各クラスの運動会の取り組みを見ていて、ある講演会で講師の先生がおっしゃった言葉を思い出しました。人が成長するときの道のりはけっして一直線ではなく、伸びたと思えば逆戻りしたりして、「らせん状」に成長していくものだということです。昨日まで軽々と跳んでいた跳び箱が一度の失敗で、スランプに陥ってしまい、しばらく跳べなくなってしまったり、竹のぼりや雲梯にしても一度出来るようになってからも、また出来なくなってしまったりということがよくあります。「この前はできたのに・・・」と悔しがりながら何度も何度も挑戦し、どこが悪いのか自分なりに考えたり、友達から応援してもらったり、アドバイスしてもらったり・・・。そんなことを繰り返す中で、また次第に出来るようになって、今度は本当の力になっていく。「出来るようになった」ということだけでなく、その過程で体験した悔しさ、友情、うれしさ、その他いろんなものが全てその子の「力」になっていくのです。これは大人でも同じことが言えるでしょう。人は挫折、葛藤を繰り返しながら成長していくものなのだと思います。「らせん状に成長する」ということは、一直線に進むよりも人生の幅が広がり、強いバネになるのです。ですから、戻ることは決してマイナスではなくその人を「豊か」にしているのです。
子育てにおいてもきっと、「オムツが外れたと思ったら、またおもらしばっかり」とか「最近、赤ちゃん返りして甘えん坊になって困る」とかいろんなことがあると思いますが、それも決してマイナスではないと思うのです。「人はらせん状に成長するものだ」ということを頭の片隅に留めておくだけで、対応も全然違うものになるのではないでしょうか。「ああ、今この子はちょっと後戻りしてるけど、これも成長の過程なんだ。またひとつ大きくなるために、今こうして力を蓄えているんだ。」という風にあたたかく見守ってあげることが大切なのだと思います。あたたかく見守られて、安心感を得て、さらに成長し、今度はきっと自分より下の子へも暖かな視線を注いでくれるようになることでしょう。
運動会に話を戻しますが、もし私たち保育者が運動会を「見せるための場」と考えていたら、そんなことは言っていられなくなるでしょう。「みんなが見に来るのにそんなことでどうするの！」などと責めてしまうことにもなりかねません。そうなると、子どもはどんどん追い詰められてしまいます。運動会の取り組みが子どもにとって（保育者にとっても）辛い、マイナスなものになってしまうことでしょう。そういう意味でも「ミニ運動会」という取り組みの中で「よーし、今日もがんばるぞ。失敗したって、また今度がんばればいいんだ。」と思えることが子どもにとってどんなに救いになることでしょうか。やらされて取り組むのと、自分がやりたいと思って取り組むのでは、子どもの表情がまったく違います。今回の運動会は、子ども達が楽しく、意欲的に、自らかかわることの大切さを再確認する場でもありました。