ちょっと待って!インフルエンザ予防接種

初瀬基樹

「インフルエンザの予防接種って、やっぱり受けたほうがいいんですかね〜?」

「みんな受けてるみたいなので、うちも受けさせないとまずいですよね?」

 こうした会話をよく耳にするようになりました。確かに最近のニュースなどを見ていると、新型インフルエンザや鳥インフルエンザ、SARSなどの出現で怖いなあと思います。何も知らなかったら、私もすぐに予防接種を受けているだろうなと思います。

 以前にも、予防接種についてのお便りを出したことがありますが、今回は「インフルエンザの予防接種」に限って、少し考えて頂きたいなと思い、少し長くなりますが、これまで私が調べたことをご紹介します。

 ここで紹介するものは、私の思いも多少含まれていますが、医学博士や小児科医の先生などが書かれた本から引用したものがほとんどです。(念のため、参考文献等も後に掲載しておきます。)

 ただし、あらかじめ断っておきますが、インフルエンザの予防接種は、あくまで「自分の意思で」受けるものであり、子どもの場合は「保護者の判断」で受けさせるものですので、「するか、しないか」は、さまざまな情報を得た上で、各ご家庭で判断して頂きたいと思います。「一方ではこういう情報もあるんですよ」ということをお知らせしておきたいだけであり、「予防接種絶対反対!」などと運動を起こすつもりではありませんので、そこのところはご了承下さい。


●インフルエンザの症状
 大きく分けてA型・B型・C型の3つの型に分かれ、一般的には、
 
 A型・・・突然38度以上の高熱が続いて関節や筋肉が痛んだり、全身にだるさを感じたりし、鼻水やのどの痛み、咳が出ることもあるそうです。ただ、A型は治りが早く、安静にしていれば3日ほどで自然に治ることが多く、咳が続いても熱はおさまり、遅くても1週間ほどでよくなるそうです。

 B型・・・比較的、高熱にはならず、主に咳が出るそうです。

 C型・・・鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛みなどで、症状は軽いのですが、長引くことが多いそうです。ただし、C型は流行することはほとんどないので、検査試薬もワクチンもないそうです。


●「インフルエンザ」そのもので命を失うことはない
 新聞等では「インフルエンザによる高齢者の死亡が増加」などと報道されますが、インフルエンザ自体で命を落とすことはなく、二次的な肺炎など、なんらかの合併症が起こったときに命にかかわることもあるそうです。

 子どもの場合、急性脳症が心配されますが、これもインフルエンザに限らず、突発性発疹や、ロタウィルス感染症などのウィルス感染症でも起こることがあり、むしろ、解熱剤(非ステロイド抗炎症解熱剤)との関係が疑われているそうです。


●ワクチンでインフルエンザは防げない
 インフルエンザ・ウィルスは「小変異」といって、絶えず小さな変化を繰り返しているそうです。ワクチン接種では、次の流行のウィルスの型を予想してワクチンを作るのですが、その変異に追いつくことは難しく、ウィルスの型と一致することはまずないのだそうです。

 シーズンに入って、ウィルスが広がり始めてからも、絶えず小変異を繰り返すため、日本国内であっても、もとはおそらく同じ型であっても、同じシーズンにそれぞれの地方でいくつもの種類の違うウィルスが発見されるほどなのだそうです。

 ちなみに、次のシーズンに流行するウィルスを予測するのは、約1年前だそうで、それだけ速いスピードで変化するウィルスに対応できるワクチンを1年前からピタリと当てる確立は、宝くじに当たる確立よりも低いとさえ言われているそうです。


●不確かな効果
 小児については、平成16年11月に日本小児科学会より、「1歳以上6歳未満の乳児については、インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、有効率20〜30%であることを説明したうえで任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向であると考える」とされています。また、1歳未満については「効果なし」とされているものもあります。20%〜30%を高いと見るか、低いと見るか・・・。厚労省でも「子どもへの効果は研究を要する」としているぐらいなのだそうです。


●怖いのは副作用
 効果が不確かでも、接種して何の害もないのであれば、接種しておくに越したことはないかもしれません。しかし、決して安くはない費用がかかることや、少ないとはいえ、毎年、副作用が報告されており、なかには死に至ったり、重篤な被害があるかもしれないとなると、安易に接種するのは考えものです。


●インフルエンザの特効薬?
 最近はインフルエンザに「タミフル」という特効薬ができて、インフルエンザにかかっても48時間以内にその「タミフル」を使い始めれば効果があるとされていますが、その効き目は、「5日間ぐらい熱が出る程度のものであれば、タミフルを使えば4日間で済む」程度のわずかなものなのだそうです。しかも、データの取り方によっては、効果が無かったり、未確認だったりするものもあるようです。この「タミフル」については、世界中の70%以上を日本が消費しており、使いすぎでは?という懸念もあるそうです。(つい先日、タミフル服用後に少年二人が異常行動に出て、亡くなったというニュースもありました。)


●予防は?
 「じゃあ、どうすればいいの?」と言われそうですが、やはり、普段から免疫力を高めておくことが大切なのではないでしょうか?

 「予防接種」を考える前に、「充分な休養と睡眠はとれているか?」、「バランスの取れた食事をしているか?」、「日頃からの体力づくり」や、「ストレスを解消してリラックスする」、「人ごみを避ける」「手洗い、うがい」・・・などなど、まずは日々の生活を見直す必要があるように思います。結果的には、こうしたことが一番効果があるのではないでしょうか。


●かかってしまったら?
 それでも、もし、かかってしまったら・・・小児科医の毛利子来さんは、「子どものしたいようにさせてやることが何より大事」と言っています。子どもは元気なら遊びまわるし、だるければ何もしないでゴロゴロする。発熱したら、好きな飲み物で充分に水分を与えて、寒気がするなら温める、暑がるときには涼しくしたり、薄着にして、気持ちよくさせること。寒がっているのに薄着にしたり、暑いのに厚着をさせたり、布団をかけたりするのは、気持ちが良くない上に、してはいけないこと。熱の上がりかけで寒気がするときに、体温を下げると、低体温になってしまったり、高熱で体温が高いときに、さらに体温を上げると熱中症と同じ状態になって体温調節の働きを壊してしまう恐れもあるとのこと。

 しゃべれない小さな子でも、表情や身振り、機嫌を見ていればどうしてほしいのか予測がつくと思います。

 熱も基本的には無理に下げる必要はないそうです。そもそも私たちの体には体温調節機能がそなわっており、子どもの発熱の多くは細菌やウィルスの感染によるもので、体がその病原体をやっつけようとして高熱になるわけです。細菌やウィルスは体温が高くなるだけで死滅しますから、つまり熱が出るというのは、体を守る仕組みがうまく働いているということなのだそうです。

 熱が出たときに大切なのは、熱の「高さ」ではなく、子どもの「症状」で、とても苦しそうだったり、けいれんを起こしたり、意識がはっきりしないとき、熱が高いのに顔色が青いときなど、いかにも重症にみえるときは「心配な病気」ということもありますが、普段の様子から「これはおかしい」と思う状態でなければしばらく様子を見たほうがよさそうです。

 解熱剤を使って熱を下げると、熱が下がっている間は、体は楽ですが、それは「ウィルスや細菌にとっても楽な状態」なので、病気のなおりはかえって遅くなってしまいます。解熱剤自体に病気を治す効き目はなく、解熱剤の効き目が切れれば、また発熱はぶり返し、結局は発熱期間も長くなってしまいます。しかも、解熱剤は安全な薬ではなく、副作用が強いので、なるべく使わないようにしたいものです。もしも病院に通っていて解熱剤を使うということになったら、その薬の種類や使用方法などについて詳しく説明を受けるようにしましょう。

 咳や、鼻水であれば、姿勢を変えたり、蒸気を吸わせたりすることで楽になることもあるようです。

 さらに、毛利さんは「甘えさせる」ことも大切だと言っています。「大人でも病気の時にはかまってもらいたいもの。つらさを認めてもらえ、心配りをしてもらえれば、それだけで、結構良くなることがあります。」だから、子どもの甘えは出来るだけ受け入れてあげましょうと。けれど、それは出来る範囲で、事情や体調により出来ないことは仕方が無い。「根本に情さえあれば、子どもはわかってくれる」と。



 長文になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?

 インフルエンザ予防接種には、さまざまな情報があり、私自身どれを信用していいのか、正直なところわかりません。しかし、これらを見る限り、私は今年も予防接種はしないでおこうと思います。

 もう少し詳しく知りたい方は、園に下記の本がありますので、ご覧ください。インターネットをされる方は下記のホームページなどにも詳しく出ています。

 http://www.tanuki.gr.jp/mt/yobou/100/100.html
 http://www.ne.jp/asahi/kr/hr/vtalk/infl_appeal0311.htm

 <参考文献>
 
 監修:母里啓子・山本英彦・浜六郎『医者には聞けないインフルエンザ・ワクチンと薬』ジャパンマシニスト
 
 藤井俊介『まちがいだらけの予防接種』さいろ社
 
 毛利子来・山田真編集代表『ちいさい おおきい よわい つよい (bR5)』ジャパンマシニスト
 
 その他 上記ホームページ等




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