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一般にHCCの臨床経過は乏血性・単発で発病し、多血性MC期・IM期・脈管浸潤期を経て遠隔転移を有するところまで進行します。それぞれの病期に合わせて局所療法、肝切除、TACE、動注、分子標的薬、肝移植あるいは緩和医療など様々な治療選択肢が存在します。

 

 


 

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こちらは一例ですが、局所療法に始まり、肝切除を経て、その後TACEを繰り返し、TACE不応となれば動注あるいは分子標的薬に移行する場合が一般的と考えられます。

 

 


 

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当院ではHCC臨床経過における治療選択を極力RFA中心に行ってきました。初期の段階では根治目的、次第に脈管浸潤を伴うようになった場合でも、各種治療との組み合わせで用いております。

 

 


 

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このような方針とした理由ですが、HCC診療の目指すところはいかにQOLを保ったままoverall survivalを延長するかにあります。HCCが他の癌と大きく異なるところは、予後が腫瘍因子のみでは規定されず、背景肝の予備能とのバランスで決まってしまうところや、治療後の再発率が年率25%ほど、5年間では肝切除後でも70〜80%、RFA後では80〜90%と高率であり、一度の治療では済まないところです。

 

 


 

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腫瘍制御に重点を置きすぎると肝不全死となりますし、肝予備能温存に重点を置きすぎると癌死にいたります。すなわち、両者を上手くバランスをとることが必要となります。

 

 


 

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こちらは昨年のJSHサテライトシンポジウムにおけるガイドラインですが、ここにも各種治療の適応が示されております。

 

 


 

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各種治療の腫瘍制御能と肝予備能温存に対する影響を示します。腫瘍制御能が最も優れているのはもちろん肝切除です。しかし、予備能温存の点では肝切除は確実に予備能の低下をきたします。さらにTACEでは腫瘍制御能も予備能温存の点においてもablationより劣ります。バランスという点においてはablationが最も適していると考えられます。

 

 


 

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ここで当院のHCC症例の肝予備能を肝障害度とChild-Pughで示します。肝障害度では実に約70%BCであります。Child-Pughでも35%BCとなり、治療開始前にすでに予備能の低下がみられる方が大多数です。

 

 


 

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当院では予備能低下を避ける目的でRFA中心にHCC診療を行ってきました。ただし、安全確実にRFAを行うため、さらには治療不可能な部位を極力少なくするためには各種工夫が必要となります。

 

 


 

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ここに提示しております各種工夫の中でも特jに人工腹水法に関しましては昨年243件のうち、実に125件と50%超に使用しております。

 

 


 

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RFAの使用方法ですが、単独で根治療法を目指す場合、あるいはTACE先行させRFAを加え根治を目指す場合、そしてTACEが不十分な場所にのみRFAを用いる場合などがあります。

 

 


 

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目的です。HCCの治療選択肢は各種多様で現在でも各施設間で異なります。当院ではこれまで挙げたような理由でRFAを診療の柱としてきました。今回、この方針が妥当であったかどうか検証し治療方針の再確認を行いました。

 

 


 

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対象ですが、2001年より2010年までに当院にてRFAを施行したHCC306症例です。初回時導入例232例、再発時導入例74例です。

 

 


 

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検討項目は患者背景、Kaplan-Meier法による生存率、RFA施行率を解析、第18回全国原発性肝癌追跡調査報告の成績と比較を行いました。

 

 


 

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患者背景です。年齢は中央値70歳。男女比は約3:1。発癌因子はHBVが約10%HCV70%、その他が約15%です。導入時の腫瘍径の中央値は22mm、腫瘍個数の中央値は2個でしたが、再発を繰り返すとともにこれらは増加します。導入時のstage191例、2983機以上117例です。肝予備能は前述のとおりです。

 

 


 

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再発時導入例の初回治療ですが肝切除が57%TACE32%PEIT11%でした。

 

 


 

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ここで、全死亡例の死因を提示します。初回時導入例では他病死が最も多く、癌死、肝不全死が約30%程度でほぼ同じくらいでしたが、再発時導入例に至っては癌死が72%を占め、治療開始時に既にコントロール困難な病期に至っていた可能性が考えられます。

 

 


 

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当院でのRFAの適応基準を示します。根治目的は基本的にMilano基準内、姑息目的では制限はありません。腫瘍径25mm以上あるいは腫瘍個数5個以上はTACE併用を行います。予備能ではChild-Pugh Cでも場合によっては焼灼範囲を調節し施行いたします。血小板3/μl以下の場合は血小板輸血を併用します。脈管浸潤を伴う症例に関しては可能なら肝切除を優先します。腫瘍局在では制限を設けておりません。

 

 


 

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ここ3年間の治療実績ですが、積極的治療の約70%RFA単独、さらに10%程度をRFATACEで行っており、RFAは全体の80%程度を占めております。

 

 


 

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全例の累積生存曲線です。この中には根治目的、姑息目的両者を含みます。初回例で5生率55%、再発時導入例で5生率32%で初回例に関しては第18回全国原発性肝癌追跡調査報告のRFA、肝切除、移植と比較しても十分なものと考えられます。

 

 


 

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Milano適応基準内では初回例で5生率60%で第18回全国原発性肝癌追跡調査報告の肝移植のMilano基準適応例やRFAと比較しても劣っておりません。さらに再発時導入例でもMilano基準内であれば5生率は52%と十分なものと考えられます。

 

 


 

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腫瘍径に関しては21mmを超えるものでは肝切除が上回っており、初回時に腫瘍径の大きいものは可能であれば肝切除を検討することが必要と考えられました。

 

 


 

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逆に腫瘍径3個以上では肝切除よりも上回っており、個数に関してはRFAは優れていると考えられます。

 

 


 

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Stage別ですが、こちらでもほぼ同等の成績が得られております。

 

 


 

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肝障害度別ですが、肝障害度Bでは肝切除を上回っており、予備能に対する影響をより調節できるためと考えられます。

 

 


 

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治療入院回数とRFA施行入院数を生存例、死亡例別に提示します。

 

 


 

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RFA率は生存例では初回例、再発時導入例ともに実に90%超であり、死亡例でも初回例では89%でした。

 

 


 

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まとめです。全治療中のRFAの占める割合は生存例の90%超、死亡例では約80%。予後は全国平均とほぼ同じでしたが、初回時の最大腫瘍径の大きいものでは肝切除に比べ予後不良傾向であり、腫瘍個数の多いものでは肝切除より予後良好な結果でした。再発時にRFAを導入した例でも5生率は50%超と良好でした。

 

 


 

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結語です。RFAを診療の柱とした治療は、工夫をすれば合目的であり、妥当であると考えられました。