今日のリコリス・ガーデン
Lycoris Garden Report 2004

No.2 : 04.09.01 〜04.10.14

ページが大きくなりすぎましたので9月以降のレポートをNo.2としてアップすることにしました
お楽しみください

は8月中旬。
は9月1日の様子です。手前の赤い花は「薩摩火竜」。奥のフェンス際の黄色の花はキネンシス


2004−09−01
フラヴェスケンスが咲きました

台風16号の風にも耐えて、開いたフラヴェスケンスL. flavescens)。花の色は個体により多少異なります。


は満開のキネンシス(中国石蒜、L. chinensis)。中央は莫干山産の不稔性分類群(タイプーA)。コヒガンバナキネンシスの雑種と思われます。は大野さん作出の薩摩火竜。核型は2n=22=22A。スプレンゲリとコヒガンバナのゲノムが入っていると思われます。 



2004−09−03
サツマアカリ(薩摩灯)とストラミネアが咲いています

  が「さつま灯」。花被片の先のブルーはスプレンゲリのかかわりを思わせ、花の形はキツネノカミソリに似ています。

  ストラミネア。明日には黄色味が失せ、白くなるでしょう。



2004−09−05
アケボノショウキランと3倍体キツネノカミソリが咲いています

 が6年ぶりに咲いてくれた3倍体キツネノカミソリ(2n=32)。

 アケボノショウキラン(オオスミ)です。こちらは花つきがよく毎年咲きます。



2004−09−07
今年最初のヒガンバナの開花です


 左の写真が私のリコリスガーデンで今年最初に咲いたヒガンバナ(3X)です。続々と花茎が上がってきています。このところ、秋分を前にして咲きだすヒガンバナのことが話題になっていますが、皆さんが注目するようになったことも早咲き個体が見つかる原因かもしれませんね。8月26日に花博会場に出かけた際、植え込みの中にたくさんのヒガンバナが咲いていました。問い合わせ中ですが、多分2倍体のヒガンバナ(var. pumila)を植栽したのでしょう。ちなみに、昨年、浜名湖近くの三ケ日町で8月中旬に咲いたヒガンバナは、気孔のサイズを計測したところ3倍体の普通のものでした。
 中央ロンギトゥバL. longituba) の果実です。たくさんの種子が採れることでしょう。
 オフホワイトL. cv. "off-white") の果実です。一見、稔性がありそうですが、膨らんでいるのは子房壁で完熟する種子はできません。



2004−09−09
アウレアとシロバナヒガンバナが咲き始めました

 アウレアL. aurea, 2n=16)です。キネンシスとよく似ていますが、花柱が垂れ下がります。開花のピークは下旬です。
 は典型的なシロバナヒガンバナです。



2004−09−10
さつま美人とカルドゥエリが咲きました。

上の写真:
 さつま美人と呼ばれるものです。単独で見るとヒガンバナかと思うのですが、中央ヒガンバナと比べると違いがよくわかります。核型は 2n=19=4M+3T+12A で、分布も考慮するとショウキランとヒガンバナの雑種と考えられます。詳しいことは http://www5e.biglobe.ne.jp/~lycoris/taxonomy-cultivar-3.html をご覧ください。
 が中国固有のカルドゥエリです。核型はナツズイセンと同じで、 2n=27=6M+10T+11A です。こちらも詳しいことは http://www5e.biglobe.ne.jp/~lycoris/taxonomy-sterile-acro.meta.telo-3.html をご覧ください。


2004−09−14
あせたるは悲傷に似たり曼珠沙華

上の写真:
 左は花の終わったストラミネアです。子房はこのままで萎んでしまい、花茎とともに枯れていきます。不稔性の分類群のほとんどが同じ経過をたどります。
 中央は9月7日に写真を載せたオフホワイトの枯れ始めた果実のを開いたものです。発育できなかった種子が見えます。不稔性のものでここまで子房が膨らむものは稀です。
 右コヒガンバナ(2倍体ヒガンバナ)の果実です。張りがあって種子が発達中です。まもなく黒く熟した種子ができます。
 7日に報告した浜名湖花博会場の早咲きのヒガンバナはやはりコヒガンバナでした。インフォメーションセンターからの返事によると、昨年秋に普通のヒガンバナと一緒に植え込んだものだそうです。今行けば果実が見られるそうです。



2004−09−16
シロバナヒガンバナとして市販されている3つのタイプ

3タイプのシロバナヒガンバナ
 現在リコリスガーデンでは赤と白のヒガンバナ類が花盛りです。上の写真のものはいずれもシロバナヒガンバナとして市販されていたものです。核型はみな同じで 2n=17=5M+1T+11A です。
 の個体は、咲き始め赤味が差し、やがて純白に近くなります。一つ一つの花はやや上向き加減で、花柱は花糸よりわずかに長い程度です。牧野図鑑の原色の口絵と同じ分類群だと思います。
 中央は軟らかなかなクリーム色でほとんど赤味は出ません。横向きからやや下向きに咲きます。
 は花被片の中肋の下半分が黄赤色で辺縁のフリルが顕著です。花柱が長いのも特徴です。

 九州に自生するものはどのタイプか、未確認です。情報をお持ちの方はお教えください。



2004−09−18
完全にSEXを捨てたミュータント・ヒガンバナ

ミュータント・ヒガンバナL. radiata forma asexualis) :
 今日はほんとうにびっくりさせられました。7年ほど前、鹿児島の大野さんが「開かずのヒガンバナ」だといって分けてくださったものが開きました。今までは左の写真のように、花茎が上がってきても蕾が膨らむだけで、ほころびることなく終わってしまっていたのです。それが、開いたのです!
 それだけでも驚きなのに、なんと、花糸も花柱も花弁化しているではありませんか。
 ヒガンバナは不稔性ですが、少ないながらも稔性のある花粉を放出し、他の稔性のある分類群とのあいだに雑種を作ることができます。つまり、完全にはSEXを放棄したわけではありません。ところが、この写真のクローンは花粉も卵もできません。子房すら形成されていないようです。
 このクローンはMADS BOXの花器官形成にかかわるA,B,Cの3クラスの遺伝子の内、Cクラスの遺伝子が壊れた典型的な例だと思います。
 以前(園芸ニュースレター33号)、橘康夫さんが報告している「風船咲き八重」や梅田衛さんの「八重ヒガンバナ」と同じものかもしれません。



2004−09−23
いよいよ花の季節も終わりに近くなりました

  アケボノショウキランの赤味が強い系統でベニサツマ(紅薩摩)と呼ばれているものが咲きました。核型は2n=17=5M+1T+11A でオオスミと同じです。ショウキランのそれよりキツネノカミソリの形質が強く発現しているようです。


上の写真
 は 2n=16 のアウレアです。今が花盛りです。 は一昨日から開き始めた福建省武夷山産のヒガンバナです。日本のヒガンバナと区別できません。上海産のヒガンバナも花茎を伸ばしてきました。



2004−09−26
ムジナノカミソリが季節外れに咲きました

 が韓国内蔵山産のムジナノカミソリ(var. koreana)です。例年は8月中下旬に開花しています。秋咲きのキツネノカミソリ同様に、遅咲きの個体かもしれません。
 ミュータント・ヒガンバナで、風船咲き状態のまま開かない個体です。

次回の報告は中国から帰国してからとなります。では・・・・。



2004−10−10
浙江省産と江西省産のヒガンバナが咲いています


 運良く、台風22号より先に帰国できましたが、昨日の強風にはおののきました。浙江省北西部の山岳地帯にある天目山(1,787m.alt.)と最近日本でも観光地として知られるようになった千島湖(50年前にできた人造湖)地方の植物を見てきました。
 天目山にはキネンシスとヒガンバナが分布することが知られていますが、西天目山の保護区の中で両者の雑種と思われる個体が新葉を伸ばし始めていました。フィールドでは咲いているヒガンバナには出会えませんでしたが、杭州市内の公園では咲き残っているものがありました。
 帰宅してみると、28日に出発するときには花茎が地上に顔を出し始めたばかりだった浙江省産上の写真左)と江西省産上の写真中央)のヒガンバナL. radiata var. radiata)が満開になっていました。
 上の写真の右は浙江大学の実験植物園に咲いていた広西チワン族自治区産ヒガンバナです。花色が薄いタイプです。


2004−10−13
リコリスたちの競演もこれにて千秋楽

  台風でだいぶん痛めつけられましたが、リコリスたちの競演のフィナーレを飾っているのは、アウレアの名で総称されている分類群です。

 は2n=15の、典型的なアウレアL. aurea var. aurea)です。上向きに咲く花と、オシベとともにピンと突き出すメシベ、大きな総苞が特徴です。

 は花が横向きに咲き、メシベが垂れ下がる2n=16の分類群です。花の後で伸展する葉の形でも区別できます。


 およそ2ヶ月に渡った花の饗宴も、10月の半ばにはすっかり終わって、ヒガンバナ類は来年に備えて養分の蓄積を始めます。花と入れ替わりに葉を伸ばし始めるグループと、しばらくはすっかり地上から姿を消し早春に葉を伸ばし始めるグループとがあります。
 上の写真は前者です。
 は8月早々に花を咲かせたコヒガンバナL. radiata var. pumila)の現在の姿です。実は熟し、黒く光沢のある種子をたくさんつけています。は花が終わったあとの花茎から余った養分を球根に戻している最中のヒガンバナL.. radiata )です。早速葉を伸ばし始めています。

 年が明けて、後者のグループが葉を伸ばし始めるまで、このレポートも小休止します。
しばしお待ちください。

  
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