★シューマン作曲/アベッグ変奏曲op. 1 / Variationen über den Namen Abegg op. 1★
 
シューマン、20歳の時の作品(1829~30)で番号は1。
この作品は、ポリーヌ・フォン・アベッグ伯爵夫人に捧げられていますが、
この人物は実在しないことがわかっています。 
空想の人物の名前ABEGGをそのまま音符に読み変えて
曲の主題テーマを創作したという、なかなかにくい趣向です。
(主題がラシミソソという風に動くので、
これをドイツ読みするとABEGGという音列、曲名はここから命名された。)

当時の形式の枠を超えたかなり前衛的な作品ではなかったか、と思われています。
いかにも、シューマンらしい茶目っ気たっぷりのういういしい魅力的な変奏曲で、
テーマと 5 個の小曲からなっています。

私の中で、この曲には・・・春、恋、微笑み、軽やかさ、幸せ・・・そんなイメージを抱いています。
テーマはとても、ロマンチックです。
いつか、どこかに忘れてきてしまった!?ような、、、恋する想いを思い出して、
甘い気分で弾いてみたいなと思っていました。




thema

var.1
Var.2
Var.3
Cantabile
finale alla Fantasia




★アベッグ変奏曲と私★
この曲を初めて弾いたのは、もう今からかれこれ6年近く前のことです。
全音の楽譜で《子供の情景》を勉強した私は、
次に弾く曲を選ぶにあたって
たまたま同じ楽譜に入っていた、この曲を弾くことにしたのでした。
それが、この曲との初めての出会いでした。

当時、息子は中学受験を目指し頑張っている6年生。
娘は音大の附属小学校に通う4年生でした。
そして、実家の父の闘病生活は何年目だったでしょうか?
父は・・・随分長いこと病気と闘っていました。

朝早くに起きて、子供たちのお弁当二つを作り、学校へ送り出し、
サッと家事を済ませた後は母を迎えに行き、父の病院へ。
夕方近くに帰宅し、塾へ行く息子にもう一度お弁当作り。
息子の塾、娘の習い事への送り迎え。
再び、父の病院へ。父の笑顔に会いに行きます。
(娘と愛犬を連れて父に会いに行った時の嬉しそうな笑顔を・・・今でも思い出します。)

そんな私の、忙しい日々の息抜きはピアノでした。
シューマンの甘いメロディは私の心の支えでした。

2月。
息子はめでたく志望校に合格。
父の病床へ合格を伝えに行った時、
父はもう話すことすら出来ない状態でしたが、
きっと伝わっていたと思っています。
そう信じていたい・・・です。
《おめでとう、良く頑張ったね。これからも頑張れ。》父の心が語っていました。

それからまもなく・・・父は旅立ちました。
2月の寒い夜。永遠のお別れになりました。
忙しかった。悲しかった。寂しかった。つらかった。
もっと父の傍にいたかった。話したかった。笑いたかった。甘えたかった。
でも、もう・・・・何も出来ない。通じない・・・。

あれからもう5年が過ぎました。
二人の子供たちはもう、高校生になりました。

あの時・・・頑張った私がいます。
この曲を聴くと、いつもあの頃を思い出します。
頑張っていた、頑張れた私を思い出します。
本当は、ちょっと寂しい悲しい思い出のつまった曲かもしれない。
でも、大好きな曲。

私にとって、
また、頑張る!頑張れる!って・・・
いつまでも、そう思えるそ素敵な1曲です。

2005.7月自宅にて録音
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