運動会を終えて
初瀬基樹
今年も無事に運動会を終えることが出来ました。たくさんのご協力、応援、本当にありがとうございました。子どもたちも本当によくがんばりました。とてもいい運動会になったと思います。特に今年で最後の運動会となるつくし組の「忍者修行」は、跳び箱といい、一本下駄、綱渡りといい、「さすが年長!」と思わせるほどでしたし、「からたちソーラン」も運動会前にはどうなることかと心配していましたが、当日は、子どもたち緊張しながらもやる気のみなぎった表情で一つひとつの振りを決め、最後の「ヤー!」という掛け声も全員でバッチリ決めました。そして踊り終えて、駆け足で応援席に戻ったときの子どもたちの「ヤッター!!」と友達同士で喜び合う姿は感動の一瞬でした。みんなで力を合わせてやり遂げたんだ!という喜びを子ども達みんなが味わったことでしょう。
また、体にハンディを抱えた子どもたちも、そのハンディを乗り越えがんばっている姿がみなさんにもご覧頂けたことと思います。なかでも、ひばり組のつよし君はまだ、一人で上手に歩くことができません。しかし、かけっこでは担任と手をつないで、みんなと同じようにトラックを1周することができました。遊び小屋の坂をのぼるのも、多少の支えは必要なものの、ほとんど自分の力で上まで登りきりました。あれだけ大勢の観客が見ている前では、普段どおりの姿を見せるだけでも難しいことです。それでも、プレッシャーをはねのけ、普段以上のがんばる姿を見せてくれたつよし君に心から拍手を送りたいと思いました。そして、そうした姿を心から応援している子ども達、大人たちがたくさんいたことは、とても素敵なことだと思いました。
今年の運動会では一つ考えさせられた出来事もありました。運動会の前日、運動会の準備のため、我が家の娘達も一緒に保育園に残って準備の様子を眺めていました。一段落ついて、ふと、長女の優香(年長児)に「あしたはいっぱいお客さんが見にこらすよ。楽しみだね。」と声をかけると、「あんまりたのしみじゃない」と答えが返ってきました。「なんで?運動会楽しくないと?」とたずねると、「だって、がんばっても赤組負けるもん、1等になれんもん。」とリレーのことを気にしているようでした。それを聞いて、私はハッとしました。これまでもあまり、順位とかにこだわってがんばれというようなことは言わないようにしてきたつもりでした。「がんばることが、自分自身の喜びにつながるように。人のためにではなく、自分のためにがんばる」ことが運動会への取り組みで大事にしなければならないことでした。ところが、リレーに関しては1、2回目のミニ運動会のときなど、昨年の年長さんたちのような意気込みが感じられず、今年はイマイチ盛り上がらないなあと感じていたため、大人のほうが盛り上げようとがんばり過ぎていたのかもしれません。子どもたちのやる気を出させるためにとかけていた言葉が必要以上に勝ち負けを意識させてしまっていたのではないかと反省させられました。本人も周囲からの期待やプレッシャーを敏感に感じ取っていたのかもしれません。このままではいけないと思い、「運動会は人と比べるためにやるものじゃないんだよ。人に勝つために練習してきたんじゃなくて、自分のために練習してきたんだからね。前は走るの遅かったけど、リレーの練習とかして前より走るの早くなっただろ?跳び箱だって前は全然跳べなかったのに、あんなに高いの跳べるようになったし、ソーラン節だって自分達で踊りを考えて、みんなで振りを合わせて上手に踊れるようになったよね。だから、あしたは『こんなにはやく走れるようになりました。こんなに高い跳び箱も跳べるようになりました。こんなに上手に踊れるようになりました。』って気持ちで、大いばりで自分が楽しみながら出来ればそれでいいんだよ。」というようなことを娘に伝えました。娘もわかってくれたようで「ウン!」と少し元気を取り戻したようでした。
翌日、いよいよリレーの時がきました。娘のいる赤組はミニ運動会のときからあまり早いチームではありませんでした。そして、今回もやはり3位でした。でも、走り終えた優香はあとで私のところへ来て、「前よりも早かったでしょ。」と言いました。昨夜の私の話を覚えてくれていたのでしょう。「よくがんばったね。」と声をかけました。
「子ども達一人ひとりがいかに意欲的に取り組めるか。」という課題は、運動会に限らず、保育者の腕の見せ所ですが、一番悩む点でもあります。子どもの意欲を引き出すためにいろんな働きかけ、声かけをしますが、やはり、根底には「それが自分の力になるんだ」ということを子ども達に実感してもらわなければ意味がありません。誰かに見せるために、あるいはやらないと怒られるから、といった理由で取り組んでもその子にとってはプラスにはならないでしょう。「自分のためにがんばる!」(もちろん仲間とやるものであれば「自分達のためにがんばる」)あらためて、こうした取り組みで大切にすべきことを子どもから再確認させられました。