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野の花便り 〜 仙石原の晩秋の花々 〜

すすき原神代の秋のしろがねの光を撒きぬ山のふもとに      平野万里

あますところ数日で降霜を迎えるという晩秋の一日、「草の友会」の皆さんと箱根仙石原の咲き残りの秋草を楽しんだ。
名高いススキの原は、遠くから見るとまるで雪が積もったように銀色に輝いていた。
仙石原は、28,000年前の神山の噴火で早川が堰き止められてカルデラ内に形成された古代のカルデラ湖の水位が、その後の侵食によって下がるとともに出現した湿原と草原で、標高が上がるにつれて暖温帯林へと移行している。
その林の中を抜ける自然観察路の際には、ツルリンドウやテンニンソウやセンブリが咲き、マユミやニシキギの弾けた実の中から真っ赤な種子が顔をのぞかせていた。
帰路に立ち寄った湿生花園ではシロヨメナが花の盛りだった


1) アカソ Boehmeria tricuspis
   九州の北部から北海道まで分布して、日本海側には2倍体が、太平洋側には3倍体が知られている。新潟県の一部では昔はこの草の繊維を採ってアンギンと呼ぶ布を織っていた。
2) アキギリ Salvia glabrescens
   淡い紫の花はすでに散りはて、少し赤みを帯びた蕚筒のみが残っていた。葉の形が琴の弦を支える琴柱に似ているためコトジソウという優雅な名でも呼ばれる。


3) イヌザンショウ Zhanthoxylum schinifolium
   北海道以南に分布している。サンショウに似ているが、棘が互生しているので区別できる。葉質も厚く、何よりも香りが良くない。アサクラザンショウの台木にされる。
4) ヒヨドリバナ Eupatorium chinense
   山蘭という中国名からフジバカマと間違えられることもあるが、草姿はたおやかである。『古今要覧稿』に名の由来はヒヨドリが騒ぐころに咲くからとあるが、??である。


5) コウゾリナ Picris hieracioides
   草丈15cmほどの株に一輪だけが咲いていたので、何の花だろうと首を傾げてしまった。しかしよく見れば、コウゾリナ特有の剛毛が生えていた。
6) ミツバウツギ Staphylea bumalda
   日本全土から中国・韓国にも分布するミツバウツギ科の低木。実の形がユニークで憶えやすい。伊豆ではコメゴメあるいはコメゴメノキと呼ぶが真っ白な米粒形の蕾に因んだものだろう。


7) サラシナショウマ
   Cimicifuga simplex
7) ミカエリソウ
   
Leucosceptrum stellipilum
8) アキノキリンソウ
  
Solidago vigra-aurea ssp. asiatica


9) キミノガマズミ Viburnum dilatatum 10) ニシキギ Euonymus alatus


11) マルバフジバカマ Eupatorium rugosum
    園芸種のアゲラーツムの逸出したものかと思った見知らぬ花が路傍に点々と咲いていた。北米が原産のマルバフジバカマで、明治時代に渡来したらしい。箱根のものは強羅自然公園から大正時代に逃げ出したものの子孫のようだ。
12) キセルアザミ Cirsium sieboldii
    サワアザミとも呼ばれるキセルアザミが湿生植物園の枯れ草色の湿原に咲いていた。花が終わるとうな垂れている頭花は上を向くという。湿原の向こうには、銀色に輝く仙石原が広がっていた。


13) ナンブアザミ Cirsium nipponicum
    アザミの仲間としては棘が少なく、葉も全縁。中部地方以北に見られる。トネアザミはこの種の変種とされているが、素人目にはかなり違って見える。。
14) サワギキョウ Lobelia sessilifolia
    日本を始め極東に広く分布しているキキョウ科ミゾカクシ属の多年草。  山の池に紫に咲ける沢桔梗人の来たりて折ることもなし  島木赤彦


15) セキヤノアキチョウジ Isodon effusus 16) センブリ Ophelia japonica


17) タニジャコウソウ Chelonopsis longipes 18) テンニンソウ Leucospectrum japonicum


19) ツルリンドウ Tripterospermum japonicum 20) ヤマラッキョウ Allium japonicum Regel


21) ミヤマシキミ  Skimmia japonica var. japonica 22) ヤマトリカブト Aconitum japonicum


23) ノコンギク Aster microcdephalus var. ovatus 24) リュウノウギク Chrysanthemum makinoi
日本や中国の野菊の分類は専門家も悩むほど難しい、ましてや素人においておやである。
今日見た野菊でも判定ができないものがあったが、ここに挙げた4種は比較的特長が捉えやすいものである。
なかでもリュウノウギクは全草に龍脳の香りがあってわかりやすい。とはいえ、人里にはイエギクとの雑種もあるそうで、そんなものに出合えばたちまち自信喪失であろう。
いがりまさしさんの『日本の野菊』も読めば読むほど(知れば知るほど)この仲間の分類の困難さを教えてくれる。
25) ヤマシロギク Aster semiamplexicaulis 26) シロヨメナ Aster ageratoides


枯れゆくシダと常緑のシダ
27) ヤマドリゼンマイ
    Osmunda cinnamomea
28) ヒメノキシノブ
    Lepisorus thunbergii    
左は倍数体かもしれない。

   

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