PANDORA'S BOX

パンドラの箱


野中友博が演劇実験室∴紅王国設立以前に上演した、P−BOXとパンドラ劇場の活動記録です。

P−BOX パンドラ劇場第一印象『繭物語』
 作・演出 野中友博 1985.11.7〜10 六本木 アトリエ・フォンテーヌ

 有料公演を処女作とするなら、これがまぎれもない処女作という事になる、記念すべき第一作。旗揚げ寸前に俳優の大半が辞めてしまったりと、大変な船出であったが、音楽の寺田英一、照明の中川隆一、舞台監督は根岸利彦と、現在の紅王国とスタッフの布陣は同じ。泉鏡花の最後の短編「縷紅新草」を下敷きにした廓物。
P−BOX パンドラ劇場第二印象『(旧約)化蝶譚』
 作・演出 野中友博 1986.4.17〜22 高円寺 明石スタジオ

 紅王国の旗揚げ作品と同タイトルだが、内容は全くの別物。という訳で、現在では旧約という枕詞をつけて区別している。これも鏡花の歌である「夕月」に着想を得た恋物語。スローモーションと人形ぶりを多用したが、20代で書いた旧作の中では、最も美文調の台詞を書いていたと思う。妙なハッピーエンドになってしまい、少々悔いが残った。
P−BOX パンドラ劇場第三印象『螢火抄』
 作・演出 野中友博 1987.5.27〜31 六本木 アトリエ・フォンテーヌ

 開き直ってやりたい事をやろうとして書いた作品。評価も高く、20代の代表作をひとつだけ挙げるのならば間違いなくこれ。「虫の女」というコンセプトが明確になり、太極拳を基礎にした所作もこの作品からで、コロス劇の要素が強い。心中ごっこを主軸にした廓物。
 2002年にはワークスプロデュースが松行俊二演出によって再演している。
P−BOX パンドラ劇場第四印象『永劫蝋燭と人魚』
 作・演出 野中友博 1988.5.28〜6.3 六本木 アトリエ・フォンテーヌ

 小川未明の「赤い蝋燭と人魚」の後日譚という形で書いた、極めてオカルト色の強い作品。舞台監督が代わってしまい、結構、つっこまりながら演出していたので、どうも良い想い出がない。ただ、動員は歴代作品の中でも最高だった。この作品から恩田眞美が参加する。
P−BOX パンドラ劇場第伍印象『蛹化記〜蛭子篇』
 作・演出 野中友博  1989.11.23〜11.29 六本木 アトリエ・フォンテーヌ

 学生時代に上演した実質的処女作、『蛹化記』二度目の改訂版で、昭和天皇の崩御に合わせて改訂した廓物。紅王国の『女郎花』は、この作品をベースとしていて、高橋健二と恩田眞美は同じ役で出演していた。パンドラ劇場としての活動は、これより休止状態に入る。
飯島奈美子プロデュース+P−BOX 『ヘルゲランの勇者たち』
 作 イプセン 訳 樋口修吉 脚色・構成・演出 野中友博 1995.920〜27 銀座みゆき館劇場

 みゆき館劇場新装オープンプロデュースのとりを務めた。再編成中だったP−BOXの再起作……となる筈だったが、プロデューサーサイドの制約が多く、翻案にはストップがかかり、美術も他劇団と共有で実力は発揮しきれなかった。これに出演した恩田、中川、鰍沢が紅王国創立のベースとなっていく。そういう意味では重要な作品。
P−BOX 『真・化蝶譚』
 作・演出 野中友博 1996.5.22〜28 大塚 ジェルスホール

 実に、七年ぶりの作・演出公演。内容は紅王国の旗揚げ作品とほぼ同様で、オウム事件後の魔女狩り的ヒステリーを題材としている。入魂の一作だった筈が興行的には惨敗。これがテアトロ戯曲賞への応募につながり、ひいては演劇実験室∴紅王国の設立へとつながって行く。P−BOXと紅王国をつなぐターニング・ポイントとなる。

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