2000/06/06 Vol.7 「20歳過ぎたら」








KIDの「失なわれた藍の色」を語るにあたって、失念しがちなのが、鉄兵(恭兵さん)の性格です。

KIDの最高峰のミュージカルだけあって、脚本が深く、

恭兵さんばかり追って観たりすると、「藍の色」のよさが見えてきません。鉄兵の性格も見逃します。

ぼくも、1回目は、鉄兵が「革命家」ということしか頭に入りませんでした。

失敗でした。2回目を観て、鉄兵の役割が分かったのです。

「藍の色」を観た方の中には、ぼくと同じように、鉄兵に共感できそこなった方もいらっしゃったと思います。



そのころの若い男だったら、革命家になろうって思うことは、

そんなに滑稽なことではなかった。分かるか。

世の中を変えたいって本気で思ってたんだ。

二十歳前なら、誰でも陽気なファイターだった時代があったんだ



過去を振り返るときのセリフ。

鉄兵は、過去に殺人を犯しています。

だとすると、これは、いいわけ、あるいは正当化ではないでしょうか。

二十歳前なら世の中を変えられると思うのは自由ですが、

それを当然のごとく行動しました。

そして、二十歳過ぎたら、血気盛んな自分が封印され、生暖かい現実の世界になりました。

鉄兵はもう、「ただの大人」なのです。

鉄兵は、この精神の変化を、自分で認めたくないのかもしれません。

このセリフのあとに始まる恭兵さんのソロ「20歳過ぎたら」の難解な歌詞です。



我々にとって明日の世界は、理想というより必然だった

我々がとった行動はすべて、正義というより当然だった・・・・

歴史をその手で一刻も早く塗り替えることを夢見ていたんだ・・・・

我々にとって昨日の世界は、来たるべき時の証人だった

我々がとったあらゆる手段は、正当化される書き置きだった・・・・

今更仲間を裏切るつもりもないが、二十歳過ぎたら

ただの人、ただより安い俺と分かった・・・・

今更酒にサヨナラ言えもしないし、二十歳過ぎたら

灰色の生暖かいドブに浸かった



若さと大人の区切りをつけたくない苦しみ。

過去と現在、どちらを鉄兵は生きているのでしょうか・・・・

鉄兵の気持ちに共感できたとき、はじめて「20歳過ぎたら」の歌詞が理解できたと言えるのです。

















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