赤い傘
 
 
 
雨ふり、今日はこぶり
家にあった赤い傘はいらない
すぐに止んでしまうでしょうから
濡れた髪も、
すぐに乾いてしまうでしょうから
小さなことはいらないの
親指と人差し指で摘めるるぐらいの小ささは
風が吹いたら終わりだから
 
雨ふり、今日はおおぶり
家にあった赤い傘はいらない
大きな音が怖くて外には出れない
閉じた窓から
一滴一滴が部屋に浸透してゆく
大きいことはすごいこと
抱えきれないぐらいの大きさは
いつまでも心に残るから
 
雨ふり、今日は晴天。
家にあった赤い傘はいらない
あなたは昨日も待ち惚け
あなたは明日もいらないの
仕舞ってあった赤い傘、
使われることを望んでいるのに
大好きだった赤い傘
嫌いになった赤い傘