龍治くんの絵
初瀬基樹
めだか組(4歳児クラス)の村田龍治くんが描いた絵です。(おたよりに掲載したときは白黒でしたが、今回はカラーで掲載しました。また文中の左の絵とあるのは、上の絵と読み替えて下さい。)
私はこの絵を一目見て「わっ、すごい!」と思い、どういう状況で、どんな思いでこの絵が生まれたのか気になり、担任に尋ねました。そして、その状況を聞いて、ますます感動し、みなさんにもぜひ見ていただきたいと思い、急きょ、それまで書きかけていた「からたち」の原稿をこれと差し替えることにしました。
龍治くんは「先天性心疾患」のため、胸にペースペーカーを入れています。今度、その電池交換のために、福岡の聖マリア病院に入院することになりました。(これが発行される頃にはもう手術が行なわれているでしょうか。)本当はもっと早くに行なうはずだった手術なのですが、手術直前になって龍治くんがインフルエンザにかかってしまい、これまで延期となっていました。
前回の入院に際して、めだか組の子どもたちが「りゅうじくん、がんばってね。」という思いを込め、みんなで絵や手紙をプレゼントしました。そのなかで龍治くんは、圭輔くんの描いた絵が特に気に入っていたのだそうです。圭輔くんの描いた絵も左の絵のように友達がたくさん描いてあったのだそうです。
龍治くんの手術が延期となり、再び登園したときに、もう一度、あらためて、めだか組のみんなで龍治くんに絵や手紙を描いたそうなのですが、そのときに、龍治くんは“まだ(みんなが描き終えるまで)見ないほうがいい”と思ったようで、一人別の場所で黙々とこの絵を描いていたのだそうです。
左の絵は白黒なので色までお見せできませんが、一人ひとり違った色で、最後の一人まで丁寧に、全部で73人もの友達を描いています。(コピーでは黄色が判別できなかったため、左の絵では5人ほど見えなくなってしまっていますが・・・)しかも、みんなニコニコわらっています。私は、圭輔くんの描いた絵の方は実際に見ていないのですが、担任の話によると、圭輔くんは、めだか組の友達みんなを 描いていたのだそうです。きっと「友達みんなで応援しているよ。龍治くんが退院して元気に保育園に来るのをみんな待っているからね。」という圭輔くんの気持ちがいっぱい込められていて、それが龍治くんに伝わったのだと思います。そして、龍治くんは、圭輔くんをはじめ、みんなが自分のためにこうして絵や手紙を描いてくれているということ、そうしたみんなの気持ちがとてもうれしかったのでしょう。みんなへの感謝の気持ちがこのように絵に表れたのだと思います。こんなに多くの友達を描いているのは、「友達とのかかわりの深さ、充実感」みたいなものが 「人数の多さ」で表されているのかもしれません。友達への思いが、こんなにも たくさんの友達を描くパワーの源になったのだと思います。友達を思いやる気持ちがこんなにも育っている子どもたちを見て、うれしくもあり、うらやましい気さえします。
小さな体で大変な手術を受ける龍治くんを、めだか組の子どもたち同様、心から応援したいと思います。「龍治くん、がんばれ!」
蛇足になりますが、一枚の絵からこんなにも子どもたちの成長を見ることができました。まさに、子どもの絵は「心の表出」なのだと思います。子どもの絵を大人の狭い美的価値基準などで見るのではなく、子どもの心から溢れ出る「言葉にならない言葉」として、その心に共感し、しっかり受けとめていきたいものだとつくづく感じました。
しばらく、この絵はめだか組に飾られていますので、ぜひ“原画”をご覧頂ければと思います。