《虐待を止めるために》
【「私たちは親となった時、誰でも虐待をする可能性がある」と認めることは大切です.】
子育ての実際は、喜びを覚えることもあると同時に、非常な忍耐を要する作業でもあります。家庭の内外の様々な悪条件が重なると、私たちは誰でも“虐待的関係”に陥る存在なのです。
一方で、親として子どもが健康に成長してほしいという願いや、子どもが自分を慕ってくれていることが喜びに感じる体験は、ほとんどの親に起こるものです。そのため、子どもに対して一時的に我慢できないほどイラだったとしても、虐待的関係に陥ることなく、健全なペアレントシップ(親であること)を維持していくことができるのです。
【虐待をしているサイン】
・うまく子育てができていない、と思いつめて苦しい。
・子どもの行動が気に入らない、可愛いと思えない。
・「この子がいなかったら」と自分を追いつめてしまう。
・子どもが言うことをきかないと、思わずたたいたり、傷つけることを言ってしまう。
自分がこのような状態になっていると思えたら、それは虐待をしているというサインです。
以下に、虐待とされている内容のリストを記してみましょう。自分では認めたくなくても、これらの項目に相当する言動・行為をしている可能性は存在します。現実は、果たしていかがでしょうか。
◎身体的虐待……殴る、蹴る、火傷をさせる、激しく揺さぶる、など.
◎心理的虐待……傷つける言動、人格否定的な態度、無視、本人の自由を奪うようなコントロール、など.
◎性的虐待……性行為の強要、性器や性行為を見せる、子どもをポルノの被写体にする、その他性的な側面を損なう言動や行為の全て.
◎ネグレクト……家に閉じ込める、不潔なままに放置する、食事を与えない、養育に必要なことを十分しない、病気などの身体的不調の際に医療にかからせない、など.
【虐待に相当する言動・行為をしている場合、どう考えたらよいか?】
もし、上記のような項目に相当することを自分がしてると気づいたら、どうしたらよいでしょうか? あるいは、パートナーが虐待をしていて、それを改善できずに困っている、という方もおられるかもしれません。
厄介なことに、「このような行為は、してはいけない」と本人が強く決意したとしても、自分の努力のみで虐待行為をなくしていくことは、極めて困難です。
「分かっちゃいるけど、やめられない」のであって、意志の弱さの問題ではありません。また、「このくらいのことは躾けであって、昔からやってきたこと」との理由づけをしている場合、虐待に相当する言動・行為は止まるはずはありません。
虐待を止めるためには、育児支援のサービスをいかに活用するかという問題や、夫婦関係や親との関係など、様々な背景の問題を改善していく必要があります。また、パートナーが虐待をしている場合、どのように改善できる余地があるか、あるいは、改善の余地がない場合にどうするか、という専門的な相談が必要です。
【虐待を止めるための心理療法の方針】
虐待を止めるための心理療法は、次のような柱をもとに、その方に必要な側面に応じて、トータルに実施していきます。
・配偶者や周囲の人々から、理解や協力を得るための環境調整を行う(可能な場合)。
・虐待行為は、自分が必要とした選択であると、とらえる。
・虐待行為にまで至る悪循環の連鎖を明確にし、その悪循環を修正していく連鎖を目指すための認知行動療法を実施します。
・虐待をする方には、その親から虐待を受けた経験のある方が含まれます。その場合、虐待を受けた“内なる子どもの言い分”を明確にし、大人としての自分が子どもの部分を癒して大切に扱うための取り組み(これを“インナーチャイルド・ワーク"と呼びます)を実施します。
・女性の場合、虐待をする母親のための自助グループに参加し、その体験をフォローしていきます。
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また、自らが虐待をしている場合、次のように物事の認識が偏る傾向があります。
・自分が子どもにひどい言動や身体的暴力行為そのものを忘れている。
・過去のこととして済ませたい。(子どもは、親がした行為を忘れているハズ/過去はともかく、現在は良好な関係と思っている/など)
・子どもの側が実感しているよりも、自分がしたことは軽い程度のものと考える。
・その他
これらを適切な認識に修正していく取り組みも実施します。
自分の虐待(あるいは、パートナーの子どもへの虐待)を止めたいと願っている方は、ぜひ当心理相談機関にご連絡下さい。
■ Tel.03-5926-5302、070-5016-1871(初回電話相談は無料)。