【7N3でのプリントレベルの出し方】
 
《説明が省略されている部分》
《簡単に説明されているレベル出し》
《全く説明されていないプリントレベル出し》
《プリントレベル出しが不完全な場合》
 

 コニカ提出のビデオと書証(乙36)を見て、懲戒事由に関する写真プリンター7N3について、説明が省略されている部分、簡単に説明されているレベル出し、そして、全く説明されていないプリントレベル出しとプリントレベル出しが不完全な場合を、以下に説明します。

《説明が省略されている部分》
  1. 7N3の使用について、説明が省略されている部分を補足します。
  2. プリンターを使うには、ランプを点灯しなければなりません。ランプは、(別紙1図1)のように一定の時間が経たなければ明るさが安定しません。その時間は外気にも因りますが、約30分必要と教わっています。
  3. 露光済み印画紙を排出した後、現像する部分が説明されていません。排出した印画紙は、完全な暗室の部屋に入って、手探りで、ロール状印画紙現像機(以下ロール現といいます)用の箱に詰め替えます。その後、印画紙の先端に「かんざし」を絡ませ、「かんざし」をロール現のベルトコンベアーに引っかけて現像します。この間次のプリントには取りかかれません。と言うのは、現像された印画紙の先端が出口に出てくると、印画紙巻き取りスイッチを入れて、印画紙の先端を巻き取り芯に巻き付けなければならないので、現像されてくるのを見張っていなければならないからです。
    1コマだけをプリントする場合でもこの作業が必要であり、プリントボタンを押してからロール現を出てくるまで約15分掛かります。
  4. 出来上がったプリントはロール状のままです。一般的な写真の用に1枚1枚にはなっていません。私の場合、何回もやり直すようなテストのプリントでは、必要箇所だけを手もしくはハサミで大まかにちぎっています。キチンと切断するのは、最終品だけです。
  5. その他7N3のスイッチ類の細かな取り扱いについては、現在機器を確認できる状況ではないし、私も詳細に覚えてないので言及しません。
《簡単に説明されているレベル出し》
  1. 7N3ではPCS135−02.を使って、レベル出しをします。
  2. PCS135−02.は(別紙1図2)に示します。グレー(灰色)を、アンダー(露光不足)、ノーマル(適正露光)、オーバー(過露光)の条件で、露光、現像処理したネガです。レベル出しとは機械の基幹の調整です。
    PCS135−02.はコニカのLV100というフィルムを使っていると聞いています。
  3. マスターチャンネルというチャンネルで、PCS135−02.の各コマをノーマルプリント(色濃度の変化をさせないでプリントすること)すると、アンダー、ノーマル、オーバーの各コマが、いずれもグレーにプリントされる用にする調整です。マスターチャンネルというチャンネルは1つしかありません。
  4. 調整方法は、PCS135−02.のリファレンス(見本のプリント)と実際にPCS135−02.をプリントしたものを比較して、実際のプリントがリファレンスに近い濃度になるようにします。
    濃度は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)という色の三原色の濃度を見ます。慣れている人は目視評価でも出来るようですが、私は慣れていないので、濃度計で濃度を見ていました。
  5. レベル出しが出ている状態が、(別紙2図4)です。
    グレーの濃度は、Y、M、C同じではなかったと思いますが、グレーのバランスを整えるという説明の便宜上、同じように表しています。
  6. 実技上、図のようにピッタリと合うことはまずありませんが、(別紙2図4)を理想として、ノーマルプリント→現像→濃度チェック→数字変更→ノーマルプリントという作業を何度も繰り返して、マスターチャンネルのノーマル、オーバー、アンダーの各Y、M、Cの数字を決定します。
  7. 数字の調整は、カラーボタン(色変化のキー)を使用しません。0から9のテンキーだったと思いますが、それを使って数字を入力します。数字はプラス、マイナスの三桁まで入力出来たと思います。
  8. 調整はノーマルから行います。というのは、ノーマル、オーバー、アンダーの三つ同時に調整していて、もし(別紙2図5)のようにオーバーが先に調整できたとしても、それでオーバーの数字は決定しないのです。
    (別紙2図5)の状態で、オーバーの数字を変更せずに、ノーマルの数字を調整すると、(別紙2図6)のようになって、ノーマルの数字を変更することによって、オーバーの調整が変わってしまうのです。アンダーも同じです。オーバー、アンダーの数字は、ノーマルの数字に連動しているようです。
  9. 従って最初の調整では、PCS135−02.は3コマともノーマルプリントしますが、数字の調整はノーマルだけです。ノーマルの数字が決定すると、オーバー、アンダーの数字を同時進行で調整します。慣れている人だと、3コマ同時進行で調整出来るようですが、私は慣れていないので、従来より上記の手順で行っていました。
    最初にノーマルプリントした時が(別紙2図4)とどの程度ズレていたかにも因りますが、私の場合、ノーマルの数字の調整で約1時間半、オーバー、アンダーの数字の同時調整で約1時間、合計約2時間半掛かっていました。3コマ同時進行で調整すると約2時間で出来るのではないかと思います。

 《全く説明されていないプリントレベル出し》

  1. 7N3のプリントレベル出しもレベル出しと同じような方法で調整します。
  2. ツールはP−PCSを使用します。
    P−PCSは(別紙1図3)に示します。グレーと人形を、アンダーからオーバーまで段階的に1段刻みで、市販の各種のフィルムに露光、現像処理したネガです。
    ネガの+1段は、およそ√2倍、+2段は√2の2乗(=2)倍の露光差です。
    P−PCSは、プリントレベル出ししたいフィルムの種類だけ必要です。
  3. 数あるフィルムチャンネルの中の1つであるLV100のフィルムチャンネルとレベル出ししたマスターチャンネルをリンクさせます。
    そしてLV100のフィルムチャンネルでLV100のP−PCSの各コマをノーマルプリントします。
  4. LV100のP−PCSとPCS135−02.は同じ種類のフィルムですから、基本的にはアンダーからオーバーまで、PCS135−02.と同じくグレーにプリント出来るはずです。
    出来上がったノーマルのコマのプリントとP−PCSのリファレンスの比較、及び出来上がったノーマルのコマのプリントとアンダー側、オーバー側の各コマのプリントのグレーの直線性(別紙2図4)をチェックします。
    問題なければLV100のフィルムチャンネルの数字は変えません。
  5. もし出来上がったプリントとリファレンス、及び出来上がったプリントのグレーバランスの直線性(別紙2図4)が、諸条件によりズレていた場合は、数字を微調整します。
    調整方法はレベル出しと同じく、ノーマルの各Y、M、Cの数字を調整、決定し、オーバー、アンダーの各Y、M、Cの数字を調整し、(別紙2図4)に近づけます。
    これでLV100のプリントレベル出しが終わりです。
  6. 次に別のフィルムチャンネルで、プリントレベル出ししたいフィルムのP−PCSの各コマをノーマルプリントします。
    LV100と違うフィルムは、PCS135−02.の数字でノーマルプリントすると、(別紙2図4)のようにグレーバランスの直線性が出ていることはまずあり得ません。濃度や色の偏り(ズレ)は様々です。
  7. そこでプリントレベル出ししたいフィルムのP−PCSのプリントを、既にプリントレベル出ししたLV100のP−PCSのプリントのグレーバランスの直線性(別紙2図4)に近づけます。
    調整方法は、LV100のP−PCSをアンダーからオーバーまでノーマルプリントしたものを見本とし、上記同様に、プリントレベル出ししたいフィルムのアンダーからオーバーまでを、ノーマルプリント→現像→濃度チェック→数字変更→ノーマルプリントという作業を何度も繰り返して調整します。
    ここでも、ノーマルの各Y、M、Cの数字を調整、決定し、オーバー、アンダーの各Y、M、Cの数字を調整、決定し、(別紙2図4)に近づけます。
  8. これで2種類目のプリントレベル出しが出来ました。
    プリントレベル出ししたいフィルムの数だけこの作業を繰り返し、各々のフィルムチャンネルに数字を入力します。
    1種類のフィルムのプリントレベル出しに要する時間は、ここでも最初のズレの程度にも因りますが、レベル出しと同じで、約2時間半掛かります。
  9. 要するにLV100を基準とし、各々のフィルムチャンネルで、どのフィルムでも、アンダーからオーバーまでのグレーを写し込んだネガをノーマルプリントすれば、グレーになるように機械を調整するのがプリントレベル出しです。
  10. 結果、(別紙4)の表の数値が出来上がります。
    この数値を出すのに非常に時間が掛かります。
    そして、この数値が以後の作業に常に使用できるかというと、そうではなく、諸条件により変動があります。
  11. 私が過去3回7N3を使用した時は、フィルムが従来品でしたが、過去のプリントレベル出しの数値が活かされなかったから、新たにプリントレベル出しから行わざるを得なかったのです。
    コニカ社内の7N3はたまにしか使われていないということが、大きな要因の一つではないかと思います。
  12. そして、コニカとしての基準の7N3の使用方法は、レベル出し→プリントレベル出しを行ってから、カラーボタンは使用せず(色変化させず)、濃度ボタンで濃度だけ変更させてプリントすると教わっています。
  13. 私が使い慣れていたCRTモニター付きミニラボ機だと、機械の設計上、プリントレベルが出しが出来ていても、特定のシーンではカラーボタンの操作が必要だが、7N3では、特定のシーンも対応できると伺っています。
  14. 私が過去に7N3を使用した仕事も、上記の方法で全コマ(10コマ)を±3段くらいまで濃度変化させてプリントし、その中から必要なものを選んでいました。
    プリントの1段は、7N3の場合、カラーで10%、濃度で15%となっていますが、これは機械の設定で自由に変えられます。
    10コマを±3段濃度変化させてプリント→現像するのは約20分掛かります。
    しかし約500コマを±4段濃度変化させてプリント→現像するのはその単純倍数ではありません。印画紙の量が多すぎて、印画紙排出箱に露光済み印画紙を溜めることが出来ずプリントの途中で何度も現像したり、未露光印画紙の補給作業も行わなくてはならないので、約4時間掛かったと記憶しております。
  15. コニカは、カセットテープを読み込ませることがプリントレベル出しだと主張しているようですが、カセットテープは(別紙4)等の情報を記録するものであり、カセットテープを読み込ませるいうことは、上記の方法で既に出したプリントレベル出しの数値を読み込ませることです。
    7N3は古い機械ですので、カセットテープをフロッピーディスクのように磁気記録として使用しています。
  16. いつも同じデータが入ったカセットテープを利用するのだとすると、毎回読み込ませる必要はないと思います。
  17. プリントレベルを出すという作業は、カセットテープを読み込ませるという作業ではありません。
《プリントレベル出しが不完全な場合》
  1. (別紙3図7)は、アンダーからノーマルまでプリントレベル出しが出来ているが、ノーマルからオーバーまではそれが出来ていない場合です。
  2. このような場合に、スロープネガ(P−PCSのように、同じシーンで段階的に露光変化させている何コマかの続きのネガ)をノーマルプリントすると、アンダーからノーマルのコマでは、色のズレはありませんが、ノーマルからオーバーまでのコマは、オーバーになればなるほど色がズレてきます。
  3. 結果、同じフィルムで同じシーンを撮影したネガなのに、露光量をより多く当てたコマほど、色の偏り(ズレ)が出来てたプリントになります。
  4. (別紙3図8)は、理想とするグレーの直線性より少し傾いている場合です。
  5. (別紙3図8)の傾いた直線をP−PCSで露光されていない範囲まで延長させた場合(別紙3図9)になります。
    仮にP−PCSで露光されている−2段から+3段までの範囲だとノーマルプリントで許容範囲内だとしても、−4段や+5段を露光したネガだと許容範囲外になることがあり得ます。
  6. P−PCSよりも広く露光変化させたスロープネガをプリントする場合ほど、より綿密にプリントレベル出しが出来ていないといけないのです。 
以上説明します。

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