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南アメリカ大陸の北端に位置するベネズエラは、カリブ海に面して約3000kmの海岸線をもち、西側はコロンビア、南はブラジル、東はガイアナと国境を接しています。 |
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ギアナ高地誕生の歴史
| ガイアナハイランド楯状地の隆起 McPherson, S: Lost Worlds of the Guiana Hightlands (2008) | |
| およそ2億5千万年、中生代の初頭、ゴンドワナ大陸の分裂が起こった。 西方へ移動を始めた、現在の南アメリカ大陸となる陸塊は、やがて太平洋プレートに乗り上げるかたちとなり、その衝撃で西端ではアンデス山系が生まれ、東端では太平洋プレートの沈み込みで発生したマントルの上昇圧力によって原生代に基底岩とその上に堆積した厚い砂岩層が3000mメートルもの高さまで持ち上げられ巨大なテーブルランドが形成された。 この巨大な楯状地がその後の浸食作用を経て生まれたのが現在のギアナ高地のテーブルランド群である。 |
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| 巨大な楯状地が侵食されて現在の姿へ(McPherson, S. 2008) | 落差979m、世界最長のエンゼルフォール | |
このガイアナ楯状地の形成は恐竜が跋扈していたジュラ紀から白亜紀、そして約3000万年前の第三紀の中頃に亘ったと考えられている。したがって、かつては陸続きだったアフリカを発った人類が数万年前にこの地に到達したときにはすでに垂直に近い1000mを越える高さの絶壁が、台地の上への立ち入りを拒み、ヤノマミやペモンなどの原住民はそこを神の領域と信じ、テプイと呼んだ。 しかし、16世紀以降に大西洋を渡ってやってきたヨーロッパの人々は、この人を寄せ付けぬ濃い霧に閉ざされたテーブルランドに太古の世界の名残を夢見た。 1800年、オリノコ川を遡ってアマゾン川と合流する内陸まで探検した Alexander von Humboldt はニオポというマメ科の植物からとった麻薬吸飲や食人習慣のある原住民たちの文化を理解しようと考えを巡らせている。ギアナ高地の地史や動植物相についての本格的な調査を始めたのは、ドイツ人の Robert Hermann Schomburgk であった。1835年のことである。以後、多くの人々がこの地を調査したが、20世紀初頭になってもテプイの上の世界の詳細は謎に包まれていた。 1900年、ロンドンで王立地質学会の記念講演会で Everad Im Thurn のロライマ山についての報告を聞いた作家のArthur Conan Doyle は想像を膨らませて1912年にあの有名な『ロストワールド;The Lost World』を出版した。そこは、恐竜たちの跋扈する中生代の世界であった。 濃い霧の中に溶け込んで天空の彼方に消えるそそり立つ絶壁を見上げると、現在でもコナン・ドイルの描いた世界がそこに存在しても不思議ではない、そんな気持ちにさせてくれるのが、このギアナ高地であった。 |
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| 夢魔の世界~ロライマ・テプイ | 上部は雲に覆われているロライマ・テプイの東壁 |
| オリノコ川の支流、カラオ川のほとりのカナイマ集落にある落差40mのアチャの滝とアウヤンテプイ |
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グランサバナの花々 Flowers of the Gran Sabana
| 巨大な楯状地が悠久の時の流れのなかで侵食された結果、無数のテプイの麓に広がり緩やかに起伏する、平均標高800m、35000km2ほどの草原高地が形成された。それがグラン・サバナである。基本的にはグラス・ランドと呼ばれるようにイネ科やカヤツリグサ科の植物が優占するが、低潅木も見られ、川沿いには林も形成されている。またサンタエレナのような集落には導入された外来種も見られた。 |
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| Neomarica caerulea ブラジルから国境を越えてベネズエラに入るとき、コントロールの庭先に咲いていた。ブラジル原産のアヤメ科の植物です。 |
Swartzia arborescens サンタエレナのロッジの庭に植栽されていたマメ科の低木。この属は主に熱帯アメリカに分布していて150種ほどが記載されています。 |
| Eugenia sp. やはりロッジの庭に植栽されていたフトモモ科のエウゲニア。この属には約1000種が知られていて、内80%が熱帯アメリカ産です。 |
Clidemia octona subsp. guaiyanensis 道端の草地の中に茂っていたノボタン科のホイジェ・ボム(Feuille bome) です。 |
| Pagoda de blanco en prado いくつものテプイが遠望できる岡の草原に生えていたカヤツリグサ科の1種。ガイドさんは“牧場の白いパゴダと呼んでいました。 |
Tibouchina sp. 草地には低木も混じっていて、これはその一つ、ノボタン科のティボウキナ属の1種です。 |
| Trigonia sp. :Trigoniaceae 丘の麓の沢のほとりに咲いていたトリゴニア属の1種です。トリゴニア科には4属27種が記載されていますが、この属は熱帯アメリカ特産で7種があります。 |
Curatella americana :Dilleniaceae ビワモドキ科のクラテラ属には熱帯アメリカに2種あって、その一つです。このあたりではチャパルロと呼んでいるそうです。硬い葉を紙やすりに代用するそうです。 |
| Voyria sp. ; Gentianaceae 草原には薄い空色の、ちょっとリンドウに似たウォイリアの花がありました。この仲間も主に熱帯アメリカに分布しています。 |
Eleutherine sp. ?; Iridaceae 近くにはアヤメ科のエレウセリネの1種(?)が咲いていました。 |
| Brysonima sp. ; Malpighiaceae セレッテスと呼ばれるキントラノオ科のブリソニマ属の1種が藪に咲いていました。果実は食べられるそうです。 |
復活草 hierba restitudor 野火で焼け焦げた円筒形の茎(?)の先端に緑色の髪の毛ののような葉を茂らせた草がありました。 “復活草”と呼ばれています。 |
Cleistes rosea ちょっとトキソウ似た蘭が咲いていました。コスタリカ~ペル~ベネズエラ~ブラジルの1900m~2200mに分布するクレイステス属の1種です。 |
| Symplocos sp.: Symplocaceae ハスペの谷へ降りる途中で見たハイノキ科のシンプロコス属の1種です。よい香りがしました。コロンビアのボゴタ茶はこの仲間 (S. theiformis) の葉が原料だそうです。 |
Mimosa pudica オジギソウ malicia ロッジの近くの道端にはオジギソウが茂っていました。ブラジルが原産地ということになっていますが、いまでは世界中の熱帯・亜熱帯に帰化しています。 ロッジの人はマリカと呼んでいました。 |
| Allamanda cathartica Apocynaceae 近くの草原にはキョウチクトウ科のアリアケカズラが咲いていました。ガイアナからブラジル北東部が原産のつる性の低木ですが、今では南米はもとより世界各地の熱帯に帰化しています。有毒植物です。 |
Hebeclinium sp. Asteraceae ヒヨドリバナ属に近縁の植物で、約20種が熱帯アメリカに分布しています。 |
| Mandevilla subcarnosa : Tarro de blanco 白磁の壷のような花をつけた低木がありました。キョウチクトウ科(Apocynaceae)マンデヴィラ属(Mandevilla)の1種でした。 |
Araňa azule 青いシャンデリアのような花も咲いていました。クマツヅラ科(Verbenaceae)のStachytarpheta(ホナガソウ属)の1種だと思います。 |
| Palo chico en sabana “サバンナの小さな木”というそうですが、なんか、無責任な命名ですね。ベネズエラからボリビアにかけて分布しているキク科のGynoxysの仲間のようです。 |
Torta de hada : Lantana urticifolia f. alba 世界の熱帯から暖帯の各地で有害植物として嫌われているカリブ海域原産のランタナの仲間です。茎や葉に白い毛が密生していました。 |
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ロライマテプイの花々 Flowers on Roraima-Tepui
| すぐ隣のクケナン・テプイには雲がかかっていて着陸は難しいということで、ヘリはロライマ・テプイに。こちらは晴れ上がっていて、まるで月面のような世界が眼下に迫る。降り立ったところは縄文の火焔土器や土偶が立ち並ぶような場所。パイロットはロボットバレーだという。天候が1時間も持たないと脅されて、わわただしく花巡りをした。 昇ったばかりの朝日の斜光の中で、影の部分では手ぶれ、日向ではコントラストが強すぎ、よい写真が撮れなかったのは残念だったが、そのうちの一部である。 トレッキングのためのガイドブックなどにはこの地域では約7000種の植物が記載されていてその70%が固有種だと書かれているものがあるが、これはいささか眉唾で、今もって正確な種数はわかっていない。 数年にわたってこの地域の植物を調査したMaguire, B.(1970)の報告ではギアナ高地のフロラの75%が固有で、とりわけテプイの上では90~95%が固有種だという。しかしその後の調査の結果Berry, P.E. et al.(1995)はガイアナ楯状地のフロらは65%が固有でテプイ上部のそれは33%だと報告している。 それにしても、手元に資料が乏しくて、正確な同定ができていないのも心残りである。 |
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| Orectanthe spectrum : Xyridaceae | Microlicia sp. :Melanostomataceae | Eriocaulon sp. Eriocaulaceae |
| Octomeria sp.?: Orchidaceae | Cattleya sp : Orchidaceae |
| Stegolepis guianensis Rapateaceae 旅行社が発行しているギアナ高地のほとんどのパンフレットに“ロスとワールドの花”として登場する植物の一つがこのラパテア科のステゴレピス・ガイアネンシスですね。 この科は主にパナマからボリビアに分布していて、ガイアナ・アマゾンで多様化しています。また西アフリカにもこの科のMaschalocephalusが隔離分布しています。したがってゴンドワナ大陸の生き残り、つまり“ロスとワールドの花”の一つと呼べるかも知れませんね。ステゴレピスの熟した葯には穴が開いてポリネーターの羽ばたきで花粉が飛び散ると考えられています。 |
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| Drosera roraimae. : Droseraceae このモウセンゴケの仲間もギアナ高地の顔の一つですね。この個体はまだ若いようですが、年経たものは枯葉をまとった茎が伸び上がっています。 |
Bejaria imthurnii.: Ericaceae /Andean Rose ツツジ科のベヤリア属にはアメリカの熱帯を中心に約15種が知られています。シャクナゲに似た感じの花でアンデスのバラとも呼ばれるようです。 |
| Epidendrum sp.: Orchidaceae | Heliamphora sp. : Helianphoraceae |
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| ベネズエラとブラジルとガイアナの3国が国境で接しているロライマ・テプイの固有種のオレオプリネラ・クエルチー(Oreoprinella quelchii)。捕食者に襲われる心配のない環境で進化したため無防備な存在になったといわれるが、黒い岩の上でじっとしていれば簡単には発見されないだろう。立派な保護色ではないでしょうか。 | カナイマ集落のオトゥルベンサ・ロッジの朝。食卓の残り物を片付けにやって来た可愛い目をしたアマゾン・オーム(Amazona amazonica)です。中米からブラジルまでの広い範囲に分布しているそうです。 |
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カナイマの花々 Flowers of Canaima
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| カナイマ・ラグーンにカラオ川から雪崩落ちる4本の滝。向かって右からウカイマ、ゴロンドリナ、ワダイマ、アチャの滝です。上空から見るとさほど大きくは感じないのですが、ラグーンから見上げると、その水量に圧倒されます。連滝の向こうにはエンゼルフォールのあるアウヤンテプイが聳えています。 |
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| Adiantum sp. Adiantaceae エンゼルフォールのミラドールへ登ってゆく途中の林床で見たクジャクシダ属の1種。 |
Psychotria poeppingiana Rubiaceae アカネ科の通称ホットリップです。中米から南米にかけて広く分布しています。プツマヤ族はこの葉の煎汁を飲んだり葉を胸にこすり付けたりして呼吸器病を治すそうです。 |
| Guzmania lingulata Bromeliaceae アナナスの仲間で地上性です。 |
Anthurium guayanum Araceae アンスリウムの1種で、この地域の固有種です。エンゼルフォールの下の林床を埋めていました。 |
| Clusia criuva Guttiferae(=Clusiaceae) オトギリソウ科のクルシアがロッジの庭に咲いていました。この種はブラジル原産で植栽されたものです。日本でも植物園で見ることができます。 |
Posoqueria longifolia Rubiaceae 熱帯アメリカに広く分布するアカネ科の種で、園芸植物としても各地で栽培されている。ポリネーターが長い花筒から覘く葯に触れると勢い良く花粉が飛び散り、花筒はすぼまって自家受粉を避ける仕組みがあります。香りが高いことでも知られています。 |
| Cyperus ligularis? Cyperaceae カナイマ・ラグーンのほとりに生えていました。スゲ科の分類は難しいですね。 |
Arbusto de panal 蜂の巣の木 特徴的な果実の木なのですが、まだ種名がわかりません。 |
| Tococa sp.? Melastomataceae ノボタン科のトコカ属の1種かと思うのですが、この赤いUFOのようなものは何なのでしょう。虫瘤にしては形が整いすぎているようですが・・・・。 |
Nautilocaryx porphyrotrics Gesneriaceae ミラドールへの上り坂の暗い森の中の岩の上に生えていました。イワタバコ科です。 |
| Anthurium roraimense Araceae エンゼルフォールの麓の林床でみた小型のアンスリウム・ロライメンセです。花茎は葉柄の1/3ほどで、真っ白な仏炎苞が目立ちます。 |
ミニ恐竜 大型のアンスリウム、A. guayanum の根本におかしなものがありました。海老の尾部にも似ています。見方によってはミニ恐竜ですね。何なのでしょう? |
| Smilax saulensis Smilacaceae ラトンシート島の藪の中で見つけたサルトリイバラ属の1種。オレンジ色に熟した実が印象的でした。 |
Eugenia gongylocarpa Myrtaceae ロッジの近くの道端に咲いていたエウゲニアの1種。旧世界の熱帯に分布するフトモモ属(Syzigium)に近い。 |
| Trimezia martinicensis Iridaceae 西インド諸島が原産のアヤメ科の植物す。園芸用に栽培されています。、今では熱帯各地で野生化しているようです。 |
Heliconia psittacorum Heliconiaceae ガイアナからベネズエラにかけて自生する美しいしょくぶつです。ロッジの庭に植栽されていました。宿のご主人がフロレス・ド・パパガイオだと教えてくれました。 |
| Vellozia maudeana Velloziaceae 初めて出会ったヴェロジアでしたが、サポの滝の裏に入ってびしょ濡れになると聞いて、持っていたのは耐水性のインスタントカメラだけだったためこんな写真しか撮れませんでした。残念です。 原住民のKubeo族は幹の周りの濃褐色の繊維を皮膚病の治療に利用しているそうです。 ヴェロジア科の植物はゴンドワナランドの生き残りらしく、南アメリカ・アフリカ・マダガスカル・アラビアに分布しています。かつてはユリ目に入れられていたが、DNAのデータではタコノキの仲間に近縁だということになりました。 |
Carica papaya Caricaceae mamăo メキシコからコスタリカにかけての地が故郷ではないかと考えられているパパイヤです。16世紀にスペインの探検者たちがカリブ海域の島々と東南アジアに導入したのが始まりで、皆様ご存知の通り今では世界中で栽培される重要な果樹となっています。 株によって両性花を咲かせるもの、雄花のみ、雌花のみを咲かせるものがあります。 高地で栽培されていてもっぱら調理して食べられているマウンテン・パパイヤ(C. candamarcensis)はアンデス産です |
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| 参考文献 References |
| 1) Schultes, R.E. & Raffauf, R.F.: The Healing Forest - Medical and
Toxic Plants of Northwest Amazonia. Dioscorides Press (1990) 2) McPherson, S.: Lost Warlds of the Guiana Highlands. Redfern Natural History Productions (2008) 3) Mori, S.A. et al.: Guide to the Vascular Plants of Central French Guiana Part 1 & 2.New York Botanical Garden (1997) & (2002) 4) Smith, N. et al. ed.: Flowering Plants of the Neotropics. Princeton Univ. Press (2004) 5) Mabberley, D.J.: Mabberley's Plant-Book. Cambridge Univ. Pres. (2008) 6) Maguire, B. & Collabs.: The Botany of Guiana Highland-Part XI. N.Y.Bot.Garden vol. 32 (1981) 7) Maguire, B.: On the flora of the Guayana Highland, Biotropica 2: 85-100 (1970) 8) Berry, P. E.. Huber, O., and B. K. Holst.: Floristic analysis and phytogeograpy: 161-191 in Steyermark, P.E. et al., Flora of the Venezuelan Guayana, Vol.1. Timber Press (1995) 9) 関野吉晴:ギアナ高地 講談社 (1989) |
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