May

庭の花便り   Garden Flora Reports

~ 5月の花  Flowers in May ~



 索 引   アイダホ・ニワゼキショウ アカバナエゴノキ アフリカンクイーン アメリカイワナンテン アメリカオダマキ
 アメリカン・クランベリー  アメリカフウロウ  アリウム・シクラム アンモチャリス・コラニカ イキシア
 イソトマ・ブルースター  イタチハギ  イトバラナン イファケンシス・マンテマ ウスベニヒメウツギ
 エミューブッシュ  エレプシア・ピランシー エンシーナ オオツルボ オランダガラシ カルミア・ラティフォリア
 キキョウソウ キショウブ キソケイ  キツネノテブクロ キバナオドリコソウ キバナクレス キバナトレニア
 キャッツテイル ギョリュウ ギョリュウバイ クリスマスブッシュ コデマリ コーストバンクシア
 ゴールデン・アイスプラント  ゴールドフレーム・ハニーサックル  シャガ シャクヤク ジューンベリー
 スモーキーツリー  セイヨウオダマキ セロリ  タチジャコウソウ チャイブ  ツリガネカズラ
 ツリガネカズラー2 ディル  テーブルマウンテン・レッドヒース デラワイ・イボタノキ トキワサンザシマガイ
 ドッグローズ ドロップモアー・スカーレット 虹の玉 ニワゼキショウ ネコノツメ ネモフィラ ハクチョウソウ
 花浜匙 ハニーワート ハルジオン ハンカチノキ ヒメコギク ヒルザキツキミソウ フランスギク
 ベニバナトチノキ ペラペラヨメナ ファイヤーボール  フェンネル ブラックティーツリー ブラッシノキ
 プリストル・ルビー ブルーハイビスカス ブルーベリー ブロディア・クイーンファビオラ
 ヘアリー・ギニーフラワー ペンステモン  ホザキアヤメ ボタン ボタンゲシ ホワイトツリー 
 マーシュ・アフリカーナ マルバストラム・ラテリティウム  ユウゲショウ  ライラック
 リトルチュチュ~レモンミスト レーマンニア・アングラータ   レモン   ローズガーリック  ワトソニア

1) アメリカフウロウ  Geranium caroliniatum L.          2005.05.01

 名無子さん、わが家でも一斉に咲き始めました。
 小さな花ですが、クローズアップしてみてその均整の取れた形に感激しました。
 テキストに載せたいほどの、典型的な5数性の花ですね。柱頭まで五つに分かれているとは知りませんでした。
 昭和の初め頃から帰化していたそうですが、この辺りでは最近になって急に増えたような気がします。



2) アメリカイワナンテン  Leucothoe fontanesiana(Steud.) Sleumer  2005.05.01
一月には、もうたくさんの蕾をきっちりと並べた花穂が出来ていたのに沈黙を守り続けていたアメリカイワナンテンがやっと咲いてくれました。
紅葉して艶々していた葉の方は色あせましたが、緑に戻りつつあるようです。



3) ブルーベリー  Vaccinium australe Small          2005.05.01

 収穫を期待して昨年移植したブルーベリーに清楚な釣鐘型の白い花が咲きました。
薄紅の苞の色とのコントラストが爽やかです。

 このブルーベリーは北米東海岸のジョージア州からミシガン州にかけての山地が原産のハイブッシュ・ブルーベリー(Vaccinium australe)の一品種だということです。
 日本のコケモモやイワツツジなども同じ属の植物です。



4) コーストバンクシア  Banksia integrifoliaL. f. var. aquilonia A S. George  2006.05.02

 岩月水流師範のSさんのお招きで、メイワンのエアロホールで開催された活け花展を楽しんだ帰り、行きつけのフラーワーショップで懐かしのコースト・バンクシアBanksia integrifolia)に出合った。

 オーストラリアに固有のバンクシアの仲間には約70種が知られていますがその86%ほどが西オーストラリアに分布しています。
コースト・バンクシアは数少ない東オーストラリア産のメンバーの1種で名前のとおり海岸近くでよく目にするものです。写真はアクイロニア(var. aquilonia)という変種です。

 ボトルブラッシのようなものは花の集まりで、写真のそれは未だ蕾の状態です。成熟すると1本1本が4つに割れて、中から長い針のようなメシベが飛び出してきます。メシベの先端近くは膨らんでいますが、ここに蕾の中でオシベから受け取った花粉をため込んでいて訪花した小鳥やポッサムに他の花へと運んでもらう仕組みです。



5) ホザキアヤメ  Babiana angustifolia Sweet          2005.05.05

 街角の花園のおちこちでホザキアヤメが咲いています。
濃い赤紫色のものや青味の強いものもあります。

 バビアナの仲間はアフリカの西南部に80種ほどあって、その多くが南アフリカ、特にケープ地方に分布するそうです。
 バビアナという属名はアフリカーンス語のバビアーンチェ(小さなヒヒ)に由来します。チャクマヒヒがこの植物の塊茎を掘り出して食べるからだそうです。
 ヨーロッパから喜望峰地域への初期の入植者たちもサルに学んでこの塊茎を茹でて食べたという記録があります。



6) ホワイトツリー  Eremophyla nivea Chinnock           2005.05.05

 家人が水をやり過ぎないように注意して可愛がってきたホワイトツリーが咲きはじめました。
シルバーグレーの葉や枝も美しい木です。

 ホワイトツリー (Eremophyla nivea) は、日本には1種があるだけのハマジンチョウ科の植物で、オーストラリアはパースの東方のいわゆる”Wheatbelt”に分布します。
 最初は切花として輸入していたものを、挿し木して増やしたのだそうです。



7) フェンネル Foeniculum vulgare L.               2005.05.05
 厳冬期にも軟らかな黄緑色の葉を茂らせていたフェンネルが黄金色の粟粒ほどの花を花火がはじけたように咲かせています。
 ヨーロッパ原産のこの草はシルクロードに沿って中国に入り、茴香と呼ばれるようになり、魯迅の小説にもしばしば登場する紹興酒のつまみの茴香豆の素材の一つにもなりました。

 地中海域が原産の地で、古代から魚肉料理に欠かせない香菜、あるいは薬草として親しまれました。
俗信も多く、古代ギリシャ人は肥満解消効果あらたかと信じ、スペインの闘牛士は死を回避する効能を信じ食卓に欠かすことがなかったそうです。牛を倒せば、感謝の念をこめてこの草の花輪を編み、牛の頭に飾ったといいます。



8) シャガ  Iris japonica Thunb.                 2005.05.05
 身近だった方が私の小宇宙の中でもう歳をとらない存在になりました。
 シャガの花のような方でした。

 チュンベリーによって Iris japonica つまり”日本のアイリス”と名付けられたシャガは”菁莪”とも”胡蝶花”とも書かれます。


 菁莪の花あかるき谷の昼近み
         ともり連なる蝋の火うすき  尾上柴舟

 なぞへには胡蝶花のしげみに風ふきて
      貧しく住みし去年のおもかげ  佐藤佐太郎

 しゃがの花は昼ながらふかき露もてり
         如意輪堂の裏谷のみち   大村呉楼


9) エミューブッシュ   Eremophila racemosa (Endl.) Muell., F.     2005.05.06
 ホワイトツリーの記事を見てくれた花友達から「家ではエミューブッシュが咲いてるよ」というメールが来ました。
早速「会わせてください」とお願いして、押しかけました。
軟らかそうなピンクの花筒から、思い切り飛び出したオシベが印象的でした。

 ホワイトツリーと同じハマジンチョウ科ですが、ずいぶんと違った印象を受けました。
 Eremophila racemosa という種類で西オーストラリアのレーヴェンズソープ北部の限られた地域に分布します。人の背丈ほどになる低木です。
 コンテナー栽培にも適した花だそうです。


10) ディル    Anethum graveolens L.               2005.05.07
 フェンネルととてもよく似た感じのディルも咲き始めました。
 葉柄の基部がフェンネルのように白く肥大しないことと、少し灰色を帯びた緑なので区別できます。
 ヨーロッパでは魔女避けのハーブとして知られているそうです。

 原産地は中央アジアから地中海域にわたる地域だと言われています。
 古代エジプトでも薬草あるいは香草として利用されていて、アメンヘテプ二世のミイラに、葉や花のついた状態のディルの茎が飾られていたそうです。


11) アイダホ・ニワゼキショウ Sisylinchium idahoense E. P. Bicknell  2005.05.07
 ニワゼキショウに先立って、少し大型で丸みを帯びた花びらのアイダホ・ニワゼキショウが咲きました。
 まだ街角の花園の中だけで咲いているようですが、そのうち逃げ出して帰化するかも知れませんね。

 アヤメ科のニワゼキショウの仲間は南北両アメリカ大陸が主な原産地で100種以上が記載されています。なぜか、アイルランドとオセアニアにも1種ずつが自生するそうです。
 一方、ニワゼキショウのように人の移動に伴って世界中に住みついたものもあります。


12) キバナクレス  Barbarea verna (Mill.) Asch.            2006.05.07
カラスノエンドウやスイバやハルシオンの茂る川の土手に鮮黄色の菜の花が咲いていました。近寄ってみるとキバナクレスBarbarea verna)でした。
どこかの畑から逃げ出して野生化したのでしょう。

アメリカン・ウインタークレスと呼ばれていますが地中海域が原産地で、香辛料として古くから栽培されていたため、今ではフランスやドイツなどでも珍しくありません。もちろん北米にも帰化しています。

野の花便り~初夏~」に ウワミズザクラ、ヒメコウゾ、ヒメハギ を追加しました。


13) ドロップモアー・スカーレット 
        Lonicera x brownii cv. Dropmore Scarlet     2005.05.08
 スイカズラの仲間のツキヌキニンドウにとてもよく似たドロップモアー・スカーレットがにぎやかに咲いています。
 スイカズラの白い花は甘い香りを漂わせますが、こちらは派手な彩なのに香りがありません。
でも、長い花筒の中に甘い蜜があることは同じでした。

 ドロップモアー・スカーレット(Lonicera x brownii) は北米原産のツキヌキニンドウ(Lonicera sempervirens) と ケブカスイカズラ(Lonicera hirsuta)の雑種で、寒さにも暑さにも強いのが取得だそうです。


14) ローズ・ガーリック  Allium roseum L.               2005.05.08
 抜き残してあるキキョウソウに囲まれて、朝日を浴びたローズ・ガーリックがきらきら輝いていました。
薄い桃色の花びらは外側3枚が内側の3枚に比べて少し大きく、6本のオシベは基部が広がってメシベを抱きかかえているようです。

 ローズ・ガーリック (Allium roseum) はヨーロッパが原産でブドウ畑などでよく目にするそうです。
昔から庭園にも植えられていて、花の色や形にはかなり変異があります。
 典型的なものは写真のそれよりもう少し濃い色のようです。



15) オオツルボ  Scilla peruviana L.                2005.05.09

 これ以上濃いブルーの花は他には思い浮かばないほどの青さでオオツルボが咲いています。
 四方八方に波打つように広がる光沢と重量感のある緑の葉も元気一杯です。

 地中海沿岸の北アフリカと南ヨーロッパが原産地だそうですが、学名はなぜか Scilla peruviana つまり”ペルーのスキラ”です。英語圏でも”ペルーのヒヤシンス”とか”キューバのユリ”など、南アメリカがらみの名で呼ばれます。
 どうやら命名者のリンネ大先生が、なぜか、うっかり、ペルー産のものと思い込んだようです。



16) ニワゼキショウ     Sisyrinchium atlanticum Bicknell       2005.05.10
 公園の片隅や街路樹の根元のわずかな空間のニワゼキショウが目立ち始めました。
 星形の小さな花ですが、花びらには紫の縦筋が走り、外側の薄い空色はいつの間にか紫に移り、オシベとメシベを収めた筒の部分になると濃い黄色となって虫たちを魅惑しています。

 北アメリカが故郷のアヤメ科の多年草で、牧野富太郎先生によれば明治20年ごろ小石川植物園に植えられていたものが逸出して帰化植物となったのだそうです。
 アメリカでは Eastern blue-eyed garss と呼んでいます。



17) チャイブ    Allium schoenoprasum L.       2005.05.10
 今朝、露の消えたのをみはかっらって草取りを始めたとき、猫額菜園の片隅にチャイブが咲いているのに気づきました。
 小さな手毬のような葱坊主はたくさんの花の集まりで、一つの花の6枚のピンクの花びらのそれぞれに赤紫の筋が一本通っています。

 和名はエゾネギで、よく知られる日本古代からの食草のアサツキはこの変種として分類されています。
 洋食には欠かせない薬味のようですが、イギリスでは16世紀から栽培されていたそうです。



18) イキシア  Ixia cv. Hybrid                   2006.05.10
 整理した冬物を持っていったクリーニング屋さんの店先にイキシアIxia Hybrid)が咲いていました。

 イキシア属(ヤリズイセン属)は南アフリカの大西洋に面した西ケープ地方が原産地で、ワンド・フラワーとかコーン・フラワーと呼ばれています。前者は花をつけて風に揺れる花茎を魔法使いの杖に見立てた名で、後者はたくさんの蕾のついた姿がちょっとトウモロコシを連想させるからだといいます。”トウモロコシ畑に咲く花”説もあるようですが、基本的には草原の花です。

野の花便り~初夏~」に カナメモチ を追加しました。



19) ブルーハイビスカス  Alyogyne huegelii (Endl.) Flyxel.      2005.05.12
 淡い青紫の薄絹のような花びらを広げてブルーハイビスカスの花が咲きました。
細長く延びた枝が皐月の風に吹かれてゆらゆらと揺れています。

 オーストラリアの南西部が原産地のアオイ科の潅木です。
 日本ではブルーハイビスカスと呼んでいますが、原産地ではライラックハイビスカスの名で通っています。
 東海地方では、強い霜に当てなければ戸外で冬を越せます。

 挿し木での繁殖もうまくいき、ご近所さんにも分けることができました


20) キャッツテール    Acalypha reptans Sw.         2005.05.12
 霜に痛めつけられながらも庭の片隅で冬を生き抜いたキャッツテールが、思いっきり真っ赤に咲き始めました。
 我慢したんだぞ!と叫んでいるような気がします。

 トウダイグサ科エノキグサ属の1種だそうですが、日本各地で畑に生える雑草として馴染みのあるエノキグサとは似ても似つかない姿ですね。
 各地の温室で目にする東南アジアが原産のベニヒモノキも同じ仲間ですが、こちらはなるほどそうだろうなと納得できます。

 キャッツテールの故郷についてはインド説とフロリダ・カリブ海諸島説とがありますが、今となってはどちらだ正しいのか決着をつけるのが難しいかもしれません。それほどに熱帯各地ではありふれた存在になっているようです。


21) アンモチャリス・コラニカ  Ammocharis coranica (Ker-Gawl.) Herb. 2006.05.12
 昨年はお休みだったアンモチャリス・コラニカAmmocharis coranica)が咲いてくれました。
 アフリカ東南部に分布しているヒガンバナ科の植物です。
 以前はハマオモト属(Crinum)に入れられたこともありましたが、葉の性質が大きく違うので今では別属に分類されています。
 先端が切り取られたように見えるテープ状の葉がずるずると伸びていき、乾季には一旦枯れますが、葉の基部が生きていて、雨季が始まると再び伸びはじめます。ですから、伸びはじめはまるで草食獣に葉先を噛み切られたように見えます。
 南アフリカでは球根を煮て、それを潰して糊として利用します。かなり接着力が強く、乾けば水にも溶けないので、水道管のひびの補修にも使えるそうです。


22) レモン  Citrus x limon (L.) Burm. f.               2005.05.13
 雨の上がった今朝の庭で咲き始めたレモンの花に気づきました。
 香りがほとんどなかったのは、雨で洗われたせいでしょうか。
 薄紫の蕾の色と真っ白な花びらのとりあわせに、そこはかとなく異国情緒を感じました。

 物の本によれば、ヒマラヤの東部山麓地帯が原産地と考えられているようですが、現在では野生の系統は知られていません。
 古代にアラブ人が北アフリカ経由でスペインに持ち込んだものがヨーロッパとアメリカ大陸へ広く栽培されるようになり、日本に入ったのは1873年とのことだそうです。


23) ハクチョウソウ  Gaura lindheimeri Engelm et A. Gray      2005.05.15

 散歩をしていると河原の茂みの中に浮き立つように白い花が連なって咲いていました。
 まさかと思って近寄ってみると、そのまさかのハクチョウソウでした。

 テキサスやルイジアナ州に自生するアカバナ科のヤマモモソウ属の植物で、日本には明治時代から入っていたようです。
 最近になってあちこちの花壇で目にするようになりましたが、元気のよい植物ですから、野の草の中へ遊びに出かけたのでしょう。



24) セロリ   Apium graveolens L. var. dulce (Mill.) DC.       2005.05.16
 死角になっていて今まで気がつきませんでしたが、庭の片隅にニンジンのそれに似た白い細かな花を咲かせた背の高い草を見つけました。
 種など蒔いた憶えはないのに、まぎれもなくセロリでした。
何処からやってきたのでしょう。

 野生のセロリは地中海沿岸部が原産地のようで、紀元前からエジプトなどで薬草として利用されていたものが、やがて香草として食卓に上がるようになったといいます。
 現在の栽培種は16世紀頃にヨーロッパで選抜されたもののようです。


25) コデマリ   Spiraea cantoniensis Lour.         2005.05.16
 ”小手毬”は可愛い花ですね。

 中国が原産ですが、渡来の時期ははっきりしていません。
 この可愛い名前は江戸時代にはすでに使われていますが、どなたが付けたのか、ぴったりのネーミングですね。

 私の周りではもう花時は過ぎましたが、盛りの頃のワンショットです。


26) ヘアリー・ギニーフラワー  Hibbertia vestita Benth.       2005.05.16
 3年前の誕生日に贈られたヘアリー・ギニーフラワーが今年も咲いてくれました。
 ギニー金貨のような明るい金色の直径3cmほどの花で、30個ほどの小さな金のスプーンのようなオシベがメシベを取り巻いています。

 オーストラリアのクイーンズランドからニューサウスウエールズにかけて分布しているビワモドキ科の小さな潅木です。

 意外に寒さに強く、霜の降りる庭先で元気にしています。



27) キキョウソウ    Triodanis perfoliata (L.) Nieuwl.        2005.05.18
 この可愛い花を見たいばかりに、花壇の中で茂るにまかせていたキキョウソウ。
 待った甲斐があっていっせいに咲き始めました。
よろよろといった趣で立ち上がっている薄緑の茎に、桔梗色の小花が連なっています。

 北アメリカが原産地で明治の中頃から栽培されていたものが、太平洋戦争後に急速に広まったと言われています。

 進化論誕生の地、ガラパゴス諸島の花のページがやっと完成しました。動物たちもUPしてあります。
 http://www5e.biglobe.ne.jp/~lycoris/ecuador-hana.html です。
 お暇な折にご覧いただければ嬉しいです。


28) ハンカチノキ   Davidia involucrata Baillon        2005.05.20
 ひごとに深まる緑の中に、群れて舞う純白の胡蝶のような花が咲いていました。
 原産地の中国では珙桐あるいは水梨子と呼ばれているハンカチノキでした。

 温帯に咲く花の中ではとりわけて人目を引くハンカチノキは雲南省や四川省などの標高2000mほどの山地だけに自生する貴重な植物です。
 ハンカチに例えられた大小2枚の白い花びら状のものは、総苞と呼ばれるものです。
 諸説がありましたが、最近の研究からはミズキ科のヤマボウシやアメリカハナミズキなどに近縁だと考えられています。

 蜜腺を備えた虫媒花の多いミズキ科の中では珍しく、風に花粉を運んでもらう風媒花だということがわかっています。
 だとすると、何のためにこんなに目立つ苞を持っているのでしょうか。
 ハンカチを振って虫たちに別れを告げている、なんてことはないですね・・・・・。


29) ペンステモン  Penstemon cv. Hybrid              2005.05.21
 野山ではウツギやエゴノキなどの白い花々が咲き競う季節になりましたが、街角の花園には異国からやってきた鮮やかな色調があふれています。
 わが家の庭でも、数日前からみるみる大きくなってきていたペンステモンの蕾が今朝開きました。

 アラスカからグアテマラに亘って250種もが分布しているゴマノハグサ科の植物です。
 写真の株はコーラル・ペンステモンあるいはベアードリプ・ペンステモンと呼ばれる寒さに強い種類の遺伝子が入っているようです。

 この仲間の多くはアメリカ先住民によって薬草として利用されてきました。その主な薬効は鎮痛と止血だそうです。


30) カルミア・ラティフォリア   Kalmia latifolia L.        2005.05.23

 英国の作家、ジョーン・ラスキンが ”小さな金槌で打ちだされた可愛い銀の盃”と書いたカルミア・ラティフォリアが満開でした。小さな金槌はむろん10本のオシベのことです。
 マウンテン・ローレルとかカリコウ・プッシュとも呼ばれます。日本ではアメリカシャクナゲとも云います。

 アメリカンの東海岸、オンタリオ州からルイジアナ州にかけて分布しているツツジ科の低木です。
 アセビと同じ有毒物質を含むので草食の獣たちには嫌われています。
 しかし人間たちにとっては薬草で、先住民のチェロキー族は葉の絞り汁を鎮痛剤として痛いところにつけるそうです。



31) ネモフィラ     Nemophila menziesii Hook. & Arn.      2005.05.24
 ルリカラクサの日本名をもらっているネモフィラ・メンジーシーが咲き残っている花壇がありました。
 初めてこの花苗を買って、その晴れ上がった早春の空のような色に感激したのは遠い昔の思い出です。四半世紀以上も前のことです。

 北アメリカ西部、主にカリフォルニア州に分布するハゼリソウ科の一年草です。
 Baby Blue Eyes という名前で呼ばれています。
 なるほどな、とうなづけるネーミングですね。

 原住民のKawaiisu族の人たちは牛の飼料として利用しているそうです。


32) ギョリュウバイ  Leptospermum scoparium Forst. et Forst   2006.05.21
 この冬の寒さに負けることなく、しかもいつもの年よりたくさんの花をギョリュウバイLeptospermum scoparium)が咲かせています。

 ニュージーランド全域とオーストラリアの東南部が原産地のフトモモ科の潅木です。
 ニュージーランドの国花でマヌカの名で知られています。マオリの人たちはカイカトア(kahikatoa)と呼んでいます。薬用植物としてさまざまな症状に処方されています。

初夏に咲く白い木の花」をUPしました。ご覧いただければ嬉しいです。


33) ドッグ・ローズ  Rosa canina L.               2005.05.24

 ヨーロッパに広く分布している野茨のドッグ・ローズが花壇の片隅で咲きました。
 花の形は日本のノイバラと似ていますがずっと大型です。
 白地があえかな桃色に染まっています。

 第二次世界大戦時代に少年少女だったイギリスの友人たちの多くは、このバラの実を先生の勧めで集めたたといいます。
 ジャムやシロップの原料として買い上げてもらえたそうです。そして、ウインクしながら、種についた毛をしごき取って友達の襟足に入れた悪さを白状してくれます。やられたほうは痒さに身もだえしたそうです。



34) ゴールデン・アイスプラント  Lampranthus aureus (L.) N.E.Br    2005.05.27

 朝夕には肌寒さを覚える日もありますが、晴れた日中は真夏並の陽射しです。
 その強い光に嬉々として咲いているのがゴールデン・アイスプラントです。

 ハマミズナ科のマツバギク類の1種で南アフリカのケープ地方が故郷です。
 小石も焦がすような光の中で咲く花なのに、どうして「氷の草」などと呼ばれるのだろうといぶかしかく思ったのですが、どうやら葉の表面が細かな氷の結晶で覆われているように見えるからということのようです。「霜の草」、「ダイヤモンド草」などとも呼ばれます。



35) ジューンベリー - 2  Amelanchier canadensis (L.) Medik.    2006.05.28
 4月10日にその純白の花をUPしたジューンベリーAmelanchier canadensis)が赤く色づきました。

 青い小さな実が膨らんできて、次第に赤味を増し、やがて赤黒色に熟します。
 目敏いヒヨドリさんが早速気づいて啄ばみにやってきました。
 こちらも急いで一つ二つとつまみましたが、なるほど噂どおりの甘い実でした。
 残りはヒヨドリさんに進呈です。

野の花便り~初夏~」に 桶ヶ谷沼の花(アンペライ、コウホネ、カキツバタ)を追加しました。


36) アメリカンクランベリー  Oxycoccus marocarpus (Ait.) Pursh.   2006.05.26
姿かたちがアジアに分布するツルコケモモによく似たクランベリーが咲いています。

クランベリーと呼ばれるものにはツルコケモモをふくめて数種類がありますが、これはカナダと合衆国北部が原産地のアメリカクランベリー(American Cranberry ; Oxycoccus marocarpus)です。
クランベリーという名は蕾が釣針形の花茎の先端についた様子が鶴(crane)を連想させることに由来します。
アメリカ先住民は古くから果実を食用し、葉や茎を煎じたものを肺の疾患の薬として利用していたといいます。現在では野生種を改良したものをマサチューセッツ州やウィスコンシン州などで大量に栽培して、ジャムやソースやジュースなどに加工されています。


37) ブロディア・クイーンファビオラ  Triteleia laxa Benth.     2005.05.28
 昨年の初冬、某フラワーショップの球根類バーゲンセールで買ってきたブロディアの青紫色の酒盃のような花が咲きました。

 カリフォルニアからオレゴン州南部辺りが原産のトゥリテレイア・ラクサTriteleia laxza) というネギ科の植物ですが、園芸の世界ではブロディアと呼び習わしています。
 厳密な意味でのブロディアは6本のオシベの内で花粉を作るのは3本で、残りは飾りですが、この植物は6本すべてが花粉を作るのでトゥリテレイアという別属に分類されています。
 トゥリテレイア属の提唱者のDavid Douglasさんは草葉の陰で「どちでもいいよ」とは言っていないでしょうね ^_^;


38) テーブルマウンテン・レッドヒース     Erica abietina L.    2007.05.05
3月の下旬にいったん花が終わったテーブルマウンテン・レッドヒースErica abietina)の新しく伸びた茎の上部にまた花が咲き始めました。

名前の通り南アフリカのケープ地方が原産のエリカの仲間です。
現地では山地の岩場に生えていて、1月頃が花の盛りだそうです。



39) ツリガネカズラ Bignonia capreolata              2007.05.06
 一昨年の台風で根が浮いて枯れそうになっていたイタリア生まれのヒイラギガシ(エンシーナ)に新芽が吹き、その枝に絡んでいたツリガネカズラBignonia capreolata)にも、エンシーナが元気をとりもどしたことを喜ぶように、たくさん花が付きました。
 アメリカの南東部が原産地のノウゼンカズラ科ツリガネカズラ属の木性蔓植物です。
 対生する複葉の先端が巻き髭になって10mもの高さまで這い登ることがあるようです。
 テキサスなどでは春が来てこの花が咲くと、南部から蜜を求めて北上してきたハチドリがかすかな羽音をたてて花から花へと飛び交うそうです。
 園芸品種がいくつかあって、ドラゴンレイディーの花は赤一色です。


40) アフリカンクイーン  Anisodontea cv. African Queen    2007.05.06
細身の茎が束生した、ムクゲに似た低木に直径が2.5cmほどの小さなハイビスカス型の花がたくさん咲いていました。

南アフリカが原産のアオイ科の植物で、20種ほどが記載されているアフリカンマアロウ属Anisodontea)の1種でした。
調べてみたところアフリカンクイーン(African Queen)と呼ばれる園芸品種でした。
サルダナ地方からナタール地方の沿岸の砂地に分布するサンドローズ(A. scabrosa)が片親になっているようです。



41) ゴールドフレーム・ハニーサックル
    Gold Flame Honeysuckle : Lonicera x beckrottii       2007.05.08
 ツキヌキニンドウのように対生する葉が合着していて、花の形はスイカズラによく似ているゴールドフレーム・ハニーサックル(Gold Flame Honeysuckle : Lonicera x beckrottii)が咲いています。
 良い香りが漂っています。

 北米原産のコーラル・ハニーサックル(L. sempervirens)と園芸品種のアメリカ・ハニーサックル(L. x americana)との交配種だといわれています。

 ちなみに、北米に帰化したスイカズラは猛烈な勢いで増えていて困り者になっているそうです。



42) イソトマ・ブルースタ Isotoma axillaris 'Blue Star'    2007.05.09
 鋸鮫の鼻先のように深く切れ込んだ3~4cmの長さの葉の茂みの上に15cmほどの花茎を無数に立ててイソトマ ブルースターIsotoma axillaris 'Blue Star') が咲いています。

 オーストラリアのクイーズランド州からヴィクトリア州にかけて分布しているサワギキョウ科(Lobeliaceae)の多年草です。
 暑さには強いのですが、霜にあたれば枯れてしまいます。
 園芸植物としてはマイナーな存在のようで、FLORAのような最新の園芸植物事典でもとりあげていませんでした。
 Laurentia あるいはSolenopsisという属に分類されてもいますが、前者はシルル紀に存在したという北米とグリーンランドを包含する超大陸をさす地質学用語ですし、後者はオーストラリア産の数種類のアリの属名でもありますので、昔なが
らのIsotomaの方が紛らわしくなくてよいですね。


43) アリウム・シクラム Allium siculum    2007.05.10
 昨年の秋、バーゲンセールになっていた”野放し球根”とラベルされていたアリウム シクラムAllium siculum)を植え込みましたが、それが今咲き始めています。
私にとっては初めてであう花です。

 子房下位で蜜腺が発達したネギ属(アリウム)らしくない花なので調べたところ、最近ではネクタロスコルドゥムNectaroscordum)という別属に分類されています。
 断面が3稜形の葉には強い臭いがありますが、ネギ属のそれとは似てはいるものの微妙に違います。
 地中海に面したフランス南西部から西アジアにかけてが原産地ですが、バルカン半島には分布していません。
 英語ではシシリアン ハニー リリーと呼ばれるので、子房の上に溜まっている透明な液体をなめてみました。大変甘くて、なるほどハニーでした。


44) スモークツリー Smoke-tree: Cotinus coggygria     2007.05.11
 なかなか見る機会のなかったスモーク ツリー(Smoke-tree: Cotinus coggygria) の花に出合えました。
 写真の株はロイヤルパープル’Royal Purpule'という品種です。
 ヨーロッパから中国中部にかけて分布しているウルシ科の木で、あちこちで栽培されています。
 花が散った後に、花柄に長い薄紫から灰色がかった長い毛が発達しますが、それが遠くから見ると煙っているように見えるのでこの名で呼ばれています。
 和名では英語名の直訳でケムリノキとも、払子にするヤクの尻尾の毛を連想するということでハグマノキ(白熊の木)とも言います。
 樹皮や材にはタンニンが含まれ、昔から染料として利用されていたそうです。天皇の着衣を染めることのみに使用された黄櫨染の原料でした。


45) ネコノツメ  Cat's claw : Macfadyena unguis-cati     2007.05.15

 Yさんの家の街路に面した外壁を覆う3出複葉のつる植物に明るい黄色で直径が5cmほどのノウゼンカズラ型の花が咲いていました。

 メキシコからアルゼンチンにかけて分布するノウゼンカズラ科のネコノツメ(Cat's claw : Macfadyena unguis-cati) でした。
 トラノツメと呼ばれることもあるようです。
 対生する複葉の片方の先端が3裂して鉤状になっていて、これを使って蔓が這い登っていきます。

野の花便り~初夏~」に イズハハコ を追加しました。


46) エレプシア・ピランシイ  Erepsia pillansii          2007.05.19
 珍しい花形の多肉植物を家人が購入してきました。
 エレプシア・ピランシイErepsia pillansii) でした。

 南アフリカのケープ地方で冬季の降雨量が400mmほどの、フィンボスと呼ばれる植生帯が原産地です。とくにインド洋に面した沿岸地帯に多く見られるようです。
 フラワーショップには”千寿菊”の名で出ていることがあますが、菊ではなくハマミズナ科の植物です。



47) ファイヤーボール Fire Ball : Boophane disticha         2007.05.23
 5年前に球根を購入して開花するのを楽しみにしていたファイヤーボール(Fire Ball : Boophane disticha)がやっと咲いてくれました。

 南アフリカからボツワナ、ジンバブエ、アンゴラ、ザイールなどに分布しているヒガンバナ科の球根植物です。
 ファイヤーボールという名は赤い花の形からの連想ですが、”ブッシュマンの毒球根”や”ケープの毒球根”とも呼ばれています。これは大型獣をも殺すほどの有毒成分アルカロイド類が含まれているからで、毒矢に利用されてきました。
 ”牛殺しの扇”と呼ばれるのは有毒で剣状の葉が左右対称に展開して扇形になるからです。


48) イタチハギ  Amorpha fruticosa            2007.05.23
 いつも花が供えてある馬頭尊の置かれた切通しにイタチハギAmorpha fruticosa)の濃い臙脂色の花穂が枝垂れかかっていました。

 北アメリカが原産のマメ科の低木でUSAでは川辺林などにごく普通に分布しています。
日本では北海道から沖縄まで、各地で野生化しています。
 大正時代の始めに観賞用に持ち込まれたそうですが、太平洋戦争後にハリエンジュなどとともに砂防目的で各地に導入されたものが帰化したといわれています。


49) マルバストゥラム ラテリティウム  Malvastrum lateritium      2007.05.24

 いつも通っている散歩道なのに、今朝咲いている花を目にするまでは気づかずに通り過ぎていました。
 匍匐性の細い茎と手のひら状の葉の中に咲く、薄いクリーム色の、直径3cmほどのアオイ科の花でした。

 ペルーからアルゼンチンにかけて分布しているマルバストゥラム ラテリティウムMalvastrum lateritium)でした。
 若い葉や花は食用され、独特の香りと粘りがあるそうです。ミックスサラダに入れることが多いようです。


50) ブリストル ルビー Weigela, HC, 'Bristol Ruby'       2007.07.29
 街角の花園ではあちらこちらでハコネウツギが花の盛りですが、今日は見慣れぬ赤一色のウツギに出会いました。

 東北地方に多いベニバナニシキウツギに似ているように思えましたが、花のサイズがやや大きい点が違います。
 調べたところ、育種家がいろいろな種類を交配して作出した園芸品種で、ブリストル ルビーWeigela, HC, 'Bristol Ruby') のようです。

野の花便り~初夏~』に ホナガタツナミ?とカザグルマ を追加しました。


51) キソケイ Jasminum humile var. revolutum         2008.05.29
 オウバイに一月ほど遅れて同じ仲間のキソケイ(黄素馨:Jasminum humile var. revolutum)が咲いています。

 これは園芸品種のようですが、母種は中央アジアからヒマラヤ、中国南部に分布していて中国名は”矮探春”です。母種の花は小さく若い枝には細かな毛が生えています。
 ネパールではjaiと呼んでいて、根の絞り汁を白癬に処方し、花を集めてペーストにしたものは整腸の効果があるそうです。
 図鑑によってはキソケイの原産地がマデイラ島になっていますが、これはカナリア諸島~マデイラ諸島に分布するJasminum odoratissimumとの混同が原因のようですね。


52) イファケンシス・マンテマ Silene hifacensis              2008.05.25
 昨夜来の雨が上がったので散歩に出ました。
 例のご禁制の花に出合った近くの道野辺に良く手入れされている花壇があって、そこに見慣れぬナデシコ科のピンクの花が咲いていました。

 スペインのアリカンテ地方とマジョルカ島の西でアリカンテに近いイビザ島に固有のイファケンシス・マンテマSilene hifacensis)でした。
 スペイン本土の自生地のものは20世紀初頭には絶滅して、園芸植物として花壇に移植されたものがいまに続いているわけです。かつての自生地への移植復元も試みられているようですが、まだ成功はしていないようです。


53) ボタンゲシ Papaver somniferum var. paeoniflorum       2008.05.28
 昨年の4月16日には野生化しているアツミゲシを書きましたが、先日は茨城県の某所で観賞用に植えられたポピーに混じって何万株ものこのケシがみつかり警察によって刈り取られている映像がTVで放映されていましたね。
 私たちは今朝の散歩の途中、もう一つのご禁制のケシに出合ってしまいました。ケシの変種のボタンゲシPapaver somniferum var. paeoniflorum)でした。

 国によっては特別な規制はなく花壇を飾る花としてポピーなどの種子と混ぜて市販しています。
 地中海域から西アジアが原産地とされていますが、古代から薬用植物として栽培されてきた長い歴史と麻薬としての功罪の物語の数々は広く知られるところですね。


54) キツネノテブクロ Digitalis purpurea             2008.05.17
 これも師匠のお嬢さんのお土産の一つです。
 昔懐かしい、野性の姿をとどめたヨーロッパ生まれのキツネノテブクロDigitalis purpurea)、通称ジキタリスです。
 心臓病に効く薬草として地中海域では古代から利用されていたようです。有効成分はジキトニンなどの強心配糖体ですが毒性が強いので誤れば死を招きます。葉も有毒ですが見た目がコーンフリーに似ているのであちらでは時どき中毒事件が起こるそうです。
 C.ダーウィンの祖父のE.ダーウィンも患者にジキタリスを処方していて、その効能に関する『水腫および肺結核に対するジキタリスの薬効の説明』という論文を1785年に出版したのですが、犬猿の中になっていた医師のW.ウイザリングから自著の剽窃だと激しい非難を受けたことがありました。
 内に秘めた毒性はともかく、外観はちょっと変わったそれでいて美しい花なので、いろいろな民話や伝説があります。この花は狐が妖精にもらった手袋で、夜陰にまぎれて鶏小屋に忍び込むときはめたというのもその一つです。
 開く寸前の大きな蕾を左手のひらに載せて右手のひらで押しつぶすとポンと言う幽かな音を立てるがこれは中に住んでいた花の妖精の悲鳴だといういささか残虐な話もあります。もっともこの妖精の悲鳴と言う話は花を眺めながらの想像だと思います。


55) トキワサンザシマガイ Pyracantha sp.                 2008.05.15
 小鳥の落し物から芽生えて5年目の潅木に今年も白い花が咲きました。
 ピラカンサPyracantha)の仲間であることは間違いないと思うのですが、典型的なトキワサンザシ(P. coccinea)に比べて花柄が長いので花序がばらりとした感じです。浅い鋸歯のある葉の幅がやや広くカザンデマリ(P. crenulata)的でもあります。赤い実が大きくベリーズ・ピラカンサという品種にも似ています。ピラカンサの仲間は7種あるそうですからそのうちの一つという可能性もあるでしょうが、なにしろ小鳥さんの落し物ですから、近くの庭のトキワサンザシ由来の実生変異個体と見るのが妥当でしょうね。
かってにトキワサンザシマガイと呼ばせていただきます。連休前にひいた風邪が抜けきらず、憂鬱な日々です。加齢にともなう免疫機能の低下ですね。


56) アメリカオダマキ Aquilegia MaKana Hybrids           2008.05.09

 花師匠の、一年ぶりに帰国されたお嬢さんがイギリスで買われた花の種から育った数種類の苗の内、先ず咲いたのが横を向いて咲いてツンと伸びた長い苣が特徴的なアメリカオダマキAquilegia MaKana Hybrids)でした。
 北米原産の黄花のA. chrysantha, 外側の花被片が青紫のA. caerulea、赤花のA. formosaなどを交配して作出された園芸品種です。
 北米のオダマキには蜜を貯める苣が長いものが多く、ヨーロッパからアジアのそれは短いのが特徴ですが、これはポリネーターの違いによるようです。北米のものは主にハミングバードが吸密に訪れ、ユーラシアのものはマルハナバチなどが花粉媒介者です。
 北米先住民は花をグリーンサラダに添えるそうで、大変甘い味がするといいます。ところが、種子や根には強い心臓毒があります。毒は薬の例にもれず、先住民は薬草としても利用します。


57) レーマンニア・アングラータ Rehmannia angulata           2008.05.08
 昨年秋買ってきた、ラベルもついていない売れ残りの特売品となっていたポットの苗が花壇で冬を耐え、いまみごとに花開いています。
 どんな花が咲くか楽しみにしていましたが、思いもかけないほど艶やかな筒状の花でした。

 調べたところ、中国が原産地のレーマンニア・アングラータRehmannia angulata)でした。
 漢方薬で日本でも古代から栽培されたというジオウ(地黄:R. glutinosa)の仲間です。
 子房が2心皮1室なので最近はイワタバコ科に分類されていますが、かつてはゴマノハグサ科に入れられていました。


58) セイヨウオダマキ Aquilegia vulgaris plena cv. Black Barlow   2008.05.02
 家人が購入してきたセイヨウオダマキの園芸品種、ブラック・バーローAquilegia vulgaris plena cv. Black Barlow)が咲きました。

 セイヨウオダマキには多様な品種が知られていますが、これもその一つです。1600年代には既に八重咲き品種が修道院の庭で栽培されていたそうですが、Balck Barlowは1804年の花市に出ていたようです。

 典型的な苣の長いオダマキ類とはずいぶんと違った花形ですね。でも実の形を見るとオダマキの仲間だと納得できます。


59) イトバラナン   Ranunculus gramineum L.        2009.05.04
 フラワーショップではじめて見る花の小鉢を買いました。
 イトバラナンというラベルがついていました。葉だけ見るとアヤメ科かと思いましたが、黄色の花はキンポウゲ科のもののようです。
 それにしても、このカタカナの名前の意味がにわかには理解できませんでした。イトバナランと読み違えたせいでもあります。
 帰宅して調べたところ北アフリカと南西ヨーロッパ原産のRanunculus gramineus、つまり“イネのような葉をしたキンポウゲ”ということでした。ラベル名は“糸葉Ranun"ということでした。

『野の花便り~朝霧高原の春~』をUPしました。お暇な折にどうぞ。



60) 虹の玉  Sedum rubrotinctum cv. Aurora       2009.05.06
 昨日今日とあいにくの天気になってしまいましたが、一昨日の散歩の途中で石垣の裾に群生している美しいベンケイソウの仲間に出合いました。

 たぶんメキシコが原産地だろうというニジノタマ虹の玉Sedum rubrotinctum cv. Aurora)でした。


運悪く連休の始まりにあわせるように家人に帯状疱疹が発症してしまいました。病院は休診で、可哀相ですがどうしようもありません。唇付近で痛みで食事もできず、ぐったりしています。明日朝一番に病院へ連れてゆきます。


61) ワトソニア・マルギナータ  Watsonia marginata         2009.05.15
 退院する家人を迎えに行った病院の近くに、グラジオラスによく似たピンクの花が咲いていました。ワトソニア・マルギナータWatsonia marginata)でした。
 南アフリカの西ケープ地方が原産のアヤメ科の植物です。
 リンネの分類体系を英国に広めたことで知られるサー・ウイリアム・ワトソンに因んだ名のこの属には51種が知られていて、すべて南アフリカ産です。交配による園芸品種も数多く作出されているようです。
 グラジオラス属のものとは花がほぼ対生して咲くことと、花柱が2分することで識別できるということです。

「野の花便り~初夏」ヒナギキョウを追加しました。


62) ハニーベル Hermannia verticillata               2009.05.19

 通りすがりにちらっと目に入った黄色の小さな花がなぜかとても気になって引き返してしまいました。
 「出逢ったことのあるのに、忘れてしまったの」と呼びかけられた気がしたのです。
 2000年の夏、ナマクワランドで見たハニーベルの1種のエルマンニア・ヴェルティキラータHermannia verticillata)でした。

 名前のように甘い香りのベル形の花を咲かせる南アフリカ産のアオギリ科の多年草です。アオイ科に分類する研究者もいます。
 この属には約120種が知られていて、熱帯アフリカ以南に分布しています。食用される種もあります。



63) ハニーワート Cerinthe major L.                 2009.05.23
 パープルベルという品種名ラベルのついたハニーワートCerinthe major)に名残の一花が咲いていました。

 地中海域を中心に南ヨーロッパに約10種が分布しているケリンセ属の1種です。典型的な個体の花色はもっと濃い青紫ですが、花筒が黄色のものもあります。
 園芸書によれば栽培は容易で、放っておいても毎年こぼれ種から芽生えてくれるそうです。真っ黒な朝顔のそれに似た種子です。

野の花便り~初夏』にヒトツバタゴを追加しました。 



63) リトルチュチュ~レモンミスト  Scoparia montevidensis     2009.05.26

 “小さなチュチュ~レモン色の霞”というしゃれた名前の付いた花がありました。
 なるほどバレリーナの着けるチュチュのミニチュアを連想させるような、煙るようなレモン色の可憐な花です。
 南アメリカに約20種ほどが知られているスコパリア属(Scoparia)の1種のS. montevidensisからサカタ種苗が作出した園芸品種(S. cv. Iluminia Lemon Mist)だそうです。原種のほうはアメリカのフロリダ州の一部で帰化植物となっています。
 この属は従来はゴマノハグサ科でしたが、最近ではオオバコ科に分類されています。

野の花便り~初夏』にジャケツイバラを追加しました。



64) キバナトレニア Torenia flava                 2009.05.28
 かなり以前から出回っていたそうですが、黄花のトレニアをはじめて見ました。
 今まで見た来たハナウリクサ(Torenia fournieri)などのトレニアの仲間は明るく透明感のあるものでしたが、この花には重量感があります。キバナトレニアTorenia flava)でした。
 インド、インドシナ半島、中国南部が原産地だそうです。
 アジアとアフリカに分布しているこの属は一般にはゴマノハグサ科に分類されていますが、分子データなどを取り入れてハエドクソウ科(Phrymaceae)に分類する説もあります。

野の花便り~初夏』にカラスビシャクを追加しました。


65) ブラックティーツリー  Melaleuca bracteata           2009.05.30
 昨年の夏、冬季でも美しい臙脂色の細かな葉が楽しめるからと家人が購入してきたブラック・ティーツリー(Black tea-tree:Melaleuca bracteata)に白い細かな花が咲きました。
 一つ一つの花には一本のメシベを囲んで5つの束にまとまった無数の糸状のオシベがあります。
 オーストラリアの固有種でNSW州から東海岸域に沿ってNTのダーウィンあたりまで分布しています。
 成長すれば5~8mほどの樹高になるようですが、我が家の庭では2mが限度ですから、気をつけて剪定するつもりです。

『庭の花便り~6月』を更新しました。


66) ライラック  Syringa vulgaris L.               2010.05.02
 後2週間もすれば北海道ライラック祭が始まりますが、東海地方ではもうライラック(Lilac:Syringa vulgaris L.)が皐月の晴れ上がった空の下で満開です。
 東ヨーロッパやトルコが原産と言われているモクセイ科の低木ですが、いまでは南・西ヨーロッパに広く野生状態で分布しています。
 16世紀末にトルコからヨーロッパへ移入されて以来たくさんの園芸品種が作出されていて、Mabberley, D.J. (2008) を見ると1500種類も記載されているようです。画像の品種名はわかりませんが、“Colonder” という品種に似ています。


67) ヒルザキツキミソウ   Oenothera speciosa Nutt.    2010.05.07
 リサイクル煉瓦が敷きつめられた歩道に沿って設えられた50cm四方ほどのマスに植栽されているヤマボウシの根元に、海を渡ってやってきたヒルザキツキミソウOenothera speciosa Nutt.)が咲いていました。
 若葉を広げているヤマボウシにも間もなくあの純白の苞に抱かれて花が開くことでしょう。
 ヒルザキツキミソウは北米の中部から東部とメキシコにかけてが原産地のアカバナ科の一年草で、ピンク・プリムローズ、バターカップ、アマポーラなど、いろいろな名前で呼ばれています。さすが移民の国だ、ともいえますが、花の名にうるさい日本人としてはいささかいい加減な命名だな~と思ってしまいますね。


68) タチジャコウソウ   Thymus vulgaris L         2010.05.09
 寒暖の差が大きかったこの冬から春にかけての気候が幸いしたのか、今年の庭のタチジャコウソウ(Thymus vulgaris L.) は花つきがとてもよい。
 そっと触れただけでも、脳を活性化させてくれそうな清涼な香りが立ち昇っててきます。もっとも、“豊艶濃厚な香り”だと感じる方もおられるようですが・・・・・。
 タチジャコウソウは地中海の沿岸域原産といわれているシソ科イブキジャコウソウ属の植物で、代表的なヨーロッパハーブの一つです。
 イブキジャコウソウ属の植物は約220種がユーラシアに広く分布ますがそのおよそ1/3は地中海域に見られ、タイムと総称されています。ことにこのタチジャコウソウ・タイムは古代から薬草・香草として重用されていて、園芸品種も100以上知られているそうです。


69) シャクヤク   Paeonia lactiflora Pall.        2010.05.14
 西高東低の時ならぬ冬型の気圧配置ながら、遠州は爽やかな風が渡る五月晴れでした。
 行きつけのスーパーマーケットへ向かう途中の小さな丘にある、とあるお宅の庭先で、シャクヤクPaeonia lactiflora Pall.) が咲き始めていました。
 ボタン科の多年草で、東シベリアから中国北部とチベットが原産地です。西周時代の各地の民謡を集めたという『詩経』の「湊洧」に愛の契りの象徴としてうたわれる“芍薬”がシャクヤクだとすると、紀元前から親しまれていたことになりますね。
 ヨーロッパへ移入されたのは1784年で、P.S.von Pallasがキュー植物園のJ.Banksに送ったものだといわれています。日本への渡来の時期ははっきりしませんが平安時代までには薬草として栽培されていたようです。 現在栽培されているシャクヤクにはさまざまな園芸品種があり、画像のような赤い八重咲きのものが多いのですが、原産地に自生するものは学名の種小名の lactiflora が示すように白花で一重です。
 私が学生だったころにはボタン科の植物はキンポウゲ科と近縁だと教わりましたが、その後の形態学的研究からオトギリソウの仲間やビワモドキなどに近いものという意見が多くなりました。そして、最近のDNAの比較から得られるAPG系統樹ではマンサク科、ユキノシタ科、ベンケイソウ科などと近縁ということになっています。


70) ベニバナトチノキ   Aesculus X carnea Hayne     2010.05.21
 新幹線を降りて掛川駅の南口へ出ると、タクシープールの緑地帯の中でベニバナトチノキAesculus X carnea Hayne) が咲いていました。

 北アメリカ南東部が原産のレッド・バカイ(Red Buckeye: Aesculus pavia J. Zeyher)とバルカン半島からブルガリアにかけてが原産地で、16世紀頃からヨーロッパで栽培されはじめたマロニエ(Marronnier: Aesculus hippocastanum L.)との雑種で19世紀初頭にドイツの庭園で見つかったものだそうです。

 トチノキの仲間は従来はトチノキ科として分類されていましたが、最近はカエデやムクロジ類とともにムクロジ科としてまとめられています。進化学的にはウルシ科やミカン科などと近縁だと考えられています。

初夏を彩る花々」に フジ を追加しました。


71) ユウゲショウ   Oenothera rosea L' Her. ex Ait.      2010.05.29
 この季節、田園地帯の簡易舗装された道の端や街中の放置された更地の中で、紅を差したおちょぼ口を連想させる、ユウゲショウOenothera rosea L' Her. ex Ait.) の小さな花が目立つようになりました。
 最初に記載された(命名された)標本はペルー産の個体ですが、北アメリカの西南部から中米そして南米のアンデス山脈の西側にわたる広い地域が原産地といわれるマツヨイグサ属の1種で、現在は世界中の暖地に帰化しています。
 日本には観賞目的で明治時代に栽培が始まり、その後、関東以西の各地で逸出帰化したと考えられています。
 オシロイバナの別名にもユウゲショウがあって紛らわしいのでアカバナユウゲショウと呼ぶ人もいます。
 和名の漢字表記は‘夕化粧’ですから、月見草のように夕方に咲き始めるのだろうと思ったのですが、みたところ日が落ちると閉じて、朝日が昇ると開き始めます。曇りや雨の日にはほとんどの花は閉じていました。
野の花便り~初夏』に ウラシマソウ を追加しました。


72) ボタン Paeonia suffruticosa Andr    2011.05.03
 ポストからのぞいていた朝刊の一面トップの大見出しが「オサマ・ビンラディン容疑者殺害」でした。ふと違和感を覚えましたが、そのまま散歩にでました。、でも何が違和感を呼び起こしたのか、歩きながらも気にかかりました。
 そして、立ち寄った正法寺の庭に咲き満ちるボタンPaeonia suffruticosa Andr.)を目にしたとき、突然に違和感の原因に思いつきました。引っかかっていたのは“容疑者殺害”という言葉でした。容疑者は確保して容疑の真偽を正すべき存在のはずです。殺してはいけません。つまり“容疑者暗殺される”とすべきだったのです。
 しかし、なぜボタンを目にしたときそのことに思い至ったのか、こちらはわかりません。不思議な花ですね。

 中国西南部が原産といわれるボタンが日本に入ったのは奈良時代以前のことのようです。むろん隋時代に始まった中国でのボタン愛好熱の伝播の結果です。
 植物学的にも不思議な花です。なにしろ胚の発生様式が裸子植物のイチョウに似ているのです。そして、発芽しても子葉は地上に顔を出しません。遺伝子レベルではカツラやマンサクに近縁だといわれていますが、確定的ではないようです。
「野の花便り~晩春」セッコク を追加しました。


73) キバナオドリコソウ  Lamium galeobdlon (L.) Crantz  2011.05.07
 早朝の散歩の途中、緑ヶ丘団地近くの道沿いの花壇のなかにぽつんと咲いているキバナオドリコソウLamium galeobdlon (L.) Crantz) に出合えました。
 西ヨーロッパからイランにかけて分布するシソ科の多年草で、古くから観賞用に栽培されていたそうです。そのため各地で野生化が見られ、最近は日本でも逸出したものが観察されています。
カキドオシのように匍匐茎で繁殖するためツルオドリコソウという和名もあります。
 英名は Yellow Archagel ですが、花の形を大きな翼を背負う大天使に見立てたのでしょうか。
「野の花便り~初夏」オニグルミ を追加しました。


74) ヒメコギク  Bracyscome anfustifolia A. Cunn. ex DC.  2011.05.17
 家人が、ハンギング植えによいのではと、直径2cmたらずの可愛い花をたくさん咲かせた“姫小菊バイオレット”を持ち帰りました。

 オーストラリア原産で、シドニーからアデレードにかけての東南部とタスマニアに分布する Bracyscome anfustifolia A. Cunn. ex DC. の変種 var. heterophylla (Benth.) G.L.Davis でした。
 母種の葉は種小名が表すように切れ込みのない披針形ですが、この変種のそれは細かく切れ込んでいます。
多年草で、種子でも殖えますが、枝挿しでも増やせるそうです。
 ヒメコスモスという名でも流通しているようですね。
野の花便り~初夏」に タチシオデスイカズラ を追加しました。


75) 花浜匙 スターチス Limonium sinuatum (L.) Mill.   2011.05.20
 今朝は5時過ぎに家を出たとき、すでに気温は20℃に達していました。猛暑の夏の到来の予兆でしょうか。
 今日は31度を越した被災地もあったそうですが、放射能物質への心配と冷房もままならない環境に居られる方々の健康が気にかかります。
 久しぶりに通った宮前坂の花壇では花浜匙スターチスLimonium sinuatum (L.) Mill. が花の盛りでした。

 地中海沿岸域が原産のイソマツ科の多年草ということですが、遠州の路地では冬越しできませんでした。ドライフラワーとしても楽しめますので、古くから庭園で栽培され、今では色とりどりの品種が作出されています。画像の株は、ポンデュエリエローという品種だそうです。
「野の花便り~初夏」コバンソウ と総苞片の数が6枚と5枚の ヤマボウシ を追加しました。


76) ブラッシノキ Callistemon speciosa (Sims) DC   2011.05.28

 東海地方はいつになく早く入梅しました。
 見えないほどの小さな雨粒が、何もかもしっとりと濡らしている庭先で、ブラッシノキCallistemon speciosa (Sims) DC) の深紅の花穂が重そうに揺らいでいます。 西オーストラリア原産のフトモモ科の常緑樹です。
 7年ほど前に“金宝樹”という名でフラワーショップに並んでいたものを購入したものです。ブログに紹介するついでにこの仲間について調べてみたのですが、園芸品種やよく似た種がたくさんあって同定が難しいことがわかりました。おまけに和名も混乱していました。“金宝樹”という名はオーストラリア東南部原産のハナマキ( C. citrinus (Cult.) Skeels) にも使われていました。よく似てはいますが葉が細いので区別できる、明治時代に渡来したといわれるマキバブラッシノキ(C. rigidus R. Br.)も関東地方ではブラッシノキと呼んでいます。

 こちらはエンデバー号でシドニー近郊の植物を採集したJ. バンクスが1789年にキュー植物園に導入したことで知られます。
野の花便り~初夏」に コメツブツメクサ を追加しました。


77) デラワイ・イボタノキ Ligustrum delavayanum Hariot.    2011.05.30
 台風一過で、久しぶりの爽やかな朝でした。
市街地が一望できる茶畑峠の直ぐ下のお宅の垣根のデラワイ・イボタノキ(Ligustrum delavayanum Hariot.) が白い小さな花を咲かせていました。特有の青い香が漂ってきました。

 最近植木屋さんが生垣用に推奨しているという樹で、四川省から雲南省北部にかけてが原産地のイボタのなかまです。イボタに比べ葉が小さくオシベが花筒から突出しています。
 中国名は“川填蠟樹”です。川や湖の近くに生えるイボタということでしょう。
種小名の delavayanum はフランス人宣教師のP.J.M. Delavay さんにちなんだものです。
 彼は1867年に広東省恵州に派遣されたとき雲南省を旅して、その多様な植物に魅入られたそうです。
 そこで、1882年から1888年まで雲南省北部を探索し、20万点の標本と4000種もの植物をフランスに送りましたが、何とそのうち1500種が未記載のものだったといいます。
 病を得て治療のためいったん帰国しますが1893年には再び雲南に戻り採集を続けましたが、2年後には彼の地で病に倒れ客死したそうです。
「野の花便り~初夏」に ホオズキ を追加しました。


78) マーシュ・アフリカーナ Gladiolus tristis L      2012.05.04

 思いがけないところ思いがけない花に出会いました。
自生地ではマーシュ・アフリカーナあるいはトランペッターなどと呼ばれているグラジオラスの1種(Gladiolus tristis L.)でした。菊川土手の水辺近くに咲いていました。

 南アフリカのケープ地方、ボッケフェルト山からポートエリザベスにかけて分布しています。
沼地や河辺などの湿地に群生していてます。

 ヨーロッパへは1745年に導入されたそうです。日本では京都府立植物園などで栽培されていますが、菊川土手に咲いているとは意外でした。
 流域のどなたかの花壇から逃げ出してきたのでしょうか。

『野の花便り~初夏』ムシクサを追加しました。 


79) ギョリュウ Tamarix chinensis Lour.              2012.05.13
 盆栽愛好家のNさんから、珍しい花が咲いているので見てほしいという画像添付メールが届きました。 花の盛りのギョリュウTamarix chinensis Lour.)でした。
 モンゴルから広東省、雲南省にかけて広く分布し、漢方薬種としても利用するギョリュウ科の落葉性低木です。
 日本に渡来したのは江戸時代の享保年間といわれています。北米南西部では観賞用に導入したものが今では野生化しています。
かつては花や材の特徴からヤナギ類に近縁と考えられていましたが、DNA塩基配列の比較から今ではタデ科やイソマツ科に近いものと考えられています。
 そういわれてみればなるほどと頷かせる花の造りではありますね。
『野の花便り~初夏』ニシキギを追加しました。


80) キショウブ Iris pseudacorus L.                 2012.05.25
 黄菖蒲のそこらに咲ける道端の
   小川流れて青田に入りぬ   岡麓

 里山を歩く会の皆さんと歩いた小笠山山麓の小さな溜池のほとりに、ノイバラの香をつれて流れる谷の風に揺らいで、キショウブ(Iris pseudacorus L.) が咲いていました。

 ヨーロッパに広く分布していて、庭園にも栽培され、古代から地下茎が黒色染料やインクの原料として利用されていたそうです。
 牧野説では、明治30年ころ園芸目的で移入されたものが水流に乗って逃げ出して野生化したことになっています。
 しかし、白い花の多い日本の初夏の野では、やはりその異国情緒が浮いているように思えるのは、私だけでしょうか。

「野の花便り~初夏」スダジイを追加しました。


81) ペラペラヨメナ Erigeron karvinskianus DC.         2012.05.31
 牧之原第一トンネルと第二トンネルを挟んだ谷を水源にする小さな沢が、金谷駅北口前の厳室神社の脇を流れて大井川へと下ってゆきます。その沢の岸辺にペラペラヨメナErigeron karvinskianus DC.)が咲いていました。

 中央アメリカが原産地でメキシカン・デイジーとも呼ばれます。
 日本で帰化植物化したのは戦後のようで、1949年に京都大学構内で採集されペラペラヨメナという和名が与えられたのが、最初の標本のようです。
 高次倍数体で、受精することなく種子形成をして繁殖しているそうです。セイヨウタンポポなどと同じですね。

「野の花便り~初夏」カモガヤを追加しました。


82) オランダガラシ Nasturium officinale R.Br  2013.05.01
 昨日の雨で増水して、いつもは朝から元気に群れているカルガモたちの姿もない西方川の中ほどに緑の小島のように浮いている、白い花が咲いている草叢がありました。
 ズームアップしたカメラの液晶モニターに現れたのはオランダガラシNasturium officinale R.Br.)でした。
 今では野菜として世界中で栽培されていて、各地で野生帰化していますが、原産地はヨーロッパというのが通説です。
 日本に導入されたのは明治時代の1870年ころということになっています。最初は箱根や軽井沢などの避暑地のホテルでレストランの洋食のツマとして栽培されたと聞きますが、私が初めてこのクレソンと名付けられた植物を知ったのは月給取りになってステーキを食べることができようになったころだった思います。

 イギリスなどでは民間薬としても利用されていて、生の葉をすりつぶしたものは皮膚病に、生食すれば心臓病やリュウマチに効果があるといわれています。
『野の花便り~晩春』シュロ を追加しました。


83) ツリガネカズラー2 Bignonia capreolata L  2013.05.11
 二階の窓から、なにとはなく緑濃くなった庭を眺めると、茂ったカワズザクラの葉影にひっそりとツリガネカズラBignonia capreolata L.)が咲いていました。
 数日前に下草をむしっていたときには既に頭上で咲いていたはずなのに、まったく気づきませんでした。
 耐寒性のある繁殖力旺盛なつる植物で、長く地上を這ったり、取りつく垣根や壁や樹木があれば、先端に吸盤状の構造のある巻きひげをからめて高いところまで登ってゆきます。
 北米の中部から南部が原産地で、先住民のチェロキー族は葉を煎じたものを清血剤とし、チョッタウ族はつるの皮を剥いだものを潰して蒸した湯気が浮腫を治すと考えているそうです。
『野の花便り~初夏』葱坊主を追加しました。


84) ハルジオン Erigeron philadelphicus L  2013.05.15
画像  いよいよ本格的に夏が来たようですね。
ホトトギスはまだ渡ってきていないようですが、庭のウツギは咲き始めています。
 その庭の、手入れの行き届かない草の茂みにはハルジオンErigeron philadelphicus L.)が我が物顔で咲いていて、なかにはこんな濃いピンクの株もあります。
 北アメリカが原産地ですが、小石川植物園で栽培されていたものが大正時代の1920年ころに逸出し、急速に分布を広げたといわれています。
多年草で、根と区別できないような地下茎で繁殖できるため、いったん蔓延りだすと文字どおり根絶やしにすることは困難です。
 雑草と目の敵にしないで、一時のことですからその可憐さを楽しむことにしています。負け惜しみかな~?。
『野の花便り~初夏』キュウリグサを追加しました。



85) クリスマスブッシュ Ceratopetalum gummiferum Sm  2013.05.19
画像  昨年の七夕の日のブログで紹介したクリスマスブッシュNew South Wales Christmas Bush Ceratopetalum gummiferum Sm)に細かな白い花が咲きました。

 原産地のオーストラリアのニューサウスウエールズ州では9月ごろから咲き始めるそうですが、北半球ではその気候に合わせて初夏に咲くというわけですね。
 昨年初めて見たその花はすでに萼片が伸長し赤く色づいていて、咲き始めは白いということは図鑑で知ったのですが、こうして見ると、思いのほか細かなもので、少し意外でした。

「野の花便り~初夏」クスノキを追加しました。


86) フランスギク Leucanthemum vulgare Lam,  2013.05.25
画像  今朝、卯の花が盛りを過ぎようとしている庭で水やりをしていると、遠くからホトトギスの声が聞こえてきました。今年の初聞きです。
 この季節、街中の空き地のここかしこで目立つ白い花がフランスギクLeucanthemum vulgare Lam,)です。
 ユーラシア西部の温帯に広く分布していて、日本に渡来したのは江戸末期だそうです。間もなく逸出野生化して今では北海道から本州にわたって人里植物として帰化しています。
 英語圏ではOxeye Daisy, Moon Daisy, Dog Daisy, Margueriteなどさまざまな名で呼ばれ、恋占いなどの遊び道具として親しまれています。日本ではマーガレットと呼ぶ人も少なくありませんが、カナリー諸島原産のモクシュンギク(木春菊)にもマーガレットの名があって、ややこしいですね。
『野の花便り~初夏』マユミを追加しました。


87) ウスベニヒメウツギ  Deuitzia x kalmiiflora        2014・05・09
 朝晩に町の広報スピーカらからは「夏は来ぬ」のメロディーが流れてきますが、ここ数日は茶農家が遅霜を心配する冷たい朝が続いています。
 とはいえ、日が昇れば柿の若葉が輝き、その根元近くに植栽されたウスベニヒメウツギDeuitzia x kalmiiflora)が咲いています。

 ヒメウツギ(D. gracilis Sieb. et Zucc.)をもとに交配により作出された園芸品種だそうです。
 ヒメウツギそのものは関東地方から九州にかけての山地水辺に分布していますが、命名者のシーボルトさんは『日本植物誌』に「南日本の深山にしかなく、自分もそこで手に入れた」と書いています。関東以西が彼にとっての南日本だったのでしょうか。
「野の花便り~初夏」ムクノキを追加しました。


88) エンシーナ  Quercus ilex L             2014・05・20
 20年前にフィレンツェのアルノ川のほとりで拾ってきた団栗を蒔いて育てたエンシーナQuercus ilex L.)に今年も花が咲きました。

 地中海域が原産地で、イベリア半島ではごく普通に見ることができるブナ科の常緑高木で、よく育ったものは樹高25mにもなるそうです。
 いわゆるオークの1種で、英語圏ではHolm oak あるいはHolly oak と呼ばれています。
 有用樹で、材は堅くて丈夫なため古代から建材に利用され、タンニン含量の多いゴール(虫こぶ)からはインクが作られ、レオナルド・ダ・ヴィンチも素描に使っていたそうです。団栗は炒ったり粉にしたりして食用され、コルクガシのそれ同様にイベリコ豚の餌になります。
『野の花便り~初夏』オヘビイチゴを追加しました。


89) アカバナエゴノキ Styrax japonica Sieb. et Zucc. cv. Pink Chimes 2014・05・25
 花の命は短くて・・・といいますが、この季節に咲く花の中ではエゴノキのそれが一番短いように思います。あっという間に咲きそろい気が付けばすでに散り敷いています。
 そんなエゴの花ですが、運よく咲き始めた間もない、それも薄紅色のアカバナエゴノキStyrax japonica Sieb. et Zucc. cv. Pink Chimes)に出合えました。
 エゴノキは韓国や中国にも分布していますが、この美しい品種は日本で作出されたものだそうです。
 純白のエゴノキはむろんですが、このほのかに紅を帯びた花もすてきですね。
『野の花便り~初夏』ギシギシを追加しました。

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