トート・タロット図解


6 Method メソッド (占法)



 クロウリーの『トートの書』には、ゴールデン・ドーンの秘教体系で用いられていたオープニング・ザ・キーという占法(メソッド)の簡略化した展開法(スプレッド)が記されているが、それでも一回の展開に数時間を要する複雑な物である。

 本稿では、筆者が「フォー・ウイング・メソッド」と呼ぶ、ゴールデン・ドーンの秘教体系で用いられた、別名「15カード・スプレッド」を紹介するが、それに先だって幾つか念頭に置いていただきたい事がある。

 序説にも記したが、ゴールデン・ドーンの秘教体系ではタロット・リーディングにおいて正位置、逆位置の区別を付けない。トート・タロットを既に手にしている方には言うまでもないが、トート・タロット、またゴールデン・ドーンの秘教体系に基づくタロットの多くは、裏面に上下の区別のある装飾模様が施されている。シャッフルやカットの時点で、どのカードが逆さまになっているかは明白なので、シャッフルやカットの時点で正逆が分かり、シャッフルやスプレッドに邪念を生じさせる事になる。

 また、今日的なタロッティストの多くが逆位置を採用しなくなってきている。勿論、逆位置に徹底的に拘るタロッティストも存在するし、それは否定される事ではない。しかし、ゴールデン・ドーンの秘教体系とそれに連なるタロットは逆位置という概念を採用していない事は留意すべきである。

 カードの正位置、逆位置による意味の違いを考案したのは18世紀パリの、恐らくは史上最初のプロのタロット占い師、エテイヤ(古いタロッティストには英語読みのエッティラと呼ぶ方が分かり易いであろう)である。エテイヤは大小アルカナを区別しておらず、愚者の札を全てのカードの終わりである78枚目に置いた。そして全てのカードに正位置、逆位置、また左右にも異なった意味づけのタイトルを記したカードを考案した。

 A・E・ウェイトの『タロット図解』に記されたカードの占い上の意味は、基本的にエテイヤの付けたタイトルに従っている。『タロット図解』を熟読すれば、ウェイトがカートマンシー、即ちカード占いに殆ど関心を持っていなかった事は明らかなので、占いに最も適したタロットとしてのライダー・ウェイト・タロットという現代の認識は皮肉という他はない。

 トート、及びGD系の魔術的タロットでは正逆の意味をとらない代わりにに、エレメントに基づく相生相克を読む。簡単に言えば相反するエレメントは互いの意味を弱めあい、相生のエレメントにあるカードは意味を強めあう。同じエレメントに属するカードが並べば良くも悪くも意味を強めあう。

 例えば、ワンドとカップは火と水の関係なので相克の関係にあって意味を弱める。同じく、ソードとディスクは風と地の関係にあって意味を弱めあう。だが、ワンドとソードとディスク、カップとソード、ディスクは相生の関係にあって好品位であると判断される。大アルカナで言えば、照応するゾディアックが何処のエレメントに配置されるか、また惑星であればどのサインのルーラーであるかで判断が出来る。

 基本的に神人合一を目指しているトート・タロットに於いて、最悪の凶札の集まりという物が出来る訳ではないが、トートにおいては全てのカードが隣接するカードの影響を受けるので、それに特化したメソッドが必要である。

 メソッドの開始前には占断を行う場を浄化しておく必要がある。筆者の場合はキャンドルに火をともし、香を焚き、カバラ十字とペンタグラムの小儀礼を行う。占断に先だってデッキは本稿の順番に従って順に並べ重ねておく。ゲストを迎える場合、占断の場にゲストを迎える前に以上の術式は終了させておく。占断を開始するにあたっては、タロット・リーディング専用に用いるクロスを広げ、その上でカードを展開する。可能であれば占断の間もキャンドルの火と香を焚き続ける。また、筆者は悪意の波動をプロテクトするためのアミュレットと、集中力を上げるためのタリスマンを身に付けるようにしている。

 タロット・リーディングにあたって、必ず上記のような段階が必要な訳ではなく、決定的に正しい方法がある訳ではない。魔女術のある流派では、リーディングを行う前の儀礼が非常に細密に定められているが、あまり神経質になる必要はない。ただ、日常的な波動を引き摺らないためにも自分独自のけじめのような物は決めておいた方がよい。タロットを展開する事は、自分自身、或いはゲストの未来に対して霊的な干渉や影響を与える物なので、既に魔術的な行為なのである。

 では、フォー・ウイング・メソッドの具体的なスプレッドを紹介する。

フォー・ウイング・メソッドによるスプレッド



 フォー・ウイング・メソッドは上図のように15枚のカードを展開する。A・E・ウェイトの推奨するケルティック・クロス・メソッドに対して、全ての要素をコンビネーション・リーディングで行うという意味に於いて優れており、また実占における高等技術を要求される。

 具体的な質問内容は予め受けておき、問題の本質について集中しながらカードをシャッフル、カットを行う。タロッティストによってシャッフルやカットを占者が行うか、ゲストが行うか、双方が行うかは見解がそれぞれに違うので自分にあった方法をとればよい。筆者の場合は占者とゲストの双方でシャッフルとカットを行う。まずは筆者自身がシャッフルとカットを行い、三つのパイルにデッキを分けてゲストに選択して貰った後にゲスト自身に自由にシャッフルやカットをして貰う。不十分に感じた(純粋にインスピレーションに従う)場合は改めて占者がシャッフルとカットを行う。

 シャッフルとカットの終了後に、上記のポジションの順番にカードを展開していく。

 ポジション1は現在の状況であり、ポジション2と3はそれを取り巻く状況としてコンビネーション・リーディングを行う。大アルカナが出ればそれは質問者の大きなフォースの流れを表し、コートカードが出れば、現在から未来に渡る、大きな影響を表す人物を示す。

 前方に広がる二つのウイング、4・8・12のセットと、5・9・13のセットは二通りの予想される未来である。どちらがどうという事ではないが、それはおそらく、成り行き任せの未来と、何らかの意志を介在させて運気を動かした未来を示唆している。どちらの未来を質問者、或いは自分自身が望んでいるかをここで見極める事が出来る。

 後方の二枚の羽は、左側の6、10、14が、質問者、もしくは自分自身の未来を切り開くために決断を迫られている要素を表す。ポジション、7、11、15は現時点で不可避のフォースを表し、良くも悪くも不可避的に襲ってくる未来を表す。だが、それは質問者にとって対処可能な事なので、未来は意志によって変える事が出来る。

 このメソッドにおいては、ケルティック・クロス・メソッドやヘキサグラム・メソッドのような確定的な最終結果を導き出す事はない。不可避のフォースにしても対応は可能なのである。

 ここで顧みる必要がある。『法の書』の啓示は「汝の欲する事を為せ」であり、未来はそれを意志する当人に委ねられているという事なのである。

 近代タロットの母と呼ばれるイーデン・グレイは、その著作の中で、タロッティストは質問者を決して絶望させてはならないと著作に記している。タロットは揺れ動く未来とそこに介在する自分自身、或いはゲストの意志の発動を映し出すので、たとえ展開で困難な未来が予測されるとしても、自分自身やゲストがその点に対して留意すれば凶運は軽減されたり消滅する事を肝に銘じておくべきである。

 占断を終了したら、もう一度全てのカードをシャッフルし、カードを順番に並べ直して箱やポーチにしまう。占断後のカードのシャッフルと並べ直しは、占断で扱った問題の波動を浄化し、リセットするのに極めて有効なので実行する事を推奨する。


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