ユーモアが人類を救う!?

初瀬基樹

 ここのところ、このページは本の紹介のようになってしまっていますが、またまた興味深く、面白い本に出会いましたので、ぜひとも紹介したいと思います。小学校教諭である増田修治さんという方が書かれた『笑って伸ばす 子どもの力』と『話を聞いてよ、お父さん!比べないでね、お母さん』という本です。(どちらも発行は「主婦の友社」)
著者の増田先生がクラスで集めた、たくさんのユーモア詩が紹介されています。少し、その本の中から詩をご紹介します。ぜひ、声に出して子どもさんや、おうちの方に読んであげてみてください。


おとうさんのあやしいけつ
       (3年生男児)

ぼくは、ホテルの温泉に行きました。
お父さんがはだかで
冷たいお風呂で
飛び込みをしていました。
お父さんは
けつをふって
バタ足をしていました。
ぼくがけつをよく見てみると、
けつから長い毛が
モジャモジャ出ていました。
ぼくは
「あやしいけつだな」
と思いました。


お嫁さん
       (4年生男児)

ぼくはやさしいお嫁さんをもらいます。
友達とお酒を飲みに行った時
こわいお嫁さんは
「今までなにやってたの。
早く風呂に入って寝なさい」
と言うけど、
やさしいお嫁さんなら
「早く寝なさい」
だけですむからです。
あと、給料がすくなかったら
こわいお嫁さんは
「給料が少ないから、
おこづかいへらす」
と言うけど
やさしいお嫁さんなら
「あら、少なかったのね」
だけですむからです。
あと、うるさいお嫁さんと
文句を言うお嫁さんもほしくないです。
うるさいのと文句を言う女は
お母さんだけで十分です。


さらに、この詩には続きがあります。


お嫁さんの事で
       (4年生男児)

ぼくが詩ノートに書いた
『お嫁さん』の詩の事で、
お母さんから
「何で、あんな事書くの」
と、おこられた。
ぼくは
「いいじゃない」
と言った。
お母さんは
「最後のあの2行をどうにかしなさい」
と言った。
「でも先生は、あそこが気に入っているよ」
と言ったら、
「もう、あんなこと書いちゃだめよ」
と言ったのでいやいや
「はーい」
と言いました。
でも、また書くよーだ!


 いかがでしたか?大いに笑えたことでしょう。こんなことが書ける子どもたち、幸せだなあと思いませんか。先月ご紹介した神田英雄先生も、子どもを見るには「外の目」「内側の目」が必要とおっしゃっていましたが、この増田先生も「共感的に理解する目」と「評価的に理解する目」の2つの目が必要だとおっしゃっています。「学校」というのは、どちらかというと「評価的に理解する目」が優先されがちで、「家庭」というのは「共感的に理解する目」が優先されるものだそうです。しかし、ここ最近は「家庭」のほうが、「学校」より「評価的」であったりすることがあり、そのことで、「子どもが息苦しさを感じることも少なくない」と心配されています。

 増田先生は「共感的に理解する目」は、親だけでなく、子ども自身も持つべきだとおっしゃっています。子どもがこれから先直面する社会は、先行き不透明の社会で、どのお父さん、お母さんも、これからの社会に不安を持っている。だからこそ、どんな社会になっても生きていける力が必要なのです。その力は、一言で言えば「人とつながり合う力」であり、その基本になるのは「ユーモアのセンスだ」というのです。ユーモアは人をなごませてくれます。そして、「相手がどのようなことを言ったら笑うのか」を考えることを通して、「相手の感性を理解する能力」を身につけることが出来るようになるのだそうです。また相手を理解するとは、実は感性によるところが大きく、いくら勉強ができても、相手を理解する能力が高まるわけではありません。「なんだかわからないけど、あいつとはウマがあう」などというように、論理とか、正論だけで割り切れないのが、人間という存在なのですから、日頃から相手の感性を感じ取る能力を育てる必要があるのだそうです。

 少し、話がむずかしくなりましたでしょうか?

 他にも、子育てで大事だなと思われるポイントをいくつか提示してくださっています。たとえば、「親の『聞く技術』がこどもを伸ばす」。「話を聞くときは『聞き手モード』に」ということが書かれていました。私自身も、うちの子どもたちに対して、よくしてしまう失敗なのですが、「親なんだから、親らしいアドバイスをしなくっちゃ」と思って聞いてしまうと、「でも・・・」とか「だけどね・・・」など、「相手のどこを指摘しようか」と考えながら話を聞いてしまいがちです。そして、「でもさ、そんなときは・・・」という具合に、否定的な言葉から会話を始めてしまうことがどうしても多くなります。そうなると、もう「聞き手モード」ではなく、「話し手モード」になってしまっています。そんなことが続けば、子どもたちだってきっと親に相談したり、話をするのが嫌になってしまうに違いありません。

 また、子どもがケガをしたときなどに、私もよく「何やってんだ!気をつけなきゃダメだろ、まったく・・・」みたいなことを言ってしまうのですが、そんなときは「痛かったね」とか「こわかったね」と子どもに共感してあげることが大切で、その言葉で、子どもは癒されるのだそうです。

 子どもの気持ちを引き出すために、親が「聞き手モード」になるには、「否定的な言葉から始めないこと」と、「子どもの気持ちに共感する言葉を心がける」という二つの点が大事なポイントなのだそうです。

 これらの本には、はじめに紹介したようなおもしろい詩がたくさん載っていますが、そうしたおもしろい詩ばかりではありません。ズシンと心にのしかかるような重い詩や、悲しい詩、また、テロや戦争について、みんなで考えたことや、ジェンダーフリー(男女差などの社会的性差の押し付けから自由になるというような意味)などについても、親を巻き込みながら、子どもたちと一緒に考えたりした取り組みが紹介されています。すでに小学生のお子さんがいらっしゃる家庭はもちろん、今はまだ保育園児でも、これからを見据えて・・・というか、今すぐにでも役に立つ子育てのポイントが満載です。ぜひおススメの2冊です。

 増田修治 『笑って伸ばす 子どもの力』 主婦の友社
 
 増田修治 『話を聞いてよ、お父さん!比べないでね、お母さん!』 主婦の友社





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