ア イ ナ メ |
私が大人になって釣りをするようになってから、初めて釣った魚がアイナメであることは前に書いた。その意味でもアイナメは私にとって特別な思い入れのある魚であるが、その後になってもこの魚は私を大いに楽しませてくれたのである。 私の釣り場では例年10月頃から本命のカレイが釣れ始める。しかし12月末くらいになると産卵期に入ってしまい、カレイを釣るのがなかなか困難になる。そのカレイに変わって釣れるようになるのがアイナメであった。私の釣り場で釣れるアイナメはけっこうでかい。30cmオーバーなど珍しくなく、まれにだが40cmを超す大型も釣れた。私はこれらのアイナメをずいぶんと釣って楽しい思いをしたものである。 だが、今やそれも過去の夢物語となってしまった。埋め立てから長い年月を経て、海底の環境が変わったのだろうか。最近ではアイナメを釣るのはかなり難しいことになってしまった。アイナメは埋め立てられてから数年はそこに居着くと言われている。いま東京湾のアクアラインの海ほたるの下は40cmを超す大型アイナメがうようよ居るという。かつては私の釣り場もそのような状態であったのだろう。ほとんど100%近い確率で釣れたものである。 今でも全く釣れないという訳ではない。丁寧に探ったり、沖の岩礁帯を狙って投げれば釣れることがある。また私の釣り場にはテトラの並んでいる一帯があり、テトラの上からはかなり釣れるらしい。テトラは人工の漁礁みたいなものだから、アイナメがいても不思議ではない。しかし私はテトラの上にいるとどうも落ち着かない。足元が不安定だし、物をテトラの隙間に落としたら二度と回収できなくなる。そして何より酒を飲んでテトラの上になんか乗ったら危なくてしょうがない。だから私はテトラには上がらないことにしている。 投げ釣り仕掛けにアイナメがかかると何回も引くので、竿先がガンガンと動く。これが見ていて面白い。またリールを巻き始めると針を外そうとしてか、首を左右に振る。俗に言うアイナメの首振りダンスである。この手応えが手元に伝わって来るので、楽しくてしょうがない。こういう面白さを味わえるアイナメが数少なくなってしまったというのは、私にとっては実に寂しいことである。ああ、釣りてえ、アイナメちゃん。 アイナメをフライにしてごらん。ほくほくしてそりゃあ美味いから。 なお、アイナメの釣り方を説明しようと思ったが、アイナメはとにかく居るところにエサを持っていきさえすれば良いので、どんな釣り方でも釣れる。したがって説明するほどのことは無いので省略する。釣り場が限定されれば「こういう釣り方がいいよ」ということは出来るが、状況のはっきりしないところでアイナメの釣り方を説明しようとすると、釣り方が色々あって膨大な内容になってしまう。 |
メ バ ル |
私はメバルを本格的に狙って釣ったことはほとんど無い。しかし投げ釣りやサビキをしているときにこのメバルがかかって来るので、私にはかなりお馴染みの魚である。概して投げ釣りの仕掛けに来るメバルは大きく、サビキ仕掛けにかかって来るメバルは小さい。 メバルは本来夜釣りで狙う魚であるので、私には大したものは釣れたことが無い。テトラの上で夜釣りをしていると30cmくらいもあるメバルがかかることがあるそうだ。これはちょっと魅力的だと思う。なんてったってメバルは食うと美味いから。しかしそういうメバルを釣っている人のほとんどはクロダイを狙っているので、メバルではあまり喜ばないらしい。さすが熱心な釣り師の考えることは私などとは違うと感心させられる。 実はかなり年月を経た後、メバルは私にとって重要な存在になるかも知れない。それは私の家のすぐ近くにある海でメバルが釣れるからだ。歳をとってよぼよぼの老人になり、遠くへ行けなくなったらそこの海でメバル釣りにいそしむことになるだろう。願わくばそうなる日は一日でも先に伸ばしてもらいたいもんだ。南無阿弥陀仏。 |