Brasil

ブラジルで出逢った花

BRASIL

世界で5番目、日本の約23倍、8,547,403Kmの国土面積をもつ広大なブラジルを駆け足で、まさに点と線の観光旅行をしてきました。
訪れたところは世界三大瀑布の一つとして知られたイグアスと、かつては疫病がはびこり野獣の跋扈する恐怖の地といわれ、いまや広大な大豆畑に成り代わりつつあるマットグロッソのパンタナール、そのパンタナールも流域の一部である大河アマゾンの中流に位置するマナウスです。
 まことにあわただしい旅ではありましたが、さまざまな始めて目にする花々に出逢うことができました。
ブラジルの植物といえば、その代表は1500年に入植を始めたポルトガル商人によって1540年に最初の輸出産物とされた、赤い色素の採れる”パウ・ブラジル”、つまりブラジルボク(Caesalpinia echinata)ですが、この広大なそして驚くほど多様な環境に生育する植物の種数は膨大で、今でもその全容を把握するには至っていません。ある研究者の言葉を借りれば「森に入れば100m歩くごとに新種に出合う」というほどです。
例えば、マナウスの25kmほど上流にある、イタリア生まれのスイス人植物学者Adolfo Duckeを記念して1963年に設置された植物保護区(Reserva Florestal Adolfo Ducke)は約100kmほどですが、1965年以降キュー植物園のG. Pranceの指導の下に調査が進められ、現在約2200種がリストアップされていますがその大半は樹木です。 わずか10km四方の森にこれほどの数の植物種が生育し、しかもまだまだ未知のものが多いというのですから驚きです。
また、聞くところによるとそれぞれの地域にはマッテイロ(mateiro)と呼ばれる非常に植物に詳しいシャーマンがいて、その地元の植物をすべて識別しているそうです。
私にとっては目にする植物の99%は未知のものでしたが、ガイドさんが名前を教えてくれましたので、とりあえずそのブラジルでの呼び名を書いておきます。しかし、いろいろと調べてはいるのですが残念ながら今のところ正式の学名がわからないものがほとんどです。ご存知の方はぜひお教えください。

 

項目 HEAD
 イグアスの滝周辺 Fos do Iguaçe   パンタナール Pantanar   マナウス Manaus 


~ FOZ DO IGUACE ~

イグアスの滝から立ち上る水蒸気で潤されるイグアス川の両岸には雲霧林が発達し、その一部は自然公園として保護されています。 それはブラジル側で550km、 アルゼンチン側で1550kmもあり、2000種以上の植物が生育しているといいます。 しかし通りすがりの私たちが立ち入ることのできるのは自然公園の本の一部、滝を巡る観察路に過ぎません。したがって出逢える植物も限られますが、それでも驚くほどの多様さでした。
 その内のほんの一部を紹介します。


左) 日本を出てから35時間の長旅の果てにたどり着いたフォス・ド・イグアスの、滝の上流の川岸にあるレストランの庭にゆらりと立っていたインバウバ(Imbaúba: Cecropia pachystachya )。青い空から舞い降りるパラシュートのようでした。中南米に約75種が知られているケクロピア科の1種です。
右) 滝を巡る観察路に入るとしっとりとした森の中にはさまざまな花がありました。その一つ、三匹の緑の蛾が頭を突き合せたような葉のアツェディーニャ(Azedinha: Oxalis triangularis)。園芸店で売られている”紫の舞”などの原種です。

 
 湿った暗い地表には何種類ものシダ類が生えていました。
左)
 アヴェンカ・デ・エスピーガ Avenca-de-espiga (Anemia phyllitidis) です。 メキシコを中心に分布していますが、現在は熱帯では帰化植物的存在となっています。フサシダ科の1種です。遠い昔、百瀬静男先生が小石側植物園で胞子から育てた株を栽培されていて、その染色体数を調べたことを思い出しました。
右) アヴェンカ・デ・カショエラ Aveanca-de-cacheira だそうです。”滝孔雀羊歯”ということのようです。たぶん、  Adiantum sessilifolium でしょう。


 生憎の今にも降り出しそうな天候になって、森の中はすっかり暗くなってしまい、フラッシュなしでは撮影できないほどになりました。そんな環境で撮った写真ですので、いささかピントが甘くなってしまいました。
左) ペケーノ・ボルボレッタ・デ・カショエイラ Pequeno-borboleta-de-cacheira だそうです。滝の胡蝶ということらしいです。キツネノマゴ科だと思います。
右) アルヴォリ・デ・ピメンタ・ド・ヘイノ Ārvore-de-pimenta-do-reino(Piper sp.)”胡椒の木”です。名のとおりコショウ科の木本です。この仲間は中米からブラジルにかけて広く分布しています。


左) サマンバイア・コモ・ムスゴ Samambaia-como-musgo (Selaginella sp.)。日本のクラマゴケと同じ仲間のシダ植物です。
右) 滝の上流の平坦な林に入るとさらに多様な植物が目に入ってきます。大木の梢にはどんな花が咲いているのか皆目わかりません。散った花も目にしませんでしたので、今は開花期ではないのかもしれません。そんな大木の飾りのように薄紅色の実の房が下がっていました。木性のタデ、タシー Tachi の1種と聞きました。 たぶんタデ科のTriplaris brasiliana Cham.でしょう。


左) クリザンテモ・ド・カンポ Crisāntemo-do-campo  別名: ボタォン・デ・フローリス・ド・ブラズィーロ Botaon-de-flores-do-Brasil キク科の Centrantherum sp. ハワイやフロリダなどに帰化していて日本でも栽培されている葉に鋸歯があるムラサキルーシャンの近縁種のようです。葉はほぼ全縁です。この属には2種が知られていて、南アメリカ、オーストラリア、フィリピンに分布しています。
右) カンパーニャ・ヘンダ Campainha-renda (レースアサガオ)。朝日の中で見た小さな白いレース編みのような朝顔でした。 南米に広く分布している Merremia discoidesperma のようです。


左) アルビーナ Arbina の近縁種ということでした。ツルネラ科の1種(Turnera sp.)のようです。 
右) アルゼンチン側の有名な滝、悪魔の喉笛の上流の岸辺に咲いていたホーザ・デ・ベイラ Rosa-de-beira。岸辺のバラということでしょう。しかし、近寄ってみることができませんでしたのでバラ科か否かは不明です。


左) 遊歩道で結ばれた川中の小島の森の木に着生していたネジバナに似た小さな花のオルキージア・ド・イグアス、つまりイグアスの蘭だそうです。
右) 暗い林の下で見たコラウ・ド・マタ Coral-do-mata。 赤い花茎は、なるほど森の珊瑚細工のようです。


左) 帰化したのでしょうか、メキシコ原産のポインセチア(Euphorbia pulcherrima)が林縁で胡椒の木と並んでいました。
右) 滝の近くのホテルの庭ではキバナイペー Ipê-amarelo (Tabebuia chrysotricha)が咲き始めていました。例年より開花が遅れているそうです。


左) 悪魔の喉笛駅に向かうトロッコ列車の出る公園の中央駅の草原にはイネ科のカピン・ペバ Capim-peba (Andropogon bicornis)が茂っていました。 
右) ホテル・ダス・カタラタスの庭に植栽されているイペー Ipê-rosa (Tabebuia impetiginosa)も咲き始めていました。 


左) カベーロ・デコラサォン・ブランカ Cabelo-decoração-branca。花が咲いていなければ目に留まることもないような地味な潅木です。”白髪頭の木”という意味のようです。
中) オラ・プロ・ノヴィス Ora-pro-nobis (Pereskia aculeata) 、別名:Barbados Gooseberry。モクキリンという和名もあります。果実は食べられるそうです。サボテン科のなかでは通常葉をもつ唯一の属ということで有名です。熱帯アメリカを中心に分布し、約20種が知られています。 
右) 森の中には数種類のアナナスがありましたが、その一つのグラヴァッタ・デ・マタ Grabatá-de-mata(Bromeria sp.)です。グラヴァッタというのはネクタイのことだそうですが、葉の形からの連想でしょうか。



~ PANTANAL ~


 パンタナールの名で知られる、南アメリカ大陸のほぼ中央部に位置する大湿原は北海道の約3倍の23万平方キロもあります。その西側の約1万平方キロはボリビアとウルグアイの国土となっています。
 またパンタナールはブラジル高原を中心に広がるサバンナと草原と疎林からなるセラード(Brazilian Cerrado)の一部でもあり、動植物の宝庫です。しかし止めどもない人間の経済活動により急速に自然が失われているホットスポットでもあります。
 Mendonça et al. (1997)によれば、セラードには6387種の被子植物が知られているが実際は10000種以上分布し、その44%は固有種だろうといいます。草本はほとんどが固有種のようです。もちろん動物の宝庫でもあります。

 私が歩いたのはブラジル側の、いわゆる北パンタナールの、パンタナール横断道に沿った湿地のほんの一部ですが、それでも数多くの花に出逢えました。


 乾季に入ったとはいえ舗装のないトランスパンタネーリアにはあちこちに水溜りやぬかるみが残っていて、その路傍草むらや藪は埃まみれでしたが、それでもいろいろな花が咲いていました。
左) センニチソウに似たペルペツア・ブラバ Perpétua-prava Gomphrena sp.です。いつまでも咲いていることに因んだ名のようです。 ヒユ科の植物でこの属には約100種が知られていて東南アジア、オーストラリア、熱帯アメリカに分布しています。 
右)
 オジギソウによく似た葉と花の潅木がありました。センシティヴァ・ブランコ Sensitiva-branco ということでしたがMimosa属の1種です。400種も記載されている大きな属ですが、そのほとんどは南北アメリカ産です。 


 乗っていた車が轍を取られて立ち往生してしまったぬかるみの傍の藪にヘアブラッシのような面白い咲き方をした低木がありました。
 カスティサウ・パンタノーゾ Castiçal-pantanosoと呼ぶそうです。 ”沼地の燭台”といったところでしょうか。 フトモモ科に近縁のコンブレタ科(Combretaceae)の1種、Combretum sp. です。


左) 水の引いた湿地にはコダチアサガオ (カヌード Canudo、Ipomoea crassicauris) が咲いていました。
右) インガ・ド・シャルコ Inga-do-charco。 ”沼地のインガ”というところでしょか。マメ科のインガ属の1種(Inga sp.)です。翼のある複葉が特徴的です。


左) 近くの藪にはキジョランのそれに似た葉をつけた蔓植物のスイポ・カパドール・ド・カンプ Cipó-capador-do -campo が絡んでクリーム色の花を咲かせていました。 キョウチクトウ科のペルタステス属の1種(Peltastes sp.)でした。
右) これも潅木性のオジギソウ(Mimosa)の1種で白い花のものと区別してマリスィア・ホージャ Malícia-roxa というそうです。直訳すれば”意地悪な赤紫”ということのようですが、棘があるからでしょうか。


左) 土ぼこりを薄くかぶった藪の中に純白の花が咲いていました。ゴイアバ Goiaba (Psidium guajoba)といい、実が食べられます。南アメリカの熱帯が原産の果樹で、日本でも栽培されバンジロウ、あるいはグアバと呼ばれています。
右) ゴイアバの根元の藪に咲いていたドライフラワーのようなカラスコ・ド・カンポ Carrasco-do-campo です。キク科のバッカリス属(Baccharis) の1種だと思います。フロール・アウゴダオン flor-algodáo (綿の花)ともペヌージェイン Penugem (綿の毛)などともいうそうです。 


左) 足元には何種類かのイネ科やカヤツリグサ科の植物が生えています。これはその一つ。カピン・デ・シェーイロ Capim-de-cheiro と聞きましたが、日本にも帰化していてメリケンガヤツリ(Cyperus eragrostis)と呼ばれています。
右) 水辺にはアグアペ Aguapé (Pontedelia sp.)。 ガイドさんはホテイアオイも含めてミズアオイ科のものをアグアペと呼んでいました。


左) 日本の南部にも帰化しているヒメマツバボタン(Portulaca pilosa) を見つけました。オンスィ・オーラス Onze-horasだそうです。11時の花といことですね。 ホーザ・ムスゴ Rosa-musgo、薔薇苔ともいうそうです。
右) ファーダ・ブランカ Fada-branca、つまり”白い妖精”です。もっともこれは私がかってにつけた名前ですが。Zygophyllaceae ではないでしょうか。


左) 近くにカイマンが潜んでいそうな湿地に咲いていたムルレ(Murure:Ludwigia natans)です。アカバナ科で、日本のチョウジタデやミズキンバイと同じ仲間です。   
右) 雨季の間は泥水に浸かっていたらしい道の辺にきれいな笑顔を見せていたハギのような潅木です。アンゲリン Angelim の1種(Andira humilis?)だそうです。アンディラ属は熱帯アメリカを中心に20種ほどがあって中には樹皮が駆虫薬として使われているものがあるそうです。


左) ジェラーニオ・ド・カンポ Gerânio-do-campo というそうです。陽のよく当たる草むらに咲いていました。フウロソウ科のErodium属の1種でしょうか。
右) ヤブガラシの花に似たウヴァ・デ・マッタ Uva-de-mata も日あたりのよい藪の中に茂っていました。ブドウ科のキッサス属の1種(Cissus sp.)のようです。


左) ヒユ科のツルノゲイトウによく似たカパ・デ・テーハ(Capa-de-terra :Alternanthera pungens )。枝先が噛み切られたようになっていましたがカピパラなどにかじられたのでしょうか。
右) 樹高4mほどで、ほとんど葉を落としている高木の枝先に美しい蝶形花が咲いていました。アンゲリン・デ・フォーリャ・グランデ(Angelim-de-folia-grande :Andira sp.)と聞きました。 
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 Eduardo, J.L & Ribeiro, S. eds: Flora da Reserva Ducke (1999) によると林業(森林管理)にたずさわる人たちがアンゲリンと呼んでいる植物はAndiraの他、Vatairea, Hymenolobiumなど7属にわたる12種以上もあるそうです。難しいですね。


左) 明るい疎林の中で濃い橙赤色の、長い花筒と細い6弁の花を枝先にまとめて咲かせている蔓がありました。ガイドさんも初めてで、アンケラ・ペケーナ・デ・カンポ Âncora-pequena-de-campo (野原の小さな錨)とでも名づけましょうかといっていました。サルトリイバラ科(Smilacaceae)の植物?
右) 黄色の朝顔の仲間は始めてみました。カンパイーニャ・アマレーロ(Campainha-amarelo:Merremia umbellata)だそうです。 


左) ワニが昼寝をしている沼地の向こうの茂みに美しい金色の花穂を空に向かって吹き上げるように咲かせている低木がありました。ハーボ・ドウラード(Rado-dourado)、黄色の尻尾というそうです。 フトモモ目、ウォキシア科(Vochysiaceae)の1種、Vochysia tucanorumです。生態学的にはパイオニア的な種だそうです。アマレリンオ(amarelinho)の名もあります。 
右) アグアペ・ド・アマゾナス (Aguape-do-amazonas)、 つまりオオオニバス(Victoria amazonica)です。 日が沈むころ咲き始める白い花は、強い芳香でCyclocephara hardyi などの大型の甲虫を呼び寄せます。夜間、花の中は外気温よりも10℃も高くなっているという報告があります。  


左) カネッラ・バラウナ・ファーウソ Canera-barauna-falso :クスノキ科のOcotea spectabilis の近縁種だそうです。
右) 中米から南米の熱帯地方広く分布し、アジアでも植栽されているカスタネイロ・ド・マラーナオ Castanheiro-do-maranhao です。ギアナクリとも呼ばれるPachira aquatica です。卵形の大きな実の中にあるたくさんの種子は焼いて食べられます。


左) 湿地のあちこちに白い花穂が揺れていました。オモダカ科で種名はわかりませんがシャペウ・ド・コウロ Chapeu-do-couro だそうです。シャペウというのは帽子のことですが、花の形がにているのでしょうか。 
ブラジルが故郷のLilianさんからコメントいただきました。これは Echinodorus macrophyllum で、薬草として広く利用されているそうです。皮膚病、関節炎、リュウマチなどに効き、動脈硬化の予防効果もあるそうです。
中) ホテルの庭に植栽されていたアメリカアブラヤシ(Elaeis oleifera)。
右) スイポ・カパドール・ド・カンプ Cipó-capador-do-campo Peltastes sp.キョウチクトウ科のペルタステス属には7種ほどが熱帯アメリカに分布していて、その1種です。


~ Manaus, Amazonia ~


 地球上屈指の生物多様性と世界最大の広さで知られるアマゾンの熱帯雨林は360万平方キロにわたり、その42%がブラジルに属しています。そこには全世界の20%の植物種が分布していると推定されています。
 放牧や大規模なダイズやサトウキビ畑などの拡大に伴い、急速にその面積が縮小しているとはいえ、小型機から見下ろす森は地平線のかなたまで果てしなく続いています。
 年間を通して湿度は80%を越し、気温は夜間22℃、昼間は31℃と安定した環境のため、森を構成している木々は一見同じような形態をしていますが、訓練された目で観察すれば1ヘクタールの方形区の中には400種もの樹種が生育していることがわかるといいます。


 アマゾンの森には、雨季に氾濫する川の水が浸入して半ば水没するところと、年間をとおして水浸しになることのないところがあります。前者はそこに流れ込む川の水の色が白い(実際は乳褐色)ヴァルゼア(Várzea)と暗褐色のイガポー(Igapó)に区別されています。このような場所に生育する樹木は高さ20mほどで多くは気根をだします。後者はテラ・フィルメ(Tetta firme; 堅固な大地)とよばれ樹高は30m以上になります。

 私たちはマナウスからネグロ河を40kmほど遡った左岸に設営されているジャングル・ツアーの拠点宿泊施設アリアウ・アマゾン・タワー(下の写真)の周辺の植物をガイドさんに案内されて観察することができました。
 アマゾン川の水量があがっている季節でしたので、チョコレート色の水に浸った水没林をボートで巡り、ついでにピラニア釣りも楽しみました。釣ったピラニアをねだってピンクの肌をしたアマゾンカワイルカが船べり近くまでやってきました。



 水没林の中を巡る遊歩道の周りではいろいろな花を見ることができました。そのいくつかを紹介します。

左) 
真っ赤な花序が目を引くブドウ科のマインーボア(Mae-boa) Cissus sulcicaulis。 ボリビアからアルゼンチンに渡って分布しています。 
右) これはブラジルボクの近縁種のパウ・フェロー (Pau-ferro) 、Caesalpinia leiostachya です。マメ科です。

 

左) 樹高10mに近い大木の枝えだに薄紫の花が群れ咲いていました。遠くで見たときはジャカランダかなと思ったのですが、近寄ってみるといささかユーモラスな姿の花でした。ここではタルマン(Tarman)と呼ぶそうです。やはりノウゼンカズラ科の一員でしょうか。 
右) これは望遠で拡大してみたのですが一つ一つの花の形態がよくわからず、どんな科に属するのかさえ見当がつきませんでした。ガイドさんはフロール・フメガール(Flor-fumegar )と呼んでいました。煙り花とでもいうのでしょうか。


 

左) 遊びで釣り上げたピラニアを調理してくれるという水上レストランへ立ち寄りました。その店のプランターに植えてあったペニェオ・ホーショ(Pinhăo-roxo) 、赤紫ペニェオ(Jatropha gossypifolia)です。トウダイグサ科の薬草として南アメリカではよく栽培されているそうです。 
 この仲間のナンヨウアブラギリ(J. curcas)の種子には多量の油が含まれていて、かつては灯油として利用したこのもありましたが、最近は石油に代わる燃料として注目され、砂漠化の進むアフリカのリマなどで大々的に栽培され始めています。3kgの種子から1000ccのオイルが収穫できるそうです。
右) これもレストランでポットに植えられていたタペッチ・エルヴァ(Tapete-erva:絨毯草 Epscia cupreata)。中央アメリカ原産で園芸品種ベニギリソウもこの仲間です。


左) ピラニア釣りの帰り道、タンニンを含んでチョコレート色のアマゾンの水面に、点々と黄色の花が浮かんでいました。
右) ボートを寄せてもらったところ巨大なタヌキモ(Utricularia amazonica)でした。アーガプランタ・コン・サッカ Aguaplanta-com-saco、袋を持った水草ということですね。 タヌキモ科(Lentibulariaceae)タヌキモ属は全世界に分布していて180種もが記載されていてそのうちの熱帯産種の一つです。


左) 水没林の中の大木に藤色の長さ5cmほどの大きな豆の花が咲いていました。 アマゾン・チョウマメ(Clitoria amazonum)でした。 カピタレと呼んでいるそうです。 カピタオン Capitão、海賊船のキャプテンの帽子、を連想したからかも・・と言っていましたが・・・。 
右) ネグロ川をさらにしばらく遡ったところに、雨季のさなかでも浸水することのないテラ・フィルメがあって、そこの原住民の居留区を見学できるということで、案内してもらいました。ある民家の庭先で見た小さな赤い花です。ヴェルタリーリョ・マルテーロ・ペッケーノ(赤い小さな槌)とでも呼ぶのでしょうか。ブラジルに23属200種も分布しているというイワタバコ科(Gesneriaceae)の1種ではないでしょうか。


左) 暗い林床に生えていました。アペルタ・フーアオ Aperta-ruâo に近縁のノボタン科の1種のようです。  
右) 民家の入り口の木の幹に着生していたグラーバタ・デ・エスピーニョ Gravata-de-espinho。 花序の苞葉の先が針のように尖っていました。 トゲアナナスとでも呼びたいアナナス(Bromelia sp.)でした。


左) 民家の入り口に植栽されていたキョウチクトウ科のアラマンダ・デ・フロール・グランデ(Alamanda-de-flor-grande:Allamanda cathartica)です。日本でもアリアケカズラと呼んでいて沖縄などでは戸外に植えられています。
右) ノボタン科のプランタ・デ・フォルミーガ(Planta-de-formiga:Tococa giyanensis)。葉柄のふくらみにはアリが共生している蟻の巣植物の一つです。 


左) 民家の庭に植えられていたカジュエイロ Cajueiro、つまりカシューナッAnacardium occidentale)の花です。
右) カシューナットの傍に植栽されているインガ・スィポ(Inga-cipo:Inga edulis)です。褐色で棒状の大きな実の中にはたくさんの種子を取り巻く柔らかな白い綿状の内果皮は甘くて食用されています。私も食べさせてもらいましたがなかなかの味でした。


左) 船着場の水面はネッタイサンショウモ(Salvinia auriculata)とオジギソウによく似た葉の水草で覆われていました。オジギソウに似た草にはパフのような黄色の花が咲いていました。ミモーザ・デ・ヒーオ Mimosa-de-rio、川のミモザ、と呼ぶそうです。学名はNeptunia natansです。 メキシコからブラジルにわたって分布しています。オジギソウと同じようにセンシティブで、葉に触れると静に閉じます。白いレンコンのミニチュアのような気室細胞でできた茎で浮かんでいて、節からか水上に葉を伸ばします。野菜として食べることもあるそうです。スペイン語圏では Boro dormilon と呼んでいます。 
右) これは洗濯板を思わせる凹凸のある葉のフォーリャ・デ・ラバジェィ、Folha-de-lavagem、です。


左) これもインバウア(Imbaúba)と呼ばれていました。ケクロピアの仲間の総称のようです。Cecropia hololeucaではないでしょうか。
 
ケクロピア属の植物は典型的なパイオニア(先駆植物)で、森の中に空き地ができればたちまち進入してきます。しかも成長が早いので短期間に林となります。そのため違法伐採が行われジャングルに空き地ができているのを上空から発見するための良いマーカーになっているそうです。
 原住民は古代から薬用植物としても利用していて、現代でも抗欝剤や胃潰瘍の治療薬とみなされています。また、この仲間はなぜかミツユビナマケモノのお気に入りです。

右) 
ロッヂの庭に咲いていたゲッケイカズラ(月桂葛:Thunbergia laurifolia)の白花品種。原産地はインドシナ半島です。


左) 連絡船がアリアウ・アマゾン・タワーに近づくと、赤いラグビーボールのような形の実をたくさんつけている裸木が目を引きます。写真は展望塔の水上10mほどの高さから撮ったものです。バオバブの実に似ています。中央の白いものが花で、直径は約15cmです。名前はムングーバ(Mungouba)だそうです。学名はPachira alba or Mombax munguba、キワタ科です。実が熟すと割れて、純白の綿毛をつけた種子が風に乗って川面に散って行くそうです。
右) 藪の中にはヘリコニアの1種、バナネイリーニャ・ド・マタ bananeirinha-do-mata、Heliconia brasiliensis が咲いていました。


左) 遊歩道の脇の古木に着生していたガレアンドラ・デヴォニアナGaleandra devoniana)です。 この美しいランはアマゾンの植物を現地調査して描き続けたMargaret Meeさんの旅行記『Search of Flowers of the Amazon Forest』の挿画の一つとして描かれています。今回の旅でぜひ出逢ってみたかった花の一つでした。
右) 落ち葉が積もった大木の分岐した幹の間にも白緑色の花を咲かせたランが着生していました。エピデンドルム属の1種(Epidendrum sp.)のようです。


左) 林縁の倒木の上には黄褐色の花を房咲きさせたランがはえていました。熱帯アメリカに約12種が分布しているションブルギアの1種(Schomburgkia sp.)だそうです。
右) これはブラジルを代表する植物の一つ、カスタネイロ・ド・パラ (Castanheiro-do-para :Bertholletia excelsa )、 ブラジル・ナッツあるいはアマゾン・ナッツと呼ばれるサガリバナ科の高木です。頭上たかくに実る丸い蓋つきの容器のような果実の中には皺のよった硬い種子がありその中の白いナットが食用されます。種を抜いた後の果実はオウリコと呼ぶカップとなったり、輪切りにして腕輪に加工したりします。
 自生状態では熟して地上に落ちた果実をアグーチが食べますが、このげっ歯類は食べ残したものを土で覆って隠しておく習性があり、これが種子散布に役立っているそうです。


参考文献 References
1) 橋本悟郎著 『ブラジル産薬用植物事典』 アボック社 (2002)
2) Ribeiro, J.E.L..da S. et al.: Flora da Reserva Ducke - Guia de idebtificaÇão das plantas vasculares de uma floresta de terra-firme na Amazônia Central, DFID (1999)
3) Smith, H. et al. eds: Flowering plants of the Neotropics, Princeton Univ Press (2004)
4) Lorenzi, H., Brazilian Trees-A guide to the identification and cultivation of Brazillian native trees Vol.1., Instituto Plantarum de Estudos da Flora LTDA (2002)
5) Walters, M. & M. Lavelle: The illustrated Encyclopedia of wild flowers and flora of the Americas, Lorenz Books (2007)
6) Mee, M.: Flowers of the Amazon Forests, Natural Wonders Press (2006)
7) マーガレット・ミー著、南日康夫・育子訳:アマゾン自然探検記、八坂書房(1996)=Mee, M.: In search of flowers of the Amazon forests (1988)

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