園芸品種または人為交配種

Cultivars or Artificial Hybrids

 交雑に起源する野生の分類群が数多く存在することからもわかるように、ヒガンバナ属の植物は種間での交配が容易である。そのため、育種家たちはさまざまな組み合わせでの交配を試み、選別を重ね、驚くほど多くの人為交配種を作出している。2003年発行の『園芸ニュースレター 42』には240余の園芸品種がリストアップされている。しかし、作出に用いた両親の種名が明記されているものは少ない。変幻自在というのはいい過ぎだが、この仲間の花器官の形質は栽培条件でかなり変化することが知られているので、同名異物、異物同名のケースもありそうだ。幸い不稔性分類群ならば、クローンとして系統保存ができるので、フィンガープリント法などを利用した整理が進むことを期待している。
 このページには栽培して調べることのできた園芸品種の写真を載せ、その核型などについて記した。

 

 As well known, species of Lycoris are easly to hybridize with each other. This nature is advantageous for breeders and neumerous artificial hybrids were produced. In a Japanese magazine, ENGEI-NEWS-LETTER 42 (2003), more than 240 cultivars or artifical hybrids have been held.
 In this page, the flower morphology and karyotypes of 13 bybrid taxa being on sale in Japan and 8 taxa produced by Lin of Hangzhou Botanical Gardens are treated.


 上の写真はいずれもシロバナヒガンバナの名で市販されていたものである。核型はどちらも典型的なシロバナヒガンバナと同じで、2n=17=5M+1T+11A であった。2n=10M+2T と 2n=22=22A の分類群を親に持つことはは確かだろうが、実体は不明である。どちらも、葉は秋に現れ5月に枯れ、葉の長さは30-35cm、幅は10-15mmで、典型的なシロバナヒガンバナと区別は難しい。左の個体は花柱が飛びぬけて長く、蕾の中では三つ折になっていて、開花とともに伸展するのが特徴である。この形質はアウレアでも見られる。典型的なシロバナヒガンバナの花形はヒガンバナに近いが、右の個体にはショウキランの形質が色濃く出ているように思われる。

 The bulbs of L. aff. albiflora-1 and -2 are on sale under the name of SHIROBANAHIGANBANA. The karyotype of each taxon is 2n=17=5M+1T+11A as well as the typical L. albiflora. The parents of them are uncertain.


 
上の写真は「再会」の名で市販されている分類群である。九州の佐世保あたりで見つかったものらしいが、詳細は不明。核型は 2n=19=3M+4T+1sm+11A で、外部形態から見ても韓国に分布するフラベスケンスそのものである。韓国から持ち込まれたものと見てよいだろう。
 7月下旬から開花しする。花茎は高さ40-50cm、幅8-10mm、総苞は25-30mm、小花柄は14-18mm、花筒部は10-15mm、花被片は長さ45-50mm、幅は10-15mm、辺縁はわずかに波打つ。花糸は53-55mm、花柱は68-75mm、先端部は紅色。葉は早春に現れ5月には枯れる。長さは25-30mm、幅は10-17mm。

 This taxon is on sale under the name of SAIKAI, of which origin is uncertain. The karyotype of SAIKAI is 2n=19=3M+4T+1sm+11A. This karyotype and gross morephology are well accord with L. flavescens endemic to Korea.


 
 上の写真はいずれもジャクソニアナの名で市販されているものである。ジャクソニアナは Caldwell, S. がコヒガンバナとスプレンゲリを交配して作出したもので、Traub (1964)が L. X jacksoniana と命名記載した。Caldwell (1964)の論文はスプレンゲリに近いものからコヒガンバナに近いものまで、さまざまな花形のF1が生じることを報告している。写真の2個体の核型は 2n=22=22A で、区別できない。
 8月に開花し、花茎の高さは〜58cm、総苞は長さ25-30mm、花柄は10-25mm、花筒部は8-10mm、花被片は長さ50-52mm、幅は10-12mm、多少とも青味が出る。花糸は55-65mm、花柱は75mm。花糸花柱とも紅色。稔性がある。

 Both left and right bulbs are on sale under a trade name of JACKSONIANA. The karyotype of both bulbs is 2n=22=22A. The scientific name of these bulbs is L. X jacksoniana Traub which is the F1 between L. radiata and L.sprengeri. F1 plants produced by crossing between L. radiata and L. sprengeri showed various flower form and color (Caldwell, 1964).



 上の写真:
 左は「夕霧」。ロンギトゥバとスプレンゲリを交配して小森谷慧が作出した。核型は 2n=19=3M+5T+11A。華奢ではあるが、ナツズイセンによく似ている。8月に開花。花茎は〜58cm、総苞は長さ45-50mm、小花柄は12-32mm、花筒部は20-27mm、花被片は長さ65-70mm、花糸は50-55mm、花被片より短い。花柱は70mm。
 右はオフホワイトの名で流通しているもの。核型は 2n=19=3M+5T+11A。中国のキネンシスの群落内で採集された分類群Gと同じものだろう。8月に開花し、花茎は高さ〜56cm。総苞は長さ〜40mm、小花柄は25-40mm、花筒部は25-30mm、花被片は長さ〜70mm、幅は〜16mm。花糸は長さ〜60mm、花被片よりやや短い。花柱は〜73mm。葉は早春に現れ、長さ33-38cm、幅は13-20mm、キネンシスに似ている。

 YUGIRI (left bulb) is a hybrid between L. logituba and L. sprengeri, which produced by S. Komoriya. The karyotype is 2n=19=3M+5T+11A. YUGIRI is somewhat similar to L. squamigera.
 The trade name of the right bulb is Off-white of which karyotype is 2n=19=3M+5T+11A. This probably has the same parents with the taxon-G found in China; a hybrid between L. chinensis and L. sprengeri.



 上の写真:
 左はブルーパールの名で市販されているもの。青味が強く出たケース。スプレンゲリを大型にした感じ。第2次大戦後、中国から米国に輸出されたものといわれている。核型は 2n=19=3M+5T+11A である。スプレンゲリとキネンシスかロンギトゥバとの雑種と思われる。8月に開花し、花茎は高さ〜56cm、総苞片の長さは〜33mm、小花柄は20-40mm、花筒部は25-28mm、花被片は長さ60-65mm、幅は13-15mm。花糸は60-65mm、青味を帯びる。花柱は75mm、上部は紫紅色。葉は早春に現れ、長さ30-38cm、幅16-20mm、ロンギトゥバと似ている。
 右は植木久晴作出のウエキ1号。ナツズイセンとスプレンゲリとの交配種という。しかし、この個体の核型は 2n=22=22A。秋に出葉することと花色はコヒガンバナとのかかわりを思わせる。

 Left bulbs are on sale under the trade name of Blue-pearl. It is said to be that this was introduced into USA from China after the second world war. The karyotype is 2n=19=3M+5T+11A. The parents may be L. sprengeri and L. chinensis or L. longituba.
 Right bulb is UEKI-1GO, which is a hybrid between L. sprengeri and L. squamigera, produced by H. Ueki. The karyotype is 2n=22=22A. Red tint of this flower and the nature of leaves emerging in autumn, however, imply the relationship to L. radiata.



 上の写真:
 左は「かがり火」。ジャクソニアナの一系という。核型は 2n=22=22A。8月に開花し秋に出葉する。
 右は「さつま火龍」。核型は 2n=22=22A。8月開花、秋出葉。これもジャクソニアナの一系か。

 Left: KAGARIBI, a strain of L. X jacksoniana. Karyotype: 2n=22=22A. Scapes produced in August; Leaves emerging in Autumn.
 Right: SATUMAKARYU. Probably a strain of L. X jacksoniana, too. Scapes produced in August; Leavea emerging in Autumn.



 上の写真: 「さつま灯」の花と核型。花被片の先端が青味を帯びる点でスプレンゲリとのかかわりを思わせる。花形はキツネノカミソリとよく似ている。核型は 2n=22=22A。8月に開花し、早春に出葉する。花茎は37cm前後、総苞は長さ30mm、小花柄は25-35mm、紅紫色、花筒部は20mm、花被片は長さ50mm、幅12-15mm。花糸は45-50mm、花柱は55-60mm、ともに紅色。葉は長さ40cm、幅20mm。

 Flowers and karyotype of SATUMAAKARI: Bluish perianth tip suggests the relationship to L. sprengeri. Shape of flowers is similar to L. sanguinea. 2n=22=22A. Scapes produced in August; leaves appearing in early spreing. Scapes up to 37 cm or more, spathe 30 mm long,. Pedicels 25-35 mm, reddish purple. Tepaltube 20 mm long, perianth to 50mm long, 12-15 mm wide. Stamens 45-50 mm long, style 55-60 mm long.



 上の写真:
 「さつま美人」の花と核型。九州南部に自生するという。薄紅色のヒガンバナのようにも見えるし、赤味の強いシロバナヒガンバナのようにも見える。押し葉標本ではヒガンバナと区別は困難。これをエルシアエと呼んだことがあったかもしれない。核型は 2n=19=4M+3T+12A。[4M+3T]のゲノムはショウキラン(2n=13=9M+4T, 2n=14=8M+6T) に由来し 12A (11A+1A) はヒガンバナに由来するのだろう。
 9月に開花し、10月には出葉する。花茎は高さ〜56cm、総苞片は長さ30-35mm、小花柄は10-13mm、花筒部は13-15mm、花被片は長さ50-55mm、幅は2-8mm、花糸は80-90mm、花柱は100-105mm、花被片の倍ほどの長さ。葉はヒガンバナに似て長さ25-28mm、幅6-10mm、光沢がある。

 Flowers and Karyotype of SATSUMABIJIN: This plant was collected in Kyushu by K. Ohno. Flower shape and tint are somewhat intermediate between L. radiata and L. albiflora. Some taxonomists may determine this plant L. elsiae. Karyotype is 2n=19=4M+3T+12A. The genome [4M+3T] originated probably in L. traubii and [11A+1A] is from L. radiata.
 Scapes produced in September; leaves appearing in October. Scapes up to 56 cm, spathe 30-35 mm long,. Pedicels 10-13 mm. Tepaltube 13-15 mm long, perianth 50-55 mm long, 2-8 mm wide. Stamens 80-90 mm long, style 100-105 mm long. Leaves 25-28 cm long, 6-10 mm wide, similar to L. radiata.

杭州植物園作出の交配品種

 杭州植物園の林先生は長年ヒガンバナ属の育種に携わってこられ、さまざまな交配品種を作出されている。その一部を以下に紹介します。

 The following charming plants were produced by Mrs Lin Jinzhen of the Hangzhou Botanical Gardens, China.


左は、キネンシス X ロゼア   2n=19=3M+5T+11A        Left: L. kinensis X L. rosea, 2n=19=3M+5T+11A
右は、ロンギトゥバ X ハイワルディ   2n=19=3M+5T+11A.  Right: L. longituba X L. haywardii, 2n=19=3M+5T+11A.


左は、コヒガンバナ X ロンギトゥバ   2n=19=3M+5T+11A.  Left: L. radiata var. pumila X L. longituba
右は、コヒガンバナ X ストラミネア   2n=23=1T+22A.     Right: L. radiata var. pumila X L. straminea
    おそらくストラミネアからの[1T+11A] とコヒガンバナの[11A] が受精したのであろう。花被片の色調は赤味が多いものから薄いクリーム色のものまでさまざま。The genome [1T+11A] is from L. straminea, [11A] is from L. radiata var pumila. Tint of perigone is very variable, reddish to whitish creamy.


左は、スプレンゲリ X キネンシス。 2n=19=3M+5T+11A. 葉はナツズイセンのそれに似て、長さ40-50cm、幅は15-25mm、春に出葉する。花の姿は片山繁朗氏がスプレンゲリとショウキランとを交配して得た「シルクロード」に似ている。  Left: L. sprengeri X L. chinensis. 2n=19=3M+5T+11A. Leaves similar to L. squamigera, 40-50 cm long, 15-25 mm wide. Leaves emerging in early spring. Flowers resemble those of SIRUKURODO ( L. sprengeri X L. traubii) in appearance.
右は、ロゼア X  ロンギトゥバ。 2n=19=3M+5T+11A.  Right: L. rosea X L. longituba. 2n=19=3M+5T+11A.


左は、ハイワルディ X キネンシス。  2n=19=3M+5T+11A.   Left: L. haywardii X L. chinensis
右は、ロゼア X コヒガンバナ。 2n=33=33A. 花被片の幅が狭く濃赤色。花数は少ない。  Right: L.. Losea X L. radiata var. pumila. The width of perianth lobe is very narrow and the tint is dark red.


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