うぅ、寒い・・・

「う・・ん〜」

毛布にくるまっていてもふるえてしまうような寒さ。

そのあまりの寒さに俺は目を覚ました。

「うあ〜、寒いぞ〜。設定温度あげてくれ〜」

・・・・・ん?まだ寝ぼけてるのか何か言ってることがおかしいな。

俺はまだはっきりしない頭を軽く振り、何気なく時計に目をやった。

「3時半か・・・当然夜の、だよな」

窓を見るとまだ外は真っ暗だった。冬の澄んだ空に星がきれいに見えている・・・

「あれ?窓が開いてる」

そうか、だからこんなに寒いのか。ってなんで窓なんか開けたんだっけ?寒いのに・・・

考えながら部屋を見渡してみる。何やら日本酒のビンやらコップやらが転がっているな。

「あ、そうか。昨日は籐子達が来て3人で飲んでたんだっけ」

少しずつおぼろげながら昨夜の事を思い出してきた。

(確か新年会とか言っていきなりあいつらが押しかけてきたんだよなぁ、

 まったく、これで3回目の新年会じゃないか。まぁ飲めればなんでもいのか、あの2人は。

 と、だいぶ騒いじゃったから葉子さんやあやに迷惑かけちゃったかな。

 後でちゃんと謝っておかないと・・・)

ん、そういえば途中で籐子が酔った勢いで先に潰れてた晶を窓から捨ててたような・・・

邪魔だ〜、とかわめきながら・・・その後すぐ籐子は帰っていったような・・・

「!!・・・まさか、そのまま!?」

俺は慌てて飛び起き、窓から身を乗り出して辺りを確認してみた。

が、どうやら晶はいないようだった。まぁ当然か、いくらなんでもそのままってことは・・・ん?

地面に何かを引きずったような後がある・・・・・

「・・・深く考えるのはやめておこう」

さて、もう一度寝なおすかな。窓を閉めて、っと。

―――カチャリ。

よし。そして俺はベッドに潜り込み、

「おやすみなさい」

・・・・・・・・・・
・・・・・・



「ぐぅぅ〜〜〜〜」

・・・いびきじゃないぞ、腹の音だ。

なんてどうでもいいような弁解を誰にとも無くしてみる。

いや、そんなことより、困った事に今度は空腹で眠れなくなってしまった。

ん〜、何か食べる物あったかな〜。

あ、そういえば籐子達がつまみとか色々買ってきてたから何か残ってるだろう。

と、ベッドから這い出して散らかった部屋をあさってみる。が・・・

「くそぅ、ゴミしかないじゃないか」

どうやら残った食料類は律儀にも持って帰ったらしい。イイ友人だ・・・

買い置きとかもないし、仕方ない、コンビニでも行ってなんか買ってくるか、寒いけど。

着替えて、コートを着て、っと。

「いってきま〜す。・・・おや?」

呟いて誰も居ない部屋を出たところであやの部屋の電気がついている事に気づいた。

こんな時間にまだ起きてるのか、あやは。気になるな、ちょっと行ってみるか。

・・・・・コンコン。

「あ〜や、まだ起きてるのか、何やってんだ?」

「へ、へぅ!?お兄ちゃん?あ、うぁ!」

な〜んか慌ててるなぁ。まさかイケナイ事でもしてたんじゃ・・・むむ、突入あるのみ!

「あや、入るぞ」

ガチャッ。

お〜、なんか散らかってる・・・というより、慌てて机の上の物をぶちまけた感じか。

おや、あの人形は、それに何やら書きかけの原稿用紙が・・・そうか。

「ん、邪魔しちゃったかな?」

言いながら床に座りこんで居るあやに目をやった・・・おや?

「そ、そんなこと、ないよ」

「それにしてもそんなに慌てて隠そうとしなくても」

「へ、へぅ・・・だって、恥ずかしくて」

「今更俺とあやの間に恥ずかしい事なんてないだろう?」

「へぅ!?それ、どういう意味・・・お兄ちゃん?」

軽口を叩きながらも俺はあやから、正確にはあやが着ている服を見つめたまま目を離せずにいた。

「そんな事よりあや、その服は・・・」

そのちょっとくすんだような小豆色は・・・

「むぃ?これはパジャマの代わりだよ。」

「そうか、寝る時はいつもそれ着てるのか?」

その機能性しか考えていない時代に逆行したようなシルエットは・・・

「うん、お姉ちゃんのお古だけど、結構暖かいから」

「葉子さんの?にしては結構新しいような・・・まあいいか。で、それはやっぱりジャージだよな」

「むぃ、そうだよ」

そう、ジャージだった。

当然どこぞのメーカーの3本線のヤツのような妙に気取った物ではない。

「お姉ちゃんが学園に通ってた時に着てたんだって。これ、さつきちゃん達が学園で同じの着てるんだよ」

「へぇ〜、じゃあ葉子さんもあの学園だったのか。ん?さつきちゃん達がって、あやは違うのか?」

「私は学年が違うから、色がちがくて、青いジャージなんだよ」

「青か・・・青もいいけど、やっぱジャージといったら小豆色が基本だろ」

「そうなの?私は青の方が好きだよ」

「ダメだ!!あれは上級者向けだ!あやはまだ初心者なんだから小豆色にしろ!!」

「へぅっ、わ、分かりました」

いかん、ちょっと熱くなりすぎたか、あやが少しおびえているようだ。

ちょっと落ち着かないとな。

「よし、じゃあこれからあやにジャージの良さを教えてあげよう。覚悟はいいな?」

「は、はい!よろしくお願い、た、奉ります」

相変わらずかみまくりだがいい返事だ。

「よし、あや、こっちにきなさい」

そこで俺はベッドに座りあやを呼び、俺のひざの上にあやを座らせた。

「むぃ・・・」

あやが俺によりかかるような体勢になり、俺とあやの体が密着する。

(あぁ、あやの体、暖かいな)

その部分からあやの体温が伝わってきた。それはとても暖かく冷えきった身体に心地よかった。

やっぱり子供は体温が高いってのは本当なんだな、なんて失礼な事を思ってしまった程に。

「へぅ、お兄ちゃんのおち・・・ん固くなってるよ」

あやが少し恥ずかしそうにしながら言った。

「う、まぁとりあえずは気にするな」

実はあやのジャージ姿のあまりの可愛らしさに俺はすでに臨戦体勢がととのっていたのだ。

(そういえば・・・)

と、ふと思い出した。

(あやと始めてした時、―いや、葉子さんに途中で邪魔されたからしようとした時、か― あの時も

 こんな感じだったよな。あの頃は硬くなってる物が何かなんてことも解からなかったのになぁ。

 今ではちゃんと解かってるし。それ以上の事も色々とやったしなぁ。

 あやもしっかり成長してるんだな、体意外は。うんうん、お兄ちゃんは嬉しいぞ)

「お兄ちゃん、お兄ちゃん?」

「えっ!?あぁ、何かな?」

あやに呼ばれて我に返ると、あやが心配そうに俺の顔をのぞきこんでいた。

「むぃ、大丈夫?」

「大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけだから」

何やら本気で心配しているようだ。一体俺はどんな表情をしていたんだ?

って、そんなことより、あやが目の前にいるのに妄想にふけってる場合じゃないよな。

よし、気を取り直して、

「それじゃあ早速始めようか」

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・


to be continued...