演劇実験室∴王国 第拾弐召喚式

我が名はレギオン

我が名はレギオン My name is Legion, For we are many.


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2009年11月26日〜29日

於:中野 ザ・ポケット

作・演出/野中友博


2008年夏、全身を十五ヶ所に切断された身元不明の少女の遺体が発見され、「神は汝を許したもうた/使徒」と記された署名が添えられていた。
それは陸続と続く連続殺人事件の始まりだった。

謎の連続殺人鬼「使徒」を追う、波川龍警視率いる捜査本部特命第四斑。タスクフォースのプロファイラー葛城嶺と「使徒」との息詰まる心理戦……やがて、上流階級のお嬢様だと思われていた被害者達は、独り残らず援助交際をしていたという裏の顔が判明する。

白昼夢の中でプロファイラー嶺を導く赤い服の女と死者達の声、やがて波川警視は「使徒」の驚愕の正体との対決を迫られる……


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【DEVICE】

作・演出/野中友博

【PERFORM】
(五十音順)

阿野伸八・犬塚浩毅・内山正則・遠藤紀子・恩田眞美・かどのまいこ(ネオ企画)・

金子美鈴・小林達雄・白石里子(青果鹿)・園部貴一・滝川はる奈・田中清美・

長澤史歩(中央大学第二演劇研究会)・野口聖員・藤井佳代子(劇団青年座)・本多菊次朗・

松永太樹・円谷奈々子・村田貴洋・矢野由布子(中央大学第二演劇研究会)・山西未紗


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【CREW】

美術/丸山賢一(青果鹿) 照明/中川隆一 音楽/寺田英一 音響/半田充 衣裳/杉本京加 舞台監督/小野八着・大地洋一 

宣伝美術/T・HRN(Picture)・KIRA(Layout) 制作/上野蓉子 制作協力/菊地廣 演出助手/馬渡淳・西みゆき Web/HIMIKO



【Co-CREW】

在倉恭子・鰍沢ゆき・佐藤由美子・萩谷正人


【THANKS】

青果鹿・ネオ企画・ひよこ組・中央大学第二演劇研究会・あとむの会・舞台よろず相談所K企画・

本多スタジオ・劇作ワークショップ∴DISCIPLINE・演劇ワークショップ∴INDISCIPLINE・P-BOX


『殺人についての問い』

 「人は何故人を殺してはいけないのか?」或いは「何故人は人を殺すのか?」ということが、ここ数年、私の最大の関心事であった。勿論、法的にも倫理的にも、人は人を殺してはいけないと云うことは、大げさに言えば人類の一つの共通認識として共有されているとは思う。だがひとたび「何故?」という根源的な問いを発すれば、その答えは袋小路に迷い込む。凶悪な犯罪が発生すれば、人々は犯人を死刑にしろと口にするし、北朝鮮から日本を守る為には憲法を改正して戦争が出来るようにするべきだという声も高まっている。人は「人を殺してはいけない」と言うその言葉の裏で「場合によっては人を殺すべきである」とも言っているのだ。

 二〇〇七年の初頭、『渋谷区短大生遺体切断事件』が発生し、兄が妹を殺してバラバラにした事件としてセンセーショナルな報道が続いた。当時私は、大化改新を背景にした古代史劇の戯曲を書く準備に没頭していたが、この事件についてはできる限り記事を集め、その真実を知りたいと、続報を細かくチェックしていた。初期報道で、被害者である妹が短大に通う傍ら、女優業をやっており、加害者である兄の動機が「私には女優になる夢があるけど、お兄ちゃんにはないね」と言われたことに立腹した為だという報道が気になったからだ。たかだかVシネにちょい役で出たり、下北沢で小劇場の舞台に立ったというぐらいで、自分の兄を「夢がない」と詰ってしまう女優とはどんな女優だったのかという関心を持ったのだ。

 その後、両親が加害者である兄を庇って、被害者である妹を非難したとも読めるコメントを出したり、公判に伴う精神鑑定などで、加害者には生来のアスペルガー障害があり、事件当時には強迫性障害や解離性障害も発症していたこと、また、被害者にも反抗挑戦性障害という発達障害があった可能性があると指摘され、それらの子供達の障害について、家族は気づいていなかったと言うことも明らかになっていった。この家族にいったい何があったのか、何故兄は妹を殺さねばならなかったのか、その真実についての答えは未だに出ているとは言いがたい。

 『我が名はレギオン』は『渋谷区短大生遺体切断事件』を出発点にはしているが、直接にその事件を描いた物ではない。それは「このような殺人者が実際に現れる可能性があるかも知れない」という私の想像力の産物である。私は私なりに「人は何故人を殺すのか?」、「人は何故人を殺してはいけないのか?」という問いを考えてみようとした一つの過程である。勿論、その回答をこの作品が示している訳ではない。もしかするとこの問いとの葛藤は、一生続くのかも知れないと今の私は思っている。

 戯曲を書くという過程はまさにその葛藤の軌跡であり、俳優やスタッフ達とこの作品を共有することも、また「何故?」という問いに対する営為である。そして演劇はおそらく、「何故?」の答えではなく、問いその物を発信することしかできないのだとも思う。観客の皆様とも、その「問い」を共有できることを願ってやまない。
紅王



料金 前売.\3,500- 当日.\3,800-  高校生以下.\3,000-(紅王国でのみ取り扱い・要予約)
    入場券は日時指定。当日指定、一部自由席となります。
座席指定受付、及び当日券の販売は開演の60分前よりいたします。
開場は開演の30分前です。開演10分前までに受付をお済ませ下さい。
開演後の御入場はおことわりする場合がございます。
駐車施設はございません。お車、オートバイでのご来場は御遠慮下さいませ。

11/26(木) 11/27(金) 11/28(土) 11/29(日)
昼の部 14:00 14:00 14:00
夜の部 19:00 19:00 19:00

御予約フォームは下記画像をクリックして下さい。
(2009年9月25日より予約開始!)



 イエスの船より上がり給う時、穢れし霊に憑かれたる人、墓より出でて直ちに遇う。

 この人、墓を住処(すみか)とす、鎖にてすら今は誰も繋ぎ得ず。

 彼はしばしば足枷と鎖にて繋がれたれど、鎖をちぎり、足枷をくだきたり、誰も之を制する力なかりしなり。

 夜も昼も、絶えず墓あるいは山にて叫び、己(おの)が身を石にて傷つけいたり。

 かれ遙かにイエスを見て、走りきたり、御前(みまえ)に平伏し、大声に叫びて言う。
『いと高き神の子イエスよ、我は汝と何の関わりあらん、神によりて願う、我を苦しめ給うな』

 これはイエス
『穢れし霊よ、この人より出て行け』
と言い給いしに因るなり。

 イエスまた
『汝の名は何か』
と問い給えば
『我が名はレギオン、我ら多きが故なり』
と答え、

 また己らを此の地の外に追いやり給わざらんことを切に求む。

 彼処(かしこ)の山辺に豚の大いなる群、食しいたり。

 悪鬼どもイエスに求めて言う
『我らを遣わして豚に入らしめ給え』

 イエス許し給う。穢れし霊いでて、豚に入りたれば、二千匹ばかりの群、海に向かいて崖を駆け下り、海に溺れたり。
マルコ傳福音書 第五章 第弐節〜第拾参節

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