<簡単イタリア料理講座>

パンツァネッラ
イタリア料理ではなく、トスカーナ料理
きのこのクロスティーニ(前菜)
ファゴッティーニ(イタリア風餃子)
ピチ(トスカーナの極太パスタ)
トスカーナ風パスタソース
カネロニ・コン・サルサ・ビアンカ
イタリアのお酒あれこれ  グラッパとカンパリ
イタリアのミネラルウォーター
パスタ


<パンツァネッラ>


私が通ったモンテプルチアーノの語学学校では、2週間に一度「料理の夕べ」と題したトスカーナ料理の講習会が開かれていました。といっても堅苦しいものではなく、先生は地元の農家の奥様で、会場は彼女の家の台所(といってもかなり広いのですが)。お喋りも楽しみながら、みんなで料理を作り、最後はパーティ、というとっても楽しいイベントでした。多少レシピを頂いてきましたので、今月からシリーズでご紹介していきます。



材料:トマト、バジリコ、玉ねぎ、塩、胡椒、ワイン酢、オリーブオイル、
古くなって表面が乾燥し固くなってしまったパン

1、トマトは一口サイズ、玉ねぎは薄切り、バジリコは適当な大きさにちぎる

2、器にトマト、玉ねぎ、バジリコを入れ、サラダを作るような感じで、オリーブオイル、ワイン酢、塩、胡椒で味付けする
(オリーブオイルとワイン酢をたっぷりかけるのがポイント)

3、パンを一口サイズにちぎって、2に加え、柔らかくする

4、冷たくひやして食べる


#「パンツァネッラ」は、もともとは古くなったパンを無駄にしないために考えられた料理だそうです。イメージとしてはサラダに近いのですが、プリマピアット(第一の皿)として食べられています。冷たくすると美味しいので、特に夏場のメニューとなっており、パンが入っているために意外とボリュームもあります。簡単で美味しいのですが、この料理の決め手となるのは、美味しいトマトとエクストラバージン・オリーブオイルですから、やぱりトスカーナの味を日本で再現するのは少し難しいかもしれません・・・。


<イタリア料理ではなく、トスカーナ料理>


 ここ数年大人気のイタリア料理。イタリアンというとパスタにチーズにオリーブオイルというイメージがすっかり定着してきたようですが・・、私が接したイタリア人に言わせると、実はすべてをひっくるめて「イタリア料理」とひとくくりにされるのは心外で、地域によってかなり差があることをもっと理解してほしいのだそうです。ある時、地元の料理について話をしていて「これはイタリア料理ではなくて、トスカーナ料理だからね」と念を押されたことさえあるほど・・。 では、具体的に地域によってどんな違いがあり、どんな変わったメニューが見られるのか、今回は私が「体験」したトスカーナ料理にスポットをあててご紹介します。


*決め手はトマトとオリーブオイル


 トスカーナ料理を語る上で絶対にはずせないもの、それはトマトとオリーブオイルです。どちらもトスカーナの代表的な産物で、値段もお手軽ですし、もちろん味は抜群! トスカーナではパスタソースと言えばやはりトマト風味ですし、オリーブオイルも地元の農家の自家製のものを加えると相当種類が出回っていて、どの家庭もそれぞれにこだわりを持っているようなのです。「我が家の料理に使うのは**のオリーブオイルのみ、バターなんてとんでもない、ほとんど使わない! 」という声も何度も耳にしました。


*ラグビーボール型トマト・・サンマルツァーノ種


モンテプルチアーノでは毎週木曜日の午前中にメルカート(露天市)が開かれていましたが、八百屋の店先にはトマトだけで数種類が並べられており、木箱ごとどっさり買っていく人の姿をよく目にしました。
トマトの種類は丸形のローマ種、細長い形をしたサンマルツァーノ種、日本でもよく見かけるプチトマトなどですが、なかでも私が気に入ったのはサンマルツァーノ種。これは小粒で鮮やかな赤色をしており、一般的にはソース用として知られています。もちろん、サラダなどにして食べても美味しく、甘みが強くて皮も柔らかいため、まるで果物を食べているような感じさえします。しかもうれしいことに1キロあたり3千リラ(約200円)程度と格安なため、どっさり買って半分は自家製トマトソースに、残り半分はそのまま食卓に、というパターンが多いようです。


*メルカートでの注文はキロ単位で!


イタリアでは、野菜や肉、魚などの食料品は基本的にキロ単位で値段がつけられています。みんな平気で2キロとか3キロとか買っていき、なかにはトマト6キロにズッキーニ1キロにじゃがいも5キロ・・、なんて注文している人もいるのです。そんななかでは、なんだか200gとか300gとは言いにくくて、私もメッゾキロ(500g)買って半分はそのまま食べ、半分は煮込み料理に使ったり見よう見まねでトマトソースを作ったりしていました。
ただ、トスカーナのトマトは真っ赤に熟してから収穫するためか、傷みが早いのが難点。冷蔵庫にしまっておいても気が付くとダメになっていたりして、よく悔しい思いをしました。でも・・、考えてみれば本当はそれが普通なんですよね! トスカーナのトマトの美味しさの秘密は、豊かな大地でたっぷりと陽を浴び、よく熟れた頃にすぐさま味わう、というところにあるのかもしれません。
ちなみに、サンマルツァーノ種について調べてみたところ、原産地はナポリの南にあるサンマルツァーノという街で、本当はこの付近の限られた地域内で獲れるものだけがサンマルツァーノと名乗れるトマトなのだそうです。でも、トスカーナの自称「サンマルツァーノ」も「促成栽培野菜」に慣れてしまった日本人の目から見れば、なかなかのものです!


*農場によって味が違うオリーブオイル


オリーブの実をそのまま搾っただけのオリーブオイルは各農場によって味が違うといいます。一般的にカラブリア州を始めとしたイタリア南部のオリーブオイルは、トスカーナのものより味(酸味)が強いそうですが、同じトスカーナのものでもやはり微妙な違いがあり、私が接した人たちは多くが「うちは**のオリーブオイルにしている」とこだわりをもっていました。
いわゆるメーカーもののオリーブオイルはスーパーや食料品店で販売されていますが、それ以外に地元の農家の自家製オリーブオイルも複数あって、それらは農場の出店(たいては道路沿いに設置されていて、蜂蜜やジャム、果物なども扱っている)やエノテカ(ワイン屋)、カンティナ(ワイン蔵)などで販売されているのです。どうも、トスカーナではメーカーものより自家製のほうが人気の様子。やはり「出所」がわかっているほうが安心なのか、それとも純粋に「味の好み」で決めているのか・・、そのあたりは個人差があるでしょうが、いずれにしても1、2ヶ月に1回大量買いをして使っているそうです。
ちなみに、昔は家の地下室に大きなカメが置かれていて、そのなかにオリーブオイルを保存し、必要な分だけそこからすくって台所に移す、という風に使われていたそうです。現在はこういった習慣はほとんどなくなりましたが、そのかわりに、まるで業務用のような大きな筒型の缶入りオリーブオイル(5リットル位は入りそう!)が販売されていて、これが一般的になっています。夫婦2人暮らしのある女性も、いつもこの大きな缶入りオリーブオイルを買う、と話していましたから、そのことからもトスカーナ人がいったいどれだけ大量にオリーブオイルを消費するか、想像できると思います。
ちなみに、オリーブの実は11月頃に収穫されるため、新オリーブオイルは冬場に出回ります。いいオリーブオイルは最初緑色をしていて、その後季節の変化とともに老化していき黄色に変化するのだとか・・。色が変わってしまうなんて質が悪いと誤解されそうですが、トスカーナ人に言わせればこれが純粋なオリーブオイルの証拠で、色が変わらないものこそ怪しい! ということです。


*病気のときにもオリーブオイル!


イタリアの家庭では、オリーブオイルは病人の食事や離乳食にも使われています。例えばお腹をこわしたとき、トスカーナの家庭ではちょうど日本の「おかゆ」のような感じの柔らかめのリゾットにオリーブオイルとパルメザンチーズを加えて食べたり、「そうめん」のような極細パスタにオリーブオイルをかけ、軽く塩胡椒して食べたりします。また、食欲がないときはオリーブオイルだけをスプーンで口に入れることも・・。
日本人の感覚だと、お腹の調子が悪いのに「油モノ」なんて、と思いがちですが、彼らにとってはオリーブオイルは「果物の絞り汁」に近い感覚なのかもしれません。ちなみに、実際に食べてみたところ、意外にあっさりしていて美味しいのです! 簡単にできるわりに栄養もありますし、私は結構これにはまって、よく作っていました・・。


<きのこのクロスティーニ>


 10月号に続いて、モンテプルチアーノの語学学校が主催する「料理の夕べ」で習った料理をご紹介します。トスカーナ地方の代表的な料理のひとつに「クロスティーニ」があります。これはアンティパスト(前菜)のひとつで、薄切りにしたバゲットパンの上に様々な食材を飾り付け、そのまま、もしくは一度オーブンに入れてカリッと焼いて頂く料理です。ちょうど茸の美味しい時期ですし・・、ぜひお試しください!



材料:きのこ各種
*しいたけ、マッシュルーム、ひらたけ、しめじなどなんでもOK、
乾燥ポルチーノ茸があると香りがぐーんとよくなり最高!
モッツアレッラチーズ
*最近は、デパートや輸入食料品店で結構見かけるようになりました。
北海道日高乳業(株)から「日高産モッツアレラ」も販売されています。
バゲットパン、唐辛子、塩、胡椒、オリーブオイル

1、きのこを細かくみじん切りにする(炒めると量が少なくなるので大目に用意する) 乾燥ポルチーニ茸は水で戻し、やはりみじん切りにする

2、バゲットパンを斜めに薄切りにし、モッツアレッラチーズも薄切りにする
オーブンはあらかじめ暖めておく

3、フライパンに唐辛子、オリーブオイルを入れ、茸を気長にいためる
(用意した茸が濃い茶色に色づき、量も半分くらいになるまで)
味付けは、塩、胡椒でお好みに

4、バゲットパンの上に炒めた茸を適量のせ、その上にモッツアレッラチーズをのせる

5、オーブンに入れて、モッツアレッラチーズがとろけるまで焼く


カリッとしたパンの歯ごたえと、ポルチーニ&モッツアレッラの風味がとっても美味しい料理です。要は、切って炒めるだけなので、簡単に出来ますし、材料も日本の茸で代用できます。乾燥ポルチーニ茸は、最近デパートなどで販売されていますので、ぜひ探してみて欲しいのですが、もし手に入らなくてもそれなりにいけると思います。家庭料理ということで、味付けや材料の量などはアバウトだったのですが、帰国してからおよその見当で作ってみたところ大好評でした。ポイントは茸をよ〜く炒めることです!! 私が通ったモンテプルチアーノの語学学校では、2週間に一度「料理の夕べ」と題したトスカーナ料理の講習会が開かれていました。といっても堅苦しいものではなく、先生は地元の農家の奥様で、会場は彼女の家の台所(といってもかなり広いのですが)。お喋りも楽しみながら、みんなで料理を作り、最後はパーティ、というとっても楽しいイベントでした。多少レシピを頂いてきましたので、今月からシリーズでご紹介していきます。



<ファゴッティーニ>

 引き続き、モンテプルチアーノの語学学校が主催する「料理の夕べ」で習った料理をご紹介します。トスカーナ料理のアンティパスト(前菜)で、見かけはなんと「餃子」にそっくりの「ファゴッティーニ」。とっても簡単ですので、ぜひお試しください!



材料:パスタ生地、グリュイエルチーズ、プロシュート

1、パスタ生地を餃子の皮と同じくらいに薄く延ばし、グラスを利用して丸くくりぬく。
オーブンに火をつけ、暖めておく。


2、グリュイエルチーズとプロシュートをみじんぎりにしてよく混ぜ、塩を少々加える。
フードカッターを利用するととっても早くて簡単!

3、丸くくりぬいたパスタ生地の中央に、グリュイエルチーズとプロシュートのみじんぎりをのせ、縁に卵の黄身をつけて、餃子と同じように半円形に形作る。フォークの先を押し付けるようにして生地を密着させるとよい。

4、焼き皿に並べ、180度で約10分焼く。生地に少し焼き色がつき、カリッとした感じになれば出来上がり。


表面はカリッとして、なかはチーズがとろり・・。手でつまんで気軽に食べることができるので、お酒のおつまみにもぴったりです。ワインはもちろんですが、ビールにもよく合うと思います。見かけは、まさにイタリア版の餃子で、最初見た時は本当にびっくりしました・・。最近は、冷凍のパスタ生地も結構おいしくなっているので、こえを利用するととっても簡単ではないでしょうか? なお、具もアイデア次第でいろいろバリエーションがありそうです。


<ピチ>

 モンテプルチアーノの語学学校が主催する「料理の夕べ」で習った料理をご紹介していますが、今回はお待ちかねのパスタ料理。トスカーナ独特の極太パスタ「ピチ(pici)」をご紹介します。最近は機械で作った生麺がたくさん販売されていますが、やはり美味しいのは手打ち麺。もちもちっとしていて歯ごたえがあり、まるで「讃岐うどん」って感じで、四国生まれの私にはふるさとを思い出させる味(?)でした。ピチを茹でて和風だしで食べれば「素うどん」ができるのではないか、と本気で思ったほどです・・。
なお、ソースはいろいろバリエーションがありますが基本はやはりトマト味。「pici con lagu(肉入りトマトソース)」は、どの店にもある定番メニューです。



材料:小麦粉2キロ、卵3個、水カップ2、塩少々、オリーブオイル大匙1
(小麦粉は日本の場合、薄力粉7:強力粉3くらいの割合で混ぜた方がいいようです)

1、テーブルの上にパスタ板を広げ、小麦粉で丸く土手を作る。

2、土手の中に水と卵、オリーブオイル、塩を入れ、内側から少しずつ土手を崩すようにして混ぜてゆく。



3、すっかり材料が混ざったら、よく練って、生地にこしをだす。
生地の表面を指で押してみてへこんだ部分が跳ね返ってくる位、弾力性が出たらOK。
生地はねかせず、そのまますぐに形を作り始める。

4、包丁で生地を適当な大きさに切り取り、小片の端を転がすようにして細長く伸ばしてゆく。
*ちょうど、粘土で「へび」を作るときのような感じ。
手に少しオリーブオイルをつけておくと、くっつかない。
上手な人は、なんと2m位の長さにまで伸ばせるそうです!



5、出来上がったものに、軽く粉をつけ、布の上に重ならないように並べてしばらく置く。
6、たっぷりのお湯で茹でて、ソースをからめて頂く
麺が太いので、茹で時間は多少長めでおよそ20分程度。


<SUGO(挽肉入りトマトソース)/SARSA DI POMODOLO(トマトソース)>


 モンテプルチアーノの語学学校が主催する「料理の夕べ」で習った料理をご紹介していますが、今回は先月ご紹介した極太パスタ「ピチ」によく合うソースを2種類ご紹介します。「SUGO(挽肉入りトマトソース)」は現地でレシピを頂いてきた本格的なものですが、「SARSA DI POMODOLO(トマトソース)」は、私が見よう見まねで覚えてきた超簡単なレシピです。もちろん「ピチ」でなくてもOK。我が家ではスパゲティソースとしてよく利用しています。作り置きもできますので、ぜひトライしてみてください。
なお「SUGO」のレシピは10人分位ですので、ご注意ください。


<SUGO(挽肉入りトマトソース) >


材料:玉ねぎ半個、にんじん1本、挽肉300g、粗びきソーセージ大2本、
鶏肉のレバー200g、皮をむいた完熟トマト1キロ、トマトピューレ一皿、
バジリコの葉、イタリアンパセリ、白ワイン半カップ、塩、胡椒、唐辛子、
オリーブオイル

1、玉ねぎ、にんじん、パセリ、バジリコを細かく切る。
フライパンにオリーブオイルをたっぷり入れ、炒める。

2、挽肉と細かくした粗びきソーセージを加え、さらに鶏肉のレバーも薄く切って入れる。 材料がキツネ色になるまでよく炒める。

3、白ワインを加え、さらに炒める。

4、材料が十分に色付いたら、皮をむいたトマトとトマトピューレを加える。
唐辛子を加え、弱火でよく煮込む。

5、最後に塩、胡椒で味を調える。


<SARSA DI POMODOLO(トマトソース)>


材料:玉ねぎ1個、にんにく1片、トマトの水煮缶1個、
バジリコ、オリーブオイル、塩、胡椒、唐辛子

1、オリーブオイルをたっぷり入れた鍋に、にんにくのみじんぎりを加えて炒め、よく香りをつける。にんにくはオリーブオイルの温度が低いうちに加えること。

2、玉ねぎのみじんぎりを加えて、透明になるくらいまでよく炒める。

3、トマトの水煮缶を裏ごししながら鍋に入れ、バジリコ、唐辛子を加えて、弱火で煮る。

4、最後に塩、胡椒で味を調える。

*超簡単ですが、トマトの酸味と玉ねぎの甘みがうまく調和してなかなか美味しいですよ!


<カネロニ・コン・サルサ・ビアンカ>


 モンテプルチアーノの語学学校が主催する「料理の夕べ」で習った料理をご紹介していますが、今回は、ちょっと代わったカネロニです(名前はなんていうのか聞き忘れてしまいましたが)。トマトソースではなく、ベシャメルソースをふんだんに使ったもので、カネロニの中も肉ではなく、ほうれん草とチーズが入っています。市販のパスタ生地を利用すれば、とっても簡単にできます。レシピがないので、分量は適量でお願いします!


材料:ほうれん草、リコッタチーズ
カネロニ用パスタ生地、ベシャメルソース、塩、胡椒

1、ほうれん草を茹でてみじんぎりにし、リコッタチーズとよく混ぜ合わせる。
(白いチーズのなかに、ほうれん草の緑色が小さな点々になって見えるくらいまで) フードプロセッサーを利用するととっても便利!

2、塩、胡椒で味を調え、茹でたカネロニ用のパスタ生地の上に適量のせる。
くるくると巻きあげながら、生地のなかにまんべんなく中身が詰まるようにする。
中身は、あまり多くつめすぎるとはみ出してしまうが、少なすぎても物足りない。
お好みで適当に。

3、ベシャメルソースを作る。

4、オーブン皿にカネロニを並べ、ベシャメルソースをたっぷりかける。
上だけでなく、カネロニとカネロニの隙間にも、ソースをつめる。

5、そのままオーブンに入れて、焦げ目がついたら出来上がり。
お好みで、パルミッジャーノを振り掛けて、頂く。



<イタリアのお酒あれこれ  グラッパとカンパリ>

 イタリアのお酒というとワインを想像される方がほとんどでしょうが、ほかにもまだまだ種類はあります。ワインに関しては、ほかのホームページでも取りあげられているのでそちらにおまかせするとして・・、今回は、蒸留酒の「グラッパ」と、リキュールの「カンパリ」についてご紹介します。

*燃えるような酒「グラッパ」*

   冬の寒さが厳しい北イタリアでは、とてもポピュラーなお酒「グラッパ」。これは、ブドウの絞りかすで作った無色透明の蒸留酒で、アルコール度数は、なんと40度から60度と、まさに燃えるようなお酒です。もともとは、イタリア中部、トスカーナ地方の修道院で生まれた、と言われていますが、今は主に北部のワイン産地=ピエモンテ州、ヴェネト州、ロンバルディア州、ヴァッレ・ダオスタ州など作られていて、種類もかなり多く出回っています。寒さの厳しい時期、イタリア北部の人たちは、バールに立ち寄ってグラッパを軽く1杯やり、体をあたためているのでしょう・・。
 イタリア北部の街のお土産物やさんなどに行くと、たいてい、大小さまざまの可愛いガラスボトルに入った「グラッパ」が並べられています。単純なフラスコ型のものもあれば、タワー型のものがあったり、高さが50センチくらいあるような細長いボトルがあったりと、なかなか凝った作りで、中身を飲んでしまった後もオシャレな飾りになります。このボトルの美しさ、繊細さは、さすがイタリア! という感じ。工業デザイン先進国なればこそ、なのでしょう。
 グラッパは値段もそこそこ手頃なので、ついついお土産物に買ってしまったりするのですが・・、これはやっぱり重い! ので、覚悟が必要です。まぁ、日本ではまだあまり見かけないので、どうしても手に入れたいなら頑張って持って帰るしかありませんが・・、今は、東京のサンシャインシティ「ワールドインポートマート」の中にあるイタリアのブースにも、ワインとともに数種類のグラッパが置いてあるので、興味を持たれた方は、一度お出かけになってみてはいかがでしょうか? 確か小売りもしていたような気がします・・。

*グラッパ入りのコーヒー「グロッラ」*

  アルプスに近いアオスタ地方には、コーヒーにグラッパとレモンの皮、砂糖をまぜて作る「グロッラ」という飲み物があります。専用の木の器があり、それを火にかけて、アルコール分を飛ばしてから飲むのですが、アルコール分を飛ばしたとはいっても、もともと、かなりグラッパが含まれていますから、いわばコーヒーリキュールをストレートで飲んでいるようなものです。確かに体は暖まりますが、どちらかというと、酒豪の方におすすめでは? 私はとても飲み切れませんでした!
 なお、グロッラの器は、手彫りの素朴な作りになっていますが、特徴的なのは何カ所か飲み口がついていることです。器から直接、順番に回し飲みをするとのことで、2人用の小さな物から8人用くらいの大きな物まで、いろいろタイプがあります。アオスタ地方では、よく見かけるお土産物です。

 *神秘的な色合いの「カンパリ」*

 鮮やかなルビー色と独特の苦みが特徴のリキュール酒「カンパリ」。イタリアで生まれ、今や世界的に知られているこのお酒は、ガスパレ・カンパリという人物によって、この世に生み出されました。彼は、今から130年ほど前の1860年に、ミラノの大聖堂の前にあった自分のバーの地下室で調合を行い、この風味豊かなお酒をつくり出したのだそうです。
 現在、カンパリは世界の約170カ国に輸出されていますが、国によってアルコールに関する規定が違うため、いろいろなアルコール度数のものが約15種類作られているそうです。日本に入ってきているものは24度ですが、他に20度から28.5度まであるそうですので、飲み比べてみると面白いかもしれません。なお、飲み方は、ストレートから、ソーダ割り、オレンジジュース割り、グレープフルーツジュース割りなど様々。オレンジやグレープフルーツを使うと、苦みが和らいで香りは残るので、女性向きではないでしょうか・・。ただし、なんといってもアルコール度数は20度以上ですから、飲み過ぎは禁物、優雅に美しく味わうことをお忘れなく!
 カンパリに使われている原料は、オレンジピールやコリアンダー、カルダモンを始め40種類以上にも及びますが、それらがどのように配合されているかは、今もって企業秘密。カンパリ社の中でも、それを知る人は限られていて、副社長自身が週2回出社して配合を行っている、という話です

  「グラッパ」「カンパリ」も含めて、イタリアのお酒に関する話は、林茂さんの「基本 イタリア料理」(TBSブリタニカ)という本に詳しく記述されています。林さんは、イタリア暮らしが長く、現在は(株)サントリー、ミラノ事務所長を務められています。最近、イタリアワインの本も出版されましたので、ぜひご一読を。読みやすくてとてもおすすめです!


<イタリアのミネラルウォーター>

ミネラルウォーターというと、「エビアン」「ボルビック」「コントレックス」などフランス産のものが人気ですが、イタリア料理は、やっぱりイタリアのミネラルウォーターでなくっちゃあ! 特に私のようにワインが苦手な人にはおすすめです。個人的には、ガス入りのほうが好みで、これはもうクセになります・・。
 今回は、イタリアのミネラルウォーターを4種類ご紹介します。

*サン・ペレグリノ*

 イタリアのミネラルウォーターの中では、最もメジャーな「サン・ペレグリノ」。現在、世界45カ国に以上に、年間およそ1億本が輸出されているそうで、最近は、日本のイタリア料理店でもしばしば見かけるようになりました・・。
 この水は、イタリア北部のベルガモ近くに源泉があります。炭酸入りの硬水で、アルプス山麓の奥深くから、何層もの石灰岩や岩石の「自然のフィルター」を通して、湧き出しています。カルシウム、マグネシウム、ナトリウムがかなりの高濃度で含まれているので、美容と健康によく、肝臓病や腎臓病にもきくと言われています。この水の成分が初めて分析されたのは、今から200年以上も前の1782年のこと。かのレオナルド・ダ・ビンチもこの水を汲みに来た、という言い伝えもあるほどです(本当かどうかはわかりませんが・・)。
お味は、硬水なので最初、飲みにくいと思われるかもしれませんが、慣れてしまえば、口当たりも悪くなく、飲みやすく感じるのではないでしょうか?
 ちなみに、サンペレグリノの街は、フランスのエビアンと同じように、水が売り物の保養地で、鉱泉を利用した医療関係の施設やリゾートホテル、カジノなどがあるそうです。
 「サン・ペレグリノ」の目印は、ラベルの真ん中の赤い星印、ボトルはグリーンです。

*サン・ベルナルド*

 「サン・ペレグリノ」と並んでメジャーなのが「サン・ベルナルド」です。こちらの源泉は、やはり北イタリアのトリノに近いマリティム・アルプスのサン・ベルナルド峠付近で、このあたりは標高1000m、山も森も全くの自然のままで、汚染とはまるで縁のない地域と言われています。
 「サン・ベルナルド」も昔から、地元の人たちに体にいいと愛飲されていましたが、瓶詰めにして販売されるようになったのは、70年ほど前の1926年からで、最初は「セイント・ベルナルドの不思議な水」という名前だったそうです。
 利尿効果があるので腎臓病によく、こちらは、かのナポレオンが病の治療に訪れたこともあるという歴史付き。軟水のなので、軽く飲みやすいのも人気の秘密のようです。
 種類は汲み上げたままのナチュラル(ノンガス)と、少量の炭酸ガスが添加されたスパークリング(シンガス)、さらに、強めに炭酸ガスが添加されたスパークリング(ガス)の3種類があります。
 目印は、有名デザイナー、ジウジアーロ氏が手掛けた個性的なボトル。透明のガラスの表面に、何滴ものしずくが浮き彫りに飾られています。ただし、ペットボトル入りもあります。
 残念ながら、しばらく前に起きた「ミネラルウォーター異物混入騒ぎ」で名前が出て、最近、あまり見かけなくなってしまいました。私は大好きだったのに・・。どこか、この水を売っているところがあったら教えて下さい!

*フォンテ・ナポレオーネ*

 
 「ナポレオンの泉」という名前からもわかるように、この水はナポレオンゆかりのエルバ島(イタリアとコルシカ島の間にある小さな島です)に源泉があります。
 ナポレオン邸近くの山道の途中に小さな泉があって、昔から地元では、女性はこの水を飲むと綺麗になると信じられていたそうです。知る人ぞ知る水で、今もこの水を飲むために、エルバ島にバカンスに来る人も少なくないのだそうです。
 「フォンテ・ナポレオーネ」は、現在、地元のフォンテ・ナポレオーネ社が販売を手掛けていますが、家内工業のような形で大量生産をしていないことと、周りを海に囲まれているため輸送に手間がかかることで、エルバ島以外では手に入らないそうです。
 こう聞くと・・、ますます興味をそそられますよね! 一度でいいから味わってみたいものです。


*フュッジ(Fiuggi)*

 
 こちらは、ローマ郊外にある保養地フュッジに源泉があります。「フォンテ・フュッジ」と呼ばれているわき水で、日本ではほとんど知られていませんが、腎臓結石にきくとかで、イタリアではかなり人気が高いと聞きました。
 フュッジは山あいの小さな街で、温泉もあり、リゾートホテルやゴルフ場などが立ち並んでいるそうですが、ガイドブックなどには全く記述がなくて、場所以外に詳しいことはわかりませんでした。どなたかご存知の方、いらっしゃいませんかぁ・・?!


<パスタ>

今やすっかりポピュラーになった「イタりア料理」。
 その代表格であり、「顔」のような存在は、なんといっても「パスタ」です。最近は、生パスタも含めて、様々な種類が輸入されるようになっているので、ご自分で料理される方も増えていることと思います。今回は、パスタの種類から、歴史、食べ方、扱い方、エピソードまで、取りそろえてご紹介します。

*パスタとは?*

 
「パスタ」というのは、水とデュラム小麦、ものによっては卵をまぜて作ったもの、すべての「総称」です。イタリアでは生産に関して厳しい法律があり、100%純正のデュラム小麦粉を使うこと、人工着色料や保存料を添加しないこと、となっています。

 パスタの種類は何百とあり、ごく普通のパスタ工場でも百種類以上が作られているそうですが、それぞれにちゃんと名前が付けられているのが、「食」の国イタリアらしいというか、イタリア人にしては意外に細かいと言うか・・! パスタによってソースや食べ方も変わり、地方の「特産」のようなものもあります。

 また製法では、乾燥パスタと生パスタの2種類に分かれ、乾燥パスタは南イタリアが発祥の地。水とデュラム小麦を練った後、天日でじっくり干していました。今は多くの工場が、低温で長時間乾かすようにしていますが、中には天日干しの伝統を守っているメーカーもあります。生パスタは「エッグパスタ」とも言われ、北イタリアでよく見られますが、主に家庭やレストランなどで手打ちで作られています。もちろん、市販されている場合もあり、鳥の巣のようにくるりと丸めて売られています。乾燥パスタに比べると、しっとりした感じです。

*種類*

 
ロングパスタでは・・、
  スパゲッティ(太さは0.2ミリ刻みにある)
  ヴェルミチェッリ(スパゲッティよりぐっと細くなる)
  ブカティーニ(穴があいている)
  リングィーネ(平べったい)
  タリアッテッレ(リングィーネより幅広)
  フェットチーネ(タリアッテッレよりもっと幅広) etc.
  ショートパスタは・・、
  マカロニ
  リガトーニ(筋が入っている) 〜 リガティーニ(リガトーニの小型)
  ピーペ・リガーテ(筋が入っていてねじれている)
  ペンネ(切り口がペンの先のようになっている)
  フジーリ(ねじれている)
  エリケ(らせん状) etc.
 そのほかには・・、
  ラザーニャ
  カネロニ
  ラヴィオリ(小さな四角形で、中に詰め物がある)
  ファルファッレ(蝶の形)
  コンキーリエ(貝殻の形) 〜 コンキリエッティ(コンキーリエの小型)
  トルテリーニ(おへそのように丸くなっていて、詰め物がある)
    エスカルゴ(トルテリーニに似ているが、詰め物はない)
  オレキエッティ(耳に似た形)
    ルオーテ(車輪の形)
  ディタローニ(マカロニをもっと小さく切ったようなもの) etc.
 きりがないので、このあたりでやめておきます!

*歴史*

 パスタの歴史には、いろいろな説があります。私が聞いただけでも・・、

  1. ローマ時代以前のエトルリアの時代にすでにラザーニャらしき物を作っていたという説、
  2. 生パスタは古代ローマ時代にギリシャから北イタリアに伝わり、それがローマ帝国の兵隊たちによって各地に広まった、一方乾燥パスタは12世紀頃にアラビアから伝わり(アラビア人は保存を考えて小麦をあらかじめ水で練っておき、穴を開けて乾燥させていたとか)、ちょうど南イタリアの乾燥した気候がパスタ作りに適していたので普及したという説、
  3. スパゲッティに関しては、マルコ・ポーロが中国に出かけたときに中華麺の存在を知り、それを本国に伝えてたのが誕生のきっかけという説(ただし、これはジョークらしい!)。

 ただ、これだけパスタが普及したのは、イタリア南部で南米原産のトマトが作られるようになり、パスタによく合うトマトソースが生まれたことと、牧畜が行われていた北部で肉やチーズ、クリームなどを使ったソースが考え出されたことによるもので、やがてそれがお互いに伝えられてポピュラーになってゆきました。

 また、パスタを作るときのプレス用の機械が登場して、手軽に生産できるようになったことも、
大きかったようです。19世紀に入ってからは、工場での大量生産も可能になりました。

*食べ方*

 
それぞれのパスタには適した食べ方があり、またそれは地域や季節によって様々にアレンジされています。イタリアのブォナッシージという人が書いた本「新パスタ宝典」には、なんと1370アイテムものパスタ料理が掲載されているとか。
 でも、一般的に、南で生まれた乾燥パスタは「赤いソース」トマトソースとよく合い、北で生まれた生パスタは「白いソース」クリーム系のソースが主流。その土地の特産物を使って、パスタを美味しく食べる方法が考えられたのです。「La Vita Italiana1月号」でもご紹介しましたが、パスタソースにはナポレターナ、ボロネーゼ、ジェノベーゼなど地名に由来するものがいくつかあります。・・ということは、やはり各料理はそれぞれの生まれ故郷で食べるのが一番! と言えるかも知れません。
なお、パスタというと何でももおろしチーズをかける人がいますが、チーズをかけるのはソースにすでにチーズが使われているものだけで、普通はパセリのみじん切りがかかっているものにはかけないそうです。

*扱い方のポイント*

 
一番大切なのは茹で方で、よく言われるのはしこしこした歯ごたえがあり、髪の毛一本の芯を残した「アル・デンテ」。コツはたっぷりのお湯と一握りの塩、取り出すタイミングで、塩の分量は2リットルに大匙1杯です。お湯はたえず沸騰させた状態に保ち、袋に書かれている時間より2分くらい前に、固さを見ましょう。
 ゆでた後は、茹で汁を全部捨ててしまわないで、とっておくと便利。パスタがくっついてしまったときや、ソースの微調整に使えます。
 また、パスタを茹でているナベで一緒に野菜をゆでてもOK、ただし時間計算は必要になります。イタリアでは、スープパスタなどは野菜を入れたスープの中に直接、ざらざらっと小さなパスタを入れ、そのまま煮込んで食べたりしています。
 さらに、家庭でパスタ料理を作るときにあらかじめ量(g)をはかっておいて、自分の適量を知っておくと便利。パスタは茹でたてを食べるのが一番ですから、食べ残ししないためにも必要です。

*栄養は*

  
パスタを栄養学的に見ると、でんぷんのほかに蛋白質やビタミンB1、B2、カルシウム、鉄分などが含まれていて、消化がよく、すぐにエネルギー源になる食品です。スポーツ選手、特にマラソン選手などが、レースの前にパスタ料理を食べたりするのも、こんな理由があるから・・。スポーツ選手だけでなく、成長期の子供や妊婦、病後の回復期などにもおすすめ!
 ただ、決してカロリーが低いとは言えませんから食べ過ぎは禁物、もちろんソースによってはさらにカロリーが高くなったりもするので、ダイエット中の人は気をつけましょう