・裏打ち教室  高橋昌博先生

 

 

拓本  高橋昌博先生の裏打実技教室

 

裏打は、拓本や書画などの作品(表具師は「本紙(ほんし)」という)の裏面に和紙を貼り作品を補強する作業で、裏打により作品のしわが伸び、墨跡が鮮やかに表現される

裏打は作品を掛け軸や額として仕上る一工程であるが、作品の裏打を施したまま保管するのも整理しやすい

 

高橋昌博先生の裏打60年の技「送り裏」のコツを特別紹介していただいた

 

作品の準備

作品は十分乾燥し墨を安定させる

(室内常温で一ヶ月以上程度乾燥)

 
道具の準備  

@仮張り板・・・8ミリ厚くらいのベニヤ板(ふすま大)が適当

A作業台・・・適当な大きさのテーブル、または仮張り板同様のベニヤ板

B裏打ち用紙・・・作品より少し大きめ(4〜5センチ)の手すき和紙・薄美濃紙

C刷毛・・・糊刷毛・水刷毛(しわ伸ばし用)・撫刷毛(貼り付け 撫用)

D霧吹き・・・作品を湿らすのに使用

Eのり・・・沈のりでんぷん洗濯のりでもよい(水でチャプチャプ程度に薄める) 

Fのり容器・・・底の浅い平たいもの・洗面器

G反故紙・新聞紙・・・裏打後の作品乾燥用下敷

Hタオル・・・仮張り板、作業台の清掃用雑巾

I丸棒・竹ものさし・・・作品の取り扱い用具として使用

Jピンセット・竹串・・・・ゴミの除去、破損箇所の補修に使用

K竹べら・・・仮張り作品とりはずし時使用

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雑巾で作業台を清掃  

 

前回作業の糊やゴミなどで作品が汚損する ura1.jpg (15194 バイト)
作品を裏向きに置き、裏面から作品全体に霧吹きで

(遠方から軽く)

作品に湿り気を与える

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作品をのり巻き状に巻き5〜6分放置する   湿り気が作品全体に浸透する ura5.jpg (18054 バイト)
作品を再度裏向きに広げ置き、作品の中心から外に向け軽く撫でてしわを伸ばしながら作業台に貼り付ける

(水分で張り付け)

あまり強く撫でると、紙が伸び絵がゆがんだり文字の太さが変わるので注意

学術用などサイズに正確性を求めるときは原寸をよく計測する

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作品の裏面に、裏打ち用紙の表面が重なるよう裏打ち用紙の表面を下にして重ねる。

大き目の裏打ち用紙の端が作品よりはみ出ているので、この裏打ち用紙の一端を1センチ程度の幅で糊つけして、作業台に貼り付ける

 

用紙の端を作業台に貼り付けるのがコツで以降の裏打ち用紙の取り扱いが容易である ura12.jpg (14339 バイト)
裏打ち用紙の糊つけ箇所を軸に本のページをめくるように持ち上げ作品と反対側に広げ、裏打ち用紙の表面を上にする。   ura13.jpg (17833 バイト)
裏打ち用紙表面に糊を塗る。

紙が破けたりムケたりしないように糊刷毛で十分撫でる

糊面の抜け毛やゴミ付着に注意しピンセットなどで除去 ura14.jpg (18403 バイト)
  裏打ち用紙を作業台に糊つけした軸と反対側を5センチほどそっと持ち上げ、この下に竹ものさしを差込み   ura15.jpg (20616 バイト)
ものさしで全体を受け支えて裏打ち用紙全面を本のページをめくるように持ち上げ 竹ものさしを使用するのがコツで、糊で湿った裏打ち用紙全体が波打たず容易にめくれる、Hも同様容易に扱える ura16.jpg (21276 バイト)
作業台に糊付けした軸を中心に、ものさしでバランスをとりながらピンと張ったまま、本のページを閉じるように裏打ち用紙の糊面を下に裏返し作品にかぶせる。   ura17.jpg (13372 バイト)
  このとき軸近くから順に一気にそして丁寧に撫で刷毛で撫でつけ、気泡やしわが出来ないように貼り付ける。   ura18.jpg (18333 バイト)
10 裏打ち作品を作業台からはがすため、丸棒(竹ものさし)を作品の端から三分の一程度の上におき、

作品の端を静かにはがし、持ち上げ、

丸棒(竹ものさし)にたたむようにかぶせる、

 

竹ものさしを当てているが、丸棒がよい。

丸棒二本利用するのがコツで、素手では糊で湿った用紙全体を波打たせずに上手くはがしたり移動できない

丸棒が作品に筋(折り目)が付かなくてよい

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  そのまま丸棒(竹ものさし)を持ち上げ全体を同時にはがしながら、

もう一本の丸棒(竹ものさし)で作品の反対側三分の一程度の所を支え持ち上げ、

(作品と裏打紙がはがれぬよう注意)

全体を丸棒(竹ものさし)二本で吊り上げ、

写真に無いが、もう一本下の端に丸棒(ものさし)を入れ支える ura21.jpg (18655 バイト)
   

作品の表面を上にして、反故紙などの上におき作品を乾燥させる

(一日以上乾燥)

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11 作品乾燥後、

作業台を清掃し、

作品を裏がえしに置き、霧吹きで湿らせBと同様に作品をのり巻き状に巻き5〜6分放置する。

作品の表を上に向けて広げ、作品より少し大きめではみ出ている裏打ち用紙の周囲に幅一センチ程度糊つけして、

(仮張り用ベニヤ板に裏向きに貼り付ける)

糊付時、絵画部分の糊汚損を注意する。

 

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12 貼り付けるとき、糊しろの一箇所に幅2センチ長さ15センチくらいの紙の切れ端を挿入(端が作品にとどくよう)

(仮張り用ベニヤ板から剥がすときヘラを差し込む箇所)

して貼り付ける。

ヘラを差し込む箇所を作るのがコツ ura26.jpg (18638 バイト)
13 仮張り用ベニヤ板に裏向きに貼り付ける

(乾燥時の作品汚損防止に裏向き貼付)

作品が完全に乾燥(仮張りは長いほど良く、室内常温で最低3〜4日は要す)したら仮張り時に紙の切れ端を挿入した箇所に竹へらを入れここから周囲全体をはがし取る

仮張り時は、周囲だけ撫刷毛を使い、作品中央部は触らない、多少のたるみは乾燥によりピンと張る

貼付後周囲を上からつめの背で撫でると圧着する。

糊付は濃淡なく平均に塗布する。濃淡があれば乾燥時作品が波打つ良くない、

室内の常温で乾燥させることにより完成後作品が安定保存できる

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14 裏打ちが薄すぎた場合は同じ工程を繰り返し、もう一度裏打ちをするのも良い    
15 以上で裏打ち作業は終了、最後に周囲を適当な大きさに切り取る「化粧断ち」をしたうえ、額に仕立たり、軸装にする。