卒園記念金峰山登山
初瀬基樹
今年も3月3日(土)に年長さんといっしょに金峰山登山に行ってきました。
8時45分に園に集合し、下清田からバスで「峠の茶屋」まで行き、そこからはすべて徒歩で「さるすべり」から頂上までのぼり、帰りは「岳北登山口(仁王像のあるところ)」、「岩戸観音」、「平」を通って保育園まで歩いて帰ってきました。
今回は、礼奈ちゃんのことを考え、背負子(しょいこ)を用意し、登れるところまで本人の力で登らせ、いざとなったら、途中からは背負子でかついで登ろうと考えていました。ところが、予想に反して礼奈ちゃんは余裕の表情、さるすべりなどでは手も足も使って泥だらけになりながらも全身の力で登っていました。途中、わざとすべってケラケラ笑ったりして、私たちを和ませてくれる場面もあり、本当にゆっくりのペースではありましたが、最後まで礼奈ちゃん自身の力で登りきることが出来ました。
そして、何より、私が感動したのは他の子ども達です。大人でもきつい道ですから、子ども達にとっても相当きつかったはずです。しかし、子ども達は要所要所で止まっては「れっちー(礼奈ちゃん)、がんばれー!あとすこしだよ。がんばってー」とみんな自分のことよりも礼奈ちゃんを心配し、応援してくれていたのです。何人かの子はせっかく登ったのに「俺が(私が)連れてきてやる」と礼奈ちゃんのところまで降りてきて引っ張ってあげようとしたりもしていました。「大丈夫、礼奈ちゃんはちゃんと1人で登れるよ」と出来るだけ手伝いは断りましたが、その子たちの礼奈ちゃんを気遣う気持ちは本当にうれしく、とても頼もしく思えました。
頂上が見えてきた頃には、予定より1時間近くも遅れていました。今回ケガのため残念ながら一緒に登ることが出来なかった直己君も、お父さんお母さんといっしょに頂上で待っていてくれました。みんなからはかなり遅れて礼奈ちゃんも頂上にたどり着いたのですが、礼奈ちゃんが頂上に着くとみんなが口々に「やったあー。れいなちゃん、がんばったね。」と声をかけてくれていました。
頂上でお弁当を食べると、予定の時間より大幅に遅れていることや天気も心配になってきたため、ゆっくり休憩する間もなく下山することにしました。「やまんば」や「鬼」などの話で盛り上がりながら山道は結構楽しく降りてきましたが、岳北登山口(仁王像のあるところ)を過ぎたあたりから、さすがに子ども達も疲れが見え始めました。途中で休憩してはアメをなめたりして、なんとか岩戸観音までたどりつき、「ここでしばらく休憩」と思ったら雨がパラパラ。昨年も途中から雨が振り出し、岩戸観音までで中断し、車で迎えにきてもらったのですが、「今年こそは最後まで歩き通したい。」そんな思いもあって行けるところまで行こうとかっぱを着て再び歩き始めました。平を過ぎたあたりから、ほとんどの子ども達の疲れはピークに達し、「疲れた」「足が痛くてもう歩けない」という声が聞こえ始めました。礼奈ちゃんも座り込んでしまうことが多くなり、愛さんや勝子さんが手をつないで「本当にもうあと少しだよ。」と励ましながら歩き続けました。平のあたりで様子を見にきて一緒に歩き始めた園長が途中で心配して礼奈ちゃんをおんぶしようとしましたが、礼奈ちゃんはおんぶされようとはしませんでした。また、今まで一緒にがんばってきた私たちみんなも「ここまで来たんだから何とか最後まで歩かせてあげたい」という思いが強く、とにかく行けるところまで礼奈ちゃんに歩かせてみようということになりました。そしてとうとう保育園が見えてくると、みんな最後の力を振り絞って走り始めました。無事に保育園に到着。礼奈ちゃんを含め、みんな最後まで歩き通すことが出来ました。お迎えにいらしていたお母さんの顔をみて安心したのでしょう。お母さんにしがみついて思わず涙が出てしまった子どももいました。中には続けてもう一回ぐらい登れるんじゃないかというぐらい元気な子もいましたが、みんなそれぞれに本当によくがんばったと思います。最後まで歩き通した子ども達の顔はとても充実し、達成感に満ち溢れて輝いていました。子ども達の心にもきっと良き思い出として刻まれたことでしょう。
今回の登山を通して、つくし組さんたちが、それぞれみんな友達を思いやる気持ちをこんなにも身につけていたこと、集団としてこんなにも成長していたのだということ、体力もさることながら「最後までやり遂げよう」とする精神力もちゃんと身に付けているのだなということを改めて実感しました。もうすぐ立派な1年生。さみしくもあり、うれしくもあり、複雑な心境ですが、わずかに残された年長さんとの日々を楽しく過ごし、心を込めて保育園から送り出してあげたいと考えています。
私にとっても心に残る卒園記念登山でした。