 「そう、私が忘れ去れた星、冥王神ローエル。」 彼女は深い青色のローブに身を包み、そして無表情であった。 そして、物静かな口調の若い女性の姿をしている。 「あなたの名は?」 「あた、いえ、わたしは冒険者のレイニエという者。  ここにわたしが求めている物をあなたから授かる為にやってきました。」 「ということは神殿の前に巣食っている騒がしいモンスター共を突破してここへ来たのか。  あなた、中々面白い人間ね。  それで、欲するものとは私が持つ“星の力”ね?」 「単刀直入にいうと、そうですわ。」 「レイニエ、あなたは素直で良いわね。」 さっきまで無表情だった彼女が薄笑いを浮かべる。 「私も昔は神々の住む庭園で他の神と一緒に暮らしていた。  だが、私の所へくる人間はみな私が授けた力に飲まれていった……。  ある者は狂い死に、またある者は私の力で世界を我が物にせんとし、世界に混乱をもたらした。  そしてついに私はそれらの罪を被り、神々たちに庭園から追放された。」 少し間を空けてローエルが話を続ける。 「この意味が分かる?  そう、私は地上に住む者達にとっては要らぬ存在。  そして悪なの。  残念ながら、あなたに力は授ける事はないということよ。」 一瞬、その言葉に衝撃を受ける麗仁絵。 だがここでそれを真に受けて引き下がる事は出来ない。 麗仁絵が話す。 「わたしにそんな昔話はどうでもいいですわ。  わたしは冒険者として目的の為にここへ来た。  そして手ぶらで帰る気もありません。」 その言葉にローエルが反応する。 「レイニエ、私の力はいわゆる“闇”というもの。  あらゆる負の集まりが源の力だということでも尚、力が欲しいか?」 ローエルが麗仁絵に問いかける。 「ローエル様、わたしは闇が負の力で悪の力とも思ってませんわ。  先にその力で滅んでいった者達が悪いのではないかと。  ハッキリいって、実力もない者が冥王星の力を使おうなんて愚かもいい所ですわ。  闇の力が負であり悪だなんて思ってる時点で話になりませんわね。」 麗仁絵が自信満々で不敵な笑みを浮かべて話す。 しばらく、間が空く。 するとローエルが口を開く。 「レイニエ、あなたは本当に面白い人間ね。  なるほどなるほど、分かったわ。  良いでしょう、そこまでいうなら私の力を授けましょう。  では、私にあなたの両手を差し出しなさい。  力を授けましょう。」 言われた通り、麗仁絵が両手を差し出す。 そしてローエルが麗仁絵の両手の真ん中に自分の右手をかざす。 濃い紫をした力が麗仁絵に注がれる。 刹那、麗仁絵を身の毛がよだつ様な、暗く重く、そして極寒のような感覚が襲う。 その感覚に耐えること数十秒、力を授かる儀式が終わった。 「これであなたには冥王星の星の力が備わったわ。  さあ、その力を使う所を私に見せてごらんなさい。  そしてその身でこの力の強大さを味わい、滅ぶといいわ。」 ローエルが怪しい笑みの表情で話す。 それと同時にローエルの周りにゴーストが数体現れ、レイニエに襲い掛かって来る。 しかし麗仁絵は毅然とした態度で力を使い、それを示す。 頭の中でひとつの魔法が思い浮かぶ。 そしてそれを拾った指輪に魔法を込めそれを唱えた。 「HOLY LIGHT!!」 ゴースト達が一瞬にして消え去る。 それを見てローエルが驚き、笑い出した。 「アハハ、あなたには驚かされたわ。  私の闇の力を使って光の魔法を生み出すとはね。  レイニエ、ローエルの名においてあなたを正式に冥王星の星の力を使う者と認めましょう。」 麗仁絵が喜ぶ。 「あ、ありがとうございます、ローエル様!」 麗仁絵が深々と頭を下げて礼をする。 ローエルが話す。 「レイニエ、私の事はローエルって呼んで良いわよ。  おめでとう、冒険者レイニエ。」 ローエルの表情が変わる。 最初に会った時の無表情な顔や怪しい笑みがまるで嘘のような、 穏やかで明るい笑顔になっていた。 それを見て麗仁絵が話す。 「ローエル、やはりあたしを試したんですね?」 ローエルが答える。 「ええ、そうよ。  あなたは私の期待通りの結果を見せてくれて、嬉しかったわ。  私の力をちゃんと使ってくれてありがとう、レイニエ。」 ローエルは本当に嬉しそうな笑顔で話し続ける。 「さっき言った神々の住む庭園から追放されたというのは嘘よ。  私は他の神々達と相談し、望んでここへ来たの。  他の神々達は引き止めようとしてくれたけど、こうするのが一番良い方法だったの。  再び地上に混乱などが起きるのを防ぐためにね。  あなた、神々の住む庭園には行ったことがあるのでしょう?  また行くことがあったら私が何事もなく暮らしている事を伝えて欲しいわ。」 麗仁絵が答える。 「ローエル、あたしも大変嬉しいです。  神々達のローエルに対する所業への疑問も解けたし、力も与えて貰ってこれほど嬉しい事はありません。  それと地上に戻ったら庭園に行って、今の言葉を他の神々に伝えておきます。」 「ありがとう、レイニエ。  では、ここと地上を繋ぐ秘密の近道を開きましょう。  あなた以外は絶対に見つける事が不可能な道です。」 麗仁絵が質問をする。 「あの、ローエル。  あたしが信頼する仲間とか連れて来てはダメですか?」 麗仁絵がローエルの機嫌を伺うように聞く。 「レイニエが認めている人間なら連れて来ても構いません。  ぜひ、あなたの仲間とやらにも会ってみたいわ。  最後にひとつ、忘れないでいて欲しいの。  八惑星の星の力に善悪の区別はない事。  そして使い方によって変わることを。  あなたなら良き方向へと使ってくれると信じています。」 今度はニコッと笑ってローエルは答えた。 「ありがとうございます、ローエル。  今の言葉、しかと肝に銘じます。」 ・・・・・・・・・・ ローエルに教えて貰った近道を通ると僅か数分で地上に出た。 「んっ、眩しい!」 久しぶりに見た太陽の光に手をかざす。 「目的の力は手に入った。  あとはこの力を使って元の世界に帰る方法を見つけるわ。  ……ローエル、あたしはあなたから授かったこの力で必ず目的を達成します。  そして冒険者としてこの力を役立てる事を誓います。」 そういって麗仁絵はローエルが住んでいる洞窟に向かってお辞儀をした。 麗仁絵、30歳の時の冒険記録である。 --- 終わり --- -------------------------------------------------------------------------------- 久しぶりのSS&麗仁絵のSSです。 最後の方で何となく麗仁絵の隠し設定の一部を暴露しながら書いたSSです。 読んで下さった方々、如何でしたでしょうか? 基本、マイナーゴーストの作者なので感想とかあると作者が嬉しくてショック死します(ぇ その前に来たことないよ!Σ(ノ∀`) SS中に出てきた冥王星の神ローエルの名前は、冥王星を発見したローエル天文台から取りました。 冥王星は1930年に発見された惑星ですが、現在は扱いが変わってしまったんですよね。 最後までお読み下さり、ありがとうございました。 それでは、また。 2009年8月14日 唯原陽幸