儚いものは夢だった 悲しいのはあなたの指先
線をなぞってゆく細い爪を
視線さえ 瞬きさえ赦されなくて
白いしろい肌を抱いていました
背中に爪痕が残るのさえ厭わずに
あなたと過ごせる時を望んでいました
 
あなたは悲しい人だから
体温を残すことさえ赦されなくて
あなたは儚い人だから
降り積もる雪も溶かせなくて
静かに静かに 沈んでゆきました
 
風が穏やかに吹く中
音を忘れた空間で
あなたがページを開く音だけが現実
時々視線を外しては
ふたりきりの時間を想っていました
いつまで続くのだろう
あなたはいつまで私の傍にいてくれるの?
 
あなたの隣りで眠ることが夢
朝起きてもあなたの傍にいられればいい
私は涙を流して喜ぶのに
けれど 現実は現実
今日も私はひとりきり
広すぎる空間を見つめています