カ レ イ

カレイ釣りと私

 
 私が釣りを始めるようになって、様々な釣りに挑戦した。始めは何をやっても、何を釣っても楽しかったが、やがて私はカレイ釣りを最も好むようになった。カレイ釣りこそ私の釣りの原点に最も近いものである。

 「釣りと私」のところで「釣りをしながらのんびりしたい」と書いた。しかし釣りはのんびりできるものばかりではない事を知った。つねに神経を集中させたり、いそがしく歩き回ったり、そうやって努力しなければなかなか釣果を得られない、そういう釣りも数多くある。いやむしろそういう釣りのほうが多いと言える。

 カレイ釣りはほとんど唯一「のんびりできる釣り」である。こういう時間を過ごしたいがために釣りを始めたのだと思えるのがカレイ釣りである。

 秋の日差しを浴びながら岸壁でぼーっとしていると、日常の憂さが何もかもどこかへ消えてしまう。そういう時間を与えてくれるのもカレイ釣りである。酒を呑みながら、煙草をすいながら岸壁に腰をおろして、海や雲を眺めたりもする。ひじょうに哲学的な時間でもある。だから私はこの時間に他者が侵入してくることを好まない。一人で静かに海と対話していたい。人間はこういう時間を持たなくては駄目である。カレイ釣りは日常に埋もれることから私を救ってくれている。

 

カレイ釣りの道具

 
 私がカレイ釣りに使っている道具を紹介させていただこう。私の釣り場のカレイ釣りに関する限り高価な道具は全く必要無いのがありがたい。

 投げ釣りであるから当然の如く投げ竿といものを使う。安いものから数万円する高価なものまであるが、私は通常3本の安い竿を使っている。

 まずは3.9mの長さの竿。これは1980円である。次に3.6mの竿、1800円。そして近場を狙うために3.0mの短い竿、たったの1400円。

 そんな安い竿で釣れるのか?と思われる向きもあるだろうが、大丈夫、ちゃんと釣れるのである。カレイ釣りは高価な竿を1本使うより、安い竿を複数使ったほうが釣果があがるのだ。

 竿の次はリールだ。こればかりは投げ専用のちゃんとしたものを使ったほうがいい。したがって竿よりはるかに高価になる。私の持っているリールは5〜6000円くらいだったか(昔買ったので忘れた)。しかし数万円もするリールもあるのだから、リールとしては安いほうである。

 糸はもちろん投げ釣り用のテーパーラインを使う。そんなに飛ばすわけじゃないから普通に売っているもので充分である。たかが糸だがこれも凝ればきりが無いのだが。

 糸の先につけるオモリは投げ釣りではテンビンと呼ばれる。これも色々種類がある。釣り場の状況によって使い分けることが必要だが、私の釣り場でベストと思えるのはバトルテンビンというやつである。しかし人が少ない釣り場であれば、カレイ釣りにはスパイクテンビンがいいだろう。ただしこれはリールを巻くときに浮上してこない(バトルテンビンやジェットテンビンは浮上する)ので、他人の釣り糸が海に入っているとそれにひっかかる可能性が高い。

 テンビンに関して最悪の使い方は「軽いオモリで遠投する」ということである。これだけはやめてもらいたい。潮に流されてオマツリしてばかりいるようになる。私は何度こういう連中に被害を受けたか分からない。ある程度飛ばすつもりなら、テンビンは最低25号くらいを使ってもらいたい。

 次は仕掛けだ。これも凝ってくると自作するようになる。私も自作したことがあるが、確かによく釣れるような気はする。しかし最近は面倒なので市販の投げ釣り仕掛けを使っている。これだって釣れるときには釣れるのだから、別に気にするほどのことではないだろう。

 針はカレイ専用もあるからそれでも良いが、私の釣り場ではカレイを狙っていてアイナメがかかることがあるので流線針を使っている。これは万能ともいえる針で、これを使っておけばまず間違いないだろう。大きさはそこに居る魚、もしくは狙う魚のサイズによって決めることになるが私は9〜11号を使っている。

 最後はエサだ。金があるならイワイソメ(関西ではマムシまたはホンムシと言う)を使うといい。大型が釣れる確率が増えるはずである。が、通常はアオイソメで充分である。ただしある程度太いものという条件付きである。細いアオイソメでは駄目だ。コガネムシというカレイには特効薬のようなエサもあるが限られた次期しか店頭に出ない。

 以上揃えばカレイが釣れる。ただし正しい釣り方をすればの話だし運も必要だが。

 

カレイの正しい釣りかた

 
 では、いよいよここでカレイの正しい釣りかたをご伝授申し上げよう。誰もが「釣れない」「あんな所は駄目だ」「魚が居ない」と言って去っていったこの釣り場で、私はカレイを釣り続けている。年によってムラはあるが、私は決してここを釣れない場所だとは思っていない。むしろ良型カレイの好釣り場だと思っている。

 まず大事なことはカレイのいそうな場所を見つけることである。「そんな場所が分かれば苦労しない」と言われるだろうが、こればかりは通って覚えるしかない。1年を通じて同じ場所に通うことが大事なのであって、あちこちへ遠征してる奴に限って釣れたためしがない。釣れても釣れなくても一つの釣り場へ通い続けるのである。

 私の釣り場ではあまり遠くではカレイは釣れない。投げ釣り師の陥りやすい罠として「遠くへ飛ばすほど釣れるんじゃないか」ということがある。岸の近くには魚が居ないような気がしてもまあ無理は無い。

 だが違うのだよ明智君。この埋立地のような水深のある護岸では近くにだって魚は居るのだ。遠くへ飛ばせば釣れるってもんじゃない。要は魚の居る距離へ正確に落とすことである。この辺はゴルフの詰めの段階と良く似ているのではないか。ただ無闇に飛ばすのでなく、狙った距離に正確に落とすことが肝心である。

  ここまでは埋立地にだけ通用する理屈だ。自然の海岸線では、多分遠くに投げたほうが大物に出会える確率は上がるのかも知れない。私はやったことが無いので良く判らないが。

 ここからは全てのカレイ釣りで成り立つ理論だと私は思っている。それはこういうことだ。

 普通、釣りと言えば魚を釣るためにあれこれのテクニックを駆使して努力することだと思われている。確かにそういう釣りもある。だがカレイ釣りに関する限り重要なことは「何もしない」ということである。投げて糸ふけ(風などで出過ぎた糸のこと)を取ったあとは何もしてはいけない。竿に触ってはいけない。

 良く本などには「誘いをかけたほうが釣れる」みたいなことが書いてあるが、私は全く信用していない。何もしてはいけない、などとはプロとして恥ずかしくて記事にはできないだろう。いかにもあれこれのテクニックを駆使して釣っているかのように思わせる欺瞞であると私は思っている。

 ある雑誌が「置き竿釣法」というのを特集したことがあるが、これは英断だと私は思った。もちろん置き竿釣法など私は知っているから、この雑誌は買わなかった。しかし今までに無かった画期的な記事であることは間違い無い。

 話を戻そう。投げ込んでしばらくすると「釣れてるかな?」とか「エサはまだ残っているか?」などということが気になる。そこでついついリールを巻きたくなる。が!そこでSTOP!!それをしてはいけない。

 カレイはエサを見つけてもすぐには食いつかない。この辺がキスやアイナメと違うところである。エサを見つけたカレイはしばらく様子をうかがう。やがてだいぶ時間が経ってから一気にジャンプしてエサに食いつくのである。このことはある水族館の研究で証明されている。

 だからすぐにリールを巻いてしまうと、せっかくカレイが近くに寄って来ているかも知れないのに、その目の前でエサが消えてしまうことになる。だから食いつくまではじっと待たなければ駄目なのである。

 この、じっと待つというのがどうやら普通の人には苦手らしい。待ちきれないのだそうだ。私みたいに酒を飲んだり雲を見たりしていれば良いのに、と思うがそうはいかないらしい。釣りたい気持ちが先行し過ぎてるんだろう。相手は海の中で何年も生きてきた大物だぜ。そんな簡単に釣れるわけないだろ。

 以上述べた二つのポイント・・
  ・飛ばし過ぎない
  ・じっと待つ
これを守ればカレイはあなたのものになるだろう。

GOOD LUCK!

なおカレイのページがこんなに詳しいからと言って、他の魚のページには期待しないでもらいたい。カレイ釣りは唯一私の得意な釣りだから詳しく述べたまでのこと。後は簡単にしか書けないですぜ。

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