2000/08/02 Vol.15 「心の原風景」








「赤い嵐」の9話に、印象深い真(恭兵さん)の長ゼリフがあります。

小樽へ向かう列車の中で、しのぶちゃんにこう言います。



  俺ねえ、夕陽を見ると思い出すんだ。

  子どものころ、毎日、上野公園で遊びまくってて、学校の帰りに、陽が沈むの見るとハッとするんだ。

  おふくろの恐い顔が浮かんできて。慌てて一目散に走って帰るわけ。

  もう腹ぺこだろ。上野の商店街をさ、いろんな食い物の匂いをかぎながら駆け抜けるんだ。

  とにかく客が大勢おしかけてる時間じゃないとやばいんだ。おやじとおふくろはさ、客を相手にてんてこまい。

  まず俺に気がつかないし、たとえ見つかったってさ、客の手前、ひっぱたくわけにいかないだろ。

  いつも俺をにらみつけるだけなんだ。

  それで俺、今、うちを出て警察の寮に暮らしてても、

  夕陽を見るとさ、何だか急に、おやじとおふくろ、懐かしくなっちゃう・・・・



恭兵さん自身も魚屋の次男坊ですから、このセリフ、恭兵さんの現実の子ども時代とオーバーラップします。

そういう気持ちを思い出しながら、恭兵さんはこのセリフを読んでいるに違いありません。

ぼくの個人的な考えなんですが、夕陽と商店街はセットなんです。

そして、セットになったとき、ジーンとくるもの。

夕陽だけでもジーンとくるときがありますが、あれは風景が美しいからでしょう。

ちょっと違う感動なんですね。子どものころの過去の体験が混ざっているのです。

夕陽と商店街がセットなのは、子どものころの視点なんですね。

心の原風景、というんだそうです。

ぼくも子ども時代は、お店だったので、商店街に住んでいました。赤い色に染まる町を毎日見ていました。

ぼくがこのセリフに感動したのは、心の原風景が、真といっしょだったからに違いありません・・・・








 








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