thailand

タイで出逢った花たち

THAILAND ~Chiang Mai and Chiang Rai

千葉大学植物同好会OBの方々とその内のAさんとSさんが経営する農場を見学するためにチェンマイに出かけました。その際出合うことのできた花々です。

チェンライのバドゥン族村落の高床式住居と友達を待つオチビさん

 

 日本と違って、熱帯の街角の花はどこの国でも似たようなものですが、これはその内の一つ、チェンマイ到着の翌朝にビン川のほとりに立つホテルの庭に咲いていたカエンボク火焔木Spathodea campanulata)です。

 熱帯アフリカが原産で、材が悪臭をもっているのでガボンなどでは呪杖にされるそうです。茎からの抽出液は狩猟にも使われ、容器に入れてブッシュに置いておき、これを飲んで死んだ獣を食べます。またトンゴでは月経不順の治療薬でもあるそうです。
 英語圏ではアフリカン・チュウーリップツリーと呼ばれています。タイでの呼び名は発音が難しいのですがガイララウと聞こえました。アルファベット表記ではGai-phra-lawとなるようです。

 チェンマイ郊外のAさんのラン育苗園の入口にムラサキソシンカBauhinia purpurea)の大木がありました。
地表近くまでしだれた枝に咲いていた美しい花です。

 インドから東南アジア原産のマメ科の高木で、熱帯各地で植栽されています。
 ウスベニハカマノキ、ムラサキモククワンジュ、バタフライ・ツリー、オーキッドフラワー・ツリーなど、いろいろ名で呼ばれますが、ご年輩の方々には羊の蹄を連想させる葉の形に因んだ“羊蹄木”の方が通りがよいのではないでしょうか。
 インドでは花芽をカレーに入れたり酢漬けにするそうです。タイの人たちはチョンコー(Chong-ko) と呼びますが、ガイドさんは意味など知らないとそっけなかったです。


 チェンマイに着いた夜はロイカトーン祭の最中で、コムローイの小さく赤い火が暗い夜空を人々の鎮魂の思いを乗せて音もなく流れていました。
 次の日、Aさんの農園で目にしたこのパックワン(Pak-wan: Sauropus androgynus)の花被片の赤さは昨夜見たコムローイの火を思い出させてくれました。

 トウダイグサ科( >コミカンソウ科:Phyllantheae)のこの背丈1m足らずの低木はタイからマレーシア、インドネシアにかけてが原産地で、タイでは林中の沢筋に多いそうです。
 タイでは、垣根にしたりピンクに色づいた実を食べたりするそうです。齧って見ましたが熟していなかったせいかスポンジのような歯ざわりで味はありませんでした。葉は食べ物を緑に染めるときにも利用するようです。
 スマトラ島では母乳の出が悪いとき実を搾った汁を使うといいます。


 飲茶のランチで一休みした後、チェンマイのカムティエン地区にある大きな花市場を覘きました。
 蘭の国を標榜するだけのことはあって、多種多様なランが展示販売されていて、その多くは私にとっては初めて出会うものでした。
 なかでも、とりわけて感激したのはタイにも自生しているというバルボフィルム・ロンギッシムムBulbophyllum longissimum)でした。
 筒状に合着して、50cmもの長さにするすると垂れ下がって、わずかな風にもゆらゆらと揺れる薄い肌色の側蕚片は、まさに造化の妙としかいいようがありませんね。
 しかも、近寄ってよく見ると、その筒の中からのぞいている葯帽と柱頭の乗った蕊柱の形がまるで揺り篭で眠っている小さなニンフか宇宙人(もっとも見たことはありませんが)のようでした。


 チェンマイの市街を一望できる標高1080mのスティープ山の上に黄金の巨大な仏塔が建っています。ワット・ドイ・スティープです。観光客でにぎわうこの寺院の庭で出合った花の一つが黄金細工のようなキバナクチナシGardenia carinata Wallich)でした。
 タイからマレイシアの丘陵地の森に自生しているクチナシの仲間で、庭園でも栽培されています。
 日が落ちてから蕾がほころびますが、開花直後は薄いクリーム色で、受粉がすむと黄色、やがてオレンジ色に変わってしぼみます。ハネミクチナシという和名もあるようですが、英語名には産地マレイシアのケダ州に因んだKedah Grdenia、花色に因んだGolden Gardenia などがあります。現地ではランダと呼んでいました。

 ワット・ドイ・スティープの300段もある階段を下っている途中に、シンガポールやインドネシアでもよく目にしたことのあるコウシュンカズラTristellateia australasiae A. Rich.)が咲いていました。

 タイとマレイシアからフィリピン、西表島、オーストラリアにかけての沿岸地帯に自生しているキントラノオ科(Malpighiaceae)の半つる性の低木です。
 熱帯では一年を通して花が見られるので広く庭園で栽培されています。
 開花直後のオシベは花びらと同じ黄色ですがやがて真っ赤になりきれいです。
タイではプアン・トン・クラ(Puang-thong-krua)と呼ぶそうです。


 ドイ・スティープの300段の階段を登りきると、そこには数本の大木がありました。
 そのうちの一本が砲丸のような大きな実をたくさん下げたホウガンボクCouroupita guianensis Aubl.)でした。
 パナマからコロンビア、ヴェネズエラ、ガイアナ、ブラジルにかけて分布するサガリバナ科の高木ですが、世界中の熱帯で観賞用に栽培されています。
 花序は灰色の幹から直接生じています。いわゆる幹生花です。肉質で奇妙な形の花にはクマバチの仲間を中心に多くの昆虫が訪花します。日中はほとんど香りませんが、夜間には芳香が流れるといいます。一年以上かけて成熟する果実は直径20cmにもなります。パルプ状の果肉はひどい香りだそうです。
 話は変わりますが、タイではこの木を
サラ(Sa-lah)と呼んでいます。現地ガイドさんもこれが釈尊入滅のとき咲いた沙羅双樹だといっていました。どうしてタイではこの南米の木を沙羅の木と混同しているのでしょう。どうやら混同の発端は19世紀に描かれたスリランカの寺院の壁画にあったようです。詳しい経緯についてはレヌカー・ムシカシントーンさんの『タイの花鳥風月』をご覧ください。

 この美しい花、オウコチョウCaesalpinia pulcerrima) もドイ・スティープの階段の途中に咲いていました。

 以前は南米熱帯が原産地といわれてバルバドス・プライドとも呼ばれていましたが、最近の研究によると、どうやらアジアの熱帯が故郷のようです。
 いまでは世界中の熱帯・亜熱帯で目にすることができる花の一つです。
 あの恐ろしい棘のあるものの美しい花を咲かせるのサルトリイバラもこの仲間です。
 オウコチョウの葉にはキニーネと同じ成分があって、それを知っているカルカッタのスズメはマラリヤ流行期にはこの葉を巣作りに利用するそうです。
 オウコチョウは黄胡蝶の意味で、花の色に因んだものです。真っ赤な花もありますので、この場合はヒメホウオウボク(姫鳳凰木)という名の方が相応しいような気がします。
 タイではノックヨン・タイ(Nok-yoong Thai) と呼ばれています。


 世界の熱帯・亜熱帯で広く栽培されていて、日本の植物園の温室でもお目にかかることのできるナガラッパバナSolandra longiflora)がチェンマイのカムティエン花市場に咲いていました。

 西インド諸島が原産地のナス科の半つる性植物です。大きなラッパ状の花は咲き始めは白くてよく香り、やがて黄色に変わります。
 この仲間は有毒植物ですが、先住民は幻覚を引き起こす性質を利用して儀式に使ってきたそうです。
 ソランドラという属名はリンネの弟子でイギリスに渡りバンクス卿と親交を結んだ植物学者の Daniel. C. Solander への献名です。
 英語名はカップ・オブ・ゴールドあるいはゴールデン・チャリスですがタイではトゥアイソン(Tuay-thong)と呼ぶそうです。

チェンライの市街地に位置する古刹ワット・プラケオにはさまざまな樹木が植栽されていました。その一つがこのタイピンアソカSaraca thaipingensis Cantley ex King)です。中庭の暗い茂みに立つ太い幹に咲いていました。

 インドシナ半島の西側からインドネシアに自生するマメ科(ジャケツイバラ科)の高木です。仏典の三大聖樹の一つのムユウジュ(無憂樹:Saraca indica L.)の近縁種ですが、タイやシンガポールではこの木をムユウジュと同一視している人も多く、
アソークと呼んでいました。
 日本や韓国では無憂樹といえば釈尊生誕にまつわる木ですが、東南アジアに伝わった南伝小部経典では釈尊が生まれたのは沙羅の木の下ということになっているそうです。
 むろんインドでも無憂樹が聖樹であることには変りないのですが、若い娘さんに蹴飛ばされるとたくさん花を咲かせるともいわれています。罰が当たらないのかな~。


 最近は日本の園芸店でも目にするようになったワイルド・プルメリア(Wild plumeria: Pulmeria pudica)がチェンマイのSさんのナーセリーで育成されていました。

 パナマ、コロンビア、ヴェネズエラが原産地の低木です。熱帯の街路樹として広く植栽されていて、ハワイではレイや髪に飾ることで知られるFrangipani、プルメリア・アルバ(P. alba)、とともに、タイでは
ラントム(Lan-tom)と呼んでいるそうです。
 街路樹は別として、東南アジアでは一般に寺院に植えられていて、普通の家の庭ではほとんど目にしません。
 タイのラントムという名は嘆くという意味のラトムに因んだもののようです。
 ワイルド・プルメリアは Fiddle leaf plumeria とも呼ばれますが、これはバイオリンやチェロに似た葉の形にちなんだものです。

 Sさんのチェンマイ・セクトン・フローラ園内のクリークにミズカンナらしいものが群生していました。
 近寄ってみるミズカンナ(Thalia dealbata)と違って花穂が枝垂れ、花弁がランの花のようにきれいに開いていました。
タイの人々がクライマイナウ(Kluay-mai-nam)と呼ぶミズカンナの近縁種のThalia genuculata でした。

 この属のものではもっとも分布範囲が広く、中央アフリカ、熱帯南アメリカ、メキシコ、北米南部から報告されています。もっともアフリカのものは近世になってから帰化したものといわれています。
 北米ではフロリダ半島に密に分布していて、アリゲイターフラッグ(Alligator Flag)の名で親しまれています。
 シダレミズカンナという和名はいかがでしょうか。


 エレファント・キャンプの入口の側を流れる沢の縁を少し歩いてみました。

 茂みの中からすっと伸びた枝に硬そうな小判型の葉を互生させ、それぞれの葉腋から長い花柄を垂らし、その先に小さな帽子のような形の花を咲かせた低木に出会いました。
 タイ語でワン・トラニ・サン(Wan-trani-san)と呼ばれる Phyllanthus pulcher でした。

 パックワンと同じ科で、インドネシアからタイにかけて分布しています。やはり催乳成分などがあるらしく薬用植物として栽培されるそうです。最近は妖精の帽子のような可愛い花が注目されて園芸植物として植栽する人もいるようです。

 Sさんのチェンマイ・セトコン・フローラの農園の昼休み、にぎやかに明るい笑い声のもれる作業員休憩小屋は濃い緑の葉とピンクの花で覆われていました。
 作業員の娘さんに名前を聞くと、ガッチェム・タオ(Gatiem-tao)だそうです。
 ノウゼンカズラ科のつる植物、Mansoa alliacea (Lam.) A. Gentry (= Pseudocallymma alliaceum)です。 葉や茎にはニンニク臭があるので英語名はGarlic vine です。熱帯各地で観賞用に栽培されています。
 この属は熱帯アメリカに分布していて、6種が記載されています。原産地の先住民は薬用植物として利用しています。アマゾン北西部とガイアナでは近縁種のM. standleyi (Steyerm.) A. Gentryの葉を潰して解熱・鎮痛に湿布し、葉を煎た汁は吐瀉剤とします。


 チェンマイの街角にはどこにいっても無愛想なワンちゃんがうろうろしていました。Sさんの農園でも3匹のイヌを飼っていましたが、この子達も愛想がなく、遠来の客人にも興味を示しませんでした。誰にでも愛想のいい日本のワンちゃんとは大違いでした。

 寝そべっていたそんなワンちゃんの一匹が、ふと何か思いついたように立ち上がって農園の小道を歩き始めました。そこで好奇心の強い私はその後についてゆきました。しばらくするとこのワンちゃんは強い日差しを避けるように金色の花房の下がる低木の陰に座り込みました。タチノウゼン(Tecoma stans)でした。

 タチノウゼンは北米南部から中米、南米の地が原産です。花が美しいので世界中の熱帯・亜熱帯で観賞目的で植栽されています。英語名ではYellow elder、Yellow bells などと呼びますが、タイではソグライ(Thong-urai) と呼ぶそうです。
 雑草のように茂って迷惑がられているこのつる草もちょっと手を加えると「ほら、このような面白い形の花材になるよ。結構市場でも引き合いがあるんだ」と、Sさんが自慢げに見せてくれた銀色の短毛で覆われた蔓はギンヨウアサガオArgyreia nervosa)でした。
 インド亜大陸が原産地だといわれている朝顔の仲間です。
タイでは皆さんバイ・ラ・バーツ(Bai-la-baht) と呼んでいるそうです。直訳すれば“一枚一バーツ”という意味です。おかしな名前だと思ったのですが、説明をうかがって納得しました。この葉は打身や捻挫の特効薬なのだそうです。昔の一バーツといえば大金だったことでしょう。それほどよく効く薬だったのですね。裏が銀色の大きな葉をもんで湿布するそうです。
 インドでも薬用していますが、絞り汁を虫刺されなど消毒や消炎にも使うそうです。種子には幻覚作用を引き起こすアルカロイドが含まれています。


 Sさんの農園を見学している途中、これから開墾して広げてゆくつもりだという藪にカラスウリそっくりですが少し細長い感じの瓜がいくつも下がっているのに気づきました。
 蔓をたどると、強い日差しを浴びて、真っ白な花が咲いていました。ヤサイカラスウリCoccinea indica) でした。

 実や葉の形はたしかにカラスウリに似てはいるのですが、見られるとおり花の形や葉質が違っていて別属の植物です。東南アジアからアフリカにかけて分布しています。
 タイではタムルンTam-lueng)と呼ばれ、野菜として家庭菜園に植えています。若葉を湯がいていろいろな料理の具の一つにしているそうです。
 ビルまでは食用するだけでなく、葉を皮膚病の治療に使います。スーダンでは若葉だけではなく果実も食べるそうです。


 Aさんの圃場の一角に調節池をかねた湿地があって、その水面を覆うように茂った水草たちに混じってアサガオらしき花が咲いていました。近寄ってみると湿地を好むヨウサイ(蕹菜:Ipomoea aquatica Forsk)でした。
 中国南部から東南アジアの池や沼に広く分布する蔓性の多年草です。日本では茎が中空なことに因んだ中国名の一つの空心菜の名で知られる野菜です。
 タイでも油炒めやスープの具として重宝がられ栽培もされています。ブーンBoong)と呼んでいました。インドネシアではカンコン(Kangkong)と呼び、不眠症や偏頭痛などにも効くといわれています。インドの東部ではコルミ・シャーグ(Kolmi-sag)といい、兄嫁たちにいじめられて殺された末娘の生まれ変わりだという昔話があるそうです。
 ヨウサイという和名は“洋菜”と間違えやすいようですね。学名の直訳ですが、ミズアサガオというのはいかがでしょう。

 この、これほどの赤い花はないだろうと思うほどに赤い花は、あちこちの庭園に植栽されていました。
 この株はチェンライのワット・プラケオの入口近くに咲いていました。ナンヨウザクラという和名のあるJatropa integerrima Jacq. でした。

 カリブ海域が原産地のトウダイグサ科のナンヨウアブラギリ属の低木で、熱帯各地で栽培されています。有毒植物です。葉の形は変化に富んでいて、この株は切れ込んでいますが、単葉のものが多いようです。

 タイではバタヴィアBahtavia)と呼ばれていと呼ばれていますが、西インド諸島原産の植物がどうしてインドネシアのバタヴィア(ジャカルタ)と呼ばれるようになったのでしょうか。きっとジャガタライモと同じようにバタヴィア経由で移入されたのでしょう。


 Sさんの農園は広大で、あちこちに入口がありますが、この花はメインゲートからオフィスに続く道の脇に咲いていました。
低木仕立てに刈り込まれているオオバナアサガオCryptostegia grandiflora R. Br.)です。

 和名だけ聞けばアサガオの仲間なのだろうと思うのですが、姿をみればとてもそうは思えません。それもそのはずで、キョウチクトウ科(Apocynaceae)の植物でマダガスカル島が原産です。熱帯・亜熱帯では観賞用に広く栽培されています。
 茎を傷つけると白い樹液がこぼれますので英語名は rubber vine です。

 オオバナアサガオは最近までガガイモ科に分類されていました。しかしDNAに基づく系統解析の結果、この植物を含めて、ガガイモ科としてまとめられていたものはキョウチクトウ科の中に分散してしまいました。

 ホテルや大きな寺院の庭先で目にすることが多かったものの一つがこの花です。タイではチュワンチョムChuan-chom)と呼ばれるAdenium obesum (Forssk.) Roemer & Schultes)です。

 東アフリカからアラビア半島が原産地のキョウチクトウ科の低木で、茎には貯水組織が発達しています。
 狩猟採集民族は古代から矢毒として利用してきたようです。例えば、タンザニアのハザ族(Hadza)はさまざまな草食獣を狩の対象としていますが、矢毒を使うのはシマウマやバッファローなどの大型獣に対してで、この場合狩人は単独で行動するそうです。
 東南アジアでは広く植栽されていますが、とりわけ中国系の人々が好んでいるそうです。タイでの呼称も漢字表記すれば{請賞花]となるそうです。「私をほめてください」ということでしょう。この木を植えておくと金持ちになるともいわれているそうです。バリ島ではなぜか
ジェプン・ジェパン(jepun jepang、つまり「日本のプルメリア」と呼んでいました。


 今回のチェンマイの旅では、ラン栽培家のAさんの案内もあって、実に多くのランの花を目にすることができました。
 その中で最初に出合ったのが、Aさんの圃場のエントランスに沿って植栽されていたこのスパトグロティス・アウレアSpathoglottis aurea Lindley) でした。

 主にマレー半島からスマトラ島、ジャワ島、カリマンタンに分布していて、丘陵地の草地に多いそうです。タイ北部には自生してはいないようです。

 美しいランですので、チェンマイでもあちこちで栽培されているそうです。
 ピンクの花のコウトウシランの近縁種です。

 タイ、ミャンマー、ラオスの3国が隣り合う黄金の三角地帯にあるメコン川の観光用ボート乗り場に、純白で甘い香りのする花を枝先に集めて咲く大木がありました。コルクツリー(Indian cork tree : Millingtonia hortensis L.f.) でした。

 ミャンマーが原産地といわれるノウゼンカズラ科の1属1種の高木です。樹高は20mに達するそうです。ノウゼンカズラ科としては珍しい花形で、長い花筒は30cmにもなります。
 栽培が容易なようで、東南アジアでは寺院や公園に植栽されていますが、野生化したものも目につきます。
 タイではビープBeep)と呼ばれていますが、樹皮がコルクの代用品にもなるので英語名はインディアン・コルク・ツリーです。インディアンというのはインドで広く栽培されていて、材をアッサム茶などの茶箱に利用したからだそうです。


 1月上旬のタイ北部の街道筋で頻繁に出会えたのが、この美しい樹形とみごとな花穂を立てたウラゲモクセンナCassia spectabilis DC.)でした。

 花期が長いらしく、30cmを越すほどの紐状の緑の豆鞘を簾のように垂らした枝もありました。

 熱帯ブラジルが原産の樹高15にもなる植物ですが、姿形がよいので各地の熱帯で観賞用に植栽されています。
 タイではケーレック・アメリカKhee-lek-Americana)と呼んでいました。ケーレックはカッシアの仲間の総称だそうです。
 一方、ブラジル北東部にはパゥ・デ・オヴェーリャPau-de-ovelha) という名があります。羊の木という意味です。

 最近の研究によるとこの木の葉にはカンジダ菌類に対する強い抗菌作用のある成分が含まれているそうです。
 チェンライのアカ族の部落の藪の中に、緑色の奇妙な形で、思いのほか好い香りのする花をつけた木がありました。イランイランノキYlang YlangCananga odorata (Lam.) Hook f. et Thoms) でした。
 東南アジアからインド、アフリカ東部に自生していて香料植物として熱帯各地で栽培されているバンレイシ科の植物で、よく育ったものは樹高40mにもなるそうです。花被片は9枚で、中央の果托にたくさんの柄のある実をつけます。
 イランイランというのはフィリピンのタガログ語で、“花の中の花”という意味だそうです。タイではクラダンガKradanga)と呼んでいます。
 19世紀後半に流行したイランイラン香水はこの花を蒸留したものです。シャネルのNo.5'などにもこの花の香りが入っているそうです。スリランカなどではキンマ(Piper betle L.)の葉にビンロウの実、石灰とともに包み込んで噛んで、刺激と香りを楽しむとも聞きました。


 エメラルドの仏像が飾られていることで知られるワット・プラケオの庭に、長い花穂に白い小さな花を連ねたキタレクシルムCitharexylum spinosum L.)が植栽されていました。

 西インド諸島が原産地といわれるクマツヅラ科の低木です。花がよく香り、オレンジ色から真っ黒に熟す果実が連なるようすが美しいので、観賞目的で栽培されます。東南アジアでは寺院でであうことが多いようです。タイではブンガ・バリBuknga Bali)と呼んでいました。

 英語名はフィドゥル・ウッド(Fiddle wood)ですが、属名の英語訳です。この材がバイオリン作成に使われたからだそうです。種小名は‘棘がある’という意味ですが、茎や葉には棘はありませんでした。

 この属には70種以上があって、カリブ海域からアルゼンチンにかけて分布していて有毒植物ですが、ベネズエラの先住民プツマヨ族はこの仲間の葉を煎じて解熱剤として使うといいます。
 チェンライのワット・プラケオの庭には直径が10cm以上もありそうな大きな丸い緑色の実を幹につけたカラバッシュ・ツリー(Calabash tree:Crescentia cujete L.) が植栽されていました。タイではヅイーン・ペド・ファラン(Dteen-ped-farang) と呼ぶそうです。フクベノキあるいはヒョウタンノキという和名もあります。
画像の右下に幹から直接に咲いている花が写っています。
 メキシコ南部から熱帯アメリカが原産のノウゼンカズラ科の低木です。
 かすかに硫黄臭のする花はコウモリが主な花粉媒介者ですが、ハチも訪花します。楽器や食器に利用される大きな実は硬く、割られないかぎり閉じ込められている種子は発芽できません。したがって種子の分散は、実を噛み割ることのできる馬か、人間に頼っています。しかし、この地域に人と馬がやってきたのは地史的にはごく最近のことですから、この硬いからはそれ以前にこの地域にいて人類によって絶滅した巨大な草食獣、例えば象に似たゴンフォセレス(Gomphotheres)など対する適応だったのでしょう。ちょっとモーリシャス島のドードー物語にも似ていますね。
 また、最近の研究によるとこの木には神経成長因子を活性化させるイリドイド配糖体が含まれているそうです。


 ミャンマーのカヤ州に3万少しとタイに約500人が残るのみのといわれる、首長族として知られるパドゥンの村落の一つが、チェンライの近くの丘陵地帯にありました。

 その、丘の斜面の藪の中に真っ赤な苞片が目を引く花穂がありました。ブラジリアン・レッド・クローク(Brazilian red cloak:Megaskepasma erythrochlamys Lindau.) でした。

 ベネズエラ原産のキツネノマゴ科の低木で、1属1種です。
コスタリカからパナマにかけても野生状態で生育していますが、逸出したもののようです。コスタリカではパヲチージョ(pavocillo:小さな孔雀)と呼んでいました。

 この画像でははっきりしませんが、苞のなかからピンクの2弁の花が覗きます。花そのものは数日で萎れてしまいますが、苞は一年を通じて観賞できます。そのため日本の温室でもよく栽培されています。
 チェンマイ郊外の、最近整備されたという温泉公園の土産物店の際に、光沢のあるきれいな複葉を茂らせて、幹や枝に沿って白く丸い実を連ねた木が生えていました。 店先の売り子さんに名前を聞くと「これはマイヨーの木よ」と教えてくれました。バンコクなどではマヨム[Mayom]と呼んでいます。
 トウダイグサ科のPhyllanthus acidusでした。
 原産地については諸説がありますが、Morton, J. (1987)はマダガスカル島から東インド諸島を経て東南アジア一帯に食用果樹として移入されたものと考えています。現在ではタイ、マレイシア、ラオス、インドネシア、フィリピンなどのホームガーデンで目にすることができます。カリブ海域へは、先ず18世紀の末にチモール島からジャマイカに運ばれ、ここを起点に中米、南米、フロリダなどへ広まったようです。
 アメダマノキ(飴玉の木)という和名は実の形に因んだものでしょうが、味は酸味が強く、とても飴玉とはいえません。完熟したものは生食できますが、普通はピクルスにしたり、スライスして砂糖で漬けて、それを搾った汁を調味料に使います。カレーなどに添えるインドの薬味のチャトネにもこの実が使われています。
 根皮は有毒ですが、マレイシアでは咳や頭痛はひどいときこれを煮てその湯気を吸引させるそうです。


 メコン川がラオスとミャンマーと国境となるチェンセーンのレストラン、ゴールデンアヤラの庭先に、金色の地に褐色の斑点を散らしたアイリスの仲間が咲いていました。フォアヌーン・イエロー・フラッグ(Forenoon yellow flag:Trimezia martinicensis (Jacq.) Herb.) でした。名前の通り、昼を過ぎれば萎んでしまいます。
 西インド諸島が原産というのが通説のですが、疑義を挟む研究者もいます。熱帯圏に広く栽培されていて、野生化した場所も多いアヤメ科の植物です。
 花が美しいだけではなく、薬用植物として利用され、トリニダードなどでは根茎のエキスがDoragon's bloodと呼ばれ、流行性感冒や頻尿などに処方されるそうです。
 Goldbratt, P. & J.C. Manning (2008)「The Iris Family」にはこの植物にT. steyermarkii R. Foster という学名が当てられています。ウエブサイトでも混乱しています。どうやらGoldbratt さんが染色体数で区別したようで、n=20と40のものがT. martinicensis、n=26 のものがT. steyermarkii ということのようです。花形だけでは区別できないと思います。
 チェンマイ郊外の村落に入ると、家の垣根やあちこちの藪に濃いピンクの小さな花を連ねたつる草が目につくようになります。
熱帯に旅すればほとんどの場所で出合うことのできるアサヒカズラAntigonon leptopus Hook. et Arn.)です。

 メキシコが原産のタデ科のつる植物で、新世界の発見とともにフェンスや生垣を飾る植物として世界中の熱帯・亜熱帯に運ばれ、あちこちで野生化して、繁殖力が強すぎて有害植物にリストアップされている国もあります。日本に渡来したのは大正時代だそうです。熱帯では一年を通して咲いていますが、日本でも夏の間は咲かせることができます。

 メキシコではサルミネント・コラリナ(珊瑚のような蔓)と呼び、英語圏にはチェイン・オブ・ラブなどの名があります。タイでは一般にプアン・チョムプーPuang-chompoo)というようです。プアンは房、チョムプーは桃色です。タイにはラーマ5世の頃に渡ってきたといわれています。


 Sさんは観葉植物や奇妙な花を咲かせる植物もたくさん栽培して市場に出していますが、そんな植物を集めた圃場の一角にブラック・キャットTacca chantrieri Andre) の鉢が並んでいました。

 中国の雲南地方から東南アジアにかけて分布しているヤマノイモ目タシロイモ科の多年草です。この特徴的な花形から、ブラック・バット・フラワー、デビル・フラワー、キャット・ウイスカーなど、いろいろな名前で呼ばれています。中国での呼称は箭根薯です。薬用植物として注目されていてHL-60白血病に薬効のあるスピロスタノール・サポニンが根茎に含まれている、などの報告があります。
 また、園芸の世界ではマレーシアからインドネシアに分布するホワイト・バット・フラワー(T. integrifolia Ker-gawler) との混同がみられます。
 何年か前に日本の園芸店で出合ったことのあるブルーキャッツアイOtacanthus caeruleus Lindl.)がチェンマイ郊外の温泉公園に植栽されていました。 黄色や赤色などの暖色の多い熱帯の花の中ではこの青い花はなんとなく涼しげです。
 ブラジル南東部の沿岸地帯に固有の属で7種が記載されていますが、その一つで、観賞植物として世界の熱帯で広く栽培されています。そのため、マダガスカルやマスカリン諸島などでは野生化しています。
 2枚の花びらの出合う部分が目のように抜けていることがこの名の由来のようですが、アマゾン・ブルーブラジリアン・スナップドラゴンなどの名もあります。
 形態学的にはゴマノハグサ科に分類されていますが、最近のDNAの系統解析からゴマノハグサ科は分解され、この植物はウンランやクガイソウなどとともにオオバコ科に移されています。


 Sさんの圃場を見学している途中で、こんもりと茂って薄紫の花が盛りのムラサキアリアケカズラAllamanda violacea Gardn. et Field.)を見ました。

ブラジル原産のキョウチクトウ科の潅木ですが茎がしなやかで風には弱いので壁際や支柱を立てて栽培することが多いそうです。
花色には濃淡があり、白色に近い薄いピンクから濃い赤紫色もでさまざまな品種があります。

熱帯アメリカに分布するこの属には14種ほどが知られていてすべて有毒植物ですが、強力な下剤として利用することもあるそうです。
 ムラサキアリアケカズラの茂みの隣にはこの熱帯の国タイを象徴するかのような、真っ赤に燃え立つ苞葉に囲まれた小さな白い花を咲かせたアシャンティ・ブラッド(Ashanti blood:Mussaenda erythrophylla Schum. et Thonn.)が植栽されていました。アシャンティはガーナ共和国の地名です。
 熱帯西アフリカが原産のアカネ科の低木で、広く栽培されている東南アジア原産のコンロンカの仲間です。
 ガーナではヨーモグゴーサ(yoomogugosa)などと呼びます。‘お婆さんの鼻水’という意味だそうですが、茎を切ると粘液が流れることに因む名です。アシャンティにはこの赤い苞は戦士の血をたぎらせるので、散ってしまって白い花だけになると戦が止むという言い伝えがあります。
 タイではドンヤ(Don-ya)と呼んでいました。


 ドイスティープ寺院の長い石段を登りきるとホウガンボクの大木の隣には幹周りが一抱え以上もある古木あって、その幹にもいくつもの楕円体の実が下がっていました。
 パラミツArtocarpus heterophylla Lam.)の木でした。
 東南アジアが原産というクワ科の高木です。パラミツ(波羅蜜)という和名はサンスクリット語に由来するものですが、ナガミパンノキともいいます。最近は和名より英語名のジャックフルーツの方が通りがよいようですね。熟した果実は大きなものでは40kgにもなり、最大の果実としてギネスブックに登録されているそうです。ドリアンに似た香りがあるので嫌う人も少なくありませんが、東南アジアでは重要な食料の一つです。インドでは未熟な青いものの方がよく利用されていて、イチョールと呼び、カレー料理の具にされます。
 タイではカヌーン(Kanoon)と呼び、アメダマノキと一緒に庭に植えておくと、人に好かれ味方が増えるともいわれます。

 パラミツの根元の花壇にはフィジー島が原産のサンシキアカリファAcarypha wilkesiana Muell.Arg.)が植栽されていました。
 タイでは
フウリン(Hu-ling)と呼びます。
 この株のように緑に白い縁取りのものから赤褐色のものまで、葉の色が多様でさまざまな園芸品種が知られています。


チェンマイの路上で目にしたセントロセマ(Centrosema pubescens)。
熱帯アメリカ原産のマメ科の蔓植物。タイではツアライ(Tua-lai)と呼びます。

Aさんの農園の下草の中に咲いていた小さいけれども可愛い野性のクレオメ(Cleome rutidosperma)です。
熱帯アフリカが原産地で、熱帯各地に帰化していて東南アジアでも畑地雑草となっています。


 これもAさんの農園の雑草です。クビナガバルレリアBarleria cristata L.)、フィリピン・バイオレット(Phyllippine violet)とも呼ばれます。 中国南部からインドシナ半島にかけてが原産地で、園芸植物として栽培もされますが、熱帯~亜熱帯の各地に帰化しています。タイではアンガブ(Angab)とも呼ぶそうです。

 こちらはSさんの農園の藪に絡んでいたマメ科の蔓植物です。
 オーストラリア北部、東南アジア、東アフリカとマダガスカルに分布するコマツナギなどの仲間の
ヘアリーインディゴIndigofera hirsuta L.)です。
 これも畑地や牧場の厄介植物です。


 SさんのところでもAさんのところでも、このトウダイグサ科のニシキソウの仲間のChamaesyce hirta (L.) Millsp. が生えていました。海洋島もふくめて熱帯全域に分布していて、原産地は特定できないようです。各地で薬用されていてハワイなどでは喘息草(asthma-weed)と呼ばれています。ポナペ(Pohnpei)島では茎を切って滴る液体を目薬にします。

 こちらは厄介植物の一つのオオオジギソウMimosa pigra L.)です。メキシコから熱帯アメリカが原産ですが、アフリカや東南アジアでは厄介な帰化植物となっています。
 英語では実の形から Cat'scraw mimosa と呼びますが、タイでは
チイヨップ(Chiyop)あるいはマイヤラップ(Maiyarap)といいます。


 側溝の縁には日本でも高知県以南に帰化しているキダチキンバイLudwigia octovalvis (Jacq.) Raven)が生えていました。世界中の熱帯から暖帯の湿地に分布していますが原産地は特定できていません。
 タイでは
チアンナム(Tian-nam)と呼んでいます。

 路傍では、これも沖縄などにも帰化しているカッコウアザミAgeratun conyzoides L.)を見ました。ブラジル原産といわれ、英語圏ではBillygoat weedと呼ばれます。線虫を殺すクマリン類が含まれるそうです。また、 ヒヨコマメの生育阻害物質も見つかっています。スリナムでは民間薬で切り傷や火傷に使われます。


 軍鶏のようなニワトリが餌を啄ばんでいる空き地にはアオイ科のよく似た低木が花をつけていました。ハイキンゴジカSida rhombifolia L)とホソバキンゴジカSida acuta Burm. f.)だと思います。どちらも世界中の熱帯~亜熱帯で目にすることができます。喜界島ではハイキンゴジカをユッチュンサーと呼んで皮膚病の薬としているそうですホソバキンゴジカのタイでの呼び名はラヨン(Rayong)です。


 パドゥン族の村落の藪の中に咲いていたニレノハツルネラ(Turnera ulmifolia L.)。タイではBan-chaoと呼びます。南アメリカ(ガイアナ~ブラジル)原産で、観賞用に栽培され、ハワイやフロリダなど世界各地の熱帯~亜熱帯では野生化しています。ブラジルでは抗炎症作用のある民間薬として利用されてきましたが、近年の研究でも消化器の潰瘍を抑える効果が確かめられています。種子で容易に増え、我が家の温室でも実生が育っています。 Sさんの庭に植栽されていたセイロンランティア(Wrightia antidysenterica (L.) R.Br.)です。名前の通りスリランカが原産です。
 花の形を見るとちょっと意外な感じがしますが、キョウチクトウ科の植物です。日本でも鉢植えにしてフラワーショップで売られています。純白の花からは熱帯をイメージし難いようで、スノウフレーク(Snowflake)、アークティック・スノウ(Arctic snow)などとも呼ばれています。


 Sさんの観葉植物の圃場にこの奇妙な花をつけた鉢がたくさん並んでいました。
 栽培しているご本人も名前は忘れたが、このあたりの暗い藪にも生えていて、種が飛んでどんどん増えるといっていました。初めて目にした植物ででしたが、この独特の形態なら帰国して書斎で少し調べれば直に名前がわかるだろうと思いました。
 ところが、手元の書籍をあれこれ繰っても見当たりません。また何科のものなのかすら、私の乏しい知識では見当がつきかねました。
 そこで、何人かの研究者にお尋ねしたところ、熱川バナナワニ園の清水秀男先生から、クワ科の
ドルステニア・エラータDorstenia elata Gardner) だと教えていただきました。最近は日本の園芸店でも販売しているとのことでした。それにしても!クワ科だったとは!思いも付きませんでした。
 この種は東南アジアが原産の植物だと思ったのでしたが、実はブラジル原産でした。
 ドルステニア属(Dorstenia)には約105種が知られていて、60種がアフリカに、45種が南アメリカに分布しています。ゴンドワナ大陸時代の生き残りでしょうか。
 花らしくない花ですが、鶏冠のような花托(花盤)の上にぽつぽつと見えるのが一つ一つの花です。イチジク型花序とも呼ばれます。チョウやハチが興味を持ちそうにも無い花ですね。誰が花粉媒介をしているのでしょう。蟻かもしれませんし、雨粒かもしれませんね。熟した小さな実は、指の間に挟んだ石鹸がツルリと滑って飛び出すような感じで花盤から離れるそうです。
 コスタリカではD. contrajerva を解熱剤にしたり、根茎を葉巻の香り付けに使うそうです。


 昨年暮れから気にかかっていたことが、今日届いた『東サバ州植物のフィールドガイド』を見て解決しました。
チェンマイ郊外の町の公園に生えていた、細かな白い花を房なりに咲かせた大きな木の名はシチヨウジュ(Alstonia scholaris (L.) R.Br.) でした。

 東南アジアを中心にインド、中国南部、オーストラリアに分布するキョウチクトウ科の高木です。
 英語名はDita-bark ですが、これはフィリピンでの呼称を借りたものだそうです。
 西岡直樹さんの『インド花綴り』によると、サンスクリット語ではサプタパルナ(saptaparni) と呼ぶとのこと。これは若枝には7枚の葉が輪生するという“七つの葉”の意味だそうです。和名はこれを直訳し“七葉樹”としたわけですね。
 材質は柔らかく軽いので食器に加工されたり、スリランカなどでは柩を作るのにも利用されます。
 樹皮にはディタミンやエキタミンなどのアルカロイドがあって、東南アジアでは古くからマラリヤの治療に利用されました。インドネシアでは樹皮の煎汁を難産の妊婦に処方したそうです。
 花の盛りには強い香が漂うそうですが、チェンマイのそれは高いところに咲いていたためかイボタノキの花のような青みを帯びた匂いがかすかにしていただけでした。                         2010.08.08


タイ、ラオス、ミャンマーの国境、ゴールデントライアングルを滔々と流れるメコン川


 チェンライで見たアゲハチョウの仲間・キベリアゲハ(Chilasa clytia )。マネシアゲハと呼ぶこともあり、毒蝶であるマダラチョウの仲間に擬態しています。
 とても微笑ましいシーンで、思わずシャッターを押しました。タイで出合ったニャンコたちはのびのびしていて、とてもフレンドリーでした。


主要参考文献

1)レヌーカ・ムシカシントーン 『タイの花鳥風月』、めこん(1988)
2)西岡直樹 『インド花綴り』、木犀社 (2002)
3)坂崎信之、他 『熱帯花木植栽事典』、アボック社 (1998)
4)McMakin, P. D. 『Flowering Plants of Thailand, A Field Gude』、White Lotus, Thailand (2009)
5)Lötschert, W. and Beese, G. 『Collins Gude to Tropical Plants』、Collins (1983)
6)Blundell, M. 『Wild Flowers of East Africa』、Harper Collins (1992)
7)Burkill, H. M. 『The Useful Plants of West Tropical Africa』、R.B.G. Kew (1997)
8)Jones, D. T. 『Flora of Malaysia Illustrated』、Oxford Univ. Press (1993)
9)Mabberley, D. J. 『Mabberley's Plant-Book, 3rd. Ed.』、Cambridge (2008)

このページのトップへ    目次へ