逃げてきた
この急な坂道を登って
後ろも振り返らずに
肩で息して
駆け上がってきた
真横には高速道路
逆方向へと走ってゆく車
誰とも目を合わせたくなかった
 
背中を一滴の汗が伝った
シャツを染めるのも気にせずに
ただ頂上目指して駆けていた
疲れてなんかいない
足はまだ動くから
天辺まで走り抜けさせて
赤くなった頬に流れたのは
止めどなく吹く汗なのか
消えてはくれない涙なのか
わからないぐらいに走った
 
私は息をしてて
酸素を貪っている
支配しているのは飢餓で
走っていたい欲求で
何もかも忘れたい
あなたを忘れたいと
ひとつの願いで
あなたを好きだと
これだけしかない心
私が生きて
あなたが生きて
今日もどこかで交差するのなら
それでは
あんまりだから
一瞬だけあなたを感じていた